ペリーのちょんまげ ペリーのちょんまげ

掲載2001年09月07日

「必殺からくり人」山田五十鈴の貫禄と森田健作の必殺技に注目

(ひっさつからくりにん) 1976

掲載2001年09月07日

 天保の江戸。
 芸者置屋「花乃屋」の女将仇吉(山田五十鈴)、その娘とんぼ(ジュディ・オング)、番頭の藤兵衛(芦屋鴈之助)と花火師・仕掛の天平(森田健作)、枕売りの夢屋時次郎(緒形拳)には、人に言えない秘密があった。ひとつは、集団で嵐の中、島抜けした過去を持つこと。あとひとつは、許せぬ悪人を葬る「からくり人」であること...。
 シリーズ初主演である山田五十鈴をはじめ、個性派が結集。必殺シリーズの中でも、リーダーを中心にもっともまとまりのよいチームであった。
 三味線のバチで華麗な技を見せる仇吉、枕を作るヘラを武器にする時次郎、怪力の藤兵衛など、ベテランらしい技もいいが、なんといっても派手なのが天兵の花火技。相手の口に花火を押し込んで爆発。あばら骨が見える映像は、必殺らしい演出。
 名脚本家・早坂暁が書き込んだストーリーだけに、島抜けした過去やとんぼの実の父親がからむ事件、互いに思い合うとんぼと天兵の悲劇など、話が深く、哀しい。
 また、工藤栄一監督演出による最終回、恐ろしい殺し屋集団“曇り”との対決は迫力。
緊迫した中、天真爛漫でのんきなへろ松(間寛平)の存在が楽しい。全編に登場する山田五十鈴の三味線も聞き物。全13話と短めなので、お見逃しなく!

掲載2001年06月25日

炎の奉行大岡越前 こんなに波乱万丈とは!驚きの奉行生活。

(ほのおのぶぎょうおおおかえちぜん こんなにはらんばんじょうとは!おどろきのぶぎょうせいかつ。) 1997年

掲載2001年06月25日

 一般的に「大岡越前」といえば、罪を憎んで人を憎まず。人情優先の「大岡裁き」で有名だ。なんとなく庶民派のイメージを持っている人も多いと思う。が、ここに描かれる越前は、ちょっと違う。なんたって「炎の奉行」だもの。燃える男なのだ。
 もともと地元伊勢の山田奉行だった越前は、その清廉潔白な人柄を、後に将軍になる徳川吉宗に見込まれる。吉宗が将軍になると江戸に呼ばれて町奉行に。これは大抜擢といえた。
しかし、世は元禄バブルがはじけて、幕府は超経済難。質素倹約で乗り切ろうという将軍と、華やかな元禄時代を忘れられない人々とはなかなかうまくいかない。
 そんな中、赤穂浪士の討ち入り騒動や、大盗賊雲切仁左衛門の陰謀、そして、なんと吉宗の隠し子、天一坊まで現れて...。これだけ大事件が続く上に、講談でもおなじみのエピソード「二人母」(産みの母と育ての母、どちらに子を?の名裁き)や「三方一両損」(拾った金を拾い主と落とし主のどちらに?のお裁き)などを片づけなければならない、お奉行の多忙といったら!「炎」がついてる意味もご理解いただけると思う。
 主役は市川團十郎。妻たえに高樹沙耶、柳沢吉保に津川雅彦、大石内蔵助の柄本明、吉良上野介の石橋蓮司(本人大ノリの演技が光)と豪華共演陣に、特別出演で中村勘九郎も登場。文句なく楽しめるお奉行の大活躍。

掲載2001年03月26日

長谷川一夫祭り

(はせがわかずおまつり) 1938年ほか

掲載2001年03月26日

 大スクリーンにあの美しいお顔がアップになると、観客がいっせいにどよめいた、という伝説を残す名優長谷川一夫。
 今回は、芸一筋の役者の非情さを描く「藤十郎の恋」、股旅物の傑作「「瞼の母」、原節子との共演作「蛇姫様総集編」、ハリウッドの原作を、江戸時代に置きかえたミステリー「昨日消えた男」、天下の二枚目のはまり役「源氏物語」など代表作を一挙放送。美男の名演技にため息。
 長谷川一夫は京都に生まれ、おじの経営する芝居小屋で五歳のときに初舞台を踏む。関西歌舞伎の中村鴈治郎の弟子となり、子役から女形へと進んだが映画界に転身。日本を代表する二枚目として大活躍した。
 今回放送される作品のほか、「銭形平次」シリーズや、カンヌ映画祭でグランプリをとった衣笠貞之助監督の「地獄門」などの代表作がある。ペリーのイメージとしては、常にベールに覆われた甘いマスクのスター様。後に、宝塚歌劇の「ベルサイユのばら」を演出して大ヒットさせたのも、このお方。

掲載2001年03月16日

旗本退屈男

(はたもとたいくつおとこ) 1971年

掲載2001年03月16日

 ご存知、天下御免の向こう傷、額に三日月の傷を持つお殿様、早乙女主水之介の行く先に事件あり。剣は諸羽流、体術は揚心術、軍学まで修めた達人ながら無役で退屈。桃太郎侍の上を行く、派手な出で立ちで悪者退治を趣味とする。時代劇ならではのヒーローを高橋英樹が豪快に演じた。妹役に柏木由紀子、その恋人役に片岡孝夫(現仁左衛門)、水野久美の色っぽさもいい痛快作。
 歳は33歳、直参旗本で石高は三千石。本所割下水に屋敷を構え、派手な着流しで市中を歩き回る。花街のねえさんたちにも顔がきく。まさに大江戸独身貴族の主水之介。トレードマークの三日月傷は、浅草雷門で長州藩の暴れ者七人と斬り合ったときにできた勲章だという。
 時には大勢の悪人をたたっ斬り、時には謎解きにも挑む主水之介だが、すべて
“退屈の虫が騒いだから”
と、ボランティアに徹しているところがすごい。高橋英樹のキャラにはピッタリであった。

掲載2001年01月02日

映画「旗本退屈男 江戸城罷り通る」

(はたもとたいくつおとこ えどじょうまかりとおる) 1952年

掲載2001年01月02日

 額には天下御免の向こう傷。自称、退屈男の旗本、早乙女主水之介は、退屈の虫が騒ぐままに難事件の解決に乗り出す。
 本作では、将軍御落胤を名乗る謎の男の正体を暴くべく、八面六臂の大活躍。場面ごとに衣装替えをしている(本当の話!)といわれたほど、豪華絢爛な衣装は見もの。また、主演の市川右太衛門自ら考案したという、華麗な諸羽流青眼崩しの剣技におおらかな時代劇の魅力が溢れる。
 主水之介のトレードマーク、額の向こう傷は、浅草で長州の暴れ者七人と渡り合ってできたものといわれ、キメのセリフは
“はがして飲めばオコリの妙薬。これひとつあれば江戸八百八町提灯がいらない”
三日月傷だという。傷をはがして薬にしたり、提灯がわりになるという発想がすごい。テレビでは右太衛門の息子、北大路欣也が演じているが、やはり華やかさでは父の勝ち。なんたって一本の作品でおめしになった豪華衣装が最高14、15着。その衣装代は、共演者全員分と同じだったという伝説が残っているほどなのだ。

掲載2000年11月20日

必殺シリーズ 工藤栄一監督追悼特集

(ひっさつシリーズ くどうえいいちついとうとくしゅう) 1976年

掲載2000年11月20日

 スピード感と陰影ある演出で、時代劇にも傑作の多い工藤栄一。
必殺シリーズの工藤作品一挙放送(11月23日)の大企画から紹介するのは、山田五十鈴、芦屋雁之助、緒形拳、森田健作らの殺し屋が登場する「必殺からくり人」。
 ペリーのオススメは原泉の鬼母が迫力の「息子には花嫁をどうぞ」、垂水悟郎の悪人ぶりが光る「私にも父親をどうぞ」など、どれもこれもお見逃しなく!
 終日の追悼特集では、早朝と深夜に「助け人走る」で田村高廣を暴れさせ、午後には「必殺必中仕事屋稼業」でギャンブルと殺しの技を見せる。ほかにも「翔べ!必殺うらごろし」、「必殺からくり人血風編」、藤田まことの映画版「必殺!�V裏か表か」も登場。とくに午後12時40分からの「必殺からくり人」最終回、午後18時30分からの「必殺必中仕事屋稼業」最終回は、ファンならずとも涙無くしては見られない展開。
 もっともっといい時代劇を見せて欲しかった、工藤監督!合掌。

掲載2000年11月15日

必殺からくり人血風編

(ひっさつからくりにんけっぷうへん) 1976年

掲載2000年11月15日

 幕末、維新に揺れる品川宿に人知れず悪を葬るからくり人が集う。旅籠の女将で元締めの草笛光子、謎の男で実は薩摩の密偵という山崎努、怪力の女衒、浜畑賢吉、妖艶な小姓のピーター、情報屋の女中、吉田日出子。
 本作は、必殺シリーズの中でも設定もキャストもかなり異色。チャールズ・ブロンソン風の口ヒゲをたくわえ、銃を操る山崎努にご注目を!
 中村主水はじめ、必殺ファンにはたいてい“好きなキャラクター”がいるもので、山崎努ファンもかなりの数にのぼるはず。本作では“土左衛門”というふざけた名前だったが、山崎努の「必殺シリーズ」における代表的な役は「必殺仕置人」の坊主くずれの骨接ぎ師“念仏の鉄”である。鉄の技は、指三本で相手の骨をはずしてしまうというもの。その映像表現にレントゲンを使うという、空前絶後のアイデアもまたスタッフの必殺技だった。レントゲン映像はあまりに好評で、後のシリーズではご丁寧に心電図入りで登場したほどだ。
 因みに、鉄は必殺骨はずしを駆使して、後の「新・必殺仕置人」で復活をはたす。しかし、最終回で手を焼かれてまさかの絶命。ファンを嘆かせた。

掲載2000年11月14日

必殺仕掛人

(ひっさつしかけにん) 1972年

掲載2000年11月14日

 池波正太郎の傑作をもとに許せぬ悪を挑む殺し屋の姿を描く。
 元締めで島帰りの夫婦(山村聡・中村玉緒)、鍼医梅安(緒形拳)、浪人、西村左内(林与一)らの表と裏の顔、仕掛の技など、必殺シリーズ元祖の面目はさすが。11月13日の放送は記念すべき第一回「仕掛けて仕損じなし」。ヒールの浜田寅彦、高品格の悪辣ぶり、深作欣二監督の緊迫感あふれる演出が冴える。深作監督といえば最新作「バトルロワイアル」が公開中だけど、仕掛人の必殺技はそっちでも生かされているのかしらん?
 演出の深作監督が意気昂揚なら、主演の緒形拳も相変わらず元気で、競馬のCMで松嶋菜々子と共演しているし、今秋には紫綬褒章も受けている。「仕掛人」当時は三十代で、立ち回りも濡れ場もノリまくりだった。母親に捨てられ、鍼の師匠に拾われたのはいいが、女に裏切られ、初めて殺しに手を染めた梅安。殺しで得た金を花街で散財する刹那的な生き方を、緒形拳は調子よく演じていた。まさにハマリ役ってヤツ。講談社から出ている原作文庫本のカバーに描かれている梅安のイラストも、緒形拳そっくりだもんね。まあ、褒章もいいけど、あんまり偉くなってほしくないというのが、ペリーを含めたファンの本音かも。
 各ストーリーの充実ぶりはシリーズ屈指だが、とくにオススメなのは、田村高廣がゲストの21話「地獄花」。必見なのだ!

掲載2000年11月07日

必殺必中仕事屋稼業

(ひっさつひっちゅうしごとやかぎょう) 1975年

掲載2000年11月07日

 そば屋の半兵衛(緒形拳)と侍くずれの政吉(林隆三)は博打好きの飛脚屋、おせい(草笛光子)の下の殺し屋。剃刀の半兵衛と女用の懐刀を使う政吉。懐刀は、おせいが別れた息子に託したもの…。ギャンブルと殺し。ふたつの非情な世界を描き、必殺ファンを唸らせた名作。母と名乗れぬおせいの心情、幸薄い半兵衛の女房(中尾ミエ)の描写もすべてが絶妙。
 本作では、緒形拳も林隆三も、殺しに関してはどこか危なっかしいアマチュアだ。そのヒヤヒヤ感は、必殺シリーズのなかでは新しかった。筋立ても凝ったものがおおく、悪人を殺すのではなくて博打で”殺す”という痛快なもの。林隆三が転がり込む情婦の、芹明香のうらぶれたカンジ
”半ちゃん、元気?”
と、にじりよってくるオカマ岡っ引きの大塚吾郎、草笛光子の忠実な番頭で、実は元盗賊の岡本信人ら、ワキ役の充実ぶりも見逃せない。とくに工藤栄一監督が演出した最終回はお見逃しなく!

掲載2000年07月10日

風鈴捕物帳

(ふうりんとりものちょう) 1978年

掲載2000年07月10日

 岡っ引きの新吉(西郷輝彦)が、おりん(水沢アキ)という娘を助ける。実はおりんは、忍者、服部半蔵の孫娘で縁談嫌さに飛び出したのだった。新吉の長屋に転がり込んだおりんは、得意の忍者姿となって、江戸の悪と戦うことになった。原作は石ノ森章太郎の劇画作品だから、ストーリーの面白さはたっぷり。美男の岡っ引きとキラッとお色気の光るくノ一の活躍は世代を超えて楽しめる。新吉の持つ70センチの超ロング十手、やたら元気のいいくノ一など、若さあふれる娯楽時代劇。
 当時、西郷輝彦は「どてらい男」で役者として躍進中。初の岡っ引き役に大乗りだった。一方、さわやかな存在感が人気の水沢アキも、初のくノ一役に大暴れ宣言。若いふたりのキャラクターどおり、後味のいい作品に仕上がっている。伴淳三郎と片岡千恵蔵の出演もファンにはうれしい。ちなみに脚本は現在「水戸黄門」など長寿番組を執筆する葉村彰子(数人の脚本家共有のペンネーム)。

ペリー荻野プロフィール
ペリー荻野

1962年愛知県生まれ。大学在学中よりラジオのパーソナリティ兼原稿書きを始める。 「週刊ポスト」「月刊サーカス」「中日新聞」「時事通信」などでテレビコラム、「ナンクロ」「時代劇マガジン」では時代劇コラムを連載中。さらに史上初の時代劇主題歌CD「ちょんまげ天国」シリーズ全三作(ソニーミュージックダイレクト)をプロデュース。時代劇ブームの仕掛け人となる。

映像のほか、舞台の時代劇も毎月チェック。時代劇を愛する女子で結成した「チョンマゲ愛好女子部」の活動を展開しつつ、劇評・書評もてがける。中身は"ペリーテイスト"を効かせた、笑える内容。ほかに、著書「チョンマゲ天国」(ベネッセ)、「コモチのキモチ」(ベネッセ)、「みんなのテレビ時代劇」(共著・アスペクト)。「ペリーが来りてほら貝を吹く」(朝日ソノラマ)。ちょんまげ八百八町」(玄光社MOOK)「ナゴヤ帝国の逆襲」(洋泉社)「チョンマゲ江戸むらさ記」(辰己出版)当チャンネルのインタビュアーとしても活躍中。