ペリーのちょんまげ ペリーのちょんまげ

掲載2009年01月09日

「姫君捕物控」
加賀まりこが、正義の姫様になって大暴れ
天下の一大事「天一坊事件」をどう裁く!?

(ひめぎみとりものひかえ) 1972年

掲載2009年01月09日

江戸小伝馬町のおんな牢にはさまざまな事情で罪を犯した女たちが集められていた。中で、若いながらも腕っ節が強く、牢名主も一目置く存在になっているのが、武州無宿のお竜(加賀まりこ)であった。お竜は、無実の罪で送り込まれた女やだまされた女など、牢の中で見聞きした不審な事件を探索するため、なんと「姫様」のスタイルで牢を出る。実は、お竜は、名奉行大岡越前(二谷英明)の娘・霞なのであった。
 越前は、八代将軍徳川吉宗のご落胤を名乗り、大名行列にも道をあけさせるりっぱな行列で江戸に乗り込んできた天一坊(団次朗)の存在に頭を悩ませていた。天一坊には、知恵者の側近(高松英郎)もついており、吉宗から授かった証拠の品も握っているという。真相を探るため、お竜は腰元に化けて潜入するが…。
 原作は山田風太郎の「おんな牢秘抄」。いまや芸能界のご意見番的存在の加賀まりこが、女囚、町娘、女渡世人など様々なコスプレを披露。立ち回りでも大暴れする。そんなお転婆姫を見守る役割を仰せつかったのが、主水之介(前田吟)。最終回のラストで、姫と主水之介の会話には注目したい。デビュー以来、小悪魔的存在感で人気を集めたまりこ姫は、若いころからかなり強気!芸能界の歴史をも感じさせる異色作。

掲載2008年11月28日

『花の生涯 井伊大老と桜田門』
井伊直弼のニックネームは「ちゃかぽん!」
北大路欣也の直弼と壇ふみの篤姫も登場。

(はなのしょうがい いいたいろうとさくらだもん) 1988年

掲載2008年11月28日

井伊直弼(北大路欣也)は、彦根藩主の14番目の子として生まれた。数奇な運命をたどり、彦根藩主からさらに幕府大老の地位についた直弼は、ペリー来航で大混乱の中、日米和親条約を締結。反対派を排除した「安政の大獄」は多くの反感を呼ぶ。そして、運命の三月三日。桜田門外には雪が降り積もっていた。しずしずと進む直弼の行列に向って、一発の銃声が響く。
 今年の大河ドラマ「篤姫」では、しゃれっ気と貫禄ある勝海舟を演じて、若い世代からも注目つれた北大路欣也が、一本筋の通った男の生き方を示す。反感を抱く若者・勝又十四郎(金田賢一)に「世界は広いぞ」と諭し、安易に剣を抜くものたちを「うつけ者!!」と一喝する。ここでは、芸能界の才女としても知られる壇ふみが知性的な篤姫を演じている。
 私は先日、若き日の直弼が暮らした彦根の町を歩いた。跡取り以外は日が当らないのが常で、若い頃には、埋木舎という離れ屋敷で学問に勤しんだ直弼。文化への造詣は深く、ついたニックネームは「茶・歌・ぽん」!ちなみに「ぽん」は能や鼓を示す。幕末でなければ違う運命をたどったに違いない。
 ドラマでの「桜田門外の変」は、アクションの迫力も見所のひとつ。当時、ヒット曲を連発していた来生たかおの歌う主題歌「時を咲かせて」も心に残る。

掲載2008年11月21日

『風雲ライオン丸』
特撮時代劇の人気シリーズがパワーアップ
空飛ぶ“弾丸(ロケット)変身”を見よ!

(ふううんらいおんまる) 1973年

掲載2008年11月21日

戦国時代。日本征服を企む地下帝国のマントル一味、次々恐ろしい計画を実行する。彼ら兄を殺された忍者の弾獅子丸(潮哲也)は、父を探す兄弟らと幌馬車で旅をしながら、一味の野望を打ち砕くべく、戦っていた。
 企画原案うしおそうじ。特撮時代劇として大人気となった「快傑ライオン丸」の続編として登場したこのシリーズでは、獅子丸の変身技が話題に。なんと背中のジェットで空を飛び、「ロケットライオン丸!」の一声でライオン丸になるのである。さらにたてがみには、強力な兜を装着。マントルの怪人たちと熾烈な戦いを繰り広げる。
 興味深いのは、シリーズの中で、獅子丸の状況に変化があること。たとえば11話「生きていたタイガージョー」では、謎の通り魔が出現。マントルのしわざと見た獅子丸は通り魔を追うが、その正体は、ライオン丸の兜を叩き割る必殺技を持つ、奇怪な敵だった。彼と同行していた黒影豹馬は、ブラックジャガーに変身して単身戦いを挑むが…。一方、「快傑ライオン丸」時代に人気となったタイガージョーの弟が登場。ニヒルな戦いぶりを見せる。
 西部劇のようなスタイルで旅を続けながら、人と出会い、苦悩もする。こども番組ながら、シリアスな展開も用意され、今もファンが多いシリーズ。

掲載2008年09月26日

『平岩弓枝のお美也』
愛のために命をかけるお美也の生き方に感動。

(ひらいわゆみえのおみや) 2002年

掲載2008年09月26日

東海道新居宿。本陣の娘お美也(高島礼子)は、政略結婚で藩の重役の家に嫁ぐ。明るく家事をこなすものの、姑たき(夏木マリ)は、嫁が気に入らず、文句ばかり。やっと息子が生まれて幸せをつかんだと思った矢先、夫(野村宏伸)は早世。お美也は、たきから息子を置いて出て行けといわれる。身を切られる思いのお美也を支えたのは、亡き夫の弟(勝村政信)。愛してはいけないと知りつつ、ふたりは惹かれあうが…。
 愛する男を追って、関所破りまでしようとするお美也。しかも、彼女には次々と難題、不運が襲いかかるのだ。そして、新たな出会いも。女性が自分で運命を切り開くのが難しい時代に、懸命にたくましく生きるお美也の姿に胸を打たれる。
 高島礼子は、どんなときにも姿勢よく「はい」と元気よい返事をして、明るさを漂わす。そこに「お美也さん」と地の底から響くような声で登場するたきこと夏木マリのいじめっぷりは強烈。一方で、たきにやりこめられる舅(前田吟)やお美也の父(愛川欽也)ら男たちは優しい。息子役の神谷隆之介もおとなに負けないいい芝居を見せる。
 物語が進むにつれ、人生はどんな過酷であっても、前に進むしかないという作者・平岩弓枝のメッセージが伝わってくる。殺伐とした昨今、じっくり味わいたいシリーズ。

掲載2008年05月02日

『華岡青洲の妻』
嫁和久井映見VS姑田中好子の戦いに決着?
谷原章介のおとぼけ青洲にも注目。

(はなおかせいしゅうのつま) 2005年

掲載2008年05月02日

世界で始めて全身麻酔による乳がん手術を成功させた江戸後期の名医・華岡青洲。しかし、その影には、彼を巡る壮絶な嫁姑バトルが繰り広げられていた。
 代々医者として地域に慕われている華岡家。家を切り盛りする姑・於継(田中好子)は若々しく美貌の持ち主。その息子青洲(谷原章介)は二枚目で、彼の嫁になった加恵(和久井映見)は、幸せだった。が、やがて青洲の関心を得るために、嫁と姑が対立。青洲が麻酔薬の研究に没頭すると、於継と加恵は、「自分を実験台に」と申し出る。田中好子は、元アイドルキャンディーズの一員だったとは、とても思えぬ強烈な姑に。加恵に浴びせる冷凍目線には、恐ろしささえ感じる。一方、受けてたつ和久井映見もかなりのもの。このふたりに囲まれて、おろおろしたり、へらへらしている青洲は谷原章介にぴったりなイメージだ。
 終盤、於継は亡くなり、加恵は実験のために失明。バトルは終息したかに見えたが、病に倒れた青洲の妹小陸(小田茜)の言葉はすさまじい。「恐ろしい。私はお母さはんと姉さんのことをよう見てましたのよし」「私の幸せは嫁にいかんかったことや」それでも、加恵は「私はここがええのやしてよし」と微笑む。小陸は「それは姉さんが勝ったからやわ」作家有吉佐和子ならではの視点で描かれる家族の物語。女のバトルに終わりはありません。

掲載2008年03月28日

『橋の上の霜』
金八武田鉄矢が妻子と妾の間で右往左往
狂歌の解釈もバッチリ指南?

(はしのうえのしも) 1986年

掲載2008年03月28日

大田直次郎(武田鉄矢)は、御目見得以下、70俵五人扶持の幕府下級武士。しかし、狂歌の世界では、四方赤良(よものあから)として広く世に知られた人物であった。
 彼は多くの弟子をとっていたが、中には吉原遊郭の主人たちの姿も。彼らと親しくつきあい、廓の大文字屋の主人(金田龍之介)の家に出入りするうちに、直次郎は遊女・三穂崎(秋吉久美子)と深い仲になる。とはいえ、直次郎には、妻里世(多岐川裕美)とふたりの子ども、堅物の父(浜村純)や弟(岡本信人)もいる。はじめはこっそりだったが、深夜帰宅が重なり、ついには三穂崎に子ができたと言われ、ますます抜き差しならないことに。折も折、幕府の改革を皮肉った「世の中に蚊ほどうるさきものはなし。ブンブ、ブンブと…」という落首の作者が直次郎ではないかとウワサがたち、彼は窮地に陥る。
 金八こと武田鉄矢が両方の女にいい顔をしようとするエゴむき出しの男を演じ、狂歌の講釈も披露するという異色作。また、遅く帰った夫にも「お戻りなされませ」と謙虚な表情をしながら、はさみで着物のをずたずたにする妻、「ぬしのせいでありんす」とわがままを言う三穂崎など、女性の描写が鋭いのは、原作者平岩弓枝らしい。大田家を見守る友人夫婦(菅原文太、新珠美千代)の視線、弟の視線、多面的に楽しめる人間ドラマ。

掲載2008年01月25日

『ぶらり信兵衛−道場破り−』
高橋英樹の人情時代劇決定版!
脚本には「北の国から」の倉本聰も参加

(ぶらりしんべえ どうじょうやぶり) 1973年

掲載2008年01月25日

江戸の裏長屋に住む、松村信兵衛(高橋英樹)は、腰に竹光を差し、こどもらに読み書きなどを教えて、のんびり暮らす浪人。しかし、実際は神道無念流の剣の達人で、何かあるとこっそり「商いに」などと言いながら、道場破りをして金を工面して人助けをするのである。
 彼の行き着けの居酒屋「丸源」には、気のいい連中が集まり、いつも町のうわさ話に花が咲く。長屋に帰れば、近所のおかみさんやら娘たちが「先生」と頼りにする。そんな長屋にも騒動はつきもの。けんかしながらも仲のいい駕籠かきコンビの金太(柳沢真一)と銀太(渡辺篤史)は走り回り、信兵衛に寄り添う芸者の小舟(浜木綿子)もひと肌脱ぐ。毎回、なぜか「妄想シーン」があり、信兵衛は婿になったり、お殿様になったり、不思議な展開が楽しめるのもお楽しみ。また、信兵衛に挑戦される道場主も毎回ユニークな顔が登場。いかにも強そうな西村晃、調子はいいが剣はからっきしで信兵衛が「礼金のためとはいえ、こりゃ、わざと負けるのも大変だ」と呆れる芦屋雁之助など、そのやりとりも可笑しい。高橋英樹のとぼけた演技が弾ける。
 原作は山本周五郎の「人情裏長屋」。脚本には倉本聦も参加。♪信兵衛さんの長屋は十六軒〜と、陽気に長屋の連中を紹介する主題歌にも心が和む。気持ちいい人情時代劇。

掲載2007年11月29日

『風雲ライオン丸』幌馬車が走れば、シェーンも駆ける!
全編ウエスタン調の斬新な特撮シリーズ

(ふううんらいおんまる) 1973年

掲載2007年11月29日

戦国時代。相模の国で武士の子として生まれた弾獅子丸(潮哲也)は、西日本一帯に地下帝国を築き、日本制服を狙うマントル一族に兄(有川博)を殺され、復讐の旅に出る。途中、父を探す娘・志乃と三吉の兄弟と道連れになるが、マントル一族は彼らを抹殺するために次々と地中忍者やマントル怪人たちを差し向ける。獅子丸は、「ライオンロケット変身」でライオン丸に変身し、悪と戦うのだ。
 前作「怪傑ライオン丸」の好評を受けて登場した第二弾。なんといっても、本作の特徴は、志乃と三吉の移動が幌馬車だったり、獅子丸の愛馬の名前がシェーンだったりと全体にウエスタン調なこと。そして、ライオン丸がたてがみを兜におさめていたことだった。
ただし、途中で怪人に兜を割られたライオン丸は再びたてがみを風になびかせるスタイルに。今月からは前作で人気を博した「タイガージョー」の弟も登場し、ファンにはうれしい展開に。
 今月出てくるマントル怪人も、毒ハエを操る「キツネバ」、怪力でゴリラを思わせる「ゾリラ」、敵を石に固める「ヤゴ」など、動物と時代劇と特撮技術が融合したライオン丸シリーズらしいラインナップ。中でも、18話の鎖鎌と毒ガスでライオン丸を苦しめる怪人は、全身を毛に包まれながら、甲冑もつけている。その名は「ズカング」!ネーミングもナイス。

掲載2007年11月08日

『花の生涯』豪華出演陣による元祖NHK大河ドラマ
映画スター佐田啓二テレビ初出演も話題に。

(はなのしょうがい) 1963年

掲載2007年11月08日

昭和38年(1963)スタートしたNHK大河ドラマ第一弾。放送期間はこの作品のみ、4月から年末までであった。尾上松緑はじめ豪華キャスト、若い女性に大人気の佐田啓二がテレビ初出演ということでも注目を集め、最高視聴率32.3パーセントを記録した作品。現存するのは、この一話のみ。
 黒船来航により、国論が開国か攘夷かと、騒然となった安政元年(1854)。後に大老となる彦根藩の井伊直弼(尾上松緑)は、政治の前線に立つどころか、藩主の14番目の庶子として捨扶持を与えられ、「一生埋もれ木」と称し、世捨て人のような暮らしをしていた。口癖は「わしは政治は大嫌い」そんな直弼宅に、国学を学ぶ浪人・長野主馬(佐田啓二)が訪ねてくる。直弼と主馬を引き合わせたのは、医師・三浦北庵(下条正巳)だった。
 しかし、主馬には頭から離れない約束が。実は直弼宅に来る途中、不逞の者を厳しく取り締まる常備隊に目をつけられたのを、三味線の師匠・村山たか(淡島千景)の機転で助けられたのだ。遊女に三味線を教えるたかとの再会の約束を果たした主馬は、心を通わせる。しかし、そこにも常備隊が押し寄せ、たかは身を呈して彼を隠すが…。「芸を売って身を立てておりますが、身も心も売ったりはいたしませぬ」たかのきっぱりしたセリフが凛々しい。小沢栄太郎の語りも重厚に響く。

掲載2007年10月25日

『はんなり菊太郎2−京・公事宿事件帳−』京都の公事宿を舞台にした人情劇。菊太郎の意外な「仕掛け」にもご注目!

(はんなりきくたろう きょう・くじやどじけんちょう) 2004年

掲載2007年10月25日

七年前、突然出奔した田村菊太郎(内藤剛志)は、親友の源十郎(渡辺徹)が営む公事宿「鯉屋」の居候として、のんきな毎日を送っていた。もともと京都東町奉行所同心組頭の家に生まれながら、妾腹である自分よりも正妻の子である弟に家督を継がせようとした家出であったが、どうやら、のんき生活が気に入っている様子。しかし、江戸時代の弁護士事務所ともいえる公事宿に持ち込まれる争いごとや弟の探索を手伝ううちに、事件解決に手を貸す菊太郎なのである。
 頭も切れて腕もたつ。人の痛みもわかる菊太郎にはただの二枚目より一枚上手の男っぽさがある。女でひとつで娘を育てる恋人お信(南果歩)との静かな愛や飄々とした父(田中邦衛)とのやりとりもなかなかに面白い。
毎回ゲストも豪華で、パート2の第五回では、さる大物俳優がカメオ出演。よーく観ると「おや」と発見があるはずなので、お見逃しなく。
 私は内藤剛志ご本人に「菊太郎って、不思議な存在でなんだか夢の中の人物みたいでしょ?菊太郎はいつも老猫お百をひざに抱いて、座敷と縁側の境目の敷居に座ってる。これは現世とあの世の境目みたいなもので、本当に菊太郎ってこの世にいたのか?という雰囲気を出しているんです」確かにつかみどころもなく、でも、人を幸せにする菊太郎には不思議さがある。その辺りもしっかり味わいたい。

ペリー荻野プロフィール
ペリー荻野

1962年愛知県生まれ。大学在学中よりラジオのパーソナリティ兼原稿書きを始める。 「週刊ポスト」「月刊サーカス」「中日新聞」「時事通信」などでテレビコラム、「ナンクロ」「時代劇マガジン」では時代劇コラムを連載中。さらに史上初の時代劇主題歌CD「ちょんまげ天国」シリーズ全三作(ソニーミュージックダイレクト)をプロデュース。時代劇ブームの仕掛け人となる。

映像のほか、舞台の時代劇も毎月チェック。時代劇を愛する女子で結成した「チョンマゲ愛好女子部」の活動を展開しつつ、劇評・書評もてがける。中身は"ペリーテイスト"を効かせた、笑える内容。ほかに、著書「チョンマゲ天国」(ベネッセ)、「コモチのキモチ」(ベネッセ)、「みんなのテレビ時代劇」(共著・アスペクト)。「ペリーが来りてほら貝を吹く」(朝日ソノラマ)。ちょんまげ八百八町」(玄光社MOOK)「ナゴヤ帝国の逆襲」(洋泉社)「チョンマゲ江戸むらさ記」(辰己出版)当チャンネルのインタビュアーとしても活躍中。