ペリーのちょんまげ ペリーのちょんまげ

掲載2001年06月28日

「どろろ」怖いのに哀しい。手塚治虫の隠れた人気作品。いままで見逃してた人もぜひチェック!

(どろろ) 

掲載2001年06月28日

「鉄腕アトム」「火の鳥」「ブラック・ジャック」・・・手塚作品は名作が揃うが「どろろ」も一度見たら忘れられない作品のひとつ。
乱世の室町中期。醍醐景光は、まもなく生まれるわが子を48の魔陣に捧げ、「天下を獲る」という野望を果たそうとする。その子、百鬼丸は、体の48箇所を失いながら成長し、旅の途中で魔物を退治するたびにひとつずつ体を取り戻していく。どろろという子供と連れになった百鬼丸は、苦難の末、やがて「最後の妖怪」に行き着くが・・・・。
放送は69年。こどもだった私は、初めて「どろろ」を見た衝撃を今もはっきり記憶している。盥(たらい)に乗せられて流された赤子の百鬼丸。体のほとんどを失ったその子のことを考えただけで体が震えた。しかも、乱世で焼き討ち、強奪、屍と現実の恐ろしさに妖怪たちの奇怪さが重なって、怖いのなんの。頭が小判型の金小僧という妖怪を見たときにはあんまり怖くてひっくりかえりそうになった。しかし、おとなになってみると、人間の欲深さ、反対に純粋さ、哀しみなど胸に迫るものも多い。今もこの作品だけの上映会が開かれるというのもうなづける完成度。手塚治虫は、やっぱりすごい人だった。ちなみにこの番組は「ムーミン」「アルプスの少女ハイジ」と同じ「カルピス劇場」で放送された。すごい時代だったんだなー。

掲載2001年06月18日

旅がらす事件帖

(たびがらすじけんちょう) 1980年

掲載2001年06月18日

日活アクション映画全盛を知る人にとっては、青春時代のヒーロー。知らない人にとっては「熱き心に」など歌手としても大物のスター、というイメージだろうか。とにかく等身大、自然体のタレントばかりの日本芸能界にあって、いまだにスターの風格を保ち続ける貴重な存在、それが小林旭だ。
この「旅がらす事件帖」は80年の製作。その当時ですら、「初のテレビ時代劇出演」と騒がれた。今時、出演しただけで騒がれる俳優なんてのは、高倉健とこの人くらいだ。
しかし、そこは小林旭。小難しい設定の時代劇じゃなく、あくまで痛快アクション系で勝負だ。政治が腐敗した天保年間、幕府の特命を受けた旗本・直次郎は、身分を隠し、諸国を旅しながら悪と闘う――旗本がヤクザ姿で悪を成敗というすごい設定も、旭ならではかも。夏純子、三浦洋一、小沢栄太郎、叶和貴子、尾藤イサオら曲者レギュラー陣に、伊吹吾郎、川谷拓三、池波志乃らゲストが加わる豪華な配役。特に宍戸錠をゲストに迎えたアクションスター対決は見物のひとつ。脚本は本年スタートの新しい「水戸黄門」を手掛けたことでも話題の宮川一郎、「鬼平」でもおなじみの阿部徹郎ら、手練が揃う。最終回は、時代劇の巨匠・マキノ雅弘がてがけた最後のテレビ作品になるなど、お宝的要素もいっぱいの作品。映画の「渡り鳥シリーズ」を彷彿とさせる旭の股旅姿。もちろん、衣装も派手にキメてます。

掲載2001年05月26日

徳川武芸帳 柳生三代の剣

(とくがわぶげいちょう やぎゅうさんだいのけん) 1993年

掲載2001年05月26日

 映画全盛期には、映画界、歌謡界総出演のオールスター時代劇がよく作られたものだが、本作は往時の勢いを彷彿とさせる面々がそろった、平成のオールスター時代劇なのだ。
 主演の柳生宗矩(むねのり)に松本幸四郎、柳生一族の長老、石舟斎に平幹二朗、天下無双の剣豪として知られる柳生十兵衛に村上弘明、大久保彦左衛門に扮した藤田まことは頑固オヤジを楽しそうに演じ、彦左衛門の一の子分、一心太助の坂東八十助(現・三津五郎)も、やんちゃな魚屋を熱演。加藤清正の故・芦田伸介はさすがの存在感だし、淀殿の波之久里子も貫禄。たぬきオヤジの徳川家康は、NHKの大河ドラマでもこの役を演じた津川雅彦。名君、三代将軍家光に扮した堤大二郎は、現在、TBS系で放送中の『水戸黄門』で、石坂浩二の黄門様をいびる五代将軍綱吉を演じているあたりも興味深い。結構、将軍顔ってことかな?
 ほかに、ユニークだったのは、二代将軍秀忠の蟹江敬三。以前、本人にインタビューした際に、デビュー当時は、時代劇でも現代劇でもとにかく悪役ばかりで、刑事ドラマでは一度死んだのに、双子の弟として翌週も続けて極悪人役だった実績まであると、自慢?しておられた! ペリーも長く時代劇と接しているが、まさかこの人の将軍様を見られるとは…少し、感動。
 また、いつも強いばかりで色気のない柳生十兵衛の悲恋の見もののひとつ。
 関が原の戦い、島原の乱など激動の江戸初期、徳川家に剣で仕えた柳生一族。結構、家庭環境は複雑だが、宗矩の男らしい生き方は清清しいぞ。

ペリー荻野プロフィール
ペリー荻野

1962年愛知県生まれ。大学在学中よりラジオのパーソナリティ兼原稿書きを始める。 「週刊ポスト」「月刊サーカス」「中日新聞」「時事通信」などでテレビコラム、「ナンクロ」「時代劇マガジン」では時代劇コラムを連載中。さらに史上初の時代劇主題歌CD「ちょんまげ天国」シリーズ全三作(ソニーミュージックダイレクト)をプロデュース。時代劇ブームの仕掛け人となる。

映像のほか、舞台の時代劇も毎月チェック。時代劇を愛する女子で結成した「チョンマゲ愛好女子部」の活動を展開しつつ、劇評・書評もてがける。中身は"ペリーテイスト"を効かせた、笑える内容。ほかに、著書「チョンマゲ天国」(ベネッセ)、「コモチのキモチ」(ベネッセ)、「みんなのテレビ時代劇」(共著・アスペクト)。「ペリーが来りてほら貝を吹く」(朝日ソノラマ)。ちょんまげ八百八町」(玄光社MOOK)「ナゴヤ帝国の逆襲」(洋泉社)「チョンマゲ江戸むらさ記」(辰己出版)当チャンネルのインタビュアーとしても活躍中。