ペリーのちょんまげ ペリーのちょんまげ

掲載2001年01月10日

鬼平犯科帳

(おにへいはんかちょう) 1971年

掲載2001年01月10日

 悪党たちには鬼より怖い、火盗改長官の鬼平こと長谷川平蔵の活躍を描く人気作。
 今回は原作者、池波正太郎が鬼平のモデルにしたといわれる松本白鸚主演編。併せて放送中の息子の中村吉右衛門主演編とは、趣の異なる貫禄を見せる。古今亭志ん朝の木村忠吾、富士真奈美のおまさなどレギュラー、岸田森、殿山泰司、加藤嘉、木村功らゲストの充実も楽しみ。“昭和の鬼平”の風格と原作の面白さを堪能して欲しい。
テレビ化にあたっては、
“とにかく主演は白鸚で”
と、池波先生からのたってのご指名で初代鬼平が決定した。シリーズでは、白鸚鬼平の風格と原作の面白さで合計91本制作された。池波先生はしばしば撮影現場に足を運び、脚本にも細かく注文を出したという。
 ちなみに中村吉右衛門主演編でも活躍した脚本家の阿部徹郎は、この松本白鸚主演編が初の時代劇作品。放送当時は、古今亭志ん朝の意外な役者ぶりが人気であった。
 参考までに付け加えると、テレビ時代劇の鬼平は初代が松本白鸚、二代目が丹波哲郎、三代目が萬屋錦之介、四代目が中村吉右衛門。

掲載2000年12月19日

お命頂戴!

(おいのちちょうだい!) 1981年

掲載2000年12月19日

 天保初期の江戸。将軍家慶(伊吹悟郎)の腹心、奥祐筆・内藤左門(片岡孝夫)には、人知れず悪人を裁く“かみそり左門”という裏の顔があった。将軍の密命を受け、ふたりの配下(ハナ肇、新藤恵美)と潜入した先で、つかんだ陰謀の正体は…。現・片岡仁左衛門がシャキッとした立ち回りに加え、板前、盗賊、浪人、渡世人と13話で十三変化を見せるのもお楽しみ。松坂慶子、伊藤さやかなど女優陣にも注目。
 当時、歌舞伎の若手スターはテレビに続々登場。松本幸四郎の「騎馬奉行」、尾上菊五郎の「斬り捨て御免!」。そして、この「お命頂戴!」。舞台で鍛えた足腰の強さは、いずれも見事に殺陣に生きていた。片岡孝夫の時代劇でいうと、「眠狂四郎」も有名だが、円月殺法で次々に強敵を倒し、虚無で感情の起伏のない役柄ながら、片岡孝夫やると、どこか温かさを感じる狂四郎であった。それも人柄というものか。

掲載2000年11月21日

映画「必殺!Ⅲ裏か表か」

(えいが ひっさつ!Ⅲうらかおもてか) 1986年

掲載2000年11月21日

 ハードな演出で「必殺」に独特の緊迫感を出した工藤栄一監督。
映画版では藤田まことの中村主水に竜(京本政樹)、政(村上弘明)、秀(三田村邦彦)に松坂慶子、柴俊夫、笑福亭鶴瓶、伊武雅刀、成田三樹夫と豪華キャストを自在に操り、江戸の闇金融と仕事人の死闘を描いた。生き残るのは誰か。凄絶なラストに工藤監督らしさがしのばれる追悼企画。
「必殺シリーズ」後期の代表作といえば、やはり「仕事人」。本作では、ほぼ2年ぶりに秀が復帰。女性ファンにも人気の竜、政、秀がそろうのは快挙といえた。土砂降りの雨の中で仕事を果たす秀の映像に、工藤監督の心意気を見た思いがする。また、テレビの「必殺仕事人Ⅴ激闘編」で加わった“はぐれ仕事人”壱(柴俊夫)と参(笑福亭鶴瓶)の活躍も見もののひとつ。大事なレギュラーまで殺させてしまう展開に、思わず息を飲む。

掲載2000年10月30日

仇討選手

(あだうちせんしゅ) 1981年

掲載2000年10月30日

 赤穂浪士の快挙に大騒ぎの元禄時代。すっかり仇討ちにとりつかれたお殿様を喜ばすため、植木屋の由松は無理やり侍にされ、親の仇討ちをすることになる。刀を持つのも初めての由松は、ずっこけながらもなんとか形だけは整え、仇を求めて西東。やっと仇とめぐり合って、本懐をとげようとするが、裏にはとんでもないカラクリが…。
愚かな殿様と家臣の右往左往。形式ばかりの武士の世界を、大いに笑わせながら見事に皮肉った長編。無声映画時代に大河内伝次郎が演じた伝説の役を、堺正章が大熱演。
 この作品、原作モノなのだが、そちらのほうでは、由松は武士社会の裏切りにあい悲劇的な結末をむかえることになっている。しかし、そこはマチャアキのキャラクターあっての作品だけに、果たして原作どおり悲劇とあいなりますか。そこは見てのお楽しみ。
 共演は、可憐な森下愛子をはじめ、山口果林、秋野太作ら。主演のマチャアキはこの役にほれ込み、平成11年、自らが座長をつとめた明治座の芝居「忠臣蔵症候群・仇討ちでござる」でふたたび演じたほど。ペリーも見に行ったのだが、舞台では幽霊となった父親役を植木等が演じて、芸達者同士で息の合ったところを見せていた。

掲載2000年10月28日

絵島生島

(えじまいくしま) 1971年

掲載2000年10月28日

 江戸城大奥史に残る一大スキャンダルとなった”絵島生島事件”。
七代将軍家綱の生母に仕える大年寄り絵島は、山村座の人気役者、生島新五郎を本気で愛してしまう。叶うはずのない恋は女の情念渦巻く大奥で悲劇へと突き進む。
絵島に有馬稲子、生島には本作で本格的テレビデビューを飾った現、片岡仁左衛門。生島の水も滴るいい男ぶりもお楽しみ。
この番組の制作当時、テレビ時代劇はちょっとした“大奥”ブームだった。まずは連続ドラマから思いつくままに挙げてみると、佐久間良子の「徳川の夫人たち」(67年)、藤純子、現建設大臣の扇千景らの「大奥」(69年)、「大奥の女たち」(71年)。単発長時間モノでは、「大奥開かずの間」、「大奥悪霊の館」、「大奥殺人事件」、「大奥犯科帖」、「大奥妖怪の墓」など次から次へと出てくる。
どの作品も、千人もの女の欲望と嫉妬がどろどろと渦巻いてってカンジなのだ。純愛をテーマにした「絵島生島」は大奥モノではむしろ珍しい作品といえるかも。

掲載2000年10月10日

江戸の牙

(えどのきば) 1979年

掲載2000年10月10日

 江戸の治安を守るための秘密組織”江戸の牙”。与力で二刀流の精四郎(天知茂)をリーダーに、太刀で一刀両断の伝十郎(若林豪)、火薬に強くバズーカ砲までぶっ放す兵助(藤村俊二)、槍の半兵衛(坂上二郎)。鉄壁四人組を束ねるのは、ご存じ三船敏郎。
“閻魔様のおつけぇよ!”
と悪に名乗る渋い四人組の豪快な殺陣でスカッとした気分になれる。
この作品、三船プロ系作品らしく、史実がどうのと細かいことは言わず、見る側にビシバシ攻め込んでくるカンジがイイ。クライマックスで悪の巣窟に乗り込む四人組が、ババッと上着を脱げば、全員白地に「南無妙法蓮華経」の染め抜き文字。ペリー的には、もう、“死して屍拾うもの無し”(繰り返し)
という、「大江戸捜査網」の決り文句を思い出してしまう。なぜって、ナレーターが両作品とも同じ黒沢良なので、どうしても連想してしまうのよ。新人同心役で、京本政樹、三船の娘役で竹下景子なども出演。天知茂が自ら作詞した主題歌も耳に残る。

掲載2000年10月09日

鬼姫競艶録

(おにひめきょうえんろく) 1956年

掲載2000年10月09日

 美空ひばりが、ある時は可憐なお姫様、ある時は腕の立つ若衆姿で大活躍。お互いライバル心旺盛な将軍吉宗と尾張藩主宗春。とうとう双方所有の名犬で対決することに。宗春の娘綾姫(ひばり)は、名犬を求めて、狼が出る山中へ…。謎の陰謀集団と二枚目隠密との淡い恋。怒る猛犬を歌でおとなしくさせるなど、ひばり姫の勇姿をお楽しみに。
この話、前述のとおり殿様同志の犬自慢が発端なのだが、そのやりとりが笑えるのだ。
吉宗に名犬、日本丸を見せびらかされてムッとした宗春は、犬を飼ってもないのに、
“当家の名犬、鯱太郎の方があんたの犬よりずっとスゴイもんね〜”
と言ってしまう。
吉宗が、
“ウチの日本丸は暴れ馬を制したぞよ”
と、自慢すれば、宗春は、
“なんのなんの、鯱太郎は巨象を倒してござりまする〜”
なんてことを言う始末。
まるで子どものケンカだ。ケンカに駆り出された家臣はたまったものではないが、そこに登場したひばり姫。智恵と度胸で見事騒動を裁いていく。原作は「遠山の金さん」の陣出達朗。共演の丹波哲郎もいい味だしてます。

掲載2000年09月22日

嵐寿の鞍馬天狗祭り

(あらかんのくらまてんぐまつり) 

掲載2000年09月22日

戦前から戦後にかけて国民的ヒーロー・鞍馬天狗。黒の着流しの懐に短筒をしのばせ、幕末の京都に神出鬼没。演ずるはご存じ、嵐寛寿郎。40作品ものシリーズ中から貴重な無声版、松島トモ子扮する杉作の歌が愛らしい最終作など傑作7作品を一挙放送。宿命のライバル、近藤勇との決着はつくのか!?チャンバラの面白さを存分に堪能できる一日だ。
前にも記したが、天狗シリーズは全部で40作品にもなる。かなりの時代劇マニアでも、全作品を見ている人はそうはいないだろうから、今回はチャンス。放送する7作品はとくにテンポのよい作品がおおいし、バリエーションにも富んでいるので、初めての人には新鮮に、オールドファンには懐かしく天狗シリーズの魅力を味わう格好の機会なのだ。
作品のなかには、相手の眼を見つめて妖術にかける怪僧に
“よっぽどにらめっこが好きと見える”
と言ったりするモノもあれば、
誘拐事件の身代金受け渡しに使うダミーの千両箱に、石と“粗品 鞍馬天狗”と書いた、のし紙を入れたりするモノもある。
けっこう、お茶目な一面もあるヒーローだ。
 嵐寛は56年の「疾風!鞍馬天狗」を最後に天狗役を引退。
“天狗も歳をとりました”
の名セリフを残した。当時、53歳、今年没後20年を迎える永遠のチャンバラスターである。

掲載2000年09月14日

鬼平犯科帳

(おにへいはんかちょう) 1992年

掲載2000年09月14日

 ご存じ中村吉右衛門の鬼平第3シリーズも佳境に。今週は盗賊女と深い仲になった元同心の激情を描いた「おしま金三郎」、ひょうきん者の同心と無垢な盗賊の娘の悲恋、鬼平が娘をあきらめろと諭す場面が胸にしみる「忠吾なみだ雨」、なかでも鬼平配下の密偵が全員集合、悪人にひと泡ふかせる「密偵たちの宴」の面白さは抜群。今週もお見逃しなく!
 このほか、ペリー的にオススメなのが15日放送の「おみよは見た」。殺し屋小平次役の近藤正臣がいいのだ。小平次の殺しの現場を目撃したはずの少女は、なぜか口をつぐむ。一方、目撃者は消すのが掟の殺し屋が、妹の面影をおみよに見て手を下せない。再び出会う小平次とおみよ。ほとんどセリフがないのに、その心情が伝わるのは、近藤正臣とおみよ役の吉沢秋絵の熱演あってこそ。前述の鬼平マニアの間で評価の高い「密偵たちの宴」と併せて必見!

掲載2000年08月17日

鬼平犯科帳

(おにへいはんかちょう) 

掲載2000年08月17日

この番組を見てから池波作品を読破した、ジプシーキングスの主題歌を着メロに使っている、など様々な反響を呼んでいる名作、中村吉右衛門版「鬼平犯科帳」。77日間連続放送中の長丁場、今週は第二シリーズに入る。犬塚弘の粋な盗人ぶりと、上方の兇賊、金田龍之介の極悪ぶり、妻を殺された若き同心(香川照之)の哀しみが胸に迫る「流星」、峰竜太の役者ぶりが光る「お峰徳次郎」、若い頃放蕩無頼を極めた鬼平が関わった女の話「むかしの女」は山田五十鈴が登場。人気のラインナップが続くのでお見逃しなく。
「鬼平」といえばゲスト陣が豪華だが、山田五十鈴はそのなかでも印象的な女優のひとり。撮影の現場で彼女がひとこと「きれいに撮ってね」と言うだけで、現場の雰囲気がぐっと引き締まったという逸話を持っている。素人のペリーにも、なんだかその様子が目に浮かぶような気がするくらいだから、そんじょそこいらの存在感とはわけが違うってなもんだ。
「むかしの女」では、五十鈴が三味線で「薗八(そのはち)」という節を弾くシーンがある。ほんの五分たらずのシーンなのだが、完璧に演奏するためにこの大女優は専門家の元に稽古に通ったそうだ。う〜ん、さすが。それほどの思い入れがあったから、鬼平と五十鈴のからみは何度見てもいいんだな…、納得。

ペリー荻野プロフィール
ペリー荻野

1962年愛知県生まれ。大学在学中よりラジオのパーソナリティ兼原稿書きを始める。 「週刊ポスト」「月刊サーカス」「中日新聞」「時事通信」などでテレビコラム、「ナンクロ」「時代劇マガジン」では時代劇コラムを連載中。さらに史上初の時代劇主題歌CD「ちょんまげ天国」シリーズ全三作(ソニーミュージックダイレクト)をプロデュース。時代劇ブームの仕掛け人となる。

映像のほか、舞台の時代劇も毎月チェック。時代劇を愛する女子で結成した「チョンマゲ愛好女子部」の活動を展開しつつ、劇評・書評もてがける。中身は"ペリーテイスト"を効かせた、笑える内容。ほかに、著書「チョンマゲ天国」(ベネッセ)、「コモチのキモチ」(ベネッセ)、「みんなのテレビ時代劇」(共著・アスペクト)。「ペリーが来りてほら貝を吹く」(朝日ソノラマ)。ちょんまげ八百八町」(玄光社MOOK)「ナゴヤ帝国の逆襲」(洋泉社)「チョンマゲ江戸むらさ記」(辰己出版)当チャンネルのインタビュアーとしても活躍中。