ペリーのちょんまげ ペリーのちょんまげ

掲載2002年05月25日

「大盗賊」 “ミスター・ボス”丹波哲郎は、時代劇でもやっぱり大ボス!大胆な盗み技に注目

(だいとうぞく) 1974年

掲載2002年05月25日

「盗みはすれども、非道はせず」の大盗賊・闇将軍(丹波哲郎)。昼の顔はいかにも温厚な絵師・緑川で通っている。
一見、のんきに絵ばかり描いているように見える闇将軍だが、用意は周到。いよいよ決行の夜ともなれば、闇将軍は白装束に白頭巾に変身して、現場に直行するのであった・・・って夜中に白じゃ目立ちすぎですよ、闇将軍!と思わず声をかけたくなるが、丹波哲郎はそんな些細なことは気にしない。気にしないどころか、本業の盗賊の他に、得意の剣術で悪人まで退治してしまう大暴れ。もう、どうにも止まらない丹波パワーだ。
丹波哲郎の時代劇といえば、六十年代の大ヒット作「三匹の侍」があるが、思えば当時から、どんな大事件にも動じない雰囲気だった。その雰囲気を活かし、「キーハンター」や「Gメン」で“ボス”として親しまれたのはご承知の通り。最近の「Gメンスペシャル」でも、変わりなく黒木警視として登場し、「Gメンに定年なし!」をアピール。いまや「丹波哲郎が誰かの部下になる」姿など、想像もできないのである。もちろん、この「大盗賊」でもボスぶりを発揮。夜桜のお時(松尾嘉代)、お町(野際陽子)、新吉(三ツ木清隆)ら手練を従えて、堂々の白頭巾。
やっぱり、日本でこんなボスになれるのは、この人だけだな。実感。

掲載2002年05月17日

長七郎江戸日記 華麗な二刀流で大変身!里見浩太朗の当たり役、「長さ〜ん」の野川由美子もいい味。

(ちょうしちろうえどにっき) 1983年〜1986年

掲載2002年05月17日

時代劇のヒーローには複雑な家庭環境の人が多いが、この長七郎もなかなか大変。父・駿河大納言忠長は、二代将軍・秀忠の次男。しかし、秀忠の長男・家光と将軍の座を争ったために、自害に追い込まれてしまう。将軍になった家光は罪ほろぼし?に、長七郎を大名に取り立てようとするが、長七郎は忠臣・三宅宅兵衛(下川辰平)らに助けられ、素浪人の姿で町中で暮らすのであった・・・。ふつう、三代将軍家光は「名君」と言われて、時代劇の主役になったり(例・三田村邦彦の「将軍家光忍び旅」)するのに、この番組では完全に悪役ってのが興味深い。
この長七郎、不運な生い立ちにも係わらず、正義感はひと一倍。ふだんは瓦版屋・夢楽堂の居候だが、いざ、悪人屋敷に乗り込むと、葵のご紋入りの華麗なお殿様ファッションに大変身。独自の二刀流で「俺の名前は引導がわりだ!迷わず地獄へ落ちるがよい!」とすごいセリフで悪人たちをビビらせる。「おのれ、何者!?」と聞かれても、自分で応えたりしない。すかさず下川辰平が走ってきて、「ええい、このお方は・・・」と説明するのだ。
「長さ〜ん」とゲタで駆け寄ってくる夢楽堂の女主人・野川由美子の女っぷりもいい感じ。華麗、変身、キメセリフ、大立ち回り、時代劇の要素のすべてが入った、里見浩太郎の十八番。文句なくスカッとできる。

掲載2002年05月03日

「徳川風雲録 御三家の野望」 八代将軍の座を争う御三家。脂の乗り切った北大路欣也と市川右太衛門の共演も話題に。

(とくがわふううんろく ごさんけのやぼう) 1986年

掲載2002年05月03日

79年にスタートしたテレビ東京系の「12時間ドラマ」。81年の萬屋錦之介の「それからの武蔵」以来、正月2日をまるまる時代劇に費やすという、驚くべき放送スタイルを貫いている。いつ見ても、そこにチョンマゲの人がいる画面。今でこそ、このチャンネルではそういう楽しみ方ができるが、かつては、年一回、この長時間時代劇の日だけが、そんな「夢」のような一日だったのだ。
その二十年余りの長時間時代劇作品の歴史で、北大路欣也は一時代を築いた人である。
85年「風雲柳生武芸帳」、86年この「徳川風雲録御三家の野望」、87年「風雲江戸城怒涛の将軍家光」、88年「花の生涯」、90年「宮本武蔵」と主演が続く。タイトルに「風雲」が多いので、私の中では、一時期「風雲といえば北大路」というくらい定着したものだ。
中でも、この「徳川風雲録」は、「暴れん坊将軍」でおなじみの徳川吉宗の若き日の物語。妾腹に生まれながら、相次ぐ兄の死で、御三家紀州家の当主になった吉宗。それだけでも大変なのに、今度は八代将軍の座をめぐって、尾張、水戸との争いに巻き込まれる。
まさに風雲人生。城を抜け出して世直しする松平健の吉宗とはひと味ちがうが、「暴れん坊」なのと、女子にモテモテなのは共通項。
父・市川右太衛門との共演や、丹波哲郎、原田芳雄、中村嘉葎雄ら、クセ者たちの活躍にも注目したい。

ペリー荻野プロフィール
ペリー荻野

1962年愛知県生まれ。大学在学中よりラジオのパーソナリティ兼原稿書きを始める。 「週刊ポスト」「月刊サーカス」「中日新聞」「時事通信」などでテレビコラム、「ナンクロ」「時代劇マガジン」では時代劇コラムを連載中。さらに史上初の時代劇主題歌CD「ちょんまげ天国」シリーズ全三作(ソニーミュージックダイレクト)をプロデュース。時代劇ブームの仕掛け人となる。

映像のほか、舞台の時代劇も毎月チェック。時代劇を愛する女子で結成した「チョンマゲ愛好女子部」の活動を展開しつつ、劇評・書評もてがける。中身は"ペリーテイスト"を効かせた、笑える内容。ほかに、著書「チョンマゲ天国」(ベネッセ)、「コモチのキモチ」(ベネッセ)、「みんなのテレビ時代劇」(共著・アスペクト)。「ペリーが来りてほら貝を吹く」(朝日ソノラマ)。ちょんまげ八百八町」(玄光社MOOK)「ナゴヤ帝国の逆襲」(洋泉社)「チョンマゲ江戸むらさ記」(辰己出版)当チャンネルのインタビュアーとしても活躍中。