ペリーのちょんまげ ペリーのちょんまげ

掲載2006年04月06日

『座頭市物語』第23話「心中あいや節」 松平健のデビュー作がオンエア!師匠勝新太郎が見込んだマツケンの演技は?

(ざとういちものがたり) 1975年

掲載2006年04月06日

ご存知、盲目の侠客座頭市が、旅の途中、さまざまな事件に巻き込まれ、鮮やかな仕込み杖の立ち回りを見せる人気シリーズ。
 今回はその勝に見込まれた大型新人・松平健のデビュー作「心中あいや節」がオンエアされる。
 そもそも石原裕次郎にあこがれて、アポなしで裕次郎宅を訪問した若き日の松平健。(ということは、石原軍団に加入していた可能性のあったわけだ)が、あいにくの不在と、自分の演技の基礎を磨くため、劇団で修行を積む。その公演を偶然見ていた裕次郎の親友・勝新太郎が、「あの目がいい。京都に来い」と引っ張っていかれたのが運命の始まりであった。
 しかし、京都に行ったものの仕事がすぐに決まるわけでもなく、ひたすら勝の傍らにいる毎日。私は、当時の松平健御用達の宿に宿泊したことがある。太秦の撮影所のすぐご近所、新人俳優が今も多く宿泊するその宿は、名物おばちゃんに切り盛りされていて、とっても家庭的。朝食時など、「しっかり食べないと芝居ができないよ!」などと励ましの声も聞こえたりする。もちろん、今も宿をあげて熱烈松平健ファンである。
 突如、決まったという「座頭市」デビュー。浅丘ルリ子という最高の相手役は、師匠の心づくしに違いない。「暴れん坊将軍」など明るい役の多い松平健の哀愁漂う若者ぶりに注目。

掲載2005年12月22日

「清左衛門残日録」隠居したもののまだまた元気!名優・仲代達矢が藤沢周平世界に挑む

(せいざえもんざんじつろく) 1993年

掲載2005年12月22日

「日残りて昏るるに未だ遠し」
 日本海に近い小藩で長年、用人という重職を務めてきた清左衛門(仲代達矢)は、家督を長男に譲り、悠々自適の日々、かと思ったら、なかなかそうはいかなかった。仕事がない寂しさと、思うように動かない体、ちょっと気になる女将みさ(かたせ梨乃)の存在、さらに藩の中では暗殺?までうわさされる内紛が勃発しているらしい。若者たちからも頼りにされる清左衛門の心安らぐ日々とは?
 藤沢周平の原作をていねいに描き、仕事人間である男性にも、おとなの恋に酔いしれる女性にも人気となった作品。私は先日、本作に主演した仲代達矢ご本人にインタビューしてきた。ちょうど60代にさしかかったときにこの役に出会ったことが「とてもうれしかった。老齢にさしかかった清左衛門の気持ちがよくわかったし、役にとびつきましたよ。僕としては珍しいくらい“普通の人”だし、色気もある人だしね」と語っておられた。
 清左衛門の親友で現役町奉行である佐伯熊太(財津一郎)との友情もいい味。さきごろ再婚して話題になった南果歩が可愛らしい嫁として物語に明るさをともしている。また、清左衛門とみさの恋の行方は? 原作とは微妙に違う展開もあるので、お見逃しなく。

掲載2005年11月24日

「十六文からす堂」渋い天知茂が意外なお茶目演技で味を出す。推理あり、粋な展開ありの隠れた名作。

(じゅうろくもんからすどう) 1982年

掲載2005年11月24日

江戸の町角で「一見十六文」で手相観相を観る“からす堂”(天知茂)は、町の人気者。亭主に怒る女房には、「仲良くすれば、子も授かりますぞ」などと夫婦喧嘩の仲裁(?)までして見せるが、それが案外いい加減なものでなく、どうやら霊感などは本物っぽいのが興味深いところ。しかし、お客がちゃんと見料を払っていかないのが悩みの種だ。そんなからす堂は、浪人者に斬られた町人の金を預かった浪人・豊作(金田賢一)と知り合う。豊作自身にもなにやら秘密がありそうなのだが、その金をめぐって、なにやら巨悪がうごめいている様子。しかし、うっかり動くと、からす堂の実家(実は唐津家というりっぱな武家の跡取りなのだ)にも圧力がかかるというすさまじさ。さて、からす堂はどう動く?
 ニヒルなイメージの天知茂が、自ら明るい三枚目を志願して実現したというこの作品。悪人相手には、「死相が出ています」「そういう人相です、この人は」などととぼけた「ですます調」で味を出す。が、いったん黒い着流しで笠をかぶればムードも満点。独自の推理と剣の力で、悪に挑む。山手樹一郎の隠れた名作と呼びたいシリーズ。続編の「十六文からす堂2初夜は死の匂い」とともにお楽しみに。

掲載2005年08月04日

「さむらい探偵事件簿」高橋英樹バラエティ進出のきっかけ?どうにも止まらない異色作。

(さむらいたんていじけんぼ) 1996年

掲載2005年08月04日

高橋英樹といえば、「ぶらり信兵衛道場破り」「桃太郎侍」「遠山の金さん」など、多くのテレビ時代劇の人気作品を生み出したスター。最近では、「慶次郎縁側日記」などで、隠居の渋みも見せたりするが、その芸歴の中でも特に異色作といえるはず。
 元敏腕同心の本間五月(高橋英樹)は、わからずやの上司とぶつかって、とうとう奉行所にいられなくなってしまう。独り者の気軽さでホイホイ探偵稼業をはじめたものの、商売上がったり。仕方なく、浮世絵師の涼花の家の前の小船でぷかぷか浮き草生活だ。たまに迷い込む仕事も、ワケありのモノ探しに人探し。どうも胡散臭い話ばかりで、首を突っ込むたびに事件に巻き込まれる。
 「教えちゃおっかなー」などと腰をくねくね、キラキラビーズの首飾りをした遊女(洞口依子)や、やたら下っぴき(有薗芳記)の頭をポカポカやる同心(石橋蓮司)など、共演者の顔ぶれも異色な上に、小林克也のハイテンションなナレーションも響き渡り、もはや無礼講状態。イメージは松田優作の「探偵物語」だったという。もちろん、主演の英樹もいつもの浪人のとぼけモードをさらに発展させて突っ走る。どうにも止まらない英樹!近年のバラエティ番組での活躍は、この番組から始まっている? 最終回のオチにも注目。

掲載2005年06月15日

「10週連続!必殺スペシャル」

(じゅっしゅうれんぞく ひっさつすぺしゃる) 1981〜1989年

掲載2005年06月15日

この夏は、毎週土曜日は必殺スペシャルの日! ということで、今月も三本が登場。
 その一本目、工藤栄一監督の「必殺スペシャル恐怖の大仕事」は、なんと中村主水(藤田まこと)が奉行所から誘拐されることから一大事に。バイト気分で元旦の奉行所の留守番をしていた主水は、薬を仕掛けられた酒と料理で身動きがとれなくなる。気がつくと、見知らぬ小屋で、不気味な商人市三(中条きよし)とふたりきり。主水の裏の顔を知る市三に、「徳川御三家の家老殺し」というとてつもない仕事を「千両」で依頼される。しかし、この市三も恐ろしい顔を持っていた…。伊吹吾郎、三田村邦彦らおなじみのメンバーに、上方の裏社会で生きる男(フランキー堺)、米相場に命をかける女主人(松尾嘉代)、さらに後にシリーズの主人公となる仕事人・坂東京山(京マチ子・色っぽい!)も登場。特に中条きよしの最期のシーンには注目。
 また、25日放送の「必殺スペシャル仕事人アヘン戦争へ行く」は、本格的香港ロケを敢行。100歳を超える平賀源内が登場したり、アグネス・チャン、クロード・チアリがゲストに出るなど話題もいっぱいだ。ちなみに主演の藤田まことの回想によれば、「そりゃ、仕事もするけど、自由時間もばっちり。いい時代だった」とのこと。おおらかにして、自由な発想がいかされた「必殺スペシャル」の世界が堪能できる。

掲載2005年06月02日

「銭形平次(風間杜夫)」近頃、噺家としても注目(?)の風間親分。ナイスボイスの主題歌もキマってます!

(ぜにがたへいじ) 1987年

掲載2005年06月02日

近頃、若い世代にも落語人気が上昇中。実はこの「銭形平次」に主演する風間壮夫は、俳優の世界では、落語通で知られ、この五月には明治座で「火炎太鼓」の舞台をつとめ(もちろん、芝居の中でライブで観客を沸かせた)、落語のCDも出してしまうほどの達者ぶりなのだ。それを前提に改めて、「風間平次」を観てみると、やっぱり、セリフの端々に特有のべらんめえが出ているような…。いずれにしても、テンポがよくて、若々しい親分であることは間違いない。
 物語はおなじみの神田明神下の名親分・平次が、江戸の難事件に挑むというもの。平次の名推理、長屋の人情、そして、悪人を追い詰めたときの十手さばきに得意の投げ銭も、バッチリ見せる。愛嬌のある下っ引き、八五郎は舞台でも活躍する木場勝巳。八五郎は、ライバル三ノ輪の万七(左とん平)、下っ引きの清吉(森川正太)のコンビとハイテンションなやりとりを繰り広げる。平次と事件に当たる若き同心(中村橋之助)の初々しさ、彼を見守る萬屋錦之介、岸田今日子といったベテランの活躍も味を出す。
 また、風間親分自ら熱唱する主題歌「遥かな愛」はタケカワユキヒデ作曲のメロウな一曲。時代劇としては冒険的な曲調ながら、つい歌いたくなる。

掲載2005年05月11日

「新・半七捕物帳」真田広之が男の色気たっぷり見せる。奥田民生のエンディング曲もいい。

(しんはんしちとりものちょう) 1997年

掲載2005年05月11日

神田三河町で近頃売り出し中の岡引といえば、半七親分。かつてはちょっとした暴れん坊で、人を泣かせたこともあったが、女房の父親の後をついで、今は四人の手下とともに、江戸の悪と戦っている。その半七の周囲で起こる奇怪な事件の数々。からくり、怪談、暗号、半七シリーズの面白さは、その謎解きにある。
 主演は真田広之。これまで「半七」といえば、貫禄のある“親分さん”のイメージだったが、この半七は、33歳で男やもめ。十手はいつも懐にしまったままで、羽織も着ない。パッと見は、江戸遊び人か職人のようなイメージだ。私は、収録当時、ご本人を取材したことがあったが、そのスタイルには、かなりこだわったという。十手をちらつかせての権威的な聞き込みはしない、目立たない着物で、身軽でいつでも悪人を追えるような服装にする。撮影は連日深夜に及び、これもこだわってわざわざ選んだ短い十手で立ち回りをする半七親分の手は傷だらけだった。
 人間としても未完成で、ベテランの手下たちに文句を言われたりする半七だが、ふと見せる憂いの表情は実に色っぽい!奥田民生の切ない歌声が響くエンディングもとても印象的。共演者もクセ者が多いが、中でも動きは鈍いが心優しい手下のひとり、阿藤海の動きには、ぜひ、ご注目を。

掲載2005年01月29日

「白獅子仮面」妖怪軍団に挑む白獅子仮面!副主題歌「十手のマーチ」もナイス。

(しろじしかめん) 1973年

掲載2005年01月29日

名奉行・大岡越前が目を光らせる江戸の町に、悪の頭領「火焔大魔王」が次々凶悪な妖怪を送り込む。越前配下の剣兵馬(三ツ木清隆)は、ふだんは町をパトロールしたり、剣で悪人をやっつける二枚目熱血漢だが、実はその正体は、正義の味方「白獅子仮面」なのである!
 兵馬が二丁の十手をカチリと合わせ、「シシクーッ!!」と叫べば、たちまち兵馬は、白馬にまたがった勇ましい白獅子仮面に変身だ。
 この作品のユニークさは、まず、兵馬が町奉行所で働いているという設定と、そのいでたち。白獅子仮面が白地に裏赤のマントという派手なのはわかるが、兵馬の普段着も白いパンタロンに赤いチョッキ。オリジナリティがあふれすぎたファッションなのである。
 2月4日放送の「必殺コウモリ男」は、奇怪なコウモリが飛んできたかと思えば、顔にはすごい牙を持ち、腹にもトゲトゲだらけのコウモリ男が多数来襲。「そうだ、コウモリは音に敏感だ」と、音響作戦を展開するが、こどもを人質にとられて危機一髪という物語。
 オープニング主題歌♪カッチンカチリコ、ズンバラリン♪ のフレーズも楽しいが、私のお薦めはエンディングの「十手のマーチ」。♪十手は何でも知っている、♪一から十まで知っている♪ シビれる歌詞をぜひご一緒に。

掲載2004年10月22日

「佐武と市捕物控」石ノ森章太郎の名作時代劇をアニメと実写のW放送!若い三浦友和と梅宮パパの熱演。

(さぶといちとりものひかえ) アニメ:1968〜69年 TV長編:1981年

掲載2004年10月22日

石ノ森章太郎のアニメ作品の隠れた名作とも呼びたいのがあるが、この「佐武と市捕物控」。元気のいい下っ引き・佐武と居合貫の名手・松の市のコンビが、江戸の難事件に挑む。
 若者の佐武やスキンヘッドの市のキャラクターは、どこか人気作品「サイボーグ009」を彷彿とさせるものがあるが、その放送形態はかなり異色だ。まず、監修が片岡千恵蔵の「忠臣蔵」など大作を手掛けた東映時代劇の大御所・松田定次。墨絵タッチの画面や実写との合成、静止など思い切った手法を駆使し、本格的な時代劇としてのアニメを目指した。放送時間も午後9時。68年当時は、こんなおとな向けのアニメも作られていたのだと感心する。主題歌も秀逸。ナレーターは「仮面ライダー」ゆかりの小林昭二だ。ちなみに同時期他局では白土三平の「サスケ」もオンエア中。こちらは午後7時の放送だった。
 一方、実写では三浦友和の佐武と梅宮辰夫の市が大活躍。佐武が思いを寄せる娘みどりが初々しい名取裕子で、当然ながら友和&裕子は若い!また、熱演するのが梅宮辰夫。シリーズ第二弾「佐武と市捕物控2斬る」では、市がなぞの女(野川由美子)に執拗に命を狙われる。敵が野川由美子じゃ市は命がいくらあっても足りないだろう。そして、意外な結末が・・・。実写とアニメで楽しめるという貴重な作品。ぜひ見比べを。

掲載2004年10月15日

「地獄変」白塗り貴族の錦之助と鬼気せまる天才絵師仲代が激突!芥川龍之介の名作は迫力満点。

(じごくへん) 1969年

掲載2004年10月15日

 下々の者は飢えているというのに、毎夜鯛やヒラメの舞踊り状態の平安貴族の館。その中でももっとも権勢をふるっていたのは、堀川の大殿(中村錦之助)だった。ある日、大殿は当代きっての天才絵師・良秀(仲代達矢)に、無量寺院の壁面に「極楽を描いてみよ」と依頼する。しかし、「私はこの目で見たものしか描けません」という超写実派の良秀は、極楽絵を拒否。お互いのプライドがぶつかりあい一歩も譲らないふたり・・・。
 だいたいいつも思い詰めたような顔をした仲代先生に「極楽」が描けると思う方が無理なのである。が、懲りない大殿は、たまたま迷い込んだ良秀の愛娘・良香(内藤洋子)を自分のものにしてしまう。怒り心頭の良秀を「フフン」鼻であしらう白塗り貴族の錦之助の厭味な態度!ある意味、新しい芸風を見せた錦之助だ。
 「ならば地獄絵を描け」と言われた良秀は、「この目で見なくては」といつもの癖で、弟子を鎖で縛って大量のヘビに責めさせたりするが、まだ描けない。ついに「大殿を乗せた牛車に火をつけて灼熱地獄を見せてくれ」と言いだす。なんとその気になった大殿が用意した牛車に乗っていたのは、なんと良香だった・・・。ああ、恐ろしや恐ろしや。もはや悪霊なのか本人なのか、仲代先生からは悪気がプンプン!「人生は地獄より地獄的」とは芥川先生のお言葉。おっしゃる通り!!

ペリー荻野プロフィール
ペリー荻野

1962年愛知県生まれ。大学在学中よりラジオのパーソナリティ兼原稿書きを始める。 「週刊ポスト」「月刊サーカス」「中日新聞」「時事通信」などでテレビコラム、「ナンクロ」「時代劇マガジン」では時代劇コラムを連載中。さらに史上初の時代劇主題歌CD「ちょんまげ天国」シリーズ全三作(ソニーミュージックダイレクト)をプロデュース。時代劇ブームの仕掛け人となる。

映像のほか、舞台の時代劇も毎月チェック。時代劇を愛する女子で結成した「チョンマゲ愛好女子部」の活動を展開しつつ、劇評・書評もてがける。中身は"ペリーテイスト"を効かせた、笑える内容。ほかに、著書「チョンマゲ天国」(ベネッセ)、「コモチのキモチ」(ベネッセ)、「みんなのテレビ時代劇」(共著・アスペクト)。「ペリーが来りてほら貝を吹く」(朝日ソノラマ)。ちょんまげ八百八町」(玄光社MOOK)「ナゴヤ帝国の逆襲」(洋泉社)「チョンマゲ江戸むらさ記」(辰己出版)当チャンネルのインタビュアーとしても活躍中。