ペリーのちょんまげ ペリーのちょんまげ

掲載2001年11月16日

「吉宗評判記 暴れん坊将軍」「うつけ者め、余の顔を見忘れたか!」上様パワーの原点がここに。

(よしむねひょうばんきあばれんぼうしょうぐん」) 1978年〜1982年

掲載2001年11月16日

身分の高い人が悪を懲らしめる。いわゆる「お血筋もの」系時代劇の中でも、最も身分の高い将軍自らが活躍する「暴れん坊将軍」。その原点がこの第一シリーズ。
二十年以上も人気の理由はいろいろあるが、まず、第一に「松平健」という主役を抜擢したこと。勝新太郎に見いだされ、「座頭市物語」でデビューしたころは、まだ暗い影のある青年のイメージだったが、いざ将軍様役におさまると、風格があり、サムライキングに相応しい存在感。さらに明るさと少々女心には弱い雰囲気も、若き将軍にはぴったり。
(ペリーの友人の目撃談によると、東京青山の高級ブティック周辺で、自らクルマを運転、大地真央夫人をエスコートする様子は、「まさに上様って感じ・・・」とのことであった)
「暴れん坊将軍」の歴史の中では、親友の大岡越前が横内正から、現在は田村亮に、め組の頭が初代北島三郎から、山本譲二、現在の松村雄基に、守り役のじいが、有島一郎、船越英二、高島忠夫、現在の名古屋章に変遷。さらに「成敗!」で働く男女のお庭番役やめ組の小頭など、キャラクターも変化しており、現在のシリーズと比べてみるのも楽しい。第一シリーズでは、今よりさらに「ウブ」な新さんこと吉宗が湯船で女性に強引に口説かれて逃げだすなど、ナイスなシーンも多数。ますます上様のファンになれるはず。

掲載2001年05月02日

破れ奉行

(やぶれぶぎょう) 1977年

掲載2001年05月02日

 時代劇で“暴れ”といえば『暴れ八州御用旅』の西郷輝彦(まあ、一部には『暴れ九庵』の風間杜夫を推す人もいるとは思うが、悪しからず)、“怒れ”といえば『怒れ!求馬』の原田龍二、そして“破れ”といえば、ご存知、萬屋錦之介である。
 名作『破れ傘刀舟・悪人狩り』で
“てめったっちゃ、人間じゃねえ。たたっ斬ってやる!!”
と暴れまくった錦之介。
 その勢いで登場した『破れ』シリーズ第二弾が、本作だ。
 第一弾の『破れ傘刀舟・悪人狩り』が、剣の達人の名医。ただし金には縁がない。雨の日には本当に破れ傘をさしていたのだが、このシリーズ第二弾では、お奉行自らが破れてしまった。
 医者からお奉行へと脈絡のないシリーズ展開と思いきや、そんなことはないし、しかも、ただ破れた奉行じゃないあたりも深いんだな、これが。
 深川奉行という、今で言えば“水上警察”のような特殊任務で、高速舟を駆使して、密輸などを取り締まる。なかなか斬新な設定なのである。しかも斬新なのは設定だけではなく、錦之介のいでたちもまた斬新。これは是非画面で確認していただきたい。『破れ傘刀舟』がパンタロンルックの医者だったのも斬新だったが、錦之介クラスになると、どんなすごいファッションでも、見る者を納得させてしまう(というか、話が面白いから文句が言えない)ところがすごい。
 シリーズはその後、『破れ新九郎』へと受け継がれ、こちらはまたまたパンタロンで、仕事は獣医。主人公が全員“型破り”ってところで、『破れ』シリーズには、ちゃんと一貫性があるのであった。

掲載2001年04月14日

吉宗評判記 暴れん坊将軍

(よしむねひょうばんき あばれんぼうしょうぐん) 1978年

掲載2001年04月14日

 パッパカ、パッパカ、パッパカ…、白馬を駆って疾走する吉宗。ご存じ『暴れん坊将軍』!!
 現在放送中の第一シリーズは、主演の松平健が二十代前半。まさしく“暴れん坊”な感じだ。以来シリーズが続くこと23年。一貫しているのは、独身ということだろう。
 もちろん、大奥には美女がずらりと控えて、吉宗がやってくるのをてぐすね引いて待っているのだが、なかなか足が向かないらしい。大奥のお局さま(長内美那子)らに、
“上様、たまにはお出ましを”
と、しつこく誘われるのに、吉宗は大奥よりも“徳田新之助”として城下に出たくて上の空。
“上様!ウッキ−!!”
という、お局さまのヒステリーから逃げるように「め組」に転がり込むというのが、毎度のパターンだ。
 守り役のじい(有島一郎)たちも、今度こそと、やんごとなき姫との縁談を進めるものの、なかなか首を縦に振らない上様。城下に出たら出たで、町娘たちに
“新さぁ〜ん”
と、ラブラブ光線を送られるが、見て見ぬふり。罪な上様だ。
 過去には
“私は徳田新之助が好きだ!”
と絶叫する積極的な女(石野真子)や、
“お慕い申しております”
と熱い視線を投げかけた男勝りの姫(中村あずさ)もいたのに、いま一歩のところで成就せず。よっぽど女運がないのか、それと、これには何かワケが?
 思うに、自分の生みの母(中村玉緒)が身分が低く苦労したのを見て、ほら、そこは親思いの上様のこと“まずは母上が気に入らないと”と思っているのかもしれない。ということは、吉宗の縁談をまとめるには、
“グハハハ、わての出番だすか?”
やっぱ、玉緒ママに出てもらわなくちゃ。

ペリー荻野プロフィール
ペリー荻野

1962年愛知県生まれ。大学在学中よりラジオのパーソナリティ兼原稿書きを始める。 「週刊ポスト」「月刊サーカス」「中日新聞」「時事通信」などでテレビコラム、「ナンクロ」「時代劇マガジン」では時代劇コラムを連載中。さらに史上初の時代劇主題歌CD「ちょんまげ天国」シリーズ全三作(ソニーミュージックダイレクト)をプロデュース。時代劇ブームの仕掛け人となる。

映像のほか、舞台の時代劇も毎月チェック。時代劇を愛する女子で結成した「チョンマゲ愛好女子部」の活動を展開しつつ、劇評・書評もてがける。中身は"ペリーテイスト"を効かせた、笑える内容。ほかに、著書「チョンマゲ天国」(ベネッセ)、「コモチのキモチ」(ベネッセ)、「みんなのテレビ時代劇」(共著・アスペクト)。「ペリーが来りてほら貝を吹く」(朝日ソノラマ)。ちょんまげ八百八町」(玄光社MOOK)「ナゴヤ帝国の逆襲」(洋泉社)「チョンマゲ江戸むらさ記」(辰己出版)当チャンネルのインタビュアーとしても活躍中。