ペリーのちょんまげ ペリーのちょんまげ

掲載2006年03月09日

「春姿ふたり鼠小僧」 杉良太郎がお得意のお茶目な二役!新五と鼠小僧、ふたりがうりふたつで大混乱。

(はるすがたふたりねずみこぞう) 1982年

掲載2006年03月09日

駒方の新五親分は、若く正義感いっぱいの“熱い男”。江戸の人々を守るため、日夜走り回っている。そんな中、町では金持ちから金を盗んでは貧乏人にばらまくという義賊鼠小僧のうわさでもちきりだった。そんなとき、新五は、自分とうりふたつの男・弥平次に出会う。ひょうきんなわりにどこか影のある弥平次に、新五は何かを感じるが…。
 駒方の新五といえば、もちろん、杉良太郎の当たり役。今回は長編でお得意の二役を軽やかに演じてみせる。新五の下っ引き銀次(岡本信人)、同心の吉井(玉川伊佐男)、新五のライバル清吉(鈴木ヤスシ)、面倒見のいいお品(一谷伸江)らレギュラー陣に加え、一本筋の通ったパワフルな芸者お駒(名取裕子)が華やかな雰囲気を出している。
 杉良太郎は、時に本当に悪役俳優をぶん投げるほど真剣な立ち回りを見せる半面、独特のとぼけたユーモアが持ち味で、それは長年座長公演などでも活かされてきた。舞台でのMCはすべてアドリブで、本音も炸裂。毎回観客をおおいに笑わせていたのである。本作でも、鼠小僧が忍び込んだ屋根裏に、やっぱり泥棒装束の新五が待っていて、本職(?)が新五に「ほっかむりに柄物はいけません」などと真顔でレクチャーするシーンなど、杉良太郎の「とぼけ」へのこだわりが見え隠れする。まさに杉さまらしい娯楽長編。

掲載2006年03月02日

「はやと」 里見浩太朗の「浩太郎」時代の主演作。はやとの必殺技“はやぶさ三段斬り”とは?

(はやと) 1969年

掲載2006年03月02日

先日、地上波の「水戸黄門」で“黄門役出演100回”を達成した時代劇の大ベテラン里見浩太朗。東映のニューフェイスでデビュー、その芸名の由来は、映画会社東映が「里見八犬伝」の大ヒットにより、大きく成長したことで縁起がいいということによったという。その「里見浩太朗」もはじめは「浩太郎」であった。この「はやと」は、その「浩太郎時代」の貴重な作品。 
「はやと、これは、この世のあらゆる悪を企む影の組織“まぼろし”と戦う正義の剣士の世を忍ぶ仮の名前である。その人の名は誰も知らない」
 昔は本名を名乗らない正義の味方が多かったようだが、もちろんはやともそのひとり。その必殺技はすごい。「一番!」「二番!」「三番!」と最後は空中に舞いながら同時に三人を仕留めるというマネのできない“はやぶさ三段斬り”なのである。一方、ちょっと失敗しただけで、手下に順番にグラスの液体をあおらせ、誰かひとりが毒で殺されるというルシアンルーレット式恐怖支配組織まぼろしも、はやとを狙って必死の策に出る。第一話では、数多くの時代劇で悪役を演じてきた五味龍太郎が、まほろしの左源太として登場。はやとの親友の妹を誘拐して、はやとを追い詰める。
 里見はやとが歌う♪はしーれーはやとーという主題歌も耳に残る30分時代劇。

掲載2006年01月26日

「半七捕物帳」正統派の名親分、仏の半七鬼になる!懐かしい彼女も時代劇で熱演してます!

(はんしちとりものちょう) 1992年

掲載2006年01月26日

五ヶ月連続里見浩太朗特集。意外にも庶民の役初挑戦だったというのが、この三河町の半七親分だった。
 岡本綺堂の原作では、明治維新後に老人になった半七が若い記者に江戸で起こった怪事件を語るという形式だが、本作では、正統派名親分として、登場。設定は原作から離れて、女房を亡くし、年頃の娘お初とふたり暮らし。近所の料理屋の女将(片平なぎさ)とは結構いい雰囲気だったりする。事件となれば、手下(西山浩司)やライバルの長次(山城新伍)らと多人数の悪党と大格闘。もちろん、里見時代劇には欠かせないきめゼリフもアリ。普段、滅多なことで怒らない半七が、いよいよ悪を追い詰めると、「仏の半七、今日こそ鬼になるぜ!!」と鬼宣言をするのであった。(本人が自分を“仏”と自覚しているんですね)なお、ロング十手で立ち回りを見せる山城新伍とは、東映のニューフェイスとして昭和30年代の駆け出し時代には大先輩である片岡千恵蔵らとともに、同じ舞台公演にも出演したふたりだが、本格的な共演はなんと30年ぶり!ふたりとも実に楽しそうである。
 また、ゲストに坂上忍、いとうまいこ、山下規介ら当時の若手が多数出演しているのも特長のひとつ。戸川京子も、岡っ引きの父(工藤堅太良)に反発する不良娘を熱演しているのにも注目したい。

掲載2005年09月29日

「必殺仕置人」 中村主水が初登場した記念すべき「必殺」 日本はオイルショックに揺れた時代でした

(ひっさつしおきにん) 1973年

掲載2005年09月29日

池波正太郎原作の「必殺仕掛人」のあとを受け、いよいよオリジナルの「必殺シリーズ」を確立したのが、この「必殺仕置人」。
 特筆すべきは、藤田まことの「中村主水」が初登場。奉行所では“昼行灯”として、同僚からも軽んじられるヒラ同心、家では「婿殿」と出世と跡取りを催促される婿養子。そんな主水の裏の顔は凄腕の「仕置人」だ。
 当時は、日本の高度成長期。とにかく遮二無二仕事をして当たり前。てきとーに仕事をして、裏で得た金をしっかりへそくる(書物の中を楕円形にくりぬいて小判を収納)主水の姿は、サラリーマン層にも熱い支持を受けた。その一方で、オイルショックがあり、トイレットペーハーがなくなるを買占める主婦がスーパーに殺到するなど、庶民生活は不安な雲に包まれていた。勧善懲悪とはひと味違うダークな時代劇が人気を呼んだというのもうなづける気がする。
 「仕置人」には、主水のほか、念仏の鉄(山崎努)や棺桶の錠(沖雅也)、鉄砲玉のおきん(野川由美子)ら、シリーズの名物ともいえる顔ぶれや、ゲストにも佐野厚子、三島ゆり子ら、後にレギュラー入りするメンバーも多数出演。シリーズ初期ならではのギラギラした雰囲気が新鮮。伊丹十三、伊藤雄之助、川口常らユニークなゲストにも注目したい。

掲載2005年08月11日

「必殺スペシャル 大老殺し」中村主水、ジョン万次郎と野球する。ゲストの寺田農に惚れ直す?スペシャル。

(ひっさつすぺしゃる たいろうごろし) 1987年

掲載2005年08月11日

日米通商条約をめぐり、幕府が騒然となる中、江戸の奉行所では「伊豆下田に長期出張できる人材」を選定中。なんと選ばれたのは中村主水(藤田まこと)。選ばれた理由というのが、“不在でも奉行所が困らず、家族も悲しまない”ということだった。
 もとより仕事にも口うるさい家の女にも執着のない主水にとっては、悪い話ではなかったが、姑と嫁は「伊豆といえば温泉」などと自分たちも長期出張の構え。その上、条約調印の時間稼ぎのため、日米対抗ベースボール大会を開催することになる。とりあえず集めた日本チームのメンバーには、主水の仲間の加代(鮎川いずみ)はじめ、アメリカ総領事の命を狙う「仕事人」もいる。しかも、佐渡島の殺し屋集団もからんで、事件は思わぬ方向に…。
 ベースボールの指導者は、ジョン万次郎。演じたのは江夏豊だった。この万次郎、野球のシーンはむちゃくちゃ動きがいいが、セリフなどはとっても初々しいのであった。また、唐人お吉(坂口良子)、安藤広重(池田満寿夫)ら歴史上の人物も登場。しかし、なんといっても、強烈だったのは、殺人集団の切り札、寺田農だ! これまで数多くの必殺技を開発してきたシリーズだが、寺田の放つ「ロケットパンチ」は今も語り草のひとつ。どんな荒技にもひるまない寺田農に惚れ直すはず。

掲載2005年07月28日

「はやぶさ新八御用帳 大奥の恋人」愛を貫く妻と夫を中井貴一が追う!あのセレブマダムのおっとり妻ぶりも見もの。

(はやぶさしんぱちごようちょう おおおくのこいびと) 1990年

掲載2005年07月28日

名奉行・根岸肥前守(田村高廣)の懐刀といわれる隼新八郎(中井貴一)は、ある殺人事件にかかわる。町人同士の争いかと思われた事件だが、そこには大奥がからんだ複雑な事情が。しかし、大奥は男子禁制。さすがに新八郎も自分で探索にもいけず、思案の末、長年、自分の家に奉公していた娘・お鯉(古村比呂)を潜入させる。すると、お鯉は驚くべき事実をつかみ、自らも事件の中心にかかわることになっていく…。
 原作は平岩弓枝の人気シリーズ。事件の中に男女の情愛を織り込んだ作風は、作者の得意とするところ。ここでは愛を貫く若い夫婦と彼らを助けようと必死になる人々の強い心が描かれる。
 かつてテレビシリーズでは高嶋政宏も新八郎を演じたが、高嶋の豪快な新八郎に対して、この中井新八郎は、繊細なイメージ。何気なく変装などしているのも面白い。
 ほかのキャスティングは奉行の田村はじめ、大奥お局様の中島ゆたか、人柄のいい新八郎の同僚の香川照之など、充実した顔ぶれ。中でも新八郎の超おっとり型妻を演ずる吉川十和子がなかなか。「渡る世間は鬼ばかり」でおなじみの野村昭子と不思議な掛け合いで笑わせる。現在はセレブミセスとして注目される十和子さまのおっとりぶりは演技なのか地なのか? そのあたりもチェックを。

掲載2005年05月25日

「風神の門」忍者たちのリアルな技が炸裂!クリスタルキングの高音主題歌にも感動。

(ふうじんのもん) 1980年

掲載2005年05月25日

関が原の戦いから十余年。世の中に不穏な空気が広がる中、今こそ、自分たちの出番だと張り切る若者たちがいた。その中のひとり、伊賀の霧隠才蔵(三浦浩一)は、京にのぼり、さっそく徳川方からスカウトされる。しかし、仕留めるはずの相手・豊臣方の真田幸村(竹脇無我)の人柄を知ると、彼のもとで打倒徳川を志すことに。しかし、そこには徳川方で、才蔵を終生のライバルとみなして挑戦してくる獅子王院(磯部勉)ら、強力な敵が立ちふさがる。
 「忠義、義理などというものは、手に技のない侍の言う念仏だ」と、自分たちの生き方を貫き、ひたすら技を駆使してはたらく若い才蔵はとにかく元気がいい。その明るさに対して、白塗り顔で目の下にくまを作った獅子王院のキャラクターがまた光る。私も含め、獅子王院が次に何を仕掛けてくるか、楽しみで仕方ないファンも多いと思う。また、りりしい武将の竹脇無我、才蔵への恋心に悩む、切れ長の瞳女忍びお国の小野みゆき、いまではすっかり建物探訪家になってしまった渡辺篤史の軽妙な猿飛佐助など、キャスティングがいい。
 忍者の技も人間のできうる限界を考慮し、リアルさを追及。疾走感あふれる高音が耳に響く、クリスタルキングの主題歌も一度聞いたら忘れられない。若き忍者たちの青春群像劇。

掲載2005年04月26日

「盤嶽の一生」盤嶽が騙される、怒る、ほえる! 地上波未放送二話もお楽しみに

(ばんがくのいっしょう) 2002年

掲載2005年04月26日

剣は一流、嘘が大嫌いでまっすぐすぎるほどまっすぐな性格の浪人・阿地川盤嶽(役所広司)は、天涯孤独な浪人。金はなくとも、自分の信念に生きている。その宝物であり、たったひとつの心の支えは、恩師から授かった名刀・日置光平(へきみつひら)。しかし、名刀を持っているばっかりに、人に騙され、裏切られることもしばしば。そのたびに「世の中、どうにも嘘ばっかり!!」と怒るのだが、またしばらくすると、人に騙されて…。
 第一話では、旧知の人物(石倉三郎)から、いい話を持ちかけられて、にこにこしていた盤嶽。が、やっぱりそこには名刀収集家の陰謀が潜んでいたりする。
 この物語の面白さは、驚くほどわかりやすく、かえって新鮮に見える主人公の盤嶽と、彼と対極にある裏表いっぱいの騙し役の演技のぶつかりあいにある。
 現代劇でもやたら叫ぶ役が多い肺活量俳優の役所広司に負けない存在感を示すゲストたち。石倉三郎、上條恒彦(こちらも肺活量ではかなり)、ベンガル、宇崎竜童などクセ者がそろう。さらに女優陣も豪華。鈴木京香、浅野ゆう子、安達祐実、渡辺典子などなど。浅野・安達のコンビは後に「大奥」でも激突しているので、興味深い組み合わせだ。
 地上波では未放送の二作品では、どんな「一生」が描かれるか。お楽しみに。

掲載2005年04月13日

「ふんどし医者」森繁久弥がユニークな人情医者に。伝説の美女・原節子がお上品に博打を?

(ふんどしいしゃ) 1960年

掲載2005年04月13日

将軍様の御典医になれるほどの腕を持った小山慶斎(森繁久弥)だが、たまたま旅の途中で庶民に疫病が蔓延しているのを目撃。上様よりも下々のために働こうと決心した彼は、そのまま宿場にいついてしまう。以来、15年。名医として慕われる慶斎は、貧しい者からは、「どぶろくいっぱい持って来い」で集金終了。そんな彼の楽しみは、なんと美人妻(原節子)の趣味「博打」につきあうことだった。妻が負けると、身ぐるみはがされ、ついたあだ名が「ふんどし医者」。でも、時代は幕末から明治になり、自分の技術が時代遅れになっていることに気づかされる…。
 あの伝説の美女が、博打場で「半でございます」「あなた、負けてしまいました…」などと不思議なテンションで博打を打つ姿は、なかなかの見もの。また、ただの喜劇かと思ったら大間違いで、時代についていけなくなった男の悲しみ、無知な庶民のパニックの恐ろしさなど、社会性も存分に織り込まれている。明治の世になると、「裸で歩いては困ります」と警官に注意までされ、トレードマークのふんどしの存在も危うし!慶斎の親友でエリート医師の山村聡、ヤクザから医師に転身する夏木陽介、彼の恋人・江利チエミ、親分役の志村喬もいい味だしてます。もちろん、最後の最後まで美人妻の動きにもどうぞ注目を!

掲載2005年03月16日

「必殺仕置人」 中村主水初登場の記念すべき作品。藤田まことと主水の出会いとは!?

(ひっさつしおきにん) 1973年

掲載2005年03月16日

二十年にもわたって放送された必殺シリーズの中でも、「必殺仕置人」は、いろいろな意味で重要な作品だった。
 まず、必殺シリーズ第一弾「必殺仕掛人」には原作・池波正太郎の名があり、基本的な設定も原作に準ずる部分が多かったが、「仕置人」からは、まったくのオリジナルになったこと。ここから、必殺シリーズの自由な発想が次々生まれていくことになる。その驚きの一発目が、仕置人・念仏の鉄(山崎努)によるレントゲン実況骨はずし、だろう。
 そして、なんといっても、藤田まことの「中村主水」が初登場。うだつの上がらない奉行所の同心である主水は、婿養子に入った中村家でも、厳しい姑と嫁にダメ男扱いされている。しかし、剣の腕は確かで、裏では凄腕の「仕置人」として活動しているのである。
 藤田まことご本人は、当時、「てなもんや」シリーズが終了し、各地で営業活動をする日々だったという。広島のキャバレーで仕事中に京都から「必殺出演」の依頼電話を受けたご本人。その一週間後にはクランクインするというあわただしさだったという。それゆえ、「主水の役は、いろんな人に断られた結果、僕のところに来たんだよ」とおっしゃるが、周囲を取材しても、そのような話は出てこない。藤田まことあっての中村主水だったのは、間違いないのだ。

ペリー荻野プロフィール
ペリー荻野

1962年愛知県生まれ。大学在学中よりラジオのパーソナリティ兼原稿書きを始める。 「週刊ポスト」「月刊サーカス」「中日新聞」「時事通信」などでテレビコラム、「ナンクロ」「時代劇マガジン」では時代劇コラムを連載中。さらに史上初の時代劇主題歌CD「ちょんまげ天国」シリーズ全三作(ソニーミュージックダイレクト)をプロデュース。時代劇ブームの仕掛け人となる。

映像のほか、舞台の時代劇も毎月チェック。時代劇を愛する女子で結成した「チョンマゲ愛好女子部」の活動を展開しつつ、劇評・書評もてがける。中身は"ペリーテイスト"を効かせた、笑える内容。ほかに、著書「チョンマゲ天国」(ベネッセ)、「コモチのキモチ」(ベネッセ)、「みんなのテレビ時代劇」(共著・アスペクト)。「ペリーが来りてほら貝を吹く」(朝日ソノラマ)。ちょんまげ八百八町」(玄光社MOOK)「ナゴヤ帝国の逆襲」(洋泉社)「チョンマゲ江戸むらさ記」(辰己出版)当チャンネルのインタビュアーとしても活躍中。