ペリーのちょんまげ ペリーのちょんまげ

掲載2007年05月03日

『次郎長三国志』高橋英樹の貫禄次郎長親分。宿命のライバル黒駒の勝蔵との決着は!?

(じろちょうさんごくし) 1991年

掲載2007年05月03日

清水港の長五郎こと次郎長(高橋英樹)は、若いころから暴れん坊だったが、面倒見のよさと人をまとめていく器量は人一倍。やがて博徒の世界で名前をあげ、一家を構えるようになる。
 愛するお蝶(黒木瞳)を清水に残し、旅に出た次郎長一家。しかし、ども安(八名信夫)のたれ込みで賭博の現場を押さえられ、百日の入牢となってしまう。威張り散らす牢名主に、「やかましいやい!」と次郎長の貫禄でさっそく蹴散らし、のんきな牢内生活が始まったが、清水ではとんでもない事件が起きていた。ども安がお蝶とその兄・熊五郎(竜虎)を誘い出し、抹殺しようとしていたのだ。追分三五郎(堤大二郎)の機転で現場に駆けつけた次郎長だが、悲劇は止められなかった。怒りは、ども安との決戦へとつながっていく。
 主演の高橋英樹は侍役が多いが、頼りがいのある親分を堂々と演じている。「おみゃーはよ!」と名古屋弁炸裂の桶屋の仁吉(阿藤海)、ハイテンションの石松(梨本謙次郎)、などおなじみのキャラクターも元気がいい。
ども安と次郎長の争いをクールに見つめる黒駒の勝蔵(山城新伍)の存在はなかなかに不気味。女侠客・笹舟のおりは(芦川よしみ)も勝蔵のやり方に「人がつぶしあっているすきに自分が勢力を広げるとは」と驚くほど。次郎長VS勝蔵、対立の行方が気になる。

掲載2007年04月27日

『蝉しぐれ』甘酸っぱい青春編、切ないおとな編 藤沢周平の名作に黒土三男監督が挑む。

(せみしぐれ) 2005年

掲載2007年04月27日

主人公の牧文四郎は、東北の小藩の下級武士・牧助左衛門(緒形拳)と登世(原田美枝子)の養子として、剣術と学問に励んでいた。隣家には幼なじみの娘ふくがいて、お互い淡い恋心を抱きつつも、言葉にもできない。そんなとき、藩内の紛争に巻き込まれた助左衛門が切腹。文四郎と母は謀反人の家族として俸禄も落とされ、家も出ることに。やがて藩の江戸屋敷に奉公に出たふくにも、大きな変化が。ふくには藩内の陰謀がふりかかり、命まで狙われる。文四郎は立ち上がる…。
 NHKのテレビシリーズで脚本を手がけた黒土三男が自ら監督として豪華キャストで映画化を実現させた話題作。
 文四郎の市川染五郎は、決死の闘いの前に「ここにあるたけの刀を!」と叫び、死に直面しても不敵な笑いを見せるなど、「愛するもののためならば死をも恐れぬ」肝のすわった芝居を見せる。特に私的な陰謀のために多くの犠牲者を出した張本人に対して「お黙りめされい!!」と一喝するパワーは、気持ちいいほど。歌舞伎で鍛えた発声はさすがだ。
 染五郎と木村佳乃(ふく)コンビのおとなの恋もいいが、少年少女期の甘酸っぱい恋を表現した、少年文四郎(石田卓也)、ふく(佐津川愛美)の初々しい表現も秀逸。吹雪に煙る冬、田の緑がまぶしい夏など、藤沢周平の出身地・山形庄内の四季も美しい。

掲載2007年03月08日

『素浪人罷り通る −暁の死闘−』三船敏郎十八番の素浪人長編シリーズ 泉谷しげるの熱演にぐっとくるシリアス編

(すろうにんまかりとおる あかつきのしとう) 

掲載2007年03月08日

どこから来て、どこへ行くのか。気ままな旅を続ける素浪人“春夏秋冬”が、さまざまな事件に出会う長編シリーズ。第二弾として制作された「暁の死闘」は、いきなり緊迫したシーンから始まる。
 峠の茶屋で春夏秋冬が休んでいると、目の前で武家の一行が襲撃される。駕籠に乗っていた少年は、地元笠間藩の若様・菊千代。侍たちが次々と倒れる中、必死に若様を守ったのは、ひとりの中間(泉谷しげる)だった。春夏秋冬の助けもあり、敵は去ったが、若様は行方不明に。行列を襲ったのは、笠間藩乗っ取りをたくらみ、次男の竹丸を擁立する一派だった。竹丸派は卑劣にも中間を拷問にかけ、以来、彼は正気を失い、こどもたちにもバカにされながら、街道をさまよう。疑い深い竹丸派は、さらに中間の母(千石規子)をはりつけにして、菊千代の居所を探るが…。
 若様を守るために命をかける泉谷しげる、息子を信じてがんばる母・千石規子の迫力には思わずぐっとくる。笠間藩七万石のお家騒動の背後に、藩取り潰しを狙う公儀の動きを察知した春夏秋冬は、純粋な母子、けなげな菊千代の命を狙う連中が許せない。
 三船といえば、荒野。今回も荒野の処刑場が重要な現場に。強気なばば(千石)に口では勝てない場面など、三船敏郎の“素浪人”には欠かせないシーンも多数用意されている。

掲載2007年02月22日

『銭形平次捕物控 人肌蜘蛛』蜘蛛の入れ墨が事件の鍵!死体入れ替わりの謎に長谷川一夫平次が挑む

(ぜにがたへいじとりものびかえ ひとはだぐも) 1956年

掲載2007年02月22日

長谷川一夫の人気シリーズに、市川雷蔵がゲスト出演。当時の女性映画ファンを喜ばせた一本。ある日、行商人・新次郎(雷蔵)は、ワケありげな娘お絹を救い、宿に連れて行く。しかし、お絹は失踪。お絹を見たはずの宿の人間もそんな娘は知らないといい、書いたはずの宿帳からもその名前が消えていた。一方、広重の浮世絵「東海道五十三次」に白い龍が描かれた謎めいた絵をもった男が殺され、事件には島抜けしたもうひとりの男がからんでいるらしい。下手人らしい男の背中には「蜘蛛の入れ墨」があったという。新次郎の背中にも蜘蛛の入れ墨があったことから、新次郎はピンチに。その上、平次が探索していた家の葬式では、死体が入れ替わった!? 
 親分得意の変装で葬儀屋に紛れ込んだり、もちろん、得意の「銭投げ」も炸裂。シリーズ後期には銭を投げるたびに「ぴゅっ」と音がついているが、ここではまだない。八五郎は堺駿二。「親分、また飯をくいっぱぐれるよー」と、おっちょこちょいながらまじめな子分ぶりを見せる。美人目明しお品(山本富士子)の「あたしは稼業の上での親分の女房」という切ない告白も登場する。クライマックス、映画全盛期ならではの壮大なセットで繰り広げられる「天下祭り」は圧巻。その先頭に立つ悪人こそ、後に国民的時代劇に主演する、あのお方!当時の名悪役ぶりを楽しめる。

掲載2007年02月08日

『新・座頭市3』郷ひろみも驚いた勝新太郎の撮影現場!今月も原田芳雄らギラギラ演技が光ります。

(しん・ざとういち) 1979年

掲載2007年02月08日

先日、「郷ひろみロングインタビュー」を担当した際、「忘れられない先輩」として筆頭に出てきたのは、「勝新太郎」の名前だった。
 仕事場とは関係ないところで、意気投合した勝・郷。当時、アイドルとして多忙の極みだったが、「ぜひ、『新・座頭市3』に。京都で共演を」と勝に声をかけられ、出かけていった。しかし、例によって「今日は天気がいいなあ。じゃ、撮影中止!」などと勝流の撮影方針に面食らうばかり。「普通、天気がいいから撮影するんじゃ?」などと疑問はさしはさめないのが、「座頭市」の世界なのだった。結局、謎めいた美形浪人の役をぎりぎりの日程で撮影。無事オンエアになったが、勝の豪快さと繊細さには感動したという。
 「新・座頭市3」も、浅丘ルリ子、緒形拳、いしだあゆみら勝にほれこんだ共演者が多数登場。女のために故郷を捨て野良犬のように生きる男(原田芳雄)が、地元ヤクザに市をワナにはめろと誘われる「人情まわり舞台」、市の大切な仕込み杖を盗もうとする女(中村玉緒)との物語「虹の架け橋」など、しみじみした話が多い。
 濡れた手ぬぐいで刺客の剣を制したり、転がりながらの立ち回りなど得意の殺陣は冴える。一方で座頭市の風貌は、映画に初登場したころの男臭さから、このころには白髪がまじり、人生の哀歓が出ている。円熟の座頭市。

掲載2006年12月14日

『蝉しぐれ』内野聖陽主演の人気作品がいよいよ登場。命をかけた恋と友情、男の人生を描く。

(せみしぐれ) 2003年

掲載2006年12月14日

東北の小藩・海坂藩普請組の武士・牧助左衛門夫婦(勝野洋・竹下景子)の養子・文四郎(内野聖陽)は、実直な父を尊敬していた。
しかし、藩内の内紛で父は、切腹させられ、残された文四郎たちは謀反人の家族という汚名を着せられる。牧家の隣に住むふく(水野真紀)と淡い心を通わせた文四郎だが、家禄を減らされ、家を追われて長屋住まいの身に。やがて、文四郎は、ふくが江戸に奉公にあがり、藩主の側女になったと知らされる。そのふくが再び内紛で命が危うくなり…。
 今年、「武士の一分」が映像化され、ますます人気が高まる藤沢周平が、とても大事にした作品といわれる「蝉しぐれ」。その作品にほれ込んだ脚本家・黒土三男が自ら熱のこもった脚本に仕上げたという作品だ。
 お互いを思いながらも別れなければならなかったふたり。内野、水野ご両人は、再会して見詰め合う場面では、本当に静かな環境がほしいとスタッフにも雰囲気作りを願い出るほどの集中を見せた。
 また、もうひとつの見せ場が、剣の師匠・石栗弥左衛門(石橋蓮司、渋い!素晴らしい剣客ぶり)が、文四郎に授ける「秘剣村雨」。小説には詳しく解説されていないが、アイデアのこもった必殺剣が、ふくとその子を守りぬく。若手脚本家・宮藤官九郎が文四郎の親友役で出ているのにも注目。

掲載2006年10月26日

『新選組血風録』「池田屋騒動」は本物の町屋を破壊し撮影。原作者も納得の名作ドラマが登場。

(しんせんぐみけっぷうろく) 1965年

掲載2006年10月26日

幕末。井伊大老暗殺、異人館の焼き討ち事件など、幕府の権威は地に落ち、尊皇攘夷派の活動は次第に活発化していた。中でも京都での動きは、幕府にとって頭痛の種。そこで老中・板倉周防守は、清河八郎の浪士隊結成の進言を受け入れ、隊士の募集を始める。メンバーの中には武州多摩の近藤勇(舟橋元)、土方歳三(栗塚旭)、沖田総司(島田順司)の姿もあった。しかし、京都に着くなり、隊は解散の危機に。やがて力をつけて近藤らは、「新選組」として、京都のみか全国に名前をとどろかせていく。
 モノクロの画面。土方の渋いナレーション。池田屋騒動の場面では、取り壊しの決まった京都の本物の町屋を破壊しながら撮影するなど、リアルな立ち回りも評判になった名作。当初は映像化に難色を示していた原作者・司馬遼太郎も納得した作品だった。
 主役である栗塚旭は、この作品で「土方といえばこの人」と人気を得る。後に同じ司馬作品「燃えよ剣」でも、土方役で主演。ただし、ご本人は、土方の低音・渋めのキャラクターとは違い、かなり明るい方なのだ。「血風録」の現場では二歳違いの島田と仲がよく、「徹夜あり休みなし」という過酷な撮影を励ましあいつつ、乗り越えたという。その栗塚さんは、現在もテレビ・映画で活躍中。京都在住で、撮影所にも健康のために自転車出勤することもしばしばだとか。

掲載2006年07月06日

「仕掛人・藤枝梅安 梅安針供養」小林桂樹のアダルトムード梅安。急逝した田村高廣演ずる彦次郎も活躍。

(しけけにん・ふじえだばいあん ばいあんはりくよう) 1983年

掲載2006年07月06日

表の顔は腕のいい鍼医だが、裏では金ずくで悪人を闇に葬る“仕掛人”である藤枝梅安(小林桂樹)。ある夜、梅安は、何者かに襲われ手傷を負った若い侍(岡本早生)を助ける。なんとか命は助かったものの、若侍は記憶を喪失していた。そんな折、梅安は、裏の仕事の元締めである音羽の半右衛門(中村又五郎)から、仕掛けの依頼を受ける。
「女だが、こいつは本当のワル」
と言われた相手は、旗本池田肥前守の奥方・増子(川口敦子)。調べてみると、若侍の着物の家紋は、その池田家のものだった。
 不思議な縁で梅安の裏の顔を知り、手伝おうと言い出す浪人・小杉十五郎(柴俊夫)に、梅安は、厳しい顔で言い放つ。
「仕掛けの世界は地獄ですよ」
 梅安には、上方の裏社会を仕切る白子屋一派との対立という大問題も勃発していた。
 気の毒な若侍に見せるやさしさ、愛人であるおもん(神崎愛)との逢瀬(小林梅安にラブシーンが!)など、梅安の人柄が立体的に描かれる。梅安の相棒・彦次郎に先ごろ亡くなった田村高廣が扮し、静かな中に非情な仕掛けの世界に生きる男のダークサイドを垣間見せるのもみどころのひとつ。芥川隆行の名調子、川口敦子のクールな悪女、「破れ傘刀舟」シリーズでおなじみの織田あきらの悪息子など、時代劇ファンには見逃せないメンバーが揃う。

掲載2006年06月22日

「白獅子仮面」シシクー!!で変身もこれで見納め!ちょっとだけ最終回の見所をご紹介

(しろじしかめん) 1973年

掲載2006年06月22日

江戸のを悪の本拠地にしようと企む火焔大魔王の陰謀をことごとく打ち砕いてきた、名奉行・大岡越前と、剣兵馬(三ツ木清隆)。実は兵馬は、二丁の十手をカチリとあわせ、「獅子孔!!」と叫んで、正義の剣士「白獅子仮面」に変身するのであった。主演の三ツ木清隆は、この番組に専念するために「ウルトラマンタロウ」の警備隊員役を途中降板。その意欲が随所に現れている。
 最終回「輝け!白獅子の星」
地下深いアジトで、白獅子仮面に倒された妖怪軍団の亡骸を眺める火焔大魔王。
「大岡越前め…」
その目は怒りに燃えて、いよいよ最終決戦のときだと悟る。そして、目の前の手下たちに「今こそ、悪の力を合わせ、悪の世界を築くのじゃ」すると、なんと死んだはずの妖怪軍団員が次々蘇る。おおかみ仮面、一つ目、コウモリ男、河童…。総力を結集した妖怪軍団は、兵馬に打撃を与え、奉行を拉致する。
どうする、白獅子仮面!?
ゾンビになって蘇った妖怪オールスター。どこかお茶目な造型でファンを喜ばしていた彼らが再び登場するのはうれしいところ。白獅子仮面も、プロレスのような技を駆使して戦う。火焔大魔王の必殺技とは?
白獅子仮面の熱血ラストファイト、お見逃しなく。

掲載2006年04月13日

「白獅子仮面」アニキの熱唱も高らかに!異色時代劇変身ヒーローの十手が光る。

(しろじしかめん) 1973年

掲載2006年04月13日

「マジンガーZ」などアニメ主題歌の大家・水木一郎アニキの歌う♪シシクーッ!!な主題歌も高らかに、颯爽と登場したヒーロー、白獅子仮面。タイトルにマンガが使われて、制作当時から、どこかレトロムード漂っていたのも、マニア心をくすぐる異色作だ。
 その正体は、名奉行大岡越前配下の若き陰与力・剣兵馬(三ツ木清隆)だった。目をぴかーっと光らせる狼男を追う町奉行所の面々。兵馬は、単独で探索するうちに洞窟の崩落に巻き込まれて、瀕死の状態に。そのとき、白い獅子の声が…。狼男一味は、越前の妹に術をかけ、越前抹殺を図る。間に合うのか、白獅子仮面!
 狼男、傘お化けなど、どこか愛嬌のある古来の妖怪が凶悪集団になって襲いかかるシーンが、妖怪ファンの心をつかんだこの作品。私は個人的に越前の妹役になっていた瞳順子が気にかかる。名前の通り、くりくりとした瞳と気の強そうな口ぶりで、多くの時代劇に出演。「江戸の疾風」シリーズでは、老練同心小林桂樹の娘として、「父上、私はこう思います」など、女性独特の感覚から事件解決に意外なヒントを出したりした。奇怪な事件探索に情熱を注ぐ兵馬も、お奉行の妹には頭が上がらない。ヒロインが登場しにくい分野だけに、瞳順子の清楚にして気丈な存在は光って見える。

ペリー荻野プロフィール
ペリー荻野

1962年愛知県生まれ。大学在学中よりラジオのパーソナリティ兼原稿書きを始める。 「週刊ポスト」「月刊サーカス」「中日新聞」「時事通信」などでテレビコラム、「ナンクロ」「時代劇マガジン」では時代劇コラムを連載中。さらに史上初の時代劇主題歌CD「ちょんまげ天国」シリーズ全三作(ソニーミュージックダイレクト)をプロデュース。時代劇ブームの仕掛け人となる。

映像のほか、舞台の時代劇も毎月チェック。時代劇を愛する女子で結成した「チョンマゲ愛好女子部」の活動を展開しつつ、劇評・書評もてがける。中身は"ペリーテイスト"を効かせた、笑える内容。ほかに、著書「チョンマゲ天国」(ベネッセ)、「コモチのキモチ」(ベネッセ)、「みんなのテレビ時代劇」(共著・アスペクト)。「ペリーが来りてほら貝を吹く」(朝日ソノラマ)。ちょんまげ八百八町」(玄光社MOOK)「ナゴヤ帝国の逆襲」(洋泉社)「チョンマゲ江戸むらさ記」(辰己出版)当チャンネルのインタビュアーとしても活躍中。