ペリーのちょんまげ ペリーのちょんまげ

掲載2006年05月25日

『剣客商売スペシャル 決闘・高田の馬場』人の命を軽んずる武士に小兵衛が渇っ!!今年、舞台化もされた人気作品。

(けんかくしょうばいすぺしゃる けっとう たかたのばば) 2005年

掲載2006年05月25日

若い妻おはる(小林綾子)と悠々自適の隠居生活を送る剣客・秋山小兵衛(藤田まこと)は、ある日、浪人・羽賀儀平(宍戸開)が見事な剣さばきで不逞の輩を打ち倒す場に行き合わせる。たまたまそこにいた旗本・久世帯刀(立川三貴)の用人は、これぞ殿様の眼鏡にかなう剣客だと、さっそく儀平をスカウト。久世は、同じ剣術好きの旗本寄合組の高木筑後守(菅野菜保之)に羽賀の腕を自慢する。が、高木も負けじと自分の臣下・吉村弥惣治(内藤剛志)の強さを強調。意地になった久世・高木は、ついに羽賀と吉村の真剣勝負を決める。吉村の師である小兵衛は、なんとか無駄な命のやりとりを止めようと図るが…。
 決闘の発端を作った久世家・高木家の用人はどちらも殿のご機嫌とりばかりしている小心者。そこにつけこんだ小兵衛の作戦とは?殿をたきつけたり、ごまかしたり、石倉三郎、石丸謙二郎の用人コンビの珍妙なやりとりは見もの。また、主人の無体な命令にも背けない、羽賀の光と影のある人物像、愛する家族との別れを覚悟する吉村の苦悩など、人と人とのつながりを鋭く描写するのは、池波正太郎作品ならでは。
 なお、この作品は、今年舞台化され、藤田まこと、小林綾子、大治郎役の山口馬木也も出演。おはるは舞台でも小兵衛を乗せて巧みに船を操り、拍手を浴びていた。

掲載2006年05月08日

「影狩り」影一味(公儀隠密)VS影狩りの決戦!さいとう・たかをの劇画原作を仲代達矢熱演。

(かげがり) 1983年

掲載2006年05月08日

財政難の幕府は、弱小藩の手落ちを追求して取り潰しを画策。その作戦を担うのが、“影”すなわち公儀隠密の一団だった。
 諏訪高島藩の幼君・忠丸が江戸へ向かう途中、影一味に襲撃される。世継ぎが定まらないまま忠丸が亡くなれば、藩の取り潰しは必定。家臣たちは瀕死の幼君を守り、無事江戸入りを目指すが、敵の追及はやまない。そこに登場したのが、影を迎え撃つ三人の浪人、室戸十兵衛(仲代達矢)、日下弦之助(隆大介)、乾武之進(伊藤敏八)。彼らは“影狩り”と呼ばれていた。
 かつて上司の陰謀で、将軍家ゆかりの壷を割ってしまった幼君を死に追いやった過去を持つ十兵衛(仲代達矢)。三つの鎧櫃のどれかに忠丸を入れて敵の目を欺くことにするが、関所ではそのふたを開けるよう命じられ…。緊迫の関所越え。いったいいつ隠れていたのか?土の中から、水の中から次々襲い掛かる影。さいとう・たかをの原作らしいハードボイルドタッチの展開に、十兵衛の過去との決着という筋もからんでくる。
 女とのいきさつを引きずる十兵衛、酒好きの弦之助(隆大介得意の無表情演技!)、女好きの武之進と三人のキャラクターはバラバラだが、ひとつの目的を持つと、ものすごく強い影狩りのメンバー。幕府側の黒幕、老中の小沢栄太郎の存在感もさすが。

掲載2006年04月29日

「剣客商売スペシャル 助太刀」かつての剣友と悲しい再会!山田純大が意外な一面を見せる。

(けんかくしょうばいすぺしゃる すけだち) 2004年

掲載2006年04月29日

大病を患って道場を閉めた秋山小兵衛(藤田まこと)の剣友・酒井善蔵(蟹江敬三)。しかし、看病で嫁入りもままならなかった娘(中原果南)のところに颯爽とした婿養子(山田純大)を迎えて、やっと幸せな日々を送っていた。
 一方、小兵衛の息子・大治郎(山口馬木也)は、洒落た絵を描いた扇子を売る浪人・林牛之助(益岡徹)と知り合う。身寄りをなくした少年の敵討ちを助ける牛之助の人柄に惹かれる大治郎だったが、仇は意外なところに…。
 老いた友の幸せを願いながらも、偽りの幸せのはかなさを壊すしかない小兵衛。生き延びるために、人をだまして暮らす男。ひとりでたくましく生き抜こうとする女。今回の話には、池波正太郎の「生きる」ことについての考え方が現れている。
 かつて「水戸黄門」で泣き虫格さんを演じた山田純大が意外な一面を見せるのも見所。また、過去を持つ浪人・益岡徹も、もうひとりの「ふたつの顔を持つ男」として熱演。死に際する演技は泣かせる。女優陣では、昼ドラマ「はるちゃん」でおきゃんな娘役として人気になった中原果南、しっとりした人妻役が多い奥貫薫、ふたりが対照的な女の運命を演じるのも注目したい。
 川のほとりでしみじみと語り合う小兵衛と善蔵。そしてラストに対峙するふたり。老いの悲しみを蟹江敬三の存在感はさすが。

掲載2006年02月09日

「春日局」 戦なんか大嫌い!! 橋田ファミリー大集合。初々しい江口洋介、香川照之も登場。

(かすがのつぼね) 1989年

掲載2006年02月09日

「春日局」といえば、三代将軍家光の乳母にして、「大奥」を作った女傑とも言われるが、この大河ドラマでは、誠実で可愛らしい面を持つ女性として描かれる。
 物語は明智光秀の急襲で本能寺で非業の最期をとげた信長の後を受け継ぎ、ついに天下人となった豊臣秀吉。しかし、その天下はやがて「鳴くまで待とう」の徳川家康のものになろうとしていた。
 父が光秀の家臣だったため、謀反人の子として身を寄せた家ではことごとく邪魔者扱いでいじめられたおふく(後の春日局・大原麗子)は、家光の乳母となり、彼をわが子のように慈しみ育てる。やがて三代将軍の座をめぐって、いろいろな動きが起こるが…。
 注目のキャストは、秀吉に藤岡琢也、家光の母・お江与に長山藍子、家光の正室鷹司孝子に中田嘉子、千姫に野村真美、お勝の方に東てる美など「渡る世間は鬼ばかり」でもおなじみの橋田ファミリーが大集合! 家光に江口洋介、ハイテンションの困った殿・小早川秀秋に香川照之など、初々しい顔ぶれも揃う。さらに織田信長にサムライ藤岡弘、明智光秀に五木ひろし、徳川家康に丹波哲郎。丸顔イメージの家康に丹波哲郎はちょっと違う?と思ったが、よく考えれば、家康は「徳川家のボス」。ボスにはぴったりの配役なのであった。

掲載2006年02月02日

「元禄繚乱」いよいよ討ち入り間近!四十七士とその周囲に緊迫高まる。

(げんろくりょうらん) 1999年

掲載2006年02月02日

無事、江戸入りを果たした大石内蔵助(中村勘九郎、現・勘三郎)以下、赤穂浪士四十七人の苦労の日々もいよいよ大詰め。目指す吉良邸の情報収集、警戒する吉良側の動き、別れの予感にじっと耐える周囲の人々。すべてに緊迫が高まる。
 数え切れないほど映像化された「忠臣蔵」だが、今回の特徴は、この討ち入りには裏があり、将軍側用人・柳沢吉保(村上弘明)の陰謀があるという設定。また、吉保のそばにいる女性・染子(鈴木保奈美)には恋人(吉田栄作・架空の人物)がいて、彼もまた、討ち入りに深く関わっていくのである。
 私は放送当時、鈴木保奈美のインタビューを担当した。当時、この番組を最後に女優業引退と言われていた彼女。「最後の作品という気負いはない」ときっぱりしていたのが印象的だった。その気持ちは画面にもよく表れていて、身ごもった子どもの父親を誰と言うか、どう立ち回れば恋人と自分の立場を生かすことができるか、鋭い女の計算を働かせ、したたかな女を演じきった感がある。
 ちなみにこの番組が初の時代劇出演となった吉田栄作は、「アメリカで修行して、日本の良さを改めて知った」と時代劇出演を自ら望んだという。ふたりの存在が討ち入りにどう響くかも見もの。

掲載2005年12月08日

「元禄繚乱」中村勘三郎の人間味あふれる大石内蔵助。石坂浩二の吉良上野介にも注目。

(げんろくりょうらん) 1999年

掲載2005年12月08日

五代将軍徳川綱吉(萩原健一)の治世。赤穂藩主・浅野内匠頭(東山紀之)は、指導役の高家筆頭・吉良上野介(石坂浩二)の意地悪に悩まされていた。信頼できる家臣たちのとりなしでなんとか気持ちを支えていた内匠頭だったが、とうとう松の廊下で刃傷事件を起こし、身は即日切腹、浅野家は取り潰しに。しかし、この裁きに憤りを感じた浅野家の志士たちは、ひそかに結束を誓う。
 ご存知「忠臣蔵」に、嫁のりく(大竹しのぶ)が、「男はこれが肝心でございます」と夫のふんどしを締めるシーンがあるなど、大石家のホームドラマ的要素も取り入れ、普通の生活の楽しさ、それを失う悲しみなどが際立つ展開になっている。また、柳沢吉保(村上弘明)の道具のようにされる女・染子(鈴木保奈美)と、架空の人物である恋人(吉田栄作)の恋物語などもからめ、話が奥行きができている。私は、撮影当時、東山、吉田、鈴木と若手にインタビューしたが、東山内匠頭は、妻役の宮沢りえと息もぴったり。また、これが本格的時代劇デビューとなった吉田栄作は、役柄上、武士、町人両方のカツラをかぶることになったが、「自分でも意外なほどにあったのでうれしい」とやる気満々であった。一線から退く直前の鈴木保奈美も気負いなく、時代に翻弄される女性をしたたかに演じていると抱負を語っていた。

掲載2005年12月01日

「子連れ狼 冥府魔道」若君は実は姫!秘密を守るため、雇われた一刀親子に裏柳生が迫る!

(こづれおおかみ めいふまどう) 1973年

掲載2005年12月01日

若山富三郎の代表作となったシリーズ。デビュー当時はなかなか作品に恵まれず、敵役(市川雷蔵の『眠狂四郎』シリーズ第一作には、なぞのカンフーの達人として登場)などで活躍したが、近年、その立ち回りの迫力は再評価されている。
 また、大五郎の箱車に機関銃のごとき連発銃を仕込み、ときにはスキーのごとく雪山を滑走するシーンは、人気番組「トリビアの泉」にも取り上げられ、その発想のすごさもまた、再評価されている。が、はっきり言って、この作品の発想のすごさは箱車の改造だけではない。
 シリーズ第五弾にあたる本作でも、藩の存亡の鍵となる秘密を守るために、拝一刀が雇われるが、その秘密というのが、なんと「若君が実は姫」というとんでもない事実なのであった。筑前黒田藩からの依頼は、その秘密を知った菩提寺の住持・慈恵和尚の抹殺と密書の奪還。実は和尚は、一刀の生涯の敵・裏柳生の一門で、公儀隠密黒鍬衆の総領なのだった。お家騒動と、一刀の復讐劇。黒鍬衆との死闘に挑む一刀だが、それだけですまないのが刺客稼業だった…。
 シリーズ第六弾となる「子連れ狼 地獄へ行くぞ!大五郎」では、トリビアでも話題のスキーシーンが登場。ほとんどスノーモービルのような箱車にも注目を。

掲載2005年11月10日

「快傑黒頭巾」若山富三郎がひとり三役!金田龍之介の西郷どんもぴったり。

(かいけつくろずきん) 1981年

掲載2005年11月10日

昼間は「天命堂」という手相見で、虫眼鏡で自分の手相を見ながら、「あー、われながらいい相をしている」などとのんきな商売をしている若山富三郎。またひとつの顔は、「榊原のだんな」として、人々(特に女子)に頼りにされる存在なのだった。
 時は幕末。動乱の中、江戸には混乱に乗じて金品を強奪する悪人も増加している。その凶悪な連中をひそかに退治している正義の人こそ、快傑黒頭巾。奪還した庶民の金を前にして、「役人よ、取るな、(持ち主に)返せよ」などと役人批判も見せる痛快な活躍を見せる。それにしても、役人が追っかけるべきなのは、黒頭巾じゃなくて、強盗団の方では? 江戸の治安がますます心配だ。
 もちろん、黒頭巾の素顔は、やっぱり若山富三郎! 戦前から愛される時代劇らしい時代劇のヒーロー快傑黒頭巾を、のびのびと演じる若山先生には、とぼけたユーモアもにじみでて楽しい。
 今回は、江戸城にある七つの隠し口を巡って、善悪入り乱れての捜索が続く。べらんめえの知識人・勝海舟の西村晃、どっしり感のある西郷隆盛の金田龍之介、テンションの高い親王の石橋蓮司など、幕末らしいキャストも揃う。船宿の女将(二宮さよ子)にほれられて、榊原のだんなは、ついに居候に? 正義の味方の意外な私生活も興味深い。

掲載2005年10月20日

「御金蔵破り 佐渡の金山を狙え」若山先生お得意のアクション連発!救援を望めない佐渡で、どう戦う?

(ごきんぞうやぶり さどのきんざんをねらえ) 1983年

掲載2005年10月20日

若山富三郎のヒットシリーズ「御金蔵破り」の中でも、外部から孤立した島を舞台に決死の作戦に出たのが、本作。
 元隠密頭の吉兵衛(若山)は、静かな暮らしを望んでも、実現はなかなかできない。佐渡をめぐる不穏な動きに、外国をも巻き込んだ陰謀が隠されているのではと、懇願され、選び抜いた三人の手下(清水綋治、加納竜、岡田奈々)らとさっそく潜入をはかる。しかし、相手は強敵。情報を探ろうとした奈々は逆に毒がにかかりそうに。
 なにしろ敵は大勢。こうなったら、若山先生得意の火薬&銃器作戦の開始だ。敵の火薬庫から火薬を調達し、竹筒でダイナマイト?をつくり、がんがん吹き飛ばす。連発銃で攻撃すれば、敵は大砲で応戦…いつのまにか、佐渡は荒野のようになっているし、この展開は、ほとんど戦争映画なみだが、ときおり吉兵衛が見せる剣さばきのスピードはさすが。また、貫禄がある体形ながら、実は非常に身が軽いという若山独特のアクションにも注目を。ちなみに若山富三郎は、市川雷蔵の「眠狂四郎」シリーズ第一作ではカンフー(?)を披露。アクションは得意なのだ。
 それにしても、腹を切ったはずの仕事の依頼人は生きていたのか? その後、金山は平和だったのか? どうやって島から帰ってきたのか? 突込みどころもいろいろの長編。

掲載2005年09月08日

「幻之介世直し帖」宙を飛び交う“はやぶさ”小林旭!刀とは一味違う立ち回りで悪を斬る。

(げんのすけよなおしちょう) 1981年

掲載2005年09月08日

幕政を真剣に考える目付けの父(島田正吾)の息子・幻之介(小林旭)は、堅物の父とは違い、「ちょいと散策に」と毎日町に出ては盛り場でも「若殿!」とちやほやされる遊び人。しかし、裏では悪人たちの行状を調べ上げ、成敗する正義の志士「はやぶさ」としての活動を続けているのである。
 もとの奉公人でいまは料理屋を開いている伊平次(長門裕之)、お秀(松尾嘉代)と協力して事件を探索。いよいよ証拠がかたまると、幻之介は、鳥の覆面を被り、両手には鋭い爪のような独自の武器を装着。愛馬にまたがり、颯爽と悪人の屋敷に乗り込むのであった!江戸の町中の屋敷へ行くのになぜか森林を疾走するはやぶさ。なんだか遠回りでは?などと思ってはいけない。この登場シーンは、どこか「バットマン」にも通じる気がする。
 さらに特筆すべきは、旭はやぶさの戦いぶり。右に左に華麗に宙を舞いとび、敵を翻弄。テレビ時代劇の出演作が多くはないスターだが、「空を飛ぶ小林旭」というだけで、十分に話題になる作品といっていい。
 脇には、はやぶさをしつこく追う同心・神崎唐十郎に長門勇、その娘に初々しい芦川よしみ、最近では掃除の達人としても注目される松居一代も町娘で出演している。主題歌「思いやり」も聞かせる。

ペリー荻野プロフィール
ペリー荻野

1962年愛知県生まれ。大学在学中よりラジオのパーソナリティ兼原稿書きを始める。 「週刊ポスト」「月刊サーカス」「中日新聞」「時事通信」などでテレビコラム、「ナンクロ」「時代劇マガジン」では時代劇コラムを連載中。さらに史上初の時代劇主題歌CD「ちょんまげ天国」シリーズ全三作(ソニーミュージックダイレクト)をプロデュース。時代劇ブームの仕掛け人となる。

映像のほか、舞台の時代劇も毎月チェック。時代劇を愛する女子で結成した「チョンマゲ愛好女子部」の活動を展開しつつ、劇評・書評もてがける。中身は"ペリーテイスト"を効かせた、笑える内容。ほかに、著書「チョンマゲ天国」(ベネッセ)、「コモチのキモチ」(ベネッセ)、「みんなのテレビ時代劇」(共著・アスペクト)。「ペリーが来りてほら貝を吹く」(朝日ソノラマ)。ちょんまげ八百八町」(玄光社MOOK)「ナゴヤ帝国の逆襲」(洋泉社)「チョンマゲ江戸むらさ記」(辰己出版)当チャンネルのインタビュアーとしても活躍中。