ペリーのちょんまげ ペリーのちょんまげ

掲載2004年10月01日

「さむらい探偵事件簿」高橋英樹が木っ端みじん!?どうにも止まらない異色時代劇。石橋蓮司もトバしてます!

(さむらいたんていじけんぼ) 1996年

掲載2004年10月01日

本間五月(高橋英樹)は、元は一目置かれる敏腕同心だが、ダメな上司ににらまれ、ついにクビに。世の中の矛盾に嫌気がさした五月は、なんでも屋の探偵を開業。しかし、元手はないわ、人脈は乏しいわで、仕方なくやり手の浮世絵師・涼花(萬田久子)の家の前に浮かぶ小舟をねぐらに仕事をしている。
 彼に持ち込まれるのはわけのわからない依頼ばかり。とりあえず、知り合いの遊女(洞口依子)やドジな同心(石橋蓮司)と岡っ引き(有薗芳記)らを巻き込みながら捜査を開始するが、一見チャチな事件が、実は意外な悪と結びついていたりするのだった・・・。
 言葉は現代語(小林克也も出演)、遊女たちのアクセサリーもガラス玉にプラスチック!?とにかく頭が固くては理解できない場面の連続だ。中でも自分のことを棚に上げて、いつも手下の岡っ引きを「ドジ!!」と十手でたたいていた石橋蓮司の同心の存在感はさすが。ちなみにいつも本気でビシビシ叩いていたため、有薗のカツラはすぐにズタズタになってしまったという。
 14日の最終回は五月が木っ端みじん!?の大ピンチ。この番組であっと驚く幕切れを迎えてから、高橋英樹は、しばらくテレビ時代劇シリーズの主演をしていない。ある意味、「時代劇スター英樹」としてのターニングポイントになった番組ともいえる。

掲載2004年08月20日

「新吾十番勝負1」女性ファンをうならせた美剣士トミーの新吾登場!育ての親・三船敏郎も貫禄演技。

(しんごじゅうばんしょうぶいち) 1981年

掲載2004年08月20日

八代将軍・吉宗の御落胤でありながら、秩父の山中で梅井多門(三船敏郎)という武士に育てられた葵新吾。やがて、父の存在と祖父が殺された事実を知り、吉宗に複雑な思いを抱く。男として、剣士として生きる新吾の前には、次々事件が起こる。
 作家・川口松太郎の生んだ新吾は、数奇な運命に翻弄されつつも、たくましく成長していく。「水もしたたる美男系」の新吾、テレビでは主に連続ドラマとして、ほかに田村正和(66年)、松方弘樹(70年)らが演じている。今回この役を演じているのは、国広富之。当時、国広は、松崎しげるとコンビを組み、ドラマ「噂の刑事トミーとマツ」で耳がピクピク動くと突如発奮して大活躍するというコミカル路線で人気絶頂。特に女性ファンからは「トミー」と、絶大な支持を得ていた。デビュー作「岸辺のアルバム」で悩める若者、コミカル刑事、そして現在のトミーは、藤田まこと主演の「はぐれ刑事」で渋いところを見せている。ある意味、時代の移り変わりを感じさせる二枚目俳優だともいえる。
 若きトミー新吾を盛り上げるのは、貫禄演技の三船はじめ、大山勝巳、大出俊、鈴木瑞穂など演技派と、岡田奈々、かたせ梨乃ら若手女優陣。
 トミー国広の若々しい立ち回りと、人懐っこい笑顔が、女性ファンを再びうならせる。

掲載2004年07月23日

「銭形平次」何度見ても感動の最終回!見事な888回の大団円に拍手喝采といきましょう。

(ぜにがたへいじ) 1966年−1984年

掲載2004年07月23日

日本のテレビの歴史の中で、いまだ破られることのない「単独主役による長寿番組記録」実に888回を演じきった大川橋蔵の「銭形平次」も、いよいよ大詰め。
 886回のゲストは、かの若山富三郎。実は若山は、昭和33年(1958年)に、TBS系のナショナル劇場でテレビ初の「銭形平次」に主演。104回を演じた、いわば平次の“先輩”でもあった。若山平次のころは、まだ生放送で、平次のアップの間に別の場所に死体が用意されたり、得意の銭投げシーンも苦労の連続だったなど多くの逸話を残している。
 そして、迎える888回。江戸全体を巻き込む大陰謀に挑む平次。今度ばかりは無事を願わずにはいられないお静。走る八五郎。ライバル三の輪の万七もいっしょになって、江戸の治安に命をかけるのである。ゲストには、美空ひばり、里見浩太朗、五木ひろし、舟木一夫、汀夏子ら、豪華な顔ぶれが揃う。
 事件を解決し、骨休めにと旅に出ることを決意した平次親分。晴れ渡る空をバックに日本橋を行く一行に、「時代劇の王道」を感じる。ちなみに、この後、舟木一夫は、橋蔵の教えを守り、現在舞台でしばしば「銭形平次」を熱演。その際の万七役は?もちろん、遠藤太津朗!橋蔵親分も現役万七に拍手しているに違いない。

掲載2004年07月16日

「隠忍術(しのび)弐」「隠忍術(しのび)参」話題の昼ドラ「牡丹と薔薇」でも爆発した小沢真珠の悩めるくノ一!強敵をどうする?

(しのびに、しのびさん) 2002年

掲載2004年07月16日

伊賀といえば、忍者の里として知られるが、戦国時代には、伊賀忍者の派閥争いがあった。その争いに巻き込まれ、裏切り者の汚名を着せられて仲間から追われることになったすご腕忍者・影蝋(松田賢二)と藍衣(あおい=小沢真珠)。彼らを陥れた六角(木下ほうか)は、野望を果たすために、次々恐ろしい忍者を追手に差し向ける…。
 お手軽な合成や仕掛けを使わずビシバシ戦う忍者たち。その仕掛け人は、ワイヤーアクションを得意とする谷垣健治監督と、「修羅雪姫」のスタントでもおなじみの下村勇二だが、それに応える忍者たちも偉い!胸にラインの入ったデザイナーズ風忍者ルックの影蝋・松田もカッコいいし、細身の体で戦う小沢真珠もイキのいいくノ一っぷり。真珠といえば、今年話題になった昼ドラマ「牡丹と薔薇」で、嫉妬に狂って男をムチ打ったり、足蹴にしたりの大暴れを披露。その基礎になったのは、このくノ一演技かも!?
 くノ一のライバルや、忍び殺しの狂犬忍者、さらには腹黒い幼なじみ忍者など、強敵を前にふたりはどう戦うのか。「参」では、ついに毒針で真珠は、生死の境をさまようことに…。稲田千花、逸見太郎、西守正樹ら、元気のいいメンバーが、ほぼ全編山中ロケで飛び回る。時間があっと言う間にたってしまうアクション長編。

掲載2004年06月25日

「新五捕物帳」五日分を二時間で完了!?驚異のスーパー時代劇スター・杉良太郎の秘密がココにある!

(しんごとりものちょう) 1977年

掲載2004年06月25日

岡っ引きの新五(杉)は、悪には強く、弱い者にはとことんやさしい性格。ご法度を承知で善良なキリシタンを守ろうと大暴れしてしまうほどの熱い男である。そんな熱血と居合術を取り入れた激しいアクションシーンもあって、「新五」は、杉さまブームを巻き起こす。平均視聴率は20パーセントを超え、主題歌「江戸の黒豹」も大人気であった。
 しかし、もっとも驚くべきことは、ただでさえハードな連続時代劇を、驚異的な速さで撮影していたこと。通常レギュラー時代劇は、一本を4日から5日で撮影するが、この「新五」は一日半。有名な映画監督が「五日はかかる」と言った激しい立ち回りをたった二時間で完了していたのである!
 ちなみに「新五」が、77年から82年まで196回休まず放送される間に、杉良太郎は毎年三ヶ月ほどの舞台出演をこなし、79年には「遠山の金さん」に主演、80年には「君は人のために死ねるか」の名言で有名になった刑事ドラマ「大捜査線」に一年間主演。すごすぎだよ、杉さま!
 その背景には、思い切りのよさと集中力、一度つけられた殺陣は即完璧という天分、そして「速い役者は売れる」という強い信念があった。近年中に、そのスピードの秘密のすべてを解説した杉良太郎本が出版予定。その中にはいったい何が・・・。興味深い。

掲載2004年06月18日

「真田太平記」戦国に引き裂かれた兄と弟!颯爽・幸村の草刈正雄と苦悩の信之・渡瀬恒彦の物語。

(さなだたいへいき) 1985〜86年

掲載2004年06月18日

池波正太郎の原作を、金子成人が脚色。題字も池波作品と、力のこもった長編。当時、NHKで水曜日に一年間放送された大型時代劇だ。
天正10年(1582年)、織田信長によって武田軍は壊滅。勇壮で知られた真田家も孤立し、危機を迎えた。なんとか真田の興隆を図ろうと動く父・昌幸(丹波哲郎)は、徳川に反逆。しかし、嫡男・信之(渡瀬恒彦)は、真田の命脈を守るために、親子の縁を絶ち、周囲から非難されながらも、父とは逆の道を選んでいた。
 一方、血気盛んな弟・幸村(草刈正雄)は、信長、秀吉の死後、どんどん幅を利かせる徳川に従う気はなし。一度は山中に引っ込むが、豊臣勢から頼られ、ついに兄とは正反対の立場で戦場に立つことになるのか・・・。
 暴れん坊のイメージの渡瀬が苦悩の武将になり、爽やか系の草刈が大暴れ武将になるというイメージの違いが面白い。
 また、もうひとつの見どころは、忍者の活躍。真田勢とは縁の深い、戦国の影に生きた忍者たちの壮絶な戦いが、当時最先端のCGを駆使して描かれる。
 滅んでいくしかない運命を背負った人々の熱い生き方に泣けるシーンも多数。遙くらら、中村橋之助、夏八木勲、榎木孝明、中村梅之助らの熱演に注目したい。

掲載2004年04月23日

「里見八犬伝」懐かしアイドル薬師丸と八犬士の大暴れ。妖怪・夏木マリ&目黒祐樹の怪演にも注目!

(さとみはっけんでん) 1983年

掲載2004年04月23日

 その昔、里見家には、静(薬師丸ひろ子)という美しい姫君がいた。が、平和な月日は束の間、かつて里見家に滅ぼされた蟇田一族が、悪霊「御霊様」の力で妖怪集団として蘇り、里見家を襲う。ひとり難を逃れた静姫は、犬山道節(千葉真一)、犬村大角(寺田農)ら「仁・義・礼・智・忠・信・孝・悌」の八つの文字が刻まれた霊玉を持つ犬士とともに、戦うことを決意。しかし、心の中には、犬江新兵衛(真田広之)への思いが・・・。
 ご存じ「南房里見八犬伝」をベースに、妖怪たちと千葉真一以下アクション八犬士との大勝負。監督・深作欣二は、特殊メイクやミニチュアワークなど日本伝統の特撮技術を駆使して、伝奇ロマンの世界を見せる。森で狙われ、洞窟は崩れといったピンチの連続でも、静と新兵衛の恋物語にこだわったのは、やはり脚本の鎌田敏夫風味というところ。ふたりの幸せを願う犬山道節たちのラストは壮絶だ。壮絶といえば、不老不死妖怪蟇田の首領・素藤(目黒祐樹)とその母・玉梓(夏木マリ)のメイクもすさまじい。監督のこだわりから、妖怪メイクに凝りに凝り、二時間以上かけて恐ろしい顔を作ったため、主役の薬師丸は撮影以外ではふたりに近づくことがなかったという。テレビドラマ「奥様は魔女」でもリアル魔女になりきっていた夏木マリと目黒の妖怪ぶりにもぜひ、注目を。

掲載2004年02月13日

「修羅之介斬魔剣 妖魔伝説」京本政樹が妖しい魅力の美剣士に。本格的殺陣とSFX、三浦理恵子のお色気も爆発!

(しゅらのすけざんまけん ようまでんせつ) 1996年

掲載2004年02月13日

 江戸の初期。比類なき剣の使い手・榊修羅之介(京本政樹)は、大藩の姫・真夕(今村理恵)を決死の思いで救い出す。その一件には、藩の秘宝が関わっていた。その秘宝こそ、豊臣家によって滅ぼされた北条家にまつわる銀竜剣。実はその剣には、対になる鳳凰剣があり、それを手にしたのは、あの伊達政宗(中村敦夫)。政宗は、幕府転覆というとんでもない野望を持っていた。一方、銀竜剣は、くノ一忍群こと出雲の阿国一派の手に渡り、伊達一派に、邪険士群を操る怪僧・天海(隆大介)も登場して、大乱戦。果たして、修羅之介は、姫を守りきれるのか…。
 女剣士・嶋村かおり、出雲阿国に故・戸川京子をはじめ、三浦理恵子も体当たり演技を繰り広げる。また、修羅之介に挑む男たちは、プロレスの高野拳磁やこの作品のために来日したというアマ相撲世界チャンピオンのエマニュエル・ヤープロー(体重280キロ!)ら、とてつもない面々。彼らを相手にする修羅之介の華麗な剣は、SFXしかないでしょう。撮影当時、私は京本さんご本人に話を聞いたが、とにかく新しい時代劇のため、常にアイデアを考えている人であった。それだけにこの作品への思いは熱く、主題歌も冴木涼介名で自ら作詞&歌唱を担当している。中村敦夫、隆大介の不気味演技も満載。伝奇時代劇好きには、たまらい長編。

掲載2004年01月16日

「銭形平次」「ラストサムライ」でも注目。斬られ回数2万回。"日本一の斬られ役"福本清三見参!

(ぜにがたへいじ) 

掲載2004年01月16日

23日のゲストは、話題の映画「ラストサムライ」で、トム・クルーズを影のように見つめる侍役でも好演した福本清三。
名前だけではわからない方もその顔を見れば、「おお」と気がつくはず。東映の時代劇でこの顔が見られない日はなというくらい多くの番組に出演。(本チャンネルでも7日の「吉宗評判記・暴れん坊将軍」に登場)そのほとんどが斬られ役で、いままでに斬られた回数が実に二万回という、日本一と呼ぶにふさわしい実績の持ち主なのだ。
 昭和18年兵庫県に生まれ福本さんは、中学校卒業後、ひょんなきっかけで東映の撮影所に入る。田舎では映画もほとんど見たことがなかったが、当時は映画全盛期。入ったその日に「自分でメイクしてこい」と言われ、眉毛が左右めちゃくちゃになったと笑う。
 私は、京都で二回取材させていただいたことがあるが、それはそれはシャイな方で、写真撮影のときも、私が「ありがとうございます」と言うと、福本さんも「ありがとうございます」とお互いずーっと頭をさげっこしているという状況だった。こんな人柄が、「銭形平次」の大川橋蔵、美空ひばり、中村錦之助らスターに可愛がられた理由だと思う。
「斬り方は教えられるけど、死に方は誰も教えてくれない」と、工夫を続けた福本さんは、今も撮影所で斬られ数の記録更新中だ。

掲載2004年01月09日

「助太刀屋助六」岡本喜八監督の元気あふれる佳作。真田広之の明るさと、鈴木京香のにおいたつ色気も。

(すけだちやすけろく) 2002年

掲載2004年01月09日

 田舎の宿場を飛び出した若者・助六(真田広之)は、ひょんなことから仇討ちに巻き込まれ、思わず助太刀。感謝はされるわ、商売にもなるわと勝手に思い込んで、以来、頼まれてもいないのに「おいらに任せな!」と、助太刀を申し出て、世渡りをしている。基本的におっちょこちょいなやつである。
 七年ぶりに故郷へ帰ってみると、何やら不穏な空気が。幼なじみの太郎(村田雄浩)に聞けば、元八州廻りの役人・片倉梅太郎(仲代達矢)をめぐる仇討ちがありそうだという。誰が悪者で誰が善人か、本来考えるべきことは置いといて、太郎に反対されるのも聞かず、突っ走る助六。その梅太郎が実は、助六の知らない父親なのであった。そんな助六を追っ掛ける幼なじみの娘(鈴木京香)。梅太郎に勝ち目はない。果たしてどうする…。
 子役時代から活躍した真田広之は「たそがれ清兵衛」の抑えた演技が高く評価されたが、この作品では、のびのびと暴れていて気持ちいい。彼に振り回され、困惑する村田、かなり熟した娘・鈴木京香のにおいたつ色気もなかなか。さらにとぼけた岸田今日子、独特なムードの岸部一徳、時代劇には新鮮な風間トオル、寡黙ながらも存在感たっぷりの仲代と適役揃い。岡本監督らしいユーモアと悲しさとカラッとした明るさが光る。活劇の楽しさを堪能できる佳作。

ペリー荻野プロフィール
ペリー荻野

1962年愛知県生まれ。大学在学中よりラジオのパーソナリティ兼原稿書きを始める。 「週刊ポスト」「月刊サーカス」「中日新聞」「時事通信」などでテレビコラム、「ナンクロ」「時代劇マガジン」では時代劇コラムを連載中。さらに史上初の時代劇主題歌CD「ちょんまげ天国」シリーズ全三作(ソニーミュージックダイレクト)をプロデュース。時代劇ブームの仕掛け人となる。

映像のほか、舞台の時代劇も毎月チェック。時代劇を愛する女子で結成した「チョンマゲ愛好女子部」の活動を展開しつつ、劇評・書評もてがける。中身は"ペリーテイスト"を効かせた、笑える内容。ほかに、著書「チョンマゲ天国」(ベネッセ)、「コモチのキモチ」(ベネッセ)、「みんなのテレビ時代劇」(共著・アスペクト)。「ペリーが来りてほら貝を吹く」(朝日ソノラマ)。ちょんまげ八百八町」(玄光社MOOK)「ナゴヤ帝国の逆襲」(洋泉社)「チョンマゲ江戸むらさ記」(辰己出版)当チャンネルのインタビュアーとしても活躍中。