ペリーのちょんまげ ペリーのちょんまげ

掲載2015年07月31日

「必殺スペシャル(秘)必殺現代版 主水の子孫が京都に現われた 仕事人VS暴走族」
紅白に対抗放送して大健闘した超異色必殺スペシャル
子孫たちは極悪暴走族にどう立ち向かうのか?

(ひっさつすぺしゃる まるひひっさつげんだいばん もんどのしそんがきょうとにあらわれた しごとにんたいぼうそうぞく) 出演者:藤田まこと/三田村邦彦/鮎川いずみ/中条きよし/菅井きん/白木万理/芦屋小雁/山内敏男/西脇美智子  1982年

掲載2015年07月31日

 京都近郊では危険な暴走族が暴れまわっていた。そんな折、保険勧誘員の中村主水(藤田まこと)は、自分の顧客である仙田吾助(芦屋小雁)の妻と娘が暴走族に襲われて死に追いやられたことを知る。とはいえ、会社では上司の田中(山内敏男)に「中村さん!」と怒鳴られ、家では嫁のりつ子(白木万理)と姑のせん(菅井きん)に頭が上がらない主水にはどうすることもできない。ところが、主水は飲み仲間の手作りアクセサリー屋の村上秀夫(三田村邦彦)と個人タクシー運転手の長谷川加代(鮎川いずみ)、ピアノ調律師の山田勇次(中条きよし)は、自分たちの先祖が闇稼業の仕事人だったことを知る。突然、教習所でバイクの免許を取り、女ものの衣服を買うなど不可思議な行動をとり始めた仙田が、自分を受取人にして高額の保険金をかけたと知った主水は、仙田は自らの復讐が失敗に終わったら、保険金を仕事料にしてほしいとしているのだと察した。そして、女装してひとり暴走族に挑んだ仙田が命を落とす...。

 丸メガネのさえない中年男の主水、調律に行った家で美人妻に迫られるモテモテ勇次、タクシーでバリバリ働く加代など、現代でも時代劇のキャラクターをしっかり踏襲しているところが面白い。82年の大晦日に放送され、紅白歌合戦相手に大健闘した超異色の必殺スペシャル。監督は石原興。

掲載2015年07月17日

「陽だまりの樹」
本格時代劇初挑戦の市原隼人の熱血武士と
成宮寛貴の手塚治虫曽祖父モテモテ医師の幕末青春物語

(ひだまりのき) 出演者:市原隼人/成宮寛貴/黒川芽衣/池上季実子/笹野高史/古手川祐子/西岡徳馬/津川雅彦 ほか 2012年

掲載2015年07月17日

 幕末。父(西岡徳馬)の跡を継いだ常陸府中藩士・伊武谷万二郎(市原隼人)は、出世とは縁遠いものの、剣は凄腕の熱血漢だった。一方、藩医手塚良仙(笹野高史)の息子で蘭方医の手塚良庵(成宮寛貴)は、モテモテの女好きだが、医術の心得は一流で患者への思いは熱い。ふたりは善福寺の娘・おせき(黒川芽以)に思いを寄せていた。しかし、おせきは自分の伴侶に寺を継いでほしいのだ。そんな中、万二郎は入門した千葉周作の玄武館道場で清河八郎と斬りあい深手を負う。留守の良仙に代り、手術したのが良庵だった。その後、武士に襲われた良庵を万二郎が助け、二人は無二の親友に。しかし、倒幕の機運の中、良庵は幕府軍の軍医になり、戦地へ。万二郎は自分の行く末を悩む。

 手塚良庵は、手塚治虫の曽祖父で実在の人物。大坂の緒形洪庵の適塾で西洋医術を学び、種痘所(東京大学医学部)創設に奔走した。タイトルの「陽だまりの樹」は、万二郎が尊敬した水戸藩の藤田東湖(津川雅彦)が安政の大地震で亡くなる前に「倒れかけた大樹(幕府)の支えになれ」と諭したことに因む。その言葉の通り、走り出す万二郎。本格時代劇初主演の市原は爆発シーンにも自らアタック。熱演がまぶしく胸を打つ。指田郁也の主題歌「花になれ」は羽生結弦がエキシビジョンに採用したことでも知られる。青春の輝きと「生きていけ」というメッセージにあふれた名曲。

掲載2015年07月03日

「必殺スペシャル 恐怖の大仕事 水戸・尾張・紀伊」
御三家がらみの大仕事で、主水が仕事を失敗!?
フランキー堺、西郷輝彦ら伝説の仕事人にも注目

(ひっさつすぺしゃる きょうふのおおしごと みと・おわり・きい) 出演者:藤田まこと/伊吹吾郎/三田村邦彦/鮎川いずみ/フランキー堺/西郷輝彦/中条きよし/京マチ子/横山やすし 1981年

掲載2015年07月03日

 正月早々、中村主水(藤田まこと)が連れ去られ、市三(中条きよし)という男から、仕事料千両という途方もない裏稼業を依頼される。それは徳川御三家の筆頭家老と豪商の米問屋・室田利兵衛(岡田英次)殺しだった。さっそく左門(伊吹吾郎)と秀(三田村邦彦)に大仕事の話をするが、秀は仕事を断る。仕方なく仕事を仕掛けた主水だが、失敗。左門は捕えられ、拷問を受け、あまりの苦しさに「殺してくれ!」と言うのだった。一方、主水は女好きで調子のいい仕事人の与市(フランキー堺)に助けられる。その後、「もう一度だけオレを仲間に入れてくれ」と言う秀は、川で左門の救出を試みる。

 後に必殺シリーズのレギュラーとなる中条きよしが闇に生きる男でゲスト出演するほか、伝説の仕事人としてフランキー堺、凄腕の矢島仙十郎役で西郷輝彦も登場、さらには「必殺仕舞人」の坂東京山(京マチ子)も顔見世する豪華版。フランキー堺の飄々と洒落た雰囲気は代表作「幕末太陽傳」を彷彿とさせる。また、主水の留守中にせんとりつに取り入って中村家乗っ取り(?)を図るインチキ祈祷師に横山やすし、岡八郎、花紀京など吉本の面々も出演している。殺し場面で水に縁のある秀だが、今回の水中激闘シーンはかなりの迫力だ。誰が悪で誰が頼み人なのか、予想もつかない展開で、最後まで目が離せない。さすが工藤栄一監督作という印象の必殺スペシャル。

掲載2015年05月29日

「疾風同心」
「大岡越前」人気キャラのスピンオフ作品
和田浩治×高橋元太郎×大坂志郎のアクション捕物劇

(はやてどうしん ) 出演者:和田浩治/高橋元太郎/大坂志郎/西崎みどり ほか 1978年

掲載2015年05月29日

南町奉行所の名物男、同心の風間駿介(和田浩治)は悪を許せないあまり、暴走して先輩の村瀬源兵衛(大坂志郎)を困らせる。しかし、弱い者には優しく、純情な一面も。そんな駿介は、配下のすっとびの辰三(高橋元太郎)とともに江戸の町を疾風のごとく走り回る!

 時代劇ファンなら「風間駿介」「すっとびの辰三」の名前だけで、TBS「大岡越前」の名キャラクターだとわかるはず。「疾風同心」は、「大岡越前」第五部に登場するや、人気となった熱血同心が、テレビ東京系でスピンオフ作品となったシリーズなのだ。脚本は多くの脚本家共同ペンネームである葉村彰子、監督は山内鉄也と「水戸黄門」「大岡越前」などナショナル劇場で知られるスタッフが集結。特長は、奉行中心の「大岡越前」とは違い、熱血同心駿介向けに悪党たちに駿介が体当たりで挑む場面が多いこと。悪の隠れ家に乗り込むときも、駿介はわざわざ大八車に乗って戸板を打ち破って討ちこみ、逃げる悪人には、朱房の十手に朱色の縄をつけ、投げ縄にして見事捕縛!いつも静かな源さんや弱腰の辰三もこのドラマでは悪人たち相手に大立ち回り。意外なアクションスターぶりを見せる。「バカ野郎!辰、それで張り込みやめて帰ってきたのか!」「じめじめすんじゃねえ!」と威勢はいいが涙もろい駿介に「泣いてますぜ、旦那」と突っ込んだりする辰三のやりとりも面白い。

掲載2015年01月02日

「武士の家計簿」
「そろばん侍」と呼ばれた実直武士の家族の物語
堺雅人と仲間由紀恵がコツコツあたたかい夫婦に

(ぶしのかけいぼ) 出演者:堺雅人/仲間由紀恵/中村雅俊/松坂慶子/草笛光子/西村雅彦/大八木凱斗/伊藤祐輝/藤井美菜 ほか 2010

掲載2015年01月02日

 江戸後期。加賀藩で長年、御算用者として財政管理を担当する猪山家の八代目直之(堺雅人)は、とにかく数字にきっちりした性格。「数字が合わないのは我慢なりません」と仕事場でパチパチ、田んぼでパチパチ。剣の腕などはからきしで、周囲からは「そろばん侍」「そろばんバカ」と呼ばれても、算用の腕を磨き、実直一筋に仕事に励んでいた。町同心・西永与三八(西村雅彦)の娘お駒(仲間由紀恵)を嫁に迎えた直之は、藩内の不正を発見。その功績で出世をした。ところが、出世はイコール出費増大というのが当時の常識。借金を抱えることになった直之は、「これからは家計簿をつける」「売れるものは全部売る」と宣言。お駒の嫁入り道具まですべて売り払い、嫡男直吉のお披露目のお膳には紙に描いた鯛を載せるなど、周囲を呆れさせる。

 原作は磯田道史のベストセラー「武士の家計簿『加賀藩御算用者』の幕末維新」。森田芳光監督は、きっちりした直之とは対照的に「これくらいはいいだろ?」と茶道具を売られないようにする父(中村雅俊)や「嫌だ死んだ方がまし!」と箪笥の前で大騒ぎする着道楽の母(松坂慶子)などを登場させ、独特のユーモアで楽しませる。幼いころからそろばんを仕込まれ、勘定が合わないと叩き出されるほど厳しくされた直吉と直之、父と子の幕末維新激動の中の心の交流にも胸が熱くなる。

掲載2014年11月21日

「必殺!5 黄金の血」
怪優たちの存在感が光る必殺映画版第五弾
地獄組の暗躍と政(村上弘明)の切ない願いに注目

(ひっさつ!5 おうごんのち) 出演者:藤田まこと/三田村邦彦/村上弘明/光本幸子/山本陽一/麻丘めぐみ/菅井きん/白木万理 ほか 1991

掲載2014年11月21日

金座後藤家本家の妻・千勢(山本陽子)は、殺しの元締め・かまいたちのおむら(名取裕子)に、無残に殺された御用船乗組員の恨みを晴らしてほしいと下手人である無宿人たちの抹殺を依頼する。頼み料二百両と聞いて、多くの仕事人が仕事を引き受けるが、中村主水(藤田まこと)、秀(三田村邦彦)、お歌(光本幸子)、夢次(山本陽一)は断った。一方、仕事人から足を洗っていた政(村上弘明)は、予知夢を見てはふらふらと夜歩くお浅(酒井法子)のことが心配で、砂浜に付き添ううちに、恐ろしい場面を目撃する。砂浜には失われたはずの金の延べ棒が埋められていたのだった。やがて後藤家の依頼を引き受けた仕事人たちが地獄組に惨殺される事件が相次ぎ、主水たちにも危機が迫る。その裏には、上納金運搬船沈没の噂を流す悪人の汚い陰謀があったが・・・。

プロレス技を仕掛けるキューティー鈴木、尾崎魔弓、赤い煙を操る佐藤蛾次郎、シャボン玉技の安岡力也、極めつけともいえる天本英世など、怪優たちの存在感は抜群。櫛をブーメランのように投げて敵を倒すおむら、豪商の妻らしくきりりとした千勢など、女優陣の強さも印象的。映画公開はバブル期ピーク91年。中村家のせんとりつが「十二両があっという間に三十両に」と、投資に踊る姿は、世相を反映している。せんとりつに迫られ、主水が必死にへそくりを隠すお約束シーンも面白い。

掲載2014年08月29日

「二人の武蔵」
ワイルド藤岡弘武蔵と正統派江守徹武蔵が登場!
森本レオが意外なアクションキャラクターに

(ふたりのむさし) 出演者:藤岡弘/江守徹/東千代之介/秋野暢子/狩野勝彦/森本レオ/神山繁 ほか 1981

掲載2014年08月29日

関ヶ原の戦いから四年ほどという慶長九年。この世に二人の「宮本武蔵」がいた!?原作は、五味康祐。脚本は、エンタメ時代劇の名手、長坂秀佳。語りは小池朝雄。

作州宮本村浪人の平田武蔵(江守徹)は、ストイックで冷静な男。播州宮本村浪人の岡本武蔵(藤岡弘)は、ワイルドで直情型。武者修行を終え、天下に名高い吉岡道場に向かう二人は偶然出会い、手合せを始めた。その対決を止めたのは、余裕たっぷりの美剣士・佐々木小次郎(東千代之介)だ。その後、平田武蔵は、吉岡道場の吉岡清十郎(大林丈史)を破る。清十郎に恩義を感じる岡本武蔵が道場に乗り込むと、そこには懸命に戦って破れた清十郎をいたわるどころか、蔑む叔父伝七郎(神山繁)の姿が。「名門吉岡の名が聞いてあきれる!」と憤慨した岡本武蔵は、吉岡一門と大乱闘!?さらに清十郎の仇、平田武蔵とも決闘!? そしてここ一番の時だけ出てくる小次郎って?

呼ばれてもいないのに「そっちはよくてもこっちにはあるわ」と無理やり戦おうとする血の気の多い岡本武蔵を藤岡弘がイキイキ熱演。面白いのは、近年とぼけたおじさま役などで人気の森本レオが、ヒゲもじゃの槍の遣い手夢想権之助役で、岡本武蔵の暴走を体当たりでとめようとすること。意外なアクションキャラなのだ。アップテンポの主題歌も斬新。ユニークすぎる「武蔵」物語。

掲載2014年08月08日

「必殺仕業人」
中村敦夫がワケアリ浪人役で必殺シリーズ参入
中村主水も牢屋見廻り同心に格下げされてどうする?

(ひっさつしわざにん) 出演者:藤田まこと/中村敦夫/大出俊/中尾ミエ/渡辺篤史/菅井きん/白木万理/美川陽一郎 ほか 1976

掲載2014年08月08日

必殺シリーズには、裏社会の闇を描きながら、独特のユーモア、明るさがあり、シリーズ全体の味ともなっていのだが、76年、「必殺仕業人」が登場したときには、私のような小娘には、大きなショックだった。前作で、捕らえられた市松(沖雅也)を逃がした中村主水(藤田まこと)は、牢屋見廻り同心に格下げ。定町廻りだったころは、昼行燈と呼ばれようと、奉行所の花形部署の一員で袖の下なんかも受け取ってイヒイヒしていたのに、今シリーズでは思いっきりひもじい感じ。そこに仲間に加わったのが、大道芸人の赤井剣之介(中村敦夫)とお歌(中尾ミエ)。元藩士の剣之介は、お歌のために人を斬り、逃亡中の身。その芸というのが、顔を白塗りにして「はい~」とお歌の合図で居合を見せるのだが、見物人は「なにそれ」という顔でいつも素寒貧状態。なんだかもう救いのない感じで、唯一、スタイリッシュな仕業人、灸師“やいとや又右衛門”(大出俊)に注目するばかりだった。

 しかし!おとなになってみると、アングラ芝居にも通じる表現とストーリーの底辺にあった暗さとか怒りとか、どうしようもなさが、胸にしみる。有名な宇崎竜童によるナレーション“あんた、この世をどう思う”の言葉も、西崎みどりの主題歌「さざなみ」も違って聞こえる。ここまで振り切った必殺シリーズの奥深さに改めて感動。

掲載2014年07月11日

「振り袖御免 江戸芙蓉堂医館」
真野響子がユーモアと気風の良さで光る美人医師に!
オカルトめいた陰謀に前田吟医師と立ち向かう痛快編

(ふりそでごめん えどふようどういかん ) 出演者:真野響子/宇野重吉/香川良介/前田吟/大滝秀治/左とん平/火野正平/伊藤孝雄 ほか 1981

掲載2014年07月11日

半井千鶴(真野響子)は、父元養(宇野重吉)が公儀奥医師、兄信二郎(伊藤孝雄)が、将軍御台所お毒見役という由緒正しい医師の家柄に生まれた娘。兄は「早く嫁に」と願うが、千鶴は、町医師として「芙蓉堂医館」で、多くの患者に慕われていた。ある日、大名の内藤家の留守居役・堀越耕右衛門(香川良介)に若君の治療を頼まれた千鶴は、それが仮病だと見抜く。しかし、「若君の病は、観音像の御利益で完治した」とされ、霊験あらたかな観音像の水が売り出されて評判になってしまう。千鶴は、同じく若様の仮病を知る眼科医杉田立卿(前田吟)とともに、そのインチキを寺社奉行に訴えることに。ところが、今度は死んだ女の骨壺が夜な夜な鳴りだすという事件が起こる。千鶴は「それは見てみたい」と、杉田と骨壺が納まるお堂に乗り込むが…。

 悪漢に襲われてもひるまず、博奕場でも堂々と勝負する、強気お嬢様は、真野響子にぴったり。妹に「医学以外の事に手を出すな!」と兄は怒るが、大先生こと元養は「千鶴は町に咲いた花じゃ」と優しく見守る。そんな大先生に千鶴がしっかり薬のツケを払わすというのもご愛嬌。劇団の師匠でもある宇野重吉と真野のやりとり、また骨壺に脅えて「おらの歯がガタガタ鳴ったあ」と珍妙な芝居で笑わせる五助爺や大滝秀治の名演も見もの。“鳴る骨壺”の意外な仕掛けは?お見逃しなく。

掲載2014年06月27日

「奉行暗殺始末」
奉行暗殺疑惑に挑むひとりの男に次々危難が!
山本周五郎原作。林与一の剣裁きが冴えわたる。

(ぶぎょうあんさつしまつ ) 出演者:林与一/新井春美/磯部勉/戸浦六宏/稲葉義男/真田健一郎/山形勲/戸塚孝 ほか 1983

掲載2014年06月27日

文政年間。大浜藩藩主・伊賀守敦信(磯部勉)は、江戸屋敷で国元の勘定奉行沢井多門(戸塚孝)が溺死したとの急報を受けた。奉行が赴任したの、わずか半年前。不穏なものを感じた敦信は、多門の親友笈川玄一郎(林与一)を新たな奉行として国元に送り込んだ。赴任早々、部下である藩士からよそよそしい態度をとられた玄一郎だが、奉行として毅然とした対応をとる。しかし、その裏には、もっと深い陰謀があるのではと感じた玄一郎は、沢井の婚約者だった城代家老(戸浦六宏)の娘・松尾(新井春美)を妻にと望む。それは陰謀追求のため、形ばかりのものだった。しかし、松尾は「私を道具に…」と悲しむ。松尾は多門暗殺疑惑についても何か知っているようだが、語ろうとしない。そうこうするうちに藩の重鎮津田庄左エ門(山形勲)が、領内の碇山をめぐる衝撃の告白を始めたのだった。

 原作は山本周五郎の「いさましい話」。誰も信じられない藩内で、孤独な戦いを続ける玄一郎を、林与一が、すっきりと演じている。孤独な夜。横笛を吹く姿が美しい。それが殺陣となると一変。真田健一郎(新国劇出身。中村吉右衛門版『鬼平犯科帳』の同心沢田役でおなじみ)ら十人もの剣士を相手に激しい戦いに挑む。悪役が多い戸浦の知的で男らしい父親ぶり、藩を思い苦悩する山形の深い演技など、ベテランの存在感はさすが。

ペリー荻野プロフィール
ペリー荻野

1962年愛知県生まれ。大学在学中よりラジオのパーソナリティ兼原稿書きを始める。 「週刊ポスト」「月刊サーカス」「中日新聞」「時事通信」などでテレビコラム、「ナンクロ」「時代劇マガジン」では時代劇コラムを連載中。さらに史上初の時代劇主題歌CD「ちょんまげ天国」シリーズ全三作(ソニーミュージックダイレクト)をプロデュース。時代劇ブームの仕掛け人となる。

映像のほか、舞台の時代劇も毎月チェック。時代劇を愛する女子で結成した「チョンマゲ愛好女子部」の活動を展開しつつ、劇評・書評もてがける。中身は"ペリーテイスト"を効かせた、笑える内容。ほかに、著書「チョンマゲ天国」(ベネッセ)、「コモチのキモチ」(ベネッセ)、「みんなのテレビ時代劇」(共著・アスペクト)。「ペリーが来りてほら貝を吹く」(朝日ソノラマ)。ちょんまげ八百八町」(玄光社MOOK)「ナゴヤ帝国の逆襲」(洋泉社)「チョンマゲ江戸むらさ記」(辰己出版)当チャンネルのインタビュアーとしても活躍中。