ペリーのちょんまげ ペリーのちょんまげ

掲載2001年08月03日

映画「東海道四谷怪談」数ある四谷怪談の中でも傑作中の傑作!

(えいが「とうかいどうよつやかいだん」) 1959

掲載2001年08月03日

日本の夏といえば、怪談。その中でも最も有名な鶴屋南北原作の「東海道四谷怪談」を、ぜいたくなキャスト、スタッフが制作したのがこの作品。
 備前岡山の浪人・民谷伊右衛門は、素行の悪さから、お岩との仲を裂かれる。その恨みから、お岩の父を殺し、江戸に逃げて所帯を持つが、暮らしは貧しい。ある時、裕福な伊藤家の娘・お梅を助けた伊右衛門は、お梅に見初められてしまう。養子縁組と仕官の野心から、邪魔になったお岩を殺し、お梅と祝言をあげようとするが...。
 監督は、怪奇映画の名人・中川信夫。昨年、若い世代からの声に応えて、作品がリバイバル上映されるなど、その評価は今も高まっている。その名人が自ら代表作と認めた本作は、人間の醜さ、浅はかさ、女の悲しみ、恨みをひたひたと描きつつ、斬新な音楽や明暗の使い分けで見事に表現している。毒を盛られ、顔が崩れ果てたお岩の顔、泥の水のおどろおどろしさ、戸板返し、按摩宅悦の恐ろしい形相...こうして文章にしているだけでも恐ろしい!!
 主演は天知茂。苦み走った顔が、恐怖と苦悶でゆがむ様は、この人にしか出せない。この人を伊右衛門に選んだことが、監督の眼力であった。お岩役の若杉嘉津子も、一途で哀れな女を情感たっぷりに見せ、怖さを増している。可憐な娘・お梅に池内淳子が扮しているのにも注目。日本の怪談の最高傑作で、涼しいひと夜を!

掲載2001年07月27日

「編笠十兵衛」表の顔を使い分ける村上弘明に注目。

(あみがさじゅうべい) 1997

掲載2001年07月27日

 表の顔はのんきな和菓子屋の亭主。実は、将軍家から「御意簡牘(ぎょいかんとく)」という天下御免の札を与えられた隠密の剣士・月森十兵衛。「生類憐れみの令」などとんでもない政策が罷り通り、赤穂浪士は密かに仇討ちを企むご時世に、正義の心を抱く十兵衛は、いかに働くのか?
 池波正太郎が、「忠臣蔵」を裏側から描いてみせた名作。十兵衛が、公儀の役人でありながら、赤穂浪士を密かに助ける活躍に、池波作品らしい男気が感じられる。
 主演は村上弘明。公儀の人間でありながら、悪法を批判する精神を待つまっすぐな剣士を、若々しく演じている。夫の裏の活躍を知ってか知らずか。おっとりと、また時には「ちゃんとうちのこともやってくださいよぉ」と十兵衛をやりこめる可愛い妻に藤真利子、哀しい宿命を持つ女密偵に大沢逸美、十兵衛と友情で結ばれる堀部安兵衛に三浦浩一など、配役はユニーク。
 初回、老中柳沢(西田健)の愛犬の行列の騒動に巻き込まれた十兵衛だが、帯に下げた葵のご紋入りの天下御免札で難を逃れる。人より犬を大切にする世の矛盾を身をもって体験した十兵衛。今週はいよいよ赤穂浪士の討ち入りも迫り、事態は緊迫。大石内蔵助はじめ、浪士たちをつけ狙う敵と、十兵衛との闇の死闘が続く。十兵衛は、志を守り抜けるか?お楽しみに。

掲載2001年07月20日

「編笠十兵衛」英樹主演の池波作品。大御所も続々登場。

(あみがさじゅうべい) 1974年-1975年

掲載2001年07月20日

近年、バラエティ番組などに多数出演している高橋英樹の正統派時代劇。
 表向きは浪人だが、実は二代将軍の密命を受けて、赤穂浪士を影で助けた男。それが月森十兵衛だ。柳生新陰流の使い手で、いつも浅目の編笠を被っているところから、人呼んで、編笠十兵衛。公儀のやり方に納得できず、討ち入ることになった赤穂浪士を、公儀の人間が助けるという斬新な展開。赤穂の敵、吉良方・小林平八の露口茂ほか、伊藤雄之助、成田三樹夫ら個性派が英樹のライバルとなる。
また、特別出演の片岡千恵蔵はじめ、大友柳太朗、中村竹弥と、大御所も続々登場。”忠臣蔵外伝”としての楽しみも多い。
 高橋英樹のテレビ俳優歴からみると、「一見浪人、実は剣の達人で身分もある武士」とのパターンはかなりある。
 代表的なのが、「桃太郎侍」で、長屋に住むのんきな桃太郎が、実は実力者の双子で、時には世の鬼退治に出る。また、「隼人が来る」では、旗本が浪人に扮して、各地の悪を成敗。刀に差した菊の花びらをパーッと散らし、見せる剣は、花吹雪抜刀流。とてつもなく派手な剣だ・・・これからの作品から比べると、同じ「一見浪人、実は」のパターンでも、この編笠十兵衛は、常に赤穂浪士の影に回り、地味に動くことが宿命。桃太郎的英樹とは、ひと味違う魅力を、発見できる。

掲載2001年07月06日

「鬼平犯科帳」待望の5シリーズ、6シリーズの特集

(おにへいはんかちょう」たいぼうの5シリーズ、6シリーズのとくしゅう) 1994〜1995

掲載2001年07月06日

「いつの世にも悪は絶えない」名人・中西龍のナレーションのひと声で、わくわくする人も多いはず。「映像で綴る池波正太郎の世界・第2章」でも、待望の鬼平の登場だ。
 凶悪犯罪を専門に扱う火付盗賊改方長官・長谷川平蔵。人呼んで「鬼平」は、部下や密偵らと江戸の闇に挑む。自らも方蕩無頼の生活を送った過去を持ち、弱者には温かく、悪には鬼となる人柄は、「理想の上司」としてOLにも人気なのはご存じの通り。
 今回は第5シリーズと第6シリーズを一挙放送。ストーリーの一部をご紹介するとー大女の上に腕っぷしが強すぎて嫁の貰い手のなかったおまゆ(長与千種)が、スリの男又吉(春風亭小朝)を改心させ、所帯を持つ。平蔵はもしまた又吉が悪い癖を出せば、今度は死罪を覚悟しなければならないと心配する。その心配が的中したと悟ったおまゆは、衝撃的な決着をつける。長与千種の熱演が光った「市松小僧始末」
 平蔵の前任者のやり方に嫌気がさして、盗賊の女と逃げた元火盗同心・高松(渡辺裕之)が、元上司で今は平蔵と仕事をする与力佐嶋(故・高橋悦史)と再開。平蔵の人柄を知った高松は、再び昔の情熱を取り戻そうとするが...男と女の悲しみや男気の潔さ。池波作品の真髄を味わえる「消えた男」などなど。
 何度でも見たい名作が続く。20日16時からはスペシャル企画もあり。
要チェック!

掲載2001年03月29日

暁に斬る!

(あかつきにきる!) 1982年

掲載2001年03月29日

 愛する女を苦境から救うために、すべてを捨てた並木平四郎。町医者として慕われる彼のもうひとつの顔は、許せぬ悪を退治する閻魔だった。男気溢れる平四郎に北大路欣也、辛い過去を持つ妻に名取裕子、平四郎を助ける親友に山城新伍がそれぞれ扮している。
 北大路、山城の鍛えぬかれた見事な殺陣と、なぜか頻繁に登場するふたりの入浴シーン、五月みどり姐さんの艶っぽさも楽しめるエンターテインメント時代劇。
 悪が許せぬ性格で、悩みつつ捨てたはずの刀をとる平四郎。その度にいちいち押入れから刀を出して手渡し、閻魔の夫を送り出す妻。この番組は、ふたりのメロドラマでもあった。世俗に長けた道場主の山城新伍は、利益にもならない閻魔の活動をあまり歓迎していない風だが、いざとなると必ず助けにやってくる。また、平四郎に惚れつつも妻との強い絆に入り込めない五月みどり。北大路、名取、山城、五月。この四角関係はあまりに濃い、アダルトな味。

掲載2001年03月06日

江戸の波涛

(えどのはとう) 1979年

掲載2001年03月06日

 江戸市中有数の花街、深川で殺人事件がおきる。探索に乗り出した若い与力は、聞き込んだ町人たちの証言が微妙に食い違っていることに気づく。やがてたどり着いた真相は…。
 原作は大衆文学として人気の高い山本周五郎の「しじみ河岸」。主演は沖雅也。共演はいしだあゆみ、田村高廣、奈良岡朋子、早乙女愛などクセ者揃い。「座頭市」「木枯し紋次郎」を手がけた森一生監督が、周
五郎の世界を描きこんだ佳作。
 当時の沖雅也は、日本テレビ系で放送された探偵ドラマ、「俺たちは天使だ!」(主題歌とサブタイトルが揮っていたよね)にも主演していて絶好調。 時代劇では「必殺仕置人」の棺桶の錠、「必殺仕置屋稼業」の市松などの印象が強いが、本作や、若い岡っ引きに扮したNHKの「ふりむくな鶴吉」(74年)など、味のある作品にも出演している。監督の森一生は市川雷蔵主演の「薄桜記」、勝新太郎が本物のスターになるきっかけとなった「不知火検校」(60年)などを手がけた時代劇の名匠。かのデニス・ホッパーも高く評価しているほどなのだ。

掲載2001年02月21日

大江戸捜査網

(おおえどそうさもう) 1972年

掲載2001年02月21日

隠密同心心得の状
“死して屍拾う者なし!”
のナレーションでお馴染み。
 同心たちが潜入、変装、囮とスパイ的作戦で悪に挑む。主演は十文字小弥太こと杉良太郎。ほかに通に人気のニヒルな剣客、井坂十蔵に瑳川哲朗。美人芸者小波に梶芽衣子、女スリ山猫のお七に岡田可愛らシリーズ創設メンバーが大暴れする。寺田農、三浦布美子、辰巳柳太郎、
ジュディ・オングら、多彩なゲストもお楽しみ。
 本作と自動車メーカー、日産のCMをセットで記憶している人も多いはず。なにしろ、当時の日産の社長が大の時代劇ファンで、
“土曜の夜に時代劇が欲しい”(だって自分が見たいからさぁ)
との発言から始ったという説があるくらい。ペリーは番組関係者からもそういう証言を得ているのだ。
 番組の人気が上がるにつれて、日産幹部も鼻高々だったという。放送初期は、ロマンポルノ路線に入る前の日活が制作していたため、時代劇映画に勝るとも劣らないセットと内容で、目の肥えた映画ファンをもうならせた。日活伝統の派手なアクションは、今も画面から溢れている。

掲載2001年02月14日

江戸の渦潮

(えどのうず) 1978年

掲載2001年02月14日

 第一線は退いたが、剣の腕は衰えない元同心とその息子が江戸の悪と戦う。父に小林桂樹、息子が古谷一行というユニークな顔合わせ。八双飛びなど、小林桂樹が珍しく激しい立ち回りを見せるのも注目。さらに彼らを助ける渋い岡っ引きに露口茂。小野ヤスシ、左とん平、小松政夫と充実した喜劇陣もいい味を出している。下町の情緒と事件解決の爽快感を楽しめる、痛快捕物時代劇の秀作。
 本作は、当時(昭和50年代の最初の方ね)、加山雄三主演の「江戸の旋風」に始った、フジテレビ系の「江戸」シリーズの一遍。ほかにも「江戸の朝焼け」とかあったんだけど、覚えてる人いるかな? でもって、このシリーズでは、若手を積極的に起用し、古谷一行はじめ、沖雅也、村野武憲、柴俊夫、鹿賀丈史らが女性ファンを楽しませてくれた。
 ちなみに、フジテレビの時代劇プロデューサーの能村庸一氏の著作、「実録テレビ時代劇」(東京新聞出版局)によれば、「江戸」シリーズの脚本公募で二席に残った注目の新人が、後の売れっ子作家、赤川次郎その人だったとある。やっぱり、女の子が活躍するミステリー仕立ての時代劇だったのかしらん。

掲載2001年01月18日

鬼平犯科帳

(おにへいはんかちょう) 1992年

掲載2001年01月18日

 人を傷つけない完璧な盗みを信条とする伝説の盗賊のお頭が、凶賊たちに命がけの敵討ちを仕掛ける。互いの身分を明かさずに語り合うお頭と鬼平…。中村又五郎のお頭ぶりが心に残る「討ち入り市兵衛」。
 ほかにも、中村橋之助の「盗賊婚礼」、山田五十鈴の「正月四日の客」など、豪華ゲストの出演と充実した内容の中村吉右衛門主演「鬼平犯科帳」の第四シリーズ、いよいよ本日より見参!
 人間のずるさ、情けなさの描写も素晴らしい池波正太郎。第四シリーズでは、気弱な同心(中村歌昇が好演!)が、堅い女房をもらったものの、浮気心が頭をもたげて…という「俄か雨」、大盗賊の女(光本幸子)が、盗賊の辞世の句を作る金をちょろまかす話「鬼坊主の女」、一度は手放そうとした隠し金に執着する浪人(中村忠雄)の「埋蔵金千両」など、味のある作品が続く。なお、「鬼坊主」に扮するのはガッツ石松。配役の妙もお楽しみに。

掲載2001年01月10日

浮世絵女ねずみ小僧

(うきよえおんなねずみこぞう) 1971年

掲載2001年01月10日

 昼は常磐津の師匠、夜は怪盗ねずみ小僧。ウワサの義賊が実は女、それもとびっきり色っぽい小川真由美だったから、さあ大変。相棒の男ねずみ、田中邦衛とコミカルなやりとりを繰り広げつつ、悪い大名をギャフンと言わせて大人気。天井裏での立回り、塀を飛び越えるシーンまでほとんど吹き替えなし。真由美ねずみの熱演に注目。田村正和ら共演陣、早坂暁らの脚本陣、工藤栄一らの監督陣も豪華。
 本作は、あの「木枯し紋次郎」と交互に放送された人気作品。なんと言っても誰にもマネのできない小川真由美の存在感がスゴイ!
 色っぽさを演出するために、片肌どころか、もろ肌脱ぐのもいとわない体当たりぶり。おかげで、体に巻くバスタオルが撮影のたびに必要になり、夏は日に3回取り替えてのべ30枚も必要だったとか。ちなみに魅惑の後れ毛は、真由美の自毛で撮影のために酷使したつけで、すっかり抜けてしまったらしい。
 ペリーのオススメは北川美佳のニセねずみとの対決シーン。

ペリー荻野プロフィール
ペリー荻野

1962年愛知県生まれ。大学在学中よりラジオのパーソナリティ兼原稿書きを始める。 「週刊ポスト」「月刊サーカス」「中日新聞」「時事通信」などでテレビコラム、「ナンクロ」「時代劇マガジン」では時代劇コラムを連載中。さらに史上初の時代劇主題歌CD「ちょんまげ天国」シリーズ全三作(ソニーミュージックダイレクト)をプロデュース。時代劇ブームの仕掛け人となる。

映像のほか、舞台の時代劇も毎月チェック。時代劇を愛する女子で結成した「チョンマゲ愛好女子部」の活動を展開しつつ、劇評・書評もてがける。中身は"ペリーテイスト"を効かせた、笑える内容。ほかに、著書「チョンマゲ天国」(ベネッセ)、「コモチのキモチ」(ベネッセ)、「みんなのテレビ時代劇」(共著・アスペクト)。「ペリーが来りてほら貝を吹く」(朝日ソノラマ)。ちょんまげ八百八町」(玄光社MOOK)「ナゴヤ帝国の逆襲」(洋泉社)「チョンマゲ江戸むらさ記」(辰己出版)当チャンネルのインタビュアーとしても活躍中。