ペリーのちょんまげ ペリーのちょんまげ

掲載2001年01月01日

映画「さくら判官」

(さくらはんがん) 1962年

掲載2001年01月01日

 遊び人の金さんが、お白洲では北町奉行に大変身。粋な啖呵と動かぬ証拠を見届けた片肌の桜吹雪で、見事に悪を裁いてみせる。典型的な勧善懲悪で、スカッとする時代劇の代名詞となったこの役の元祖となったのが片岡千恵蔵だ。
 本作はシリーズ最終作で、謎の虚無僧を巡る難事件に挑む。千恵蔵独
特の低音と貫禄の演技がいい。杉良太郎など颯爽とした金さんとは一味違う、円熟した男の魅力をご堪能あれ。
 千恵蔵の金さんは、50年代から60年代にかけての、大人気シリーズ。お白洲より一段高いお裁きの場から、長い袴の足をぶわっと出して、おもむろにべらんめえの名啖呵。片肌脱いで、見事な桜吹雪で一件落着のパターンを定着させたのが千恵蔵だった。終生のライバルといわれたアラカンこと嵐寛寿郎は、映画デビュー作の「鞍馬天狗」で十八番シリーズと出会っているが、千恵蔵はなかなか代表作に出会えなかった。そんなわけで、この人気シリーズも前述のとおり円熟した男の魅力で人気をつかんだ。中村梅之助などテレビの金さんが円熟系なのは千恵蔵の影響なのかも?

掲載2000年12月19日

三匹の侍

(さんびきのさむらい) 1964年

掲載2000年12月19日

 何者にも縛られず、自分たちの正義を貫く三人の浪人。柴左近、桜京十郎、桔梗鋭乃介が悪政に苦しむ農民を助け、代官一派と対決する。豪快な殺陣や、人を斬る場面のリアルな効果音を初めて使用するなど、テレビ時代劇に新風を吹き込んだ傑作の映画版だ。主役の浪人を演じるのは、丹波哲郎、平幹二朗、長門勇。監督は泣く子も黙る五社英雄。モノクロの映像が効果的でいっそう迫力を増している。
 本作の面白さは、豪快な丹波哲郎、繊細な平幹二朗、ユーモラスな長門勇のキャラクターをしっかり描いたこと。また、精錬潔白な正義の味方ではなく、ダーティーな匂いも残したことにある。本作の制作当時、“テレビ屋”と呼ばれ、映像の世界で映画より軽んじられがちだった五社英雄監督は、
“用意スタート!”
という掛け声の代わりに、
“イチ、二、サン、キュー!”
と、テレビ用語を連発して気概を示したり、自ら泥まみれで演技をつけるなど、強烈な個性で現場を圧倒したと伝説が残っている。

掲載2000年12月13日

地獄の辰捕物控

(じごくのたつとりものひかえ) 1972年

掲載2000年12月13日

 堀川町の親分、辰造は着流しに雪駄履き、むしり頭の一風変わった岡っ引き。寄せ場帰りで裏街道を生きた男が、恩人との出会いで正義のために命をかける。手には一寸八尺の長十手。激しい取り調べで“地獄の辰”と呼ばれる男を北大路欣也が熱演。なぞの失踪をとげた恋女房(大原麗子)の行方も気になる。放送中の「木枯し紋次郎」と同じ笹沢左保原作のハードボイルドタッチの捕物帳。
 製作当時(´72年)は「木枯し紋次郎」の大ヒットで、ちょっとした“笹沢左保ブーム”だった。「地獄の辰」は講談社の文芸誌「宝石」に連載中に、早くも映像化の運びとなった。ひとクセもふたクセもある魅力的な主人公を創造する笹沢作品らしいキャラクターになっている。北大路欣也は、アンチ・エリートの役柄に大乗りで、いい味のやくざっぷりを出している。平成に入ってからは、すっかり“おとな”になって「銭形平次」などを演じているが、それらと見比べてみるのも一興かも。共演には田中邦衛、五十嵐じゅんなど。

掲載2000年10月16日

銭形平次

(ぜにがたへいじ) 1966年

掲載2000年10月16日

 大川橋蔵のキリッとした親分姿で大人気。全888話を連日放送中のご存じ銭形平次。16日放送の本作、689話は特別篇「大江戸十手祭り」。
さる藩の若君を執拗に狙う浪人集団。事件の糸口を次々絶たれ、親分ピンチ! 五木ひろし&市毛良枝の身分違いの恋も絡めて、この難事件をどう裁く? 得意の銭投げで侍の編み笠を弾き飛ばすなど、すごい技もお見逃しなく。
 本作をふくめ10月の銭形平次には、ナイスなゲストが目白押しなのだ。この「大江戸十手祭り」で五木、市毛のほかにも御木本伸介、小松政夫が出演。とくに、平次親分ならぬ、“小松の親分さん”(わかるひとにはわかるペリーイチオシの70年代エンターティナー)の細かい芝居には注目!うっかりしてると見逃すぞ!! 18日放送の691話には、今クール久々の主演連続ドラマ「教習所物語」(金曜、夜9時〜TBS系)で再注目の水前寺清子、翌日19日の692話には、「木枯し紋次郎」を演じた中村敦夫、さらに斉藤こずえ、20日の693話には岡まゆみと原田大二郎、23日の694話には鮎川いづみと小林稔侍、24日の695話に市川左団次などなど超豪華。レギュラー出演の熱血同心、森田健作、居酒屋の娘、酒井ゆきえなども要チェック。

掲載2000年08月21日

銭形平次

(ぜにがたへいじ) 1993年

掲載2000年08月21日

 ご存じ、神田明神下の平次親分。北大路欣也が庶民の味方として颯爽と登場。愛妻お静に真野あずさ、八五郎に三波豊和、ライバル三の輪の万七に伊東四朗と共演者との息もぴったり。恋のいろはは見当つかない、将棋はお静の方が上手など、庶民的な面と悪と対峙する厳しさを欣也がうまく使い分ける。エンディングでは投げ銭の特訓風景も公開!?
 野村胡堂の原作では平次は31歳、お静は23歳、八五郎は30歳。今風に言えば、8畳2Kの長屋住まい。いつも身奇麗で男っぷりのいい平次親分、暮し向きもいわゆる中流かと思いきや、なんと時々家賃を滞納していたらしい。親分たらもう…。
ちなみに、決め手の銭投げは、原作者の胡堂が街でゼネコンの“銭高組”の看板を見つけて思いついたという。この北大路バージョンの「銭形平次」には、平次に目をかける与力、並木藤兵衛の中村梅之助はじめ、同心の三浦浩一、万七の手下、清七の山西道広、橋蔵バージョンの八五郎役だった林家珍平も時折顔を見せて、ファンを楽しませてくれる。

掲載2000年08月17日

真田十勇士総進撃

(さなだじゅうゆうしそうしんげき) 1957年

掲載2000年08月17日

関ヶ原の戦いの後、九度山にこもった武将、真田幸村と彼を慕う十勇士たち。豊臣家再興のために、秀吉の遺言書を徳川家から奪還せよとの密命を受け、山を降りる。猿飛佐助、霧隠才蔵など、おなじみの忍者が大暴れ。監督は中川信夫。特撮を駆使した怪談映画の名匠で、今年リバイバル上映され、若い映画ファンからも再評価される監督だけに、本作品でもカミナリ鳴りまくり、火の玉飛びまくりの忍術満載で楽しめる。「荒城の月」「さくら」「通りゃんせ」など、名曲をバックにした合戦、行軍シーンは美しい。
怪談映画特有のポワワーン、ポワワ−ンという効果音や、何かにとりつかれたように刀を振り回す殿様など、忍術というより妖術って感じの映像はさすが中川作品。不思議な忍術のほか、山にこもっているわりには豪華な衣装、絢爛な大阪城の宴風景、火薬庫の大爆発、城の抜け道、女スパイにスケベな密偵など、貸し本的な場面展開も特徴といえる。主演は天城竜太郎。真田幸村役の田崎潤の明快さや、珍しく悪役を演ずる丹波哲郎もお楽しみに。

掲載2000年07月24日

続・木枯し紋次郎

(ぞく・こがらしもんじろう) 1972−1973年

掲載2000年07月24日

“あっしにはかかわりねえこって”と、人に無関心ながら、どこかで人の情を信じたい哀しさを秘めた男、紋次郎。高度成長期の70年代、圧倒的に支持された傑作は、人とのつながりが希薄な世紀末にもズブリと長楊枝を突き刺す。18日の最終回、19日からの特選シリーズもお見逃しなく。特別番組「中村敦夫の紋次郎5分劇場」は当時の裏話続出の貴重版。
そのなかでも触れられているが、「続・木枯し紋次郎」は中村敦夫本人のほか、土屋啓之介、森一生ら手練が監督して話題になった。19日からの特選シリーズでは、市川崑と中村敦夫監督作品を厳選。第一話「川留めの水は濁った」、第二話「地蔵峠の雨に消える」など、おなじみ個性的なタイトルの作品の数々。このタイトルもカッコよかった。もうひとつ、紋次郎の世界に欠かせないものといえば悪女。大原麗子、太地喜和子ら魅力的な悪女が楽しめるのもこの番組ならでは。

掲載2000年07月19日

次郎長三国志

(じろちょうさんごくし) 

掲載2000年07月19日

清水港の暴れん坊・長五郎がやがて日本一の親分になるまでの物語。主演に鶴田浩二、愛妻、お蝶に佐久間良子、森の石松に長門裕之、桶屋の仁吉に山城新伍ら元気な面々。次郎長一家そろって牢に入れられ、さあ一大事! ヤクザが主人公ながら、家族愛や友情に厚く、ことの善悪をきっちり考える生き方は、新鮮でさえある。家族で楽しめる痛快な一本。
次郎長といえば、昔は男の子のあこがれ。カッコイイ男の象徴だった。人柄で慕われる男が絶滅の危機に瀕している現在、見直されていい人かもしれない。数多い次郎長作品のなかでも、鶴田“次郎長”のイメージは「まじめ人間」色が色濃い。その分、名古屋弁まるだしの山城新伍や、おっちょこちょいの長門裕之のナンパぶりが際立って面白い。マキノ雅弘監督・脚本で第四部まで作られたこのシリーズ。オススメは、やはり第四部、愛妻、お蝶病死の場面、とにかく素直に泣ける。次郎長一家と一緒に男泣き(女の子もね)してほしいウルウル・シーンだ。

掲載2000年07月10日

さそり伝奇

(さそりでんき) 1983年

掲載2000年07月10日

 婚礼の晩、花嫁を惨殺するという凶悪犯・さそり。一味を追う捕物小町こと女岡っ引きは父の敵と間違って、初恋の男を捕らえてしまう。その男こそ、秘宝が隠された幻の地「将棋谷」の頭領となる運命を背負った元義賊・雨太郎だった。雨太郎の命を執拗に狙うさそり。ふたりの間の秘密と誘拐された将棋谷の娘の運命は…。雨太郎に松方弘樹、さそりに綿引勝彦、捕物小町に神崎愛。ほかに花沢徳衛、赤塚真人ら芸達者と、可憐な竹井みどりや、お色気シーンたっぷりの風祭ゆきもファンにはうれしい長編。

掲載2000年07月05日

さむらい飛脚

(さむらいびきゃく) 1971年

掲載2000年07月05日

 普通の飛脚には頼めない物、時には人間までも、極秘に運ぶスーパー飛脚たち。リーダーに大友柳太朗、忍びの名人に品川隆二、アウトロー剣豪に若林豪、情報屋でアイデアマンに川口恒、変装術の女に佐藤友美。無理難題の依頼に知恵と度胸で立ち向かう。目的地まで、街道を突っ走れ!大友、品川、若林の共演でテンポもいい。掘り出し物の娯楽作。

ペリー荻野プロフィール
ペリー荻野

1962年愛知県生まれ。大学在学中よりラジオのパーソナリティ兼原稿書きを始める。 「週刊ポスト」「月刊サーカス」「中日新聞」「時事通信」などでテレビコラム、「ナンクロ」「時代劇マガジン」では時代劇コラムを連載中。さらに史上初の時代劇主題歌CD「ちょんまげ天国」シリーズ全三作(ソニーミュージックダイレクト)をプロデュース。時代劇ブームの仕掛け人となる。

映像のほか、舞台の時代劇も毎月チェック。時代劇を愛する女子で結成した「チョンマゲ愛好女子部」の活動を展開しつつ、劇評・書評もてがける。中身は"ペリーテイスト"を効かせた、笑える内容。ほかに、著書「チョンマゲ天国」(ベネッセ)、「コモチのキモチ」(ベネッセ)、「みんなのテレビ時代劇」(共著・アスペクト)。「ペリーが来りてほら貝を吹く」(朝日ソノラマ)。ちょんまげ八百八町」(玄光社MOOK)「ナゴヤ帝国の逆襲」(洋泉社)「チョンマゲ江戸むらさ記」(辰己出版)当チャンネルのインタビュアーとしても活躍中。