ペリーのちょんまげ ペリーのちょんまげ

掲載2013年01月18日

「流れ星佐吉」
郷ひろみが人気女形にして元盗賊ヒーローに
華麗な変化とキレのいい動きがさすが!

(ながれぼしさきち) 出演者:郷ひろみ/樋口可南子/沖田浩之/吉田日出子/夏木勲(夏八木勲)/平田満 ほか 1984

掲載2013年01月18日

 かつて「流れ星佐吉」の名前で知られた若き盗賊は、今は江戸の花村座の人気女形・花村夢之丞(郷ひろみ)として、女たちの熱い視線を集める存在。しかし、一度、悪を見つけたら、座員のおしの(樋口可南子)、千之助(沖田浩之)らととともに、男姿で颯爽と戦いを挑む。女形の色っぽさにも驚くが、男に戻って「流れ星佐吉とは俺のことだ!」キレのいい啖呵と動きは、「アチチ」などでも人気を博したアクションにもつながる。ストイックに鍛錬を続ける郷ひろみそのもの。

 「男の子女の子」「花とみつばち」など、ヒット曲を連発したトップアイドル郷ひろみの時代劇主演作。郷ひろみとの時代劇の縁は深く、ジャニーズ事務所にスカウト直後に大河ドラマ「平清盛」の弟・経盛役で出演。以前、ご本人に取材した際、「事情がよくわからないままオーディションのようなことになり、出演が決まった。素晴らしい技術のスタッフの方たちに一から時代劇を教えてもらえたことはラッキーだった」と語っていた。レコードデビューは、時代劇デビューより後のこと。

 ゲストも豪華で、松坂慶子、名取裕子、せんだみつお、コント赤信号なども登場。主題歌「暗闇のディーン」は、阿久悠作詞、フリオ・イグレシアスとラファエル・フェロ作曲で♪傷つきたい、嫌われたい~と男子の心情を歌いあげるバラード。

掲載2012年03月09日

「なんて素敵にジャパネスク」
氷室冴子の人気作。平安時代ラブ&ピース!
初々しい富田靖子の瑠璃姫、演出は石坂浩二

(なんてすてきにじゃぱねすく) 出演者:富田靖子/木村一八/仲村トオル/西川弘志/京本政樹/中田喜子/石坂浩二 ほか 1986年

掲載2012年03月09日

 平安時代。摂関家の流れをくむ名門・大納言忠宗(石坂浩二)の娘・瑠璃姫(富田靖子)は、姫としての素養である箏や裁縫などは苦手だが、和歌は得意。感性が豊かで鋭く、人の嘘を見抜く才能もあった。その姫は、当時の結婚適齢期である16歳を過ぎても結婚する気持ちがまったくなく、両親を心配させていた。その背景には、初恋の君が忘れられない乙女心と、実母の没後すぐに継母(中井貴恵)と再婚した父への素直になれない気持ちがあった。父の工作により、権少将(佐藤B作)と見合いさせられそうになった瑠璃姫は、幼馴染で右大臣の四男坊高彬(木村一八)に助けを求める。幼いころから、瑠璃姫を思う超まじめ人間・高彬は、必死に瑠璃姫を助けようとする。それから、二人の結婚話が持ち上がるが…。

 原作は、集英社コバルト文庫の大人気作家氷室冴子。今もDVD化を望むファンが多いこのドラマの魅力は、石坂浩二による明るくテンポのいい演出と、絶妙のキャスト。夢見る乙女の顔と少女の鋭い感覚を見せる富田靖子、不器用ながら男の優しさを見せる木村、瑠璃を心配するお姉さん的存在の小萩(中田嘉子)、即位問題に揺れる鷹男の帝に仲村トオル、そして、瑠璃姫の初恋の相手・吉野の君にはムード満点の京本政樹! 平安時代のドラマといえば、源平か光源氏という印象も強いが、ラブコメディとして楽しめるユニークな作品。 

掲載2010年10月01日

『眠狂四郎』
田村正和15分で一言の驚異の無口ぶり。
柴田錬三郎先生も出演のハードボイルド

(ねむりきょうしろう) 1972年

掲載2010年10月01日

オランダ人医師と偽って日本に入り込んだ宣教師が、日本当局の拷問に屈してキリシタンを捨てた。しかし、彼は全裸の処女を犯し、その血をすするという恐ろしい黒ミサの儀式によって、自らの罪を逃れようとした…。その犠牲になった女性こそ、大目付の息女であった眠狂四郎の母。数奇な出生の秘密を抱えた孤独な剣士・狂四郎は、二十歳のころ、長崎に向かう船が難破し、漂着した孤島でめぐり合った老剣客から円月殺法を会得する。
それまで、いなせな若者の役が多かった田村正和が、ぐっとクールでシニカルな男に。エロティックシーンも人気の作品だけに、妖艶美女が次々狂四郎に迫るのも見物。この配役には、原作者・柴田錬三郎が自ら出演するほどの応援ぶりであった。柴田先生の役は、狂四郎の師匠のような“高輪の先生”役。剣から占い、女の肌に刺青までする先生のもとに狂四郎は、年に一度、正月に挨拶にくる。「年に一度、ここをお訪ねしますと、人並みに年が改まった気がいたします」と語る狂四郎は、直後にエロ殿様に襲われた腰元を助ける。追っ手の男たちに狂四郎は「女の尻を追い掛け回すのも年頭の行事か」とキツイひとこと。ちなみに、狂四郎はとても無口で、この回で狂四郎が始めて言葉を発するのは、なんとドラマが始まっててら15分後! 練られたセリフの妙もこのシリーズならでは。

掲載2009年05月29日

『忍法かげろう斬り』
渡哲也のニヒルな忍者が走る、斬る!
太地喜和子、范文雀の美人くノ一にもご注目

(にんぽうかげろうぎり) 1972年

掲載2009年05月29日

将軍家光就任。世にはまだ不穏の空気が漂っており、青年将軍は海千山千の諸大名を治めるのに、苦心をしていた。その将軍を補佐するのが、知恵伊豆といわれた松平伊豆守。彼は強力な忍者を使い、公にできない事件を人知れず解決させ、各地の動きを探らせようとする。しかし、彼の前には「闇公方」という謎の存在が立ちはだかる。
 伊豆守(高橋悦史)に見込まれたのが、鷹(渡哲也)だった。しかし、伊賀・甲賀の一派とは違い、主君を持たない「不知火」の一族。秀吉に滅ぼされた筑紫の者だった。一族のリーダーとして期待されてはいるものの、あまり仕事やる気がない。記念すべき第一話では、なんと伊豆守に「うまい酒」を出されて、ついうっかりと肥前の国加藤家と庇護の国大村家の婚礼に隠された陰謀を探るはめに。差し出された守り袋を「要らない。必要なのはあんたたちだ」と突き返す鷹。これは彼なりの心配りなのだ。鷹は美人腰元に弱い!?
「大門軍団」など刑事ドラマでは熱血リーダーを演じる渡哲也が「酒に惹かれてつい引き受けちまった」と苦笑しながらも、大村家の幼い姫を守るために必殺のかげろう斬りを使う。男っぽさは刑事ドラマと同様。彼を助けるくノ一・朱鷺(太地喜和子)、百舌鳥(范文雀)の凛とした美しさにも注目。

掲載2009年05月22日

『鼠小僧次郎吉』
林与一が鼠小僧と悩めるニヒル浪人の二役
新藤兼人脚本・三隅研次監督のテンポよい鼠

(ねずみこぞうじろきち) 1965年

掲載2009年05月22日

怪盗鼠小僧(林与一)は、町方の必死の探索わかいくぐり、大名や豪商のもとから金を盗んでは貧しい庶民にばらまく、英雄のような存在だった。その鼠の危ういところを救ったのが、浪人小谷新九郎(林二役)。新九郎は貧乏人の味方をする鼠に共感し、「オレはねずみ教の信者だ」などと言って、助け合う。そこに新九郎とも関わりが深い市谷の貧民窟を買占め歓楽街にしようと企む悪徳親分・凡字の安五郎(神田隆)、その上前をはねる大田黒喜平次(須賀不二男)が出てきて、事件は複雑になっていく。
 当時、長谷川一夫主演の大河ドラマ「赤穂浪士」で大人気となった林与一と大映の時代劇の名手・三隅研次監督が組んだ娯楽作。
まず、みどころは立体的に造られた貧民窟のセット。迷路のように入り組んだ貧民窟に鼠小僧が逃げ込む様はとてもリアルだ。そして、そこに暮らす面々も、夢路いとし・こいしはじめ、どこかとぼけた顔で、役人や悪人たちを煙に巻く。悪女お滝の長谷川待子はキレがいいのに対して、鼠小僧にマゲを切られ「この顔をどうしてくれるんだ!!」と八つ当たりする悪役・須賀不二男はどこか笑える。これも新藤兼人の脚本のセンスだろう。林与一のニヒルで美形な浪人姿は、後に「必殺仕掛人」の西村左内を彷彿とさせ、ファンにはうれしいかも。

掲載2008年09月19日

『逃亡者おりん』
美しき暗殺者おりんが走る!戦う!
話題の超セクシー衣装にも注目。

(のがれものおりん) 2006年

掲載2008年09月19日

江戸中期。将軍の指導力のなさに付け込み、江戸城では陰謀が渦を巻いていた。その暗殺にからんでいる闇の組織こそ、「手鎖人」。首領は、恐ろしい非情さで組織を引っ張る植村道悦(榎木孝明)だった。手鎖人のひとり、おりん(青山倫子)は、道悦に指示されるまま、サイボーグのごとく暗殺をしてのける生活だったが、あるとき、死んだと聞かされた自分の娘が生きていることを知る。道悦に乱暴されて身ごもった子どもであったが、自分が騙されていたことを自覚したおりんは、組織の掟を破って脱走。「逃亡者(のがれもの)」として命を狙われながら、娘の姿を求めて、旅を続ける。
 車のCMで佐藤浩市に魅惑の微笑みを見せていた美人女優・青山倫子が、初の時代劇で過激なアクションに挑戦。スタイルのよさを存分に発揮したレオタードのセクシー衣装も注目の的だ。道なき道を進むおりんの立ち回りは、足場が悪いところばかり。私はご本人にインタビューした際、「生傷が絶えない。でも、楽しい」と微笑まれ、この役に対する意気込みがなみなみならぬものだと感じた。また、キラー・カンはじめ、敵方も個性派が揃い、あおい輝彦、田中健、小林隆らがいつもとは違う「怖い顔」を見せるのも見物。
 合言葉は、おりんの必殺技「手鎖御免!!」
 ニュータイプのヒロインを応援したい。

掲載2008年08月22日

『日本怪談劇場 第8話 「怪談 首斬り浅右エ門」』
栗塚旭が恋に狂い、仕事に苦悩する
テレビ史上、稀にみる怖さのシリーズ

(にほんかいだんげきじょう) 1970年

掲載2008年08月22日

1970年に東京12チャンネルで放送され、怪談映画の名手中川信夫らが参加して、本格的な怖さで評判になったシリーズ。凝った映像、音楽も印象的。
山田浅右衛門(栗塚旭)は、親代々、首斬り役人として黙々と仕事に励んできた。しかし、役所の人間からは軽蔑され、心の中ではこの仕事に深いコンプレックスを抱いている。ある日、夜釣りに出かけた浅右衛門は、心中を図った娘を助ける。それは、かつて恋人だったおよう(長谷川稀世)だった。山田家の稼業を嫌って自分を見捨てて、小栗新之助(高津住男)といっしょになったが、小栗家は改易となり、生活苦からおようと新之助は心中を図ったのだった。おようへの未練から、首斬りに失敗し、亡霊にも悩まされる浅右衛門。山田家を逃げ出したおようと浅右衛門の運命は…。
物静かな中に狂気をはらむ男を、栗塚旭が渋く熱演。運命に逆らい、もがく姿は痛々しくも怖い。また、はかない美しさを見せる長谷川稀世界、彼を取り巻く悪いやつらの動きからも目が離せない。
ストーリーは、「水戸黄門」などで知られる宮川一郎のオリジナル。一旦は、仕事を辞めようと決意した浅右衛門に、過去の因縁がからんでがんじがらめになる展開など、巧みな設定になっている。

掲載2008年08月15日

『人魚亭異聞 無法街の素浪人』
さらば、ミスターの旦那!
世界の三船、小川眞由美のマダムにも注目。

(にんぎょていいぶん むほうがいのすろうにん) 1976年

掲載2008年08月15日

洋行帰りの謎の浪人・通称ミスターの旦那(三船敏郎)が腰を落ち着けたのは、維新直後の横浜。元上流階級のお嬢様・北小路冴子(小川眞由美)が経営するハイカラなホテル兼レストランに用心棒として居ついた浪人は、スーツ姿の拳銃使いで実は新政府の密偵ともうわさされる・千鳥弦之進(若林豪)、なんでも屋の平助(大村崑)、新聞記者志望の譲治木村(夏夕介)らとともに、事件に遭遇する。
 第一話が「駅馬車暁の襲撃」とあるように、物語には、ピストル、葉巻、テンガロンハット、トランプ、ドレスなど、文明開化の時代らしい雰囲気と西部劇のようなムードが漂う。また、話題になったのが「人魚亭」の名前にふさわしい水中レビュー。海外から輸入された強化ガラス製の巨大水槽の中で、美女が華麗なショーを見せる。脚本陣も「木枯し紋次郎」などで活躍した大野靖子はじめ、池田一朗、津田幸於ら実力派が揃っている。
 最終話「さらば、ミスターの旦那」は、かなりミステリアス。霧の中、人力車を襲った黒い影はサソリ柄の「スピードのエース」のカードを残していく。謎の殺し屋「スコーピオン」は町の名士を襲撃。警察署長(前田吟)は必死に捜査するが、愛妻(葉山葉子)と自分の過去が関わっていることを知る。事件解決後、ミスターの旦那がした決断とは?最後まで見逃せない展開に。

掲載2008年02月01日

『眠狂四郎殺法帖』
記念すべき市川雷蔵版狂四郎第一弾。
先ごろ亡くなった田中徳三監督との出会い

(ねむりきょうしろうさっぽうちょう) 1963年

掲載2008年02月01日

今なお人気の高い市川雷蔵。その代表作のひとつ「眠狂四郎」シリーズは第一作の監督・田中徳三の熱意があって実現した企画だった。私は先ごろ、世を去った田中監督ご自身に当時のエピソードを取材したことがある。
 歌舞伎界から映画界へ転身した雷蔵は、生後まもなく養子になるなど私生活では苦労が多く、気さくな人柄の中にどこかシニカルでいたずらっぽいところがあった。田中監督は、助監督時代、雷蔵が初めて京都の撮影所に来たとき、たまたま所内を案内した縁で親しくなった。初監督した小作品「化け猫御用だ」に雷蔵が例のいたずら心からこっそり出演し、大映の幹部ににらまれたこともあったという。その監督が気合を入れた「眠狂四郎」だが、原作者の柴田錬三郎は当初、雷蔵の配役が気に入らず、「円月殺法を見せろ」と迫る。とっさに刀をくるくる回すと、原作者は厳しい顔で「とんぼとりじゃないか」。しかし、雷蔵は「勉強してきます」と次に面会したときには、しっかり技を工夫していた。田中監督との縁があったからこその熱意だったに違いない。
 伊賀忍者に襲われた狂四郎が、加賀前田藩の奥女中(中村玉緒)と関わり、少林寺拳法を操る唐人(若山富三郎)と戦うというストーリー。残念ながら、まだ練りが足りなかったと監督ご本人も笑っていたが、これが記念すべき雷蔵狂四郎第一弾なのは間違いない。

掲載2007年10月04日

『信長 KING OF ZIPANGU』緒形直人演じる国際人信長!GO、マイケル、トオルなど斬新キャストも。

(のぶなが きんぐ おぶ じぱんぐ) 1992年

掲載2007年10月04日

長い大河ドラマの歴史の中で、意外にも「信長」を主人公にしたのは、92年の本作が初めて。起用されたのは、信長(緒形直人)、木下藤吉郎(仲村トオル)、松平元康(家康・郷博美)、濃姫(菊池桃子)、お市(鷲尾いさ子)、ねね(中山美穂)など、主に現代ドラマ、恋愛ドラマで活躍してきた面々だ。
 天正13年(1534)、信長が生まれた年は、ヨーロッパではイエズス会が設立され、宣教師たちが世界に派遣され始めた年でもあった。日本に来たポルトガル宣教師ルイス・フロイスは、天才的な武将と出会い、その物語をつづることになる。母るい(高橋恵子)から疎まれた少年期から、結婚、弟信行(保坂尚希)の謀反という波乱を経験しながら、いよいよ駿河の実力者・今川義元との戦いへ。「桶狭間の戦い」前後編だ。
 白馬にまたがり「敵は疲れて果てておる!」と自軍を鼓舞する信長は、「うつけ」と呼ばれた時代があったとは思えぬほど、鋭い感覚を持つ武将になっていた。圧倒的な兵力を持つ今川勢と戦うために「敵をおびき寄せ、鉄砲で撃つ」作戦を考えた信長は、側近に「長い間世話になった。さらばじゃ」と潔い言葉を残し、自ら先頭に立って、走り出す。一方、多勢を信じておっとりとしていた今川勢は…。信長勝利を祈祷する加納随天(平幹二朗)の怪演にも注目。

ペリー荻野プロフィール
ペリー荻野

1962年愛知県生まれ。大学在学中よりラジオのパーソナリティ兼原稿書きを始める。 「週刊ポスト」「月刊サーカス」「中日新聞」「時事通信」などでテレビコラム、「ナンクロ」「時代劇マガジン」では時代劇コラムを連載中。さらに史上初の時代劇主題歌CD「ちょんまげ天国」シリーズ全三作(ソニーミュージックダイレクト)をプロデュース。時代劇ブームの仕掛け人となる。

映像のほか、舞台の時代劇も毎月チェック。時代劇を愛する女子で結成した「チョンマゲ愛好女子部」の活動を展開しつつ、劇評・書評もてがける。中身は"ペリーテイスト"を効かせた、笑える内容。ほかに、著書「チョンマゲ天国」(ベネッセ)、「コモチのキモチ」(ベネッセ)、「みんなのテレビ時代劇」(共著・アスペクト)。「ペリーが来りてほら貝を吹く」(朝日ソノラマ)。ちょんまげ八百八町」(玄光社MOOK)「ナゴヤ帝国の逆襲」(洋泉社)「チョンマゲ江戸むらさ記」(辰己出版)当チャンネルのインタビュアーとしても活躍中。