ペリーのちょんまげ ペリーのちょんまげ

掲載2005年09月01日

「剣客商売」ロケの意外な敵はセミ?ここまでこだわる「剣客」撮影現場

(けんかくしょうばい) 2004年

掲載2005年09月01日

先月、東京はお台場で行われた当チャンネルのファン感謝イベント。「剣客商売スペシャル」の新作試写やゲームなど、大変なごやかなひとときとなった。ご参加いただいたみなさま、ありがとうございました。
 そこで、私は「剣客商売」シリーズや「鬼平犯科帳」シリーズのプロデューサーで、当チャンネルでも活躍中の能村庸一さんとトークをさせていただいた。
 その能村さんの話で驚いたのは、「夏のロケの大敵はセミ」という話。これは私も撮影現場取材するとよく感じることだが、ロケ中は、電車や車の通過音、飛行機の音も避けなければならない。これらは通り過ぎればいいが、セミだけは完全に追い払うこともままならず、難しい。さらに「京都で江戸を撮っているわけですから、鳴いているセミの種類が違うので、そこにも注意します」とのこと。必要なら、後から江戸のセミの声をかぶせることもあるという。そこまでこだわりますか!
 そんなこだわりの結晶ともいえる「剣客」シリーズの第五シリーズは、秋山小兵衛(藤田まこと)、おはる(小林綾子)に孫小太郎ができて、ますます家族の物語がやわらかくなっていく。大治郎(山口馬木也)と三冬(寺島しのぶ)の夫婦もしっくり。何気ないシーンのこだわりにも耳をすましてみては。

掲載2005年06月29日

「傘次郎・新子捕物日記 夫婦十手」町でうわさの暴れん坊夫婦が大活躍。勝気でかわいく色っぽい美枝子に注目。

(かさじろうしんことりものにっき めおとじって) 

掲載2005年06月29日

北町奉行所定町廻り同心・坂根傘次郎(渡瀬恒彦)は、ちょっと風変わりな女を女房にした。その女・新子(原田美枝子)は、死罪になった名うての盗賊の娘で、背中一面には大きな河童の入れ墨をしている。こんな女にほれたのだからと、傘次郎は、なんと同じ入れ墨を自分も入れてしまうのだった。
 ぶつかりながらもラブラブなふたりだが、世間の目は冷たい。新子が湯屋に入ろうとすると、ひそひそうわさをされ、傘次郎も奉行所では変わり者と決め付けられてしまった…。
 強気&勝気なところが似たもの夫婦。それを芸能界一けんかが強い(?)とも言われる渡瀬と、一本筋の通った女優として知られる原田が真っ向勝負で演じるのだから、威勢がいい。奉行所に顔を出した新子に「亭主の仕事場に顔を出すとは何事だ!!」と傘次郎が怒れば、「女房が心配してきてやってるのに、なんだい、その言い草は!!」そのとばっちりは、傘次郎の後輩同心(江藤潤)がくらうはめに。
 原田美枝子は行水で入れ墨入りのきれいな背中を見せるなど、色っぽさも抜群。さらには事件解決に一役かって、ついには新子にも十手が授けられるという粋な展開。「子連れ狼」などでも知られる原作の小池一夫の持論は、「一番大事なのは主人公のキャラクター」。その持論どおりのユニークなキャラクターが疾走する捕物シリーズとなった。

掲載2005年06月23日

『御家人斬九郎5』最終回「最後の死闘」 「バットマン」でも評判!渡辺謙監督作品

(ごけにんざんくろう) 2001年

掲載2005年06月23日

「ラストサムライ」に続いて、「バットマンビギンズ」でも、強烈な存在感を示し、いまや堂々のハリウッド俳優となった渡辺謙。米国では、眉間にしわを寄せたシビアな顔のイメージになりつつあるが、その内に秘めたコメディセンスが光った出演作といえば、ご存知「御家人斬九郎」シリーズであった。
 名門の家柄だが、無役で微禄の最下級の御家人・松平残九郎(渡辺)。九男で跡取りなのに、ひまを持て余していつもフラフラ。大食漢の母(岸田今日子)に「ええい、成敗してくれる!」となぎなたを振り回されて、仕方なく片手業(バイト)に精を出す。そのバイトとは、罪人の斬首なのだった。そんなバイトの金を「ほほほ」と笑いつつ、すっかり巻き上げる母上。すさまじい親子である。
 その人気シリーズも28日でいよいよ最終回。残九郎の兄、姉らは大奥や他家に養子に行ったりしているが、そのうちのひとりが理不尽な事件に巻き込まれた。斬九郎は、負けを承知で単身、敵集団に斬りこんでいく。さすがの母も「死ぬには順番がある。私が先じゃ」と深刻な表情。雪の中、斬九郎を案じて、美人芸者、蔦吉(若村麻由美)が走る…。
 渡辺謙自らが監督した最終回。映像懲りすぎ!音楽泣かせすぎ!監督のこのシリーズへの思いがすべて込められた濃厚なひとときをお楽しみに。

掲載2005年05月06日

「かあちゃん」市原悦子のケチケチかあちゃん。山本周五郎原作の人情時代劇。

(かあちゃん) 1987年

掲載2005年05月06日

江戸の裏長屋に暮らす、お勝(市原悦子)と、五人のこどもたち。この一家は、粗末な衣服を身につけ、全員がなにかかしらで稼いでいた。親密な近所づきあいが当たり前の長屋生活だが、お勝一家だけは、つきあいが悪い。おかげで、「けちんぼ家族」と陰口をたたかれている。 ある日、お勝が小金をためていると聞いて、盗みに入った勇吉(堤大二郎)。しかし、しっかり者のお勝から、必死に金をためている理由を聞かされ、心が変わるのだった。
 サスペンスドラマの家政婦など、クセのある役の多い市原悦子。意外に肝っ玉かあちゃんの役は珍しい。が、そこはただののんびりかあちゃんではない。こどもたちを叱咤激励。こそ泥青年を吹き飛ばす勢いだ。人からなんと言われようと、自分の義理を貫くかあちゃんとそのこどもたちのタフな生き方が心地いい。また、彼らをとりまくのが、殿山泰司、コント山口君と竹田君、芦屋小雁、あき竹城など、長屋時代劇にはぴったりの面々であるというのも楽しい。山本周五郎の原作にはファンが多く、後にこの作品を市川崑監督が岸恵子主演で映画化。同じ「かあちゃん」でも、パワフルな悦子かあちゃんと、ちらりと視線で威圧する恵子かあちゃん、味が違うのが面白い。

掲載2005年04月21日

「木枯し紋次郎」テレビ時代劇の歴史に欠かせない主人公 実は、撮影開始直後に一大危機が!

(こがらしもんじろう) 1972年

掲載2005年04月21日

上州新田郡三日月村の貧しい農家に生まれた紋次郎は、口減らしのために生まれた直後、捨てられそうになった暗い過去を持っている。姉の機転で命を救われたものの、その後、一家は離散。天涯孤独の渡世人としてあてのない急ぎ旅を続けている。憂いをおびた顔には古い傷、そして口には長い楊枝。その楊枝が風に鳴り、木枯らしのように聞こえる…。
 伝統的な股旅時代劇の明るいイメージとは正反対のニヒルな主人公の孤独な戦いのさまは、多くのファンを魅了。一大ブームになった人気作品。番組を見たことがない方でも、名前だけは知っているというくらい有名だ。
 しかし、撮影開始当初は、製作を担当していた大映が突然の倒産。セットに入ることもできないという騒然とした環境だった。しかも、当時、「土曜日午後10時半」の放送時間は、「深夜枠」。誰もこれほどヒットするとは思わず、あの印象的な主題歌も、歌い手が見つからなかったという。
 市川監督はじめ、スタッフが力を結集した作品は、斬新でスタイリッシュ。ところが、放送開始が正月だったため、「ちょっと話が暗い」とも言われた。そこで急遽、第一話と第二話を差し替え。その理由は、「第二話のゲストが小川真由美で、『女ねずみ小僧』の女優なら話も明るいのでは」と判断されたとか。かなりアバウトな判断な気もしますね…。

掲載2005年04月07日

「怪談津の国屋 半七捕物帳」時代劇界屈指の名探偵が怪事件に挑む!主役に渋い味の露口茂登場。

(かいだんつのくにや はんしちとりものちょう) 1981年

掲載2005年04月07日

神田三河町の半七といえば、人気作家・岡本綺堂によって大正6年(1917年)に発表された江戸の名探偵。
 原作の設定では、幕末に活躍し、明治の世の中になってから、昔語りとして事件の話をするという展開になっている。少年時代に父を失った半七は、神田の岡引・吉五郎に弟子入りし、みっちり修行を積んだ後、独立。その推理力は、高く評価されていたらしい。
 テレビでは、平幹二朗、尾上菊五郎、里見浩太朗、真田広之ら、さまざまな半七が登場したが、今回の主役は、「太陽にほえろ!」のヤマさんでもおなじみの露口茂。
 今回のストーリーは、半七の妹・お房(岡江久美子)が、死んだはずの娘の幽霊を目撃するところから話が始まる。
江戸でも知られた油問屋・津の国屋の娘・お安は七年前に水死したはず。なぜ、今になって幽霊になって姿を現したのか…。そこに津の国屋に怨恨を持つ人物が浮かび上がってくる。娘の水死と、大きな黒い影。話は複雑に絡み合ってくる。
 沈思黙考、推理している顔色からも渋さが漂う半七親分と、彼を取り巻くなぞの女たち。今回は、松尾嘉代、水野久美、黒田福美ら、色香漂う女優陣が半七に接近する。次々起こる奇怪な事件を半七はどう裁くか。じっくり見たい長編。

掲載2004年09月17日

「五稜郭」里見浩太朗の幕末時代劇長編シリーズ完結編。土方歳三を熱演する渡哲也にも注目!

(ごりょうかく) 1988年

掲載2004年09月17日

慶応3年。幕府の最新軍艦・開陽丸で留学先から帰国したのは、榎本武揚だった。才能を高く評価されていた榎本は、海軍副総裁に任命されるが、大政奉還で、幕府そのものが消滅。一転して「官軍」と戦うことになってしまう。幕府艦隊を率いて、五稜郭に入城した榎本らは、新選組の土方歳三らと出会い、勇敢に戦う。しかし、戦局がどんどん悪化して、ついには蝦夷討伐隊と全面的に戦うことに…。世が世なら幕府の超エリートとして一生を送ることもできた人物が、同じ日本の政府に敵と見なされる。まさに幕末の激動を感じさせる榎本武揚。勝海舟や新選組とはひと味違う幕末模様が見られる。
 脚本は今年急逝した杉山義法。主演は里見浩太朗。若い隊士の悲劇を描いた「白虎隊」、西郷隆盛の恰幅を出すために工夫を凝らし、ふだんの倍近い貫禄になって話題になった「田原坂」に続く幕末三部作の完結編だ。そのまじめな人柄そのものに、まっすぐに生きる武揚を好演する。妻に浅野ゆう子。妻の祖父で医学者の佐藤泰然に、このシリーズに欠かせない森繁久彌。箱館で壮絶な最期をとげる土方歳三を渡哲也が熱演しているのも注目。後年、渡はテレビ朝日系で近藤勇役。近藤、土方両役を演じた俳優は意外に少ない。隠れた幕末俳優といえる?さだまさしの歌う主題歌「夢の吹く頃」にも泣ける長編。

掲載2004年08月16日

「怪談」小泉八雲没後100年−アカデミー賞ノミネートの凝った映像で、怖いひとときを。

(かいだん) 1965年

掲載2004年08月16日

小泉八雲といえば、日本に魅せられ、イギリスから帰化。独自の幽玄世界を描いた明治の文豪だ。今年は八雲没後100年で、その不思議な魅力にまたまた注目が集まっている。その八雲ワールドをもっとも効果的に描いたといわれるのが、本作。名手・小林正樹監督は、オムニバス形式で映像化。アカデミー賞外国語映画賞にノミネート&カンヌ映画祭では審査員特別賞を受賞した。
 物語の第一話「黒髪」は、わがまま男(三国連太郎)が捨てた妻のもとに帰ってみると、意外にも妻(新珠三千代)は若々しく元気な様子。でも、それは…。第二話は有名な雪女。雪女(岸恵子)と出会ってしまった男(仲代達矢)は、口外しない約束で命を救われる。とにかく、怖がらせる側の女、うらめしそうな新珠&岸が美しい!真っ白い顔の雪女は、普通きれいというより不気味なのだが、岸雪女は、怖いのにきれいなのである。もうひとつのポイントは怖がる男。三国、仲代ともに表情が濃いめで、怖がってる顔も怖いという二重の恐怖シーンになっている。
 他には、平家の亡霊に取りつかれた琵琶法師・芳一(中村賀葎雄)の「耳無し芳一の話」、茶碗の中の不気味な顔を飲み干して恐ろしい目にあう武士(中村翫右衛門)の「茶碗の中」が登場。名優たちが体当たりで怖がらせる。猛暑の今年にぴったりの作品。

掲載2004年07月30日

「瓦版」8月のスペシャルは、ミスター「暴れん坊将軍」松平健サマ。話題はもちろんサンバ!?

(かわらばん) 2004年

掲載2004年07月30日

週がわりで様々な時代劇情報をお届けしている「瓦版」。8月は、この夏、もっともハジけているこのお方、松平健サマの登場!
 7月に発売された「マツケンサンバ�U」が、堂々ヒットチャートの上位に食い込み、話題沸騰中の健サマ。もともとこの曲は、大劇場の松平健公演のフィナーレで歌われていたオリジナル曲だった。
 チョンマゲとサンバの遭遇というだけでも画期的だが、さらにそこに登場する健サマが、全身光輝く着物姿で、小粋なステップを踏むのである。今回発売されたCDには、その模様が収録されたDVDも付いていて、長年のファンから、サンバ初心者にも大いに喜ばれている。
 マツケンサンバに出会って十年以上のペリーは、先日、渋谷にて開催された健サマのイベントにトークゲストとして呼んでいただいた。CDジャケットにもなった「全身金色のスパンコール」の着物にほつれ髪にもラメをあしらった健サマは、サンバにまつわる秘話をいろいろと公開。中でも、「まだ未公開のキラキラ着物がある」「サンバ�Vは、ハワイアンかも!?」なんて話は聞き捨てならない。心からお客さんに楽しんでもらいたいというまじめな座長の心が、サンバを生み出したのだ…。「瓦版」のインタビューにも、その人柄はしっかり出ている。ぜひ、チェックを!

掲載2004年04月09日

「剣客商売祭り」'03年オンエアの第4シリーズが早くも登場!山口の大治郎、寺島の三冬も加わる充実編。

(けんきゃくしょうばいまつり) 

掲載2004年04月09日

藤田まことの名シリーズとして定着した「剣客商売」。老剣客・秋山小兵衛(藤田)を中心に、40歳下のおはるとの静かな暮らし、事件探索、息子との親子の情愛など、たっぷり見せる。今回放送の第4シリーズでは、息子秋山大治郎役に山口馬木也、老中田沼意次(平幹二朗)の妾腹の娘で女剣客・佐々木三冬に寺島しのぶの立ち回りが見られるというのも、この番組ならでは。第4シリーズの第一話は、「陽炎の男」。ゆらゆらと幻想的な陽炎の中からシルエットが浮かぶその男こそ、秋山大治郎その人!私は山口馬木也ご本人にこの初登場のシーンの話を聞いたが、監督も新大治郎歓迎のため、この場面のためだけにロケを敢行。凝り凝った撮影の結果、「背景は陽炎だけで外なのか、どこかさえわからないことに…」とロケした意味さえ吹き飛ばす印象的なシーンとなった。ちなみに山口大治郎は、初撮影では緊張して、セリフが出てこなかったとか。今ではすっかり打ち解け、藤田小兵衛には本当の息子のように信頼されている。シリーズでは、他にも老練な宍戸錠がいい味を出す「約束金二十両」、古谷一行のしみじみ感いっぱいの「逃げる人」、隆大介の迫力が光る「剣の師弟」などみどころ多い作品が続く。

ペリー荻野プロフィール
ペリー荻野

1962年愛知県生まれ。大学在学中よりラジオのパーソナリティ兼原稿書きを始める。 「週刊ポスト」「月刊サーカス」「中日新聞」「時事通信」などでテレビコラム、「ナンクロ」「時代劇マガジン」では時代劇コラムを連載中。さらに史上初の時代劇主題歌CD「ちょんまげ天国」シリーズ全三作(ソニーミュージックダイレクト)をプロデュース。時代劇ブームの仕掛け人となる。

映像のほか、舞台の時代劇も毎月チェック。時代劇を愛する女子で結成した「チョンマゲ愛好女子部」の活動を展開しつつ、劇評・書評もてがける。中身は"ペリーテイスト"を効かせた、笑える内容。ほかに、著書「チョンマゲ天国」(ベネッセ)、「コモチのキモチ」(ベネッセ)、「みんなのテレビ時代劇」(共著・アスペクト)。「ペリーが来りてほら貝を吹く」(朝日ソノラマ)。ちょんまげ八百八町」(玄光社MOOK)「ナゴヤ帝国の逆襲」(洋泉社)「チョンマゲ江戸むらさ記」(辰己出版)当チャンネルのインタビュアーとしても活躍中。