ペリーのちょんまげ ペリーのちょんまげ

掲載2013年08月09日

「八州廻り桑山十兵衛 捕物控えぶらり旅」
広域捜査官"八州廻り"十兵衛に北大路欣也登場
旅のお供、寺島進と河相我聞との息もぴったり

(はっしゅうまわりくわやまじゅうべえ とりものひかえぶらりたび ) 出演者:北大路欣也/寺島進/河相我聞/北村一葉/笹野高史/梶芽衣子 2007

掲載2013年08月09日

公儀、大名、旗本の領地が複雑に入り組み、凶悪犯が身を隠しやすい“関八州”は、無宿者や博打打などが流れ込み、縄張り争いや強盗など犯罪が頻発していた。そうした事件を探索、下手人を捕らえるのが、“八州廻り”と呼ばれた広域捜査官だった。桑山十兵衛(北大路欣也)も、そのひとり。彼は熱血漢の粂蔵(寺島進)と少々気弱な五兵衛(河相我聞)とともに、関東各地を旅しながら、事件を追う。しかし、心の中では、母を亡くした幼い娘・八重(北村一葉)との静かな生活を望んでいた…。

 十兵衛は、剣の腕も確かだが、人間観察力、推理力も兼ね備えた優秀な捜査官。北大路欣也は「八州廻りに逆らう者は、斬り捨て御免。それでもよいか」と貫録たっぷりに悪人たちに迫る。悪に対する厳しい顔と、娘に対する優しさ、娘を預けている登喜(梶芽衣子)に対するとほほ顔など、『三枚目も面白い』と語る北大路の人間味あふれる表情が魅力的だ。

 各地で十兵衛らを迎える“道案内”という役割があったり、出張費を計算したり、スケジュールについて上司(笹野高史)に談判したりと、八州廻りの生活がよくわかるのも興味深い。最終話では、小幡宿の道案内が殺され、十兵衛らは現場に急行する。「水戸黄門」「御家人斬九郎」「八丁堀捕物ばなし」など数多くの名作時代劇を撮り、2012年に亡くなった斎藤光正監督によるこの回も見逃せない

掲載2013年06月21日

「必殺剣劇人」
必殺版パパと呼ばないで!?シリーズ随一の異色篇
近藤・田中・あおい三人揃って「寄らば斬るぞ!!」

(ひっさつけんげきにん ) 出演者:近藤正臣/田中健/あおい輝彦/工藤夕貴/二宮さよ子 ほか 1987

掲載2013年06月21日

賭場の札引きをするカルタの綾太郎(近藤正臣)、火消しの早縄の清次(田中健)、庶民の安寧を願って祈祷などするすたすたの松坊主(あおい輝彦)の三人組は、実は元義賊で江戸城の御金蔵から一万両もの大金を盗み出し、そのうちの半分を貧しい庶民に分け与え、その残りで気ままに暮らしている。そこに三人の共通の恋人であったお百の娘お七(工藤夕貴)が現れ、同居することになる。誰が父とはわからぬまま、三人はお七にふりかかる事件と関るうちに、悪を成敗することになる。

 必殺シリーズ最高の異色作がいよいよ登場。なんたって、主人公三人組が、大金持ちという出発点から違っている。悪人抹殺の技も、白頭巾姿で大刀二本を操る綾太郎、鳶口の鉄鉤や鉤縄を使う清次(ケーナのような笛も吹く)、槍や手裏剣まで持ち出す松坊主と、アクションが派手。極め付きは、松坊主が用意した緑色に光り輝く巨大ガマに乗っての登場シーン。もはや「闇に葬る」なんてもんじゃない。第一話のタイトル「寄らば斬るぞ!」に始まって、第二話「おととい来やがれ!」など威勢のいい言葉が飛び交い、ケレン味もたっぷり。「暗闇仕留人」の大吉の心臓つぶしなど、過去のシリーズへのオマージュも盛り込まれ、最終回「あばよ!」には中村主水、せん、りつも登場。必殺シリーズ15年の歴史を締めくくるにふさわしい展開となっている。全八話お見逃しなく。

掲載2013年06月07日

「必殺スペシャル 仕事人、京都へ行く 闇討人謎の首領!」
闇討人とは誰なのか。異色の悪役登場!
近藤正臣、藤真利子ら出演のおとなムードSP

(ひっさつすぺしゃる しごとにん、きょうとへいく やみうちにんのなぞのしゅりょう! ) 出演者:藤田まこと/村上弘明/鮎川いずみ/藤真利子/近藤正臣/菅井きん/白木万理/山内としお/松山英太郎 1989

掲載2013年06月07日

バブル真っ盛りの「必殺SP」ながら、お祭りムードというよりは、近藤正臣、藤真利子、松山英太郎、風見章子らによる、おとなムード長編。「わたくし…」と上品な言葉づかいで当時人気を博したAV女優・黒木香も出演し、存在感を見せつけている。

中村主水(藤田まこと)は、京都御所改修工事の入札応援のため、京都所司代に出張。その工事にからんでは、不正を訴えようとした同心片山(草見潤平)が暗殺され、その妻までもが殺されるという事態になっていた。一連の事件の背後には、「闇討人」という謎の殺し屋集団がからんでいたのだった。その黒幕を暴こうと動き出す仕事人の加代(鮎川いずみ)と政(村上弘明)だが、京都の仕事人新吉(近藤正臣)からは協力を拒否され、手がかりがつかめそうになった瞬間、お竜(藤真利子)により、証人が抹殺されてしまう。一方、主水は、改修工事監督役の貧乏公家姉小路高麿(松山)にこき使われていた。

「中村主水、生きておじゃったか…」飄飄としつつ、不気味な姉小路を演じる松山は、前進座の五代目河原崎國太郎を父に持ち、俳優座に入った。同期には中村敦夫、成田三樹夫らがおり、「大岡越前」などで活躍。この必殺スペシャルと同年には、西田敏行が平賀源内を演じた異色作「翔んでる!平賀源内」に出演中だった。91年48歳の若さで世を去った。

掲載2013年05月31日

「紅つばめお雪」
宮園純子姉御のお供に、赤フン里見浩太朗!
笑って泣いて斬りまくる。お宝痛快時代劇。

(べにつばめおゆき ) 出演者:宮園純子/里見浩太朗/工藤堅太郎 ほか  1970年

掲載2013年05月31日

お雪(宮園純子)は、八重垣流小太刀の名手で秘伝“飛燕斬り”を操る娘剣豪。姉御肌だが、五歳から伊豆大島で剣術修行に明け暮れていたため、世間知らずが玉に瑕。そこで父が社会勉強のために娘を旅に出したのだった。道中で、お雪の道連れとなったのが、上杉藤吉郎と名乗る若者(里見浩太朗)。甲州の農民のせがれだが、太閤秀吉にあこがれ、勝手に武士のかっこうをしているお調子者だ。そして、もうひとりの道連れが、登り竜の与三郎(工藤堅太郎)。名前だけは威勢がいい渡世人だが、背中の登り竜は、彫り物ではなく、筆でいちいち描いているというおっちょこちょい。この三人が、宿場や街道で事件に巻き込まれる。東映得意の涙と笑いのちょんまげロードムービー。ゲストには小栗一也、川合伸旺などおなじみの面々が次々登場。
 放送当時の宣伝文句は「世間知らずの剣豪娘、オトボケ男に ズッコケ野郎。三人旅です、でたとこ勝負」「三人揃って 一人前 チラリ見せます紅つばめ 世間知らずの小太刀がスゴイ!」宮園×里見といえば、後年、「水戸黄門」シリーズで、風車の弥七の恋女房霞のお新と助さん。この作品では、「大の男ふたりの面倒を見ているんだから」と、しっかり者の宮園に対して、里見藤吉が、赤ふんどしで走り回るなど、若さ全開!こんな里見浩太朗見たことない!まさにお宝痛快時代劇。
 

掲載2013年05月24日

「人斬り」
人斬り以蔵に勝新太郎!仲代達矢、石原裕次郎
三島由紀夫も登場。五社英雄監督による伝説的巨編

(ひときり ) 出演者:勝新太郎/仲代達矢/石原裕次郎/三島由紀夫/倍賞美津子/新條多久美 ほか 1969

掲載2013年05月24日

時は幕末。土佐の武市半平太(仲代達矢)は自分の目的を果たすため、京都で対立する人間たちの抹殺を図る。その手先となったのが、酒と女が好きな暴れん坊岡田以蔵(勝新太郎)だった。無学だが忠実な以蔵は、剣の腕を活かして次々暗殺を実行。武市の役に立つことを喜んでいたが、坂本龍馬(石原裕次郎)らと出会ったことで、少しずつ自分のしていることに疑問を抱く。酔いつぶれて牢に入れられた(牢名主はコント55号)以蔵に「本物ならこのような醜態をさらすわけがない」などと言い放つ武市。勝の人間臭い以蔵に対して、仲代の冷ややかな存在感が際立つ。「なあ以蔵、俺と一緒に九州に」と、語りかける龍馬の裕次郎の優しさ。三大スターとともに時代劇初出演の作家・三島由紀夫が登場。以蔵と同様“人斬り”と言われた薩摩の田中新兵衛を演じる。鍛え上げた肉体をさらしての、その壮絶な最期は、語り草だ。

 吉田東洋、姉小路暗殺、石部宿の死闘など、全編すさまじい緊張感。撮影見学者が失神した言われるほどの激しい殺陣。五社監督らしい迫力に満ち溢れているが、無知ゆえに犬扱いされる哀しみを全身で表現する以蔵の姿には胸を打たれる。酒場で泥酔して泣きじゃくる以蔵に「わかっちょる、わかっちょる」「おはんの飲み代くらいはわしが」と慰める田中。二人の場面はいつまでも心に残る。

掲載2013年02月22日

「初春狸御殿」
雷蔵×勝新×若尾文子、大映スターが狸に!
恋と歌と夢があふれる時代劇ミュージカル

(はつはるたぬきごてん ) 出演者:市川雷蔵/若尾文子/勝新太郎/中村玉緒/近藤美惠子/仁木多鶴子/金田一敦子/中村鴈治郎 ほか 1959

掲載2013年02月22日

 狸御殿のきぬた姫(若尾文子)は、隣国の若殿狸吉郎(市川雷蔵)とのお見合いを嫌って人間の世界に家出してしまう。周囲は姫にそっくりのお黒(若尾)を代役にたて、ごまかすことに。お黒の父親・泥左衛門(菅井一郎)は、これで娘も出世のチャンスかと喜ぶが、お黒には密かに思う薬売りの栗助(勝新太郎)の存在が。そんな折、家老の狸右衛門(中村鴈治郎)が、「狸祭」開催を提案。華やかな祭りの最中、狸吉郎は、お黒に心ひかれる。しかし、本物のきぬた姫が帰ってくることになり大混乱…。

 雷蔵、勝新、文子と大映の三スターが揃って、歌や踊りとともに恋の花を咲かせる超お陽気時代劇ミュージカル。当時のキャッチコピーは「浮かれ狸に、お色気狸! お茶目狸に純情狸が唄って踊って恋をする!」。とにかく狸づくしというアイデアもすごいが、自ら脚本を書き、オールスタジオセットで夢世界を作り上げた木村恵吾監督の情熱も素晴らしい。雷蔵はシリアスな作品にも秀作が多いが、仲の良い勝新とともにコミカルな味を出すときの顔もとてもいい。「僕の名前は狸吉郎~」って、初めてこの映画を見る人は、雷蔵の新しい顔と感じるかも。共演には、中村玉緒、水谷良重(現・八重子)、近藤恵美子など美女連に、楠木トシエ、トニー谷など当時の人気者が参加。「鬼平」の彦十役で知られる、江戸家猫八の名調子(?)にも注目!

掲載2013年01月25日

「必殺スペシャル 仕事人VSオール江戸警察」
仕事人を追い詰める"まむし""妖怪"鳥居耀蔵!
田村亮、滝田栄、光本幸子も華麗な仕事に挑むSP

(ひっさつすぺしゃる しごとにんVSおーるえどけいさつ ) 出演者:藤田まこと/鮎川いずみ/笑福亭鶴瓶/田村亮/滝田栄/光本幸子/本田博太郎/大出俊/米倉斉加年 ほか 1990

掲載2013年01月25日

  庶民の贅沢を戒める天保の改革まっただ中、権力を握った“まむし”こと鳥居耀蔵(米倉斉加年)の取り締まりは日に日に厳しさを増していた。一方で、改革を逆手にとって、こっそり贅沢品を出す料理屋などを強請る悪いやつらも横行。仕事人の加代(鮎川いずみ)は、「まむしが怖くて仕事ができるか」と裏の仕事を引き受ける。中村主水(藤田まこと)は、鳥居の恐ろしさを知るだけに、仕事を断り、からくり細工の鶴(笑福亭鶴瓶)は「大仕事を引き受けたから」と加代の誘いをパス。結局、太棹の新之助(田村亮)と、芸者駒吉(光本幸子)、剃刀の辰(本田博太郎)が仕事にかかるが、その忍びこんだ先こそ、鶴がからくりを施した御庭番の屋敷だった!
 近年は好々爺を演じることも多い米倉が、眉毛を消して不気味に笑う鳥居を怪演。駒吉の光本幸子は、きりりとした芸者姿が美しい。特筆すべきは、駒吉の恋人・平田深喜役の滝田栄。裏の仕事に生きる駒吉に「ともに地獄へ堕ちればすむことだ…」とおとなの恋を表現。「酒におぼれ、剣におぼれ、死に急ぐ」という深田は、かの平手造酒のモデルといわれる。厭世的な男の色気を漂わせ、かつ、本式の居合を見せる滝田は、見事に津軽三味線を弾きこなす田村亮とともに、影の主役ともいえる。もちろん、せんとりつも絶好調。中村家でどんちゃん騒ぎ!? お見逃しなく。
 

掲載2012年10月19日

「春が来た」
引退同心仲代達矢×お役御免御庭番西田敏行
名優二人が恋をし、ずっこけ、泣かせる名作

(はるがきた) 出演者:仲代達矢/西田敏行/南野陽子/萬田久子/榎木孝明 2002

掲載2012年10月19日

 文化文政の江戸。敏腕同心として鳴らした甘利長門(仲代達矢)は、権力者の辻斬りを見逃すはめになり、自ら十手を返上。家族もいない気楽さでこれからは自由に生きようと決心する。一方、御庭番月形小介(西田敏行)も、主人である前将軍の側室が亡くなった途端、職を失う。ひょんなことから出会い、過去の自分を捨てるため、太郎兵衛、次郎兵衛と名乗って、第二の人生を歩もうとする。とはいえ、超不器用な二人はさっそく金に困り、考えついたのが、なんと荒れ寺をラブホテルのようにわけありカップルに貸すこと! 町奉行所の同心(辻萬長)ににらまれながらもなんとかやってきた二人だが、太郎兵衛が、謎めいた女お美代(南野陽子)に惚れ、次郎兵衛もまた、食材屋「四季屋」の後家おりせ(萬田久子)を慕うようになり、事件が巻き起こる。

原作は「子連れ狼」の小池一夫と小島剛夕の名作劇画。堅物イメージの仲代が、無精ひげも艶っぽい“ちょい悪”モテおやじ。超まじめな次郎兵衛に「お前、女の知らないな」などと言い出し大喧嘩になる場面など、哀しいのに笑ってしまう。笑わせ、泣かせる二人の名優のぶつかり合いは必見。西田がCGの力を借りて、まさかの凄腕忍びの者に!?

ペリーは仲代達矢インタビューの際、「小池一夫さんに“続編をやりたい”と言ったんだよ」と聞いた。名優もこの役が大のお気に入り! ラストシーンの洒落た感じも秀逸。 

掲載2012年10月12日

「隼人が来る」
高橋英樹が"花吹雪抜刀流"で悪を斬る!
あの大ヒットドラマと一騎打ちした痛快作

(はやとがくる) 出演者:高橋英樹/左とん平 ほか 1972

掲載2012年10月12日

 「徳川享保年間、時の将軍吉宗の命を受けて、単身密かに諸国を巡るひとりの男がいた…」印象的なオープニングナレーションで始まる「隼人が来る」秋月隼人(高橋英樹)は、密偵河童の喜八(左とん平)とともに悪政はびこる各地に出向き、悪を成敗していく。

 なんたって、この作品の見せ場は、隼人が遣う必殺剣“花吹雪抜刀流”。敵の前で隼人は刀を背に回す。その鍔には、一輪の菊が。敵が「む?」となった瞬間、刀を手首でくるりくるりと回転させ、一気に敵正面に撃ち込む!!ばったり倒れた敵の傍らにハラハラと散る花弁と、縦ふたつになった菊が。くーっ、バトントワラーの技もびっくり。時代劇の歴史始まって以来ともいえるキザな必殺剣だが、高橋英樹にはよく似合うのである。そのヒデキスタイルを考案したのは、「新選組血風録」など男っぽい時代劇を数多く手掛けた結束信二、「鬼平犯科帳」でも活躍した野上龍雄、「水戸黄門」でもおなじみの宮川一郎ら名脚本陣と、田中徳三、工藤栄一ら気鋭の監督陣。

72年放送当時、木曜八時の同時間帯にはTBSで最高56パーセントという驚異的視聴率を記録したホームドラマ「ありがとう」が放送されていたが、「隼人が来る」は時代劇ファンに大アピールして人気に。以来、木曜八時枠に「ぶらり信兵衛道場破り」「編笠十兵衛」と高橋英樹時代劇が続くことになった。

掲載2012年08月10日

「花の誇り」
藤沢周平が、宿命的な女二人の争いを描く
瀬戸朝香がきりりとした立ち回りを見せる

(はなのほこり) 出演者:瀬戸朝香/酒井美紀/田辺誠一/山口馬木也/葛山信吾 ほか 2008

掲載2012年08月10日

 田鶴(瀬戸朝香)と三弥(酒井美紀)は、かつてお城で行儀見習いをした友人だった。しかし、田鶴の義兄(山口馬木也)が若くして切腹。その理由が、三弥にふらせたせいだと思った田鶴は、三弥を許せずにいた。時がたち、田鶴の婿養子・寺井織之助(田辺誠一)と、三也の夫・宗方惣兵衛(葛山信吾)が、家老の座を争うことに。宗方有利という情報を得た田鶴は、三弥にだけは負けてはならないと、弱腰の織之助の背中を押す。そんな時、田鶴は家の門前で刺客に襲われた侍・関根友三郎(山口二役)を助けた。亡き義兄にうりふたつの男の出現に、かつて義兄に淡い心を抱いていた田鶴の心は揺れる。友三郎は江戸藩邸の密使で、藩の不正を知られる密書を携えていた。友三郎は再び、命を狙われる。小太刀の名手である田鶴が選んだ道とは。

 原作は藤沢周平。若き日の出来事から、不仲となった女二人が、運命的に対立。女の友情、義兄への恋心、さらに自分の強い決意で命がけの戦いを仕掛ける勇気。藤沢作品の中でも、女の中に潜む情念を描いた個性的な一本といえる。瀬戸朝香は「大奥」シリーズでも見せた強い女を、きりりとした立ち回りとともに見せる。また、外見がおとなしげな酒井美紀が、予想以上の意地っぱりぶりで、女のバトルの底深さを感じさせる。原作にはない祭り風景など描写も美しい。

ペリー荻野プロフィール
ペリー荻野

1962年愛知県生まれ。大学在学中よりラジオのパーソナリティ兼原稿書きを始める。 「週刊ポスト」「月刊サーカス」「中日新聞」「時事通信」などでテレビコラム、「ナンクロ」「時代劇マガジン」では時代劇コラムを連載中。さらに史上初の時代劇主題歌CD「ちょんまげ天国」シリーズ全三作(ソニーミュージックダイレクト)をプロデュース。時代劇ブームの仕掛け人となる。

映像のほか、舞台の時代劇も毎月チェック。時代劇を愛する女子で結成した「チョンマゲ愛好女子部」の活動を展開しつつ、劇評・書評もてがける。中身は"ペリーテイスト"を効かせた、笑える内容。ほかに、著書「チョンマゲ天国」(ベネッセ)、「コモチのキモチ」(ベネッセ)、「みんなのテレビ時代劇」(共著・アスペクト)。「ペリーが来りてほら貝を吹く」(朝日ソノラマ)。ちょんまげ八百八町」(玄光社MOOK)「ナゴヤ帝国の逆襲」(洋泉社)「チョンマゲ江戸むらさ記」(辰己出版)当チャンネルのインタビュアーとしても活躍中。