ペリーのちょんまげ ペリーのちょんまげ

掲載2001年04月04日

吉宗評判記 暴れん坊将軍

(よしむねひょうばんき あばれんぼうしょうぐん) 1978年

掲載2001年04月04日

 “吉宗評判記 暴れん坊将軍!”名ナレーター、若山弦蔵の声も高らかに、番組がスタートしたのが1978年。その年は、とにかく
“おおっ!すごい上様が誕生したぞ”
と、驚いた。
 当時松平健は、勝新太郎に見出され『座頭市物語』でデビューした新人俳優。ババーンと世に出たのは、まさしくこの番組からであった。
 身分の高い人が世直しをするという設定の時代劇は数々あるが、大岡越前は町奉行だし、水戸黄門だって副将軍である。そこへいくと吉宗はなんてったって将軍様。めったやたらにお目にかかれるもんじゃあないよ。御三家のお偉方や親藩、譜代の大名だって謁見するときは御簾ごしで、直にお顔を見ることさえできないもんね。それがあんた、第1シリーズの初回で将軍自らが千代田のお城を抜け出して、しかも自分で
“新さんです”
と名乗ったフレンドリーさには正直たまげた。御三家には御簾ごしだけど、町火消しのおかみさんには、自分からご挨拶しちゃうんだから。  そんなエピソードも含めて初期のシリーズでは、いかに吉宗が“新さん”になったかもよくわかるし、北島三郎扮する町火消し、め組の辰五郎との出会いのシーンも出てきて、ファンならずとも見逃せない。
 また、松平健、北島三郎以外のレギュラー陣は、大岡越前も辰五郎の女房も、ふたりのお庭番も、すべて代替わりしているので、第1シリーズでは、すべての役の「元祖」が誰だったのかがわかるのも楽しい。
 とくに上様の守役のじいはどんどん変わっている。初代・有島一郎、二代目・船越英二、三代目・高島忠夫、四代目・名古屋章。それもこれも嫁ももらわず、たびたび城を抜け出す上様を心配しすぎて、心労がたまるせいではないか。上様もそろそろ身を固めて、歴代のじいを安心させてやらねばのう(って、私は誰だよ!?とひとり突っ込み)。
 そんなこんなも含めて、『銭形平次』に迫る長寿時代劇の登場を祝いつつ、北島三郎の歌う第1シリーズの主題歌「炎の男」でめらめら熱く盛り上がろう!

掲載2000年11月30日

柳生武芸帳 双龍秘剣

(やぎゅうぶげいちょう そうりゅうひけん) 1958年

掲載2000年11月30日

 徳川のとてつもない陰謀を記した柳生武芸帳。それを巡って柳生一族、忍者、虚無僧一味、三つ巴の死闘が始まる。野心家の弟(鶴田浩二)と女を柳生に殺された兄(三船敏郎)も巻き込まれ、武芸帳は誰の手に? 
 稲垣浩監督のスピーディーな演出が冴える。乙羽信子の姫と弟の悲恋、岡田茉莉子の妖艶な踊り子、柳生頭の松本白鸚などキャストも豪華。
 孤児として育っても、女(演じるは久我美子。三船とのいちゃいちゃシーンはなかなかなのだ)に
“人間としての生きかたを教わった”
兄は、武芸帳を我がものにして世に出たいと願う弟とは、違う人生を目指していた。一方、野心を抱く弟は仲間を裏切り、武芸帳を狙う虚無僧一味の姫と運命的な恋に。でも、敵同士のロミオとジュリエットなのだった…。
 このほか、長い髪をなびかせて野性的な色気を見せる岡田茉莉子、忍者の頭、東野英治郎、ちょい役の左ト全の大久保彦左衛門もいい味。 

掲載2000年07月10日

妖刀物語花の吉原百人斬り

(ようとうものがたりはなのよしわらひゃくにんぎり) 1960年

掲載2000年07月10日

 江戸の不夜城吉原に、田舎商人が足を踏み入れたことが事件の始まり。遊女に翻弄され、失意の商人は、禁じられた名刀村正を抜いてしまう。色街の虚実と人間の弱さ。監督は「悲劇を豪放かつ繊細に描く」巨匠・内田吐夢。主演は片岡千恵蔵。内田・片岡は、下郎が槍で主人の仇、侍十数人と死闘を繰り広げる名作「血槍富士」(55年)のコンビ。本作でも気迫のこもった演出が光る。華やかな世界を彩る女たちにに水谷良重、沢村貞子、山東昭子ら。五十代半ばの千恵蔵の円熟した演技がいい。

ペリー荻野プロフィール
ペリー荻野

1962年愛知県生まれ。大学在学中よりラジオのパーソナリティ兼原稿書きを始める。 「週刊ポスト」「月刊サーカス」「中日新聞」「時事通信」などでテレビコラム、「ナンクロ」「時代劇マガジン」では時代劇コラムを連載中。さらに史上初の時代劇主題歌CD「ちょんまげ天国」シリーズ全三作(ソニーミュージックダイレクト)をプロデュース。時代劇ブームの仕掛け人となる。

映像のほか、舞台の時代劇も毎月チェック。時代劇を愛する女子で結成した「チョンマゲ愛好女子部」の活動を展開しつつ、劇評・書評もてがける。中身は"ペリーテイスト"を効かせた、笑える内容。ほかに、著書「チョンマゲ天国」(ベネッセ)、「コモチのキモチ」(ベネッセ)、「みんなのテレビ時代劇」(共著・アスペクト)。「ペリーが来りてほら貝を吹く」(朝日ソノラマ)。ちょんまげ八百八町」(玄光社MOOK)「ナゴヤ帝国の逆襲」(洋泉社)「チョンマゲ江戸むらさ記」(辰己出版)当チャンネルのインタビュアーとしても活躍中。