ペリーのちょんまげ ペリーのちょんまげ

掲載2012年04月27日

「雪姫隠密道中記」
長身姫様、片平なぎさの七変化!
「水戸黄門」スタッフ多数参加の明朗道中記

(ゆきひめおんみつどうちゅうき) 出演者:片平なぎさ/あおい輝彦/中村敦夫/和田浩治/森マリア/小松政夫 ほか 1980年

掲載2012年04月27日

  三代将軍家光のころ、熊本城主加藤忠広に流罪の命が下った。忠広の娘・雪姫(片平なぎさ)は、父の無実を将軍に直接訴えるため、江戸に向けて出発。旅先で次々事件に遭遇するが、さすが名将加藤清正の孫娘。必要とあらば、若侍、旅芸人、町娘などに“七変化”。どんな困難にも立ち向かう暴れっぷりを見せる。

 脚本の葉村彰子(実は複数の脚本家の共同ペンネームで、一時期はかの向田邦子も参加していた)はじめ、監督には山内鉄也、プロデューサーには西村俊一など、「水戸黄門」スタッフが多数参加した明朗時代劇。共演も姫様お付の巌谷源八郎(和田浩治)、家光の名代役葵新之介(あおい輝彦)、女道中師お千(森マリア)など、「月曜八時」でおなじみの顔ぶれが揃った。当時、二十歳の片平は、これが初めての時代劇主演作品。ペリーは、元伊賀忍者・小鈴の佐平次役の中村敦夫ご本人にインタビューした際、「当時、男性主役の時代劇が多く、明るくさわやかな女性主役作品をと現場は意欲的だった。旅の物語なので、ロケが多かったが、片平さんは長身で、男性と立ち回りをしても堂々としてみえた」と、りっぱな“姫様”ぶりを語ってくれた。

 特筆すべきは音楽で、長く必殺シリーズを手掛けた平尾昌晃が担当。主題歌「いつも君のそばに」あおい輝彦が♪いつもいる~と甘い歌詞を軽快に歌う。

掲載2012年04月06日

「柳生十兵衛七番勝負シリーズ」
シリーズごとに苦悩しつつ成長する十兵衛。
和泉元彌、永澤俊矢、山口馬木也ら強敵登場!

(やぎゅうじゅうべえななばんしょうぶ ) 出演者:村上弘明/夏八木勲/松重豊/西岡徳馬/佐々木蔵之介/苅谷俊介/高野八誠/小沢真珠 ほか 2005年

掲載2012年04月06日

  三代将軍徳川家光のころ、幕府の基礎が盤石とはいえない時期に大名の動きを監視する立場の柳生家の十兵衛は、各地の反乱の芽を断つ使命を帯びて旅に出る。しかし、予想に反して十兵衛と戦う運命にあるのは、自分を捨て、周囲の人間のために剣を手にしたものばかりだった…。シリーズ1の「柳生十兵衛七番勝負」では、家光と将軍の座を争った弟・忠長の家臣と向き合うことに。いわば徳川の内側での戦いであり、悪人ではない彼らと命のやゆりとりをすることが、十兵衛には大きな苦痛であり、悲しみでもある。

 続くパート2の「島原の乱」で十兵衛は、兄弟子荒木又右衛門(高島政宏)と再会。後に島原の乱の現場に急行するが、その裏には暗い陰謀が。そしてパート3「最後の戦い」では、40代になり妻(牧瀬里穂)もめとった十兵衛が、自分を「捨てた」と思っていた母(富司純子)の生存を知り、三度の旅に出ることに。そこに由比正雪(和泉元彌)の影が。

 撮影当時、私は緑山スタジオの現場で取材をしたが、キャリア、体力ともに充実した村上弘明には貫禄が備わっていたのが印象的だった。十兵衛のトレードマークの眼帯もアップ用と引き画面で別のものが用意され、シリーズの見どころでもある立ち回りの場面では危険がないように工夫されていた。山口馬木也、永澤俊矢ら強敵との戦いは見応えがある。

掲載2012年01月06日

『山桜』
田中麗奈と東山紀之が静かに綴る藤沢作品
映像美と心優しき人々の姿に思わず涙が

(やまざくら) 出演者:田中麗奈/東山紀之/篠田三郎/檀ふみ/北条隆博/南沢奈央/富司純子/高橋長英/村井国夫 ほか 2008年

掲載2012年01月06日

江戸後期。北の小国海坂藩の吟味役百二十万石の浦井家の長女・野江(田中麗奈)は、最初の夫と死別し、勧められるままに磯村家に嫁いだ。磯村家は蓄財に熱心で、野江に「出戻りの嫁」とつらく当る。辛い日々の中、墓参の帰り、山桜の枝に手を伸ばした野江に「手折ってしんぜよう」と声をかけたのが、手塚弥一郎(東山紀之)だった。弥一郎は自分を見初め、嫁にと望んでくれた相手だったが、野江は会うこともなく断っていた。「今は幸せでござろうな」と問う弥一郎に心ならずも「はい」と言ってしまった野江。その後、弥一郎は、不正を正し、飢饉に苦しむ弱い農民たちを救うため、藩の重役(村井国夫)を斬る。
 山桜の下でのただ一度の出会いが、ふたりの運命を変える。文庫本で20ページほどの短編を映画化するため、スタッフは9年もの準備を重ねたという。ひたむきな野江と静かに正義を貫く弥一郎の姿を見ていると、ふたりの幸せを祈らずにいられない。東山の鮮やかな殺陣、原作者藤沢周平ゆかりの庄内で探し当てた山桜の美しさなど、見どころは多いが、何より若いふたりを支える周囲の人々の心優しい姿に胸を打たれる。「あなたはほんの少し回り道をしているだけなのです」と、娘を見守る母(壇ふみ)と父(篠田三郎)、そして弥一郎の母(富司純子)とのシーンには思わず涙が。時代劇初心者の女性にもお薦め。

ペリー荻野プロフィール
ペリー荻野

1962年愛知県生まれ。大学在学中よりラジオのパーソナリティ兼原稿書きを始める。 「週刊ポスト」「月刊サーカス」「中日新聞」「時事通信」などでテレビコラム、「ナンクロ」「時代劇マガジン」では時代劇コラムを連載中。さらに史上初の時代劇主題歌CD「ちょんまげ天国」シリーズ全三作(ソニーミュージックダイレクト)をプロデュース。時代劇ブームの仕掛け人となる。

映像のほか、舞台の時代劇も毎月チェック。時代劇を愛する女子で結成した「チョンマゲ愛好女子部」の活動を展開しつつ、劇評・書評もてがける。中身は"ペリーテイスト"を効かせた、笑える内容。ほかに、著書「チョンマゲ天国」(ベネッセ)、「コモチのキモチ」(ベネッセ)、「みんなのテレビ時代劇」(共著・アスペクト)。「ペリーが来りてほら貝を吹く」(朝日ソノラマ)。ちょんまげ八百八町」(玄光社MOOK)「ナゴヤ帝国の逆襲」(洋泉社)「チョンマゲ江戸むらさ記」(辰己出版)当チャンネルのインタビュアーとしても活躍中。