ペリーのちょんまげ ペリーのちょんまげ

掲載2004年09月24日

「雪之丞変化」美輪明宏の妖しい美が花開く。五社英雄、深作欣二ら個性派監督の腕が冴える娯楽作。

(ゆきのじょうへんげ) 1970年

掲載2004年09月24日

近頃うわさの人気役者・中村雪之丞(美輪明宏=当時丸山明宏)には、秘密があった。
 その生家、長崎の豪商・松浦屋清佐衛門は20年前に、当時の長崎奉行・土部繁右衛門(金田龍之介)の陰謀で、一族皆殺しの刑になっていたのだ。たったひとり生き残ったのは、清佐衛門と芸妓の間に生まれた雪太郎。隠し子だった雪太郎は、歌舞伎役者となって父の仇を討つ機会を狙う。
 映画では長谷川一夫ら二枚目スターが演じて評判になった名作を、五社英雄が自ら企画。女形が主役ということで、テレビの連続ドラマではなかなか成立しなかった作品だけに、まさに美輪明宏の存在が、可能にした番組といえる。美輪明宏は艶やかな女形はもとより、男姿でも妖しい美しさを放つ。主題歌が「紫小唄」というのも、歌いこなせるのは、この人だけって感じである。
 また、雪之丞の存在感を際立たせた監督たちは、五社はじめ、深作欣二、松野宏軌、森川時久、宇留田俊夫ら個性派ばかり。脚本も柴英三郎、大野靖子と手練が揃った。
 仇の土部繁右衛門は、金田龍之介。この後、「子連れ狼」などで奇怪な毒薬使いなど恐ろしい悪役ぶりを見せるが、この番組でもかなりのもの。娘・浪路(珠めぐみ)を大奥に送り込んで、権力を握ろうなどと企む悪隠居ぶりを見せているのがいい。

掲載2004年09月03日

「妖怪大戦争」異国の吸血悪妖怪VS日本の妖怪軍団。CGなしでここまで出来る!日本妖怪映画の名作。

(ようかいだいせんそう) 1968年

掲載2004年09月03日

ある日、バビロニアの古都ウルの遺跡で異変が起きる。人間の侵入で、四千年もの眠りから、凶悪な吸血妖怪ダイモンが蘇ってしまったのだ。江戸時代の日本にたどりついたダイモンは、伊豆代官(神田隆)の血を吸って本人に変身。次々恐ろしい事件を起こし、日本征服を企む。その異変に真先に気づいたのが、代官宅の池に住む河童だった。河童は、仲間の油すましや唐傘お化け、二面女、ろくろ首などを集めて、ダイモンと戦う…。
 「大魔神」の大映らしく、時代劇としての展開や妖怪の造作は、とにかく本格的。なのに、出てくる妖怪たちがみんなとても愛嬌があるのである。威勢のいい河童をはじめ、「あいつら一丁ヘコましたろか」などとなぜか関西弁をぶちかます油すまし、「あたしはここよ」と首だけ近くに寄ってくるろくろ首などなど。いざ戦いだと、みんなねじり鉢巻きしてるし。愛嬌ありすぎ!佳境に入って、ダイモンは巨大化。そこに全国から応援にかけつける天狗やタヌキの妖怪、ぬらりひょんらのチームワークにも泣かされる。
 若侍・新八郎の青山良彦、川崎あかね、内田朝雄ら人間も出てくるが、あくまで主役は妖怪たち。命がけで戦って、「夜明けだ」と引き上げる彼らの姿の美しさよ。CGなしでこれほど迫力の美を作り上げた日本の特撮と妖怪文化に脱帽ですな。

掲載2004年02月06日

「妖僧」見つめただけで即白骨!すごい術を持った修行僧市川雷蔵も美人の「ウッフン」に…。

(ようそう) 1963年

掲載2004年02月06日

 ただひとり、山の洞窟にこもってすさまじい修行に耐え抜いた僧行道(市川雷蔵)。その成果で、数々の秘術を身につけた。洞窟にさまよい出たねずみやヘビをじっと見つめただけで、みるみる白骨化。考えてみれば、ひどい術だが、すごい目力の行道は、藤原一族が牛耳る都の人々を救おうと、山を出る。
 瀕死の病人も、たちまち治療してしまう行道の評判は高く、ある日、お忍びで宮中に招かれる。なんと秘密の病人は、女帝(藤由紀子)その人だった。秘術を尽くして、見事、歩けなかった女帝の治癒に成功する行道。女帝の信頼は厚く、道鏡と名をかえた行道は、やがて政治にも口を出す。美男な上に理屈も通った道鏡が邪魔な藤原氏は、暗殺をもくろむが、さすが道鏡。矢がささろうが、刀で斬られようがびくともしない。しかし、超美人の女帝に、「ここは誰も入って来ませぬ」なんて秘密の場所に誘われて、とうとう…。
 見どころはいろいろある。「眠狂四郎」でおなじみの市川雷蔵が、ボロボロな僧衣にボーボーヒゲで登場し、だんだん美男になっていく過程。それに秘術の特撮。さらには「ウッフーン」と迫り来る美女と修行のはざまで揺れる男の弱さ、などなど。どんなに修行しても男はお色気に負けるものなのか。名監督・衣笠貞之助の異色作。藤原の悪役を演ずる若山富三郎も要チェック!

ペリー荻野プロフィール
ペリー荻野

1962年愛知県生まれ。大学在学中よりラジオのパーソナリティ兼原稿書きを始める。 「週刊ポスト」「月刊サーカス」「中日新聞」「時事通信」などでテレビコラム、「ナンクロ」「時代劇マガジン」では時代劇コラムを連載中。さらに史上初の時代劇主題歌CD「ちょんまげ天国」シリーズ全三作(ソニーミュージックダイレクト)をプロデュース。時代劇ブームの仕掛け人となる。

映像のほか、舞台の時代劇も毎月チェック。時代劇を愛する女子で結成した「チョンマゲ愛好女子部」の活動を展開しつつ、劇評・書評もてがける。中身は"ペリーテイスト"を効かせた、笑える内容。ほかに、著書「チョンマゲ天国」(ベネッセ)、「コモチのキモチ」(ベネッセ)、「みんなのテレビ時代劇」(共著・アスペクト)。「ペリーが来りてほら貝を吹く」(朝日ソノラマ)。ちょんまげ八百八町」(玄光社MOOK)「ナゴヤ帝国の逆襲」(洋泉社)「チョンマゲ江戸むらさ記」(辰己出版)当チャンネルのインタビュアーとしても活躍中。