ペリーのちょんまげ ペリーのちょんまげ

掲載2003年01月24日

「銭形平次スペシャル7百鬼夜行」北大路平次親分の名推理!凶悪集団との知恵比べと、ホームドラマ的捕物帳の王道。

(ぜにがたへいじすぺしゃる なな ひゃっきやこう) 1994年

掲載2003年01月24日

 ご存じ、神田明神下の名親分にして愛妻家・銭形平次が、江戸の凶悪事件に挑むスペシャル版。
 長髪にボロを着て、死人の仮面をつけるというアンビリーバボーな集団が、飾職人とそば屋の主人を連れ去り、拷問の末に殺害。陰惨な事件の裏には、五年前、三千両を盗んだ百鬼組がいるらしい。頭目が捕らえられたのに行方がわからない三千両を巡り、平次(北大路欣也)、八五郎(三波豊和)、三の輪の万七(伊東四朗)、奉行所与力の並木藤兵衛(中村梅之助)、同心・保科源次郎(三浦浩一)らおなじみの面々が、凶悪集団と戦う。
 映画では長谷川一夫、テレビでは長く大川橋蔵(本チャンネルで放送中!)と受け継がれてきた「銭形平次」を、最も男っぽく演じているのが、北大路欣也版。十手を「カッ」とばかりに口にくわえて銭を投げる欣也は、これぞ、庶民派ヒーローという感じだ。
 よく見ると、橋蔵とは微妙にメイク方法も違っている。アイラインをくっきりと「切れ長」にこだわった橋蔵に対して、太い眉毛でタフさを出した欣也。なお、普段は浅葱色のパッチに白足袋が平次のトレードマークだが、いざ、悪人と戦う時には黒っぽいパッチに黒足袋姿になるのにお気づきだろうか。
 平次が黒パッチを身につける時。それが大捕物の合図なのだ。

掲載2002年10月04日

「次郎長三国志 次郎長売出す」監督マキノ雅弘に助監督が岡本喜八。威勢のいい連中が繰り広げる人気シリーズ!

(じろちょうさんごくし じろちょううりだす) 1952年

掲載2002年10月04日

「清水次郎長」は、最も人気の高い時代劇キャラクターのひとり。おなじみのエピソードを、名監督マキノ雅弘がシリーズ9本で存分に描いたヒット作を10週連続で放送する。
 清水の米屋の息子・長五郎こと清水の次郎長(小堀明男)は、家業を嫌ってのヤクザ渡世。その男気にほれこんだのが、子分の桶屋の鬼吉(田崎潤)、関東五郎(森健二)、大政(河津清三郎)ら。一作目「次郎長売出す」では、義兄弟・和田島の太左衛門と津向の文吉の喧嘩を次郎長が見事仲裁できるか?が見物の一本。
 されに二作目「次郎長初旅」編では、森の石松(森繁久彌)が登場。博打好きのダメ男・沼津の佐太郎と女房の夫婦愛がしみじみ描かれる。一方で、肝心の次郎長一行も、博打で着物まではぎとれれる体たらく。それでも、裸で街道を駆けだす若き日の次郎長一家にはカラリとした明るさがある。
 このシリーズのお楽しみは、なんといっても森繁石松。今ではすっかり芸能界の重鎮扱いだが、おっちょこちょいで憎めない石松を巧みに見せる。もうひとり、原作を読んでどうしてもこの役を、ろ自ら志願したという田崎潤。晩年は「連想ゲーム」で大声おじさんとして有名だったが、役者としての存在感を改めて感ずる。他にもとぼけた味の田中春男、人気浪曲師広沢虎造の演技もなかなか。

掲載2002年09月20日

「地獄の左門十手無頼帖」天知茂が地獄の潜入捜査!鬼気せまる立ち回りの連発。長編シリーズ4本連日放送。

(じごくのさもんじってぶらいちょう) 1982年

掲載2002年09月20日

 南町与力の神山左門、人呼んで「地獄の左門」は、生糸問屋の水死事件に疑問を抱く。やがて浮上した悪徳商人と老中の結託。真相を暴こうとした左門は、金山発掘のための離島に追われ、さらなる危機が...。共演は、片桐竜次、成田三樹夫、草野大悟ら「曲者系」に大御所片岡千恵蔵と、贅沢な面々が揃う。
 ニックネームが「地獄」とはただならぬ主人公だが、それを演じているのが、天知茂というならば納得がいくのである。それほど、天知茂の眉間のしわには、緊迫感が漂うのだった。ちなみに天知茂は、「大岡越前」の第1〜3シリーズまで、やはりキレ者与力その名も「神山左門」役で出演。さすがに「大岡越前」では地獄の捜査はできなかった左門だが、ほのぼのしたホームドラマ的な番組の中で、出て来るたびに暗いムードの漂う左門の存在は、かなり異色だった。
 「地獄の左門シリーズ」は、左門が無宿人に扮して潜入捜査をする第二作「将軍暗殺」や多数の水死人にまじって他殺された男を発見する「女菩薩供養」、与力を辞した左門が火盗改めに協力する「声を盗まれた娘」が連日放送。悪と戦う左門の鬼気せまる立ち回りは、天知茂ならではの迫力。とにかくにらまれたら怖い主人公だ。

掲載2002年08月09日

「三匹が斬る!」祭り あの三匹がついに登場!気楽に旅して、悪人退治。こんな人生、うらやましい?

(さんびきがきる!まつり) 1987

掲載2002年08月09日

 ついにあの三匹がやってくる!
浪人なのにどこか品のいい「殿様」こと高橋英樹、末は千石の大物にと野心満々の「千石」こと役所広司、いつも珍商売で人を煙に巻く「たこ」こと春風亭小朝の三人組。諸国を気楽に旅する三人と、なぞの女(杉田かおる)が、宿場で出会う悪を斬る。
 なんといってもこの三人の特徴はカラッと明るいところ。弱いものいじめをする悪人にギラギラ怒って、屋敷に乗り込み、バッタバッタとやっつけて、仕上げに殿様がパーッと懐紙をバラまくと、すべてがスカッと終っている。どんな大事件でも翌週はすっかり忘れるのが読み切り時代劇の鉄則だが、この三匹は、その日のうちにすっきり気分を切り換えて、また冗談を言いつつ、出発進行。その痛快感はすごい。87年のスタート以来、人気長寿シリーズになったのもうなづける。
 しかし、時代劇スターの高橋英樹はともかく、初心者の小朝はかなり殺陣に苦心したらしい。刀ではなく、両刃の特殊な槍を使うのも苦労のタネ。その鬱憤を晴らすため?か、よく聞いていると小朝のアドリブらしきギャグがかなりある。それに動じない英樹&広司もなかなかのギャグセンスありってことか。
 小林亜星のズンチャカズンチャカ小気味いいテーマ曲も、一度聞いたらやめられない。
痛快時代劇の王道ともいいたい名シリーズ。

掲載2002年08月02日

「仕掛人・梅安 梅安蟻地獄」 もうひとりの藤枝梅安・小林桂樹!渋い配役でじっくり味わいたい長編ラインナップ。

(しかけにん・こばやしけいじゅ) 1982年

掲載2002年08月02日

今も人気の高い池波正太郎の「仕掛人藤枝梅安」シリーズ。テレビでは、緒形拳や渡辺謙がその役者として有名だが、実はもうひとり、小林桂樹もがんばっているのである。
今回はBS・CS初登場の長編7本「梅安蟻地獄」「梅安流れ星」「梅安迷い箸」「梅安晦日蕎麦」「梅安針供養」「梅安岐れ道」「梅安乱れ雲」を連続放送。どれも原作のテイストをしっかり守りつつ、微妙に設定が異なるところも。どこがどうアレンジされているか。池波原作ファンは、その違いをチェックしてみるのも楽しいかも。
「梅安蟻地獄」は、斬られた岡っ引きを医者のもとへ運んだ梅安が、人違いされて命を狙われる。難を逃れた梅安は、殺しの元締め音羽の半右衛門に“仕掛人”としての仕事を依頼される・・・。梅安の裏の仕事の仲間・楊枝職人の彦次郎に田村高廣、半右衛門に中村又五郎、池波正太郎お気に入りのふたりのニクい配役。その上、梅安がこれまた渋めの小林桂樹だから、番組全体がおとなの雰囲気なのは当然ともいえる。どれも見応えがあるが、ペリーのお薦めは梅安・彦次郎が無頼浪人集団と対決する「梅安岐れ道」。極悪非道の輩に梅安がどう戦いを挑むか。夏のひととき。じっくり見たい長編が続く。

掲載2002年07月27日

「サスケ」こどもたちを熱狂させた白土三平の名作アニメ。雷門ケン坊の声も懐かしい!

(さすけ) 1968年

掲載2002年07月27日

三十代以上の人なら、必ず「影響を受けた忍者」がいるものだ。以前、このチャンネルで特集された市川雷蔵の「忍びの者」という人も、「仮面の忍者赤影」という人も、「花のぴゅんぴゅん丸」という人や、ひょっとすると「カムイ伝」という人もいると思う。
私の場合は、「サスケ」だった。
第一に主人公が子供だったのが新鮮。その意味では「赤影」に出てくる「青影」も少年忍者なのだが、からっと明るい青影に対して、サスケにはとても深い影がある。家康による真田勢の残党狩りで母親を失った上に、父の忍者・大猿大介とともに流浪しなければならない運命を背負ったサスケには、悲壮感が漂う。厳しい忍術修行を続ければ、いつか明るい未来があるのか。それさえ見えない。
「光のあるところに影がある。まこと栄光の影に数知れぬ忍者の姿があった。だが、人よ名を問うなかれ、闇に生まれ、闇に消える。これが忍者のさだめなのだ・・・」というナレーションを聞くたびに、ちょっとおとなの世界さえ感じたのもでである。
一方で忍術を科学的に解説してみせたり、敵の心理を読む戦術はとてもおもしろかった。サスケ役・雷門ケン坊、父の大猿役の外山高士(時代劇の悪役でも活躍してる人)の声も懐かしい。これを見たら、こどものころのように、手裏剣を投げたくなるかも。

掲載2002年06月22日

「新書 忍びの者」 正統派・市川雷蔵に、クセ者俳優・伊藤雄之助、富士真奈美、安田道代がからむ!

(しんしょ しのびのもの) 1966年

掲載2002年06月22日

常に影に生きる宿命の忍者の世界をリアルに描き、人気を博した市川雷蔵の「忍びの者」シリーズ。これまで石川五右衛門、霧隠才蔵と、いわば“有名どころ”を主役としてきたが、この作品では、新たに「霞小次郎」という新キャラクターで登場した。
幼いことろ、目の前で三人の忍者に父を殺された小次郎は、流れ忍者に育てられ、自分も忍者になる。父の仇を狙いながら、仕事では武田信玄の忍びとして働くが、信玄は味方の忍者を犠牲にして逃走するような男だった。怒った小次郎は復讐を誓う。
親の仇・妖術使いの班の夜叉丸との死闘、信玄への復讐作戦とみどころは多い。忍びの者として油の乗った市川雷蔵のピンと張り詰めた表情も女性ファンにはたまらないはず。
が、実はこの作品。ワキ役がなかなかなのだ。まず、現在、貫禄ある美人女優として映画やドラマに活躍中の大楠道代(旧姓・安田)。当時はやっと二十歳。フレッシュさで注目の若手だった。また、後にテレビドラマ「細腕繁盛記」で牛乳ビン底メガネにひっつめ髪で、主役の新珠三千代をイビる小姑で人気となった富士真奈美。そして、なにより黒澤映画で「乗ってる馬より馬面」と言われた個性派・伊藤雄之助。雷蔵の正統演技に、独特のボソボソセリフで迫る雄之助。一度見たら忘れられない存在感をお楽しみに!

掲載2002年05月31日

「忍びの者祭り」黒装束からのぞく引き締まった素顔にぞっこん。市川雷蔵に惚れなおす傑作一挙放送!

(しのびのものまつり) 

掲載2002年05月31日

「忍者」作品には、二種類ある。ひとつは、とてつもない「忍法」を使うタイプ。呪文ひとつで嵐を呼び、屋上へ飛び上がり、煙とともに姿を消す。口笛で怪獣を呼んだりもする。ほとんどイリュージョン、特撮の世界だ。そして、もうひとつが「影」に生きることを宿命とした忍者の生き方、人間性をリアルに描いたもの。鍛練と精神力で敵地に潜入し、任務を果たす。しかし、敵に捕まれば、口を割らないため、自害するだけでなく、己の顔までも破壊して果てる・・・。「忍びの者」は、このタイプの元祖であり、最高傑作シリーズなのだ。主演は市川雷蔵。没後30年後の現在もなおファンを増やしつづける永遠のスター。だが、まさか雷蔵も必死に「影」に徹したこの作品が、このチャンネルで「祭り」にされるとは思ってなかったと思う。
物語の舞台は、戦国時代。伊賀忍者・百地三太夫(伊藤雄之助)配下の石川五右衛門(市川雷蔵)は、血と泥にまみれるすさまじい日々を送っていたが、愛する女(藤村志保)と出会い、静かな生き方を選ぶ。だが、三太夫の陰謀で信長暗殺を命じられ、安土城に潜入。なんとか毒を仕込むことに成功したが・・・。天井板の節穴からこっそり下をのぞく目線。黒装束からのぞく締まった素顔。市川雷蔵の影のある表情にまたまたファンが増えること間違いなし。社会派の名匠・山本薩夫監督らしい緊張感あふれる一本。

掲載2002年04月19日

「佐武と市捕物控」若き三浦友和と、ちょんまげ拒否?の梅宮辰夫lの共演作。石森章太郎ファンも納得。

(さぶといちとりものひかえ) 

掲載2002年04月19日

 下っ引きの若者・佐武(三浦友和)は、元岡っ引きの親分佐平次(伴淳三郎)の娘みどり(名取裕子)に片思い。だが、まだ半人前でとても嫁どころではない。一方、松の市(梅宮辰夫)は、表稼業はあんまだが、実はどこか影のある居合抜きの名人。ふたりが江戸の怪事件に立ち向かう。
 原作は石森章太郎の人気劇画。第一話(24日)では変態殺人鬼との死闘、第二話(25日)では、野川由美子のあやしい女っぷりが見物、第三話(26日)は原田大二郎の悪医者に注目(大二郎は善人より悪役の時の方がテンションが高い)、第四話(21,26日)では、ついにみどりと佐武が祝言?長編ならではの二転三転のストーリーから、目が離せない。ペリーとしては、この番組は友和、辰夫の異色コンビという点でも注目したい。正統派二枚目俳優として売出した友和だが、意外に時代劇の主役は少ないのである。最近では話題の大河ドラマ「利家とまつ」に利家の兄役で出ているが、なんとその妻つねも名取裕子。「佐武」から二十年の時を経て、再び裕子夫婦とは。縁というか、呪縛というか。また、辰夫パパも、時代劇出演は多くない。必殺シリーズの「必殺商売人」では髪結いの殺し屋だった。しかし、この松の市といい、必殺といい、いつもヅラなしの自毛出演。ひょっとして、ちょんまげ拒否主義か?結構似合うと思うけど。

掲載2001年11月02日

「生誕100年阪東妻三郎祭り」 ロシアで発見された幻の一本も含む名作を一挙放送。田村高慶の独占インタビューも!

(せいたん100ねんばんどうつまさぶろうまつり) 

掲載2001年11月02日

阪東妻三郎。本名・田村傳吉。1901年東京生まれ。1916年に片岡仁左衛門の弟子になり、後にマキノ映画に入社。数々の時代劇に主演し、「剣戟王」の名で親しまれる。スピード感あふれる立ち回りは天下一品で、「チャンバラは阪妻から始まった」と言われるほど。およそ、200本の映画に主演。1953年没。高廣、正和、亮ら「田村4兄弟」の父にして、戦前からの大スター。スチールだけでみても、イイ男だ。今回はその生誕100年を記念して、代表作を一挙放送してしまおうという大型企画。
さらに、うれしいニュースもあり。なんと、ロシアで阪妻主演の「鍔鳴浪人」のフィルムが発見されたのだ。実に公開から60年を経て、テレビ初公開。多くの主演作が戦災で消失している阪妻の作品が異国で発見されるとは、これもまた、生誕100年、映画の神様のお祝いなのかも。
今回は「鍔鳴浪人」のほか、“日本映画史上最高のチャンバラシーン”として語り継がれる代表作「雄呂血」(25年)、痛快な盗賊を演じた「江戸怪賊伝・影法師」(25年)、林不忘原作でふた役を演じた「魔像」(52年)、ご存じ隻眼隻手の剣豪「丹下左膳」(52年)など、一度は見たい作品が続く。田村高廣が父を語る独占インタビューもあり。息子が語る、剣戟王の素顔とは?お楽しみに。

ペリー荻野プロフィール
ペリー荻野

1962年愛知県生まれ。大学在学中よりラジオのパーソナリティ兼原稿書きを始める。 「週刊ポスト」「月刊サーカス」「中日新聞」「時事通信」などでテレビコラム、「ナンクロ」「時代劇マガジン」では時代劇コラムを連載中。さらに史上初の時代劇主題歌CD「ちょんまげ天国」シリーズ全三作(ソニーミュージックダイレクト)をプロデュース。時代劇ブームの仕掛け人となる。

映像のほか、舞台の時代劇も毎月チェック。時代劇を愛する女子で結成した「チョンマゲ愛好女子部」の活動を展開しつつ、劇評・書評もてがける。中身は"ペリーテイスト"を効かせた、笑える内容。ほかに、著書「チョンマゲ天国」(ベネッセ)、「コモチのキモチ」(ベネッセ)、「みんなのテレビ時代劇」(共著・アスペクト)。「ペリーが来りてほら貝を吹く」(朝日ソノラマ)。ちょんまげ八百八町」(玄光社MOOK)「ナゴヤ帝国の逆襲」(洋泉社)「チョンマゲ江戸むらさ記」(辰己出版)当チャンネルのインタビュアーとしても活躍中。