ペリーのちょんまげ ペリーのちょんまげ

掲載2011年02月11日

『世直し順庵!人情剣』
この決めセリフは藤田まことしか言えない!
ものぐさ江戸の監察医が許せぬ悪を葬る。

(よなおしじゅんあん!にんじょうけん) 2005年

掲載2011年02月11日

江戸で診療所を開く医師・河合順庵(藤田まこと)は長崎でシーボルトについて修行を積んだ本格派だが、生来のものぐさ男。なんと口癖は「手おくれ」。もとは貧乏御家人で、剣の腕もたつらしい。その順庵のところに、飲み仲間の岡っ引き吉松親分(内藤剛志)が、しばしば亡骸を担いでくる。監察医として鋭く事件を見破る順庵だが、本物の悪党が捕まらないことを知ると、人知れず悪を葬る決意を固めるのだった。
表の顔と裏の顔。ふたつ使い分けるのは藤田まことの得意技だが、今回は決めセリフがすごい。
「お前さんは、もう手おくれだね…」
人気マンガ「北斗の拳」の主人公もびっくりの言い捨てセリフ。これを言いきれるのは、藤田まことだけだろう。なお、このシリーズには原型がある。95年にやはり藤田主演で放送された「はぐれ医者・お命預かります」で、15.3パーセントという高平均視聴率を記録している。
注目キャラは、北町奉行所与力の長谷部総十郎の島田順司。藤田・島田のコンビといえば、名シリーズ「はぐれ刑事純情派」を思い出すが、刑事のときはメガネをずらした小心者の課長だった島田が、ここでは、順庵の道場仲間であり、裏の顔を知る唯一の男として登場。シリアスな演技を見せる。

掲載2010年05月07日

『弥次喜多隠密道中』
隠密のふたりが弥次さん、喜多さんに?
尾上菊五郎、目黒祐樹の世直し道中

(やじきたおんみつどうちゅう) 1971年

掲載2010年05月07日

旗本三千石の次男坊・村上弥次郎(尾上菊五郎)と、元伊賀者の青山喜多八(目黒祐樹)は、時の老中・水野越前守の命を受け、各地の民情と政情を探りに日本各地を旅することに。しかし、まじめすぎてすぐに人にだまされる弥次さんと、女好きで調子のいい喜多さんは、あちこちで騒動に巻き込まれる。彼らの監視役となった目付けの榊竜軒(中村敦夫)は、おかけで始終苦い顔だ。
ふたりが隠密道中を引き受けた理由が面白い。弥次さんは、剣と学問の実地修行になると考え、一方、喜多さんは「金と女に不自由しない」と動機が不純。性格は正反対だが、お互いの欠点を補い合って、悪に対してはどこまでも強い。痛快な世直し旅になる。
ユニークなのは、ゲストの顔ぶれ。「怪盗ねずみ小僧」の回では、目黒の兄・松方弘樹が二枚目のねずみ小僧として登場。舞阪あたりに出没し、宿場は厳戒態勢。宿改めにきた役人に、喜多さんは捕まってしまう。なにしろ、人相書きに喜多さんはそっくり(そりゃ当たり前!) 弥次さんは、喜多さんを救おうとするが、竜軒に「宿場の悪を探索するのが先」と言われて、隠密の辛さを知る。そんな折、囚人として護送される喜多さんのところに、颯爽と馬で現れたのは、ねずみ小僧! 「お前さんには借りがあるからな」などと少々キザなねずみ小僧もいい味。兄弟が激突する。

掲載2009年10月02日

『世なおし奉行』
片岡千恵蔵、得意のべらんめえ奉行
阪妻の息子・田村正和との共演にも注目!

(よなおしぶぎょう) 1972年

掲載2009年10月02日

公事方勘定奉行・跡部能登守(片岡千恵蔵)は、無法者たちが横行する関八州の取り締まりを担当する。堅苦しい役人と違い、世間の事情に通じる能登守は、取締出役の早瀬主水(田村正和)、中沢要介(石山律)、元スリのちょぼいちの辰(砂塚秀夫)お染(赤座美代子)らとともに、宿場ら村々に根を張る悪人たちと対決する。第21話「黄金の罠」では、佐渡の金塊運搬中に行方不明になった部下を助けるために奮闘。若年寄(御木本伸介)ら幕府上層部しか知りえない運搬ルートを賊が知りえた謎解きなども見せる。
千恵蔵といえば、映画では遠山の金さんとして「火の玉奉行」「はやぶさ奉行」「喧嘩奉行」「たつまき奉行」など、おそらく史上もっとも多くのニックネームを持つ奉行俳優。テレビ作品では「大岡越前」と父親役などが印象的だが、69歳で主演したこの本作(ちなみに音楽は「大岡」と同じ山下毅雄)では、自ら潜入捜査をし、悪人たちに「じたばたするねえ!」と思いっきり啖呵をきる。もちろん、見事な立ち回りを披露。一方で、自宅でおくに(小山明子)ととぼけた会話などするのも千恵蔵らしいほのぼのとした味わいである。映画全盛時代のライバル阪東妻三郎の息子・正和との共演にも注目だ。若き正和は「この男、おそらく忍び」など、現在の渋めモードを発揮している。

ペリー荻野プロフィール
ペリー荻野

1962年愛知県生まれ。大学在学中よりラジオのパーソナリティ兼原稿書きを始める。 「週刊ポスト」「月刊サーカス」「中日新聞」「時事通信」などでテレビコラム、「ナンクロ」「時代劇マガジン」では時代劇コラムを連載中。さらに史上初の時代劇主題歌CD「ちょんまげ天国」シリーズ全三作(ソニーミュージックダイレクト)をプロデュース。時代劇ブームの仕掛け人となる。

映像のほか、舞台の時代劇も毎月チェック。時代劇を愛する女子で結成した「チョンマゲ愛好女子部」の活動を展開しつつ、劇評・書評もてがける。中身は"ペリーテイスト"を効かせた、笑える内容。ほかに、著書「チョンマゲ天国」(ベネッセ)、「コモチのキモチ」(ベネッセ)、「みんなのテレビ時代劇」(共著・アスペクト)。「ペリーが来りてほら貝を吹く」(朝日ソノラマ)。ちょんまげ八百八町」(玄光社MOOK)「ナゴヤ帝国の逆襲」(洋泉社)「チョンマゲ江戸むらさ記」(辰己出版)当チャンネルのインタビュアーとしても活躍中。