ペリーのちょんまげ ペリーのちょんまげ

掲載2006年04月20日

「壬生の恋歌」 若き三田村、渡辺謙、内藤剛志、遠藤憲一… 無名の新選組隊士の過酷な青春ドラマ

(みぶのこいうた) 1983年

掲載2006年04月20日

幕末、倒幕派浪士に騒然となる中、結成された新選組。その新隊士募集に、はるばる応募してきたのが、入江伊之助(三田村邦彦)、時雨綱太郎(赤塚真人)だった。本当は、田舎育ちの彼らには、「尊皇攘夷」も「公武合体」も関係ない。あるのはただ『武士になりたい。腹いっぱい食べたい』それだけだった。新選組屯所に到着したふたりが見たのは、自分たちと同じ若者たちと、彼らを厳しく試験する、近藤勇(高橋幸治)、土方歳三(夏木勲)だった。
 新選組の有名人ではなく、無名の若者が経験する過酷な現実。伊之助らは、インテリ同志(笑福亭鶴瓶)に知恵を授かり、なんとか入隊できたものの、隊の規律に背いた者は即切腹という厳しい現実が彼らにのしかかる。初回から、いきなり人間の裏表を見たり、祇園の芸妓(名取裕子)に「とっとと帰れ!」と玄関払いされて大ショックの伊之助。このあたりは、現在ドロドロ昼ドラマで活躍する中島丈博の鋭い脚本らしい。当時、「必殺シリーズ」と掛け持ちで寝る時間もないほどだったという三田村邦彦はじめ、ほとんど時代劇初出演だった渡辺謙、内藤剛志、金田賢一、当時さわやか路線だった(?)遠藤憲一らの若さがはじける新選組青春ドラマ。あの杉田かおるも伊之助を慕うけなげな娘として登場。時代は変わりました…。鶴瓶の嫌味な演技もなかなか。

掲載2005年11月17日

「松平右近事件帳」町医者“藪太郎”が医学知識を駆使。里見浩太朗ならではの華麗な剣さばき。

(まつだいらうこんじけんちょう) 1982年

掲載2005年11月17日

松平右近は、十一代将軍徳川家斉の弟でありながら、長崎で医学修行。江戸に帰ってからは、町医者の藪太郎として、市中に暮らしている。その人柄を見込まれて、事件の検死も頼まれるため、いつのまにか探索の先頭に立っているのだった。
 医師が主役の時代劇は結構多いが、これだけ身分のあるドクターは珍しい。しかも、腰の刀は、名刀“一文字”。よく見ると、とても長い!この刀を華麗に操り、「俺は殺生は嫌いだ」と名セリフを言いつつ、悪人たちを成敗する姿は、時代劇のベテラン里見浩太朗ならでは。が、その右近も、実母の親友で大奥の実力者・弥生局(淡島千景)にかかると、「まあ、大きゅうなられて!」などとまるでこども扱いなのが面白い。右近様、いったいおいくつなのでしょうか。
 また、右近はいまだ独身。老中(芦田伸介)の姫(若原瞳)が、清純なラブ光線を送っていても、いまひとつ心が動かない。慎重なのか、堅物なのか。このあたりも弥生局の頭の痛いところとなりそう。
 このほか、右近の乳兄弟で威勢のいい梅吉(渡辺篤史)、色っぽいお銀(佐藤友美)、隠密の清太郎(松山英太郎)など明朗時代劇には欠かせない顔ぶれが揃う。「とざい、とーざいー!」と、ナレーター芥川隆行の名調子も耳に心地よい。

掲載2005年09月15日

「毛利元就」 「三本の矢」でおなじみの智将・毛利元就。松坂慶子のキョーレツ側室様も見もの。

(もうりもとなり) 1997年

掲載2005年09月15日

舞台は戦国時代の初期。当時の中国地方は、出雲の尼子経久(緒形拳)と山口の大内義興(細川敏之)という強力なふたつの一族が支配していた。その間で苦労しながら領主としてがんばっている父・毛利弘元(西郷輝彦)の苦労を見ていた元就だったが、家督は兄元興(渡部篤郎)が継ぐはずだった。その兄と遺児が亡くなり、急遽跡取りとなった元就は、やがて知力、武力、政治力を活かして、西日本最大の勢力を持つ大大名になっていく。
 主人元就が「松寿丸」と呼ばれた少年時代を演じたのは、V6の森田剛。まだあどけなさの残る森田は、あぐらが大の苦手だったが、役を演ずるうちに上達したらしい。森田の評判がよかったため、成人した元就役の中村橋之助はかなりのプレッシャーだったという。
 また、この作品では、女性パワーに注目が集まった。中でも自分の美しさに自信満々。常に美容に気を使い、若い女子には露骨に嫌な顔をする弘元の側室杉の方(松坂慶子)のコミカルな存在感は、内館牧子脚本ならでは。元就の正室・美伊(富田靖子)も夫には言いたいことははっきり言う。こんな女子たちに尻をたたかれたから、元就は出世したのか。本当は矢よりも強いのは女子だったのかも?人間ドラマとしても楽しめる大河ドラマ。

掲載2005年07月06日

「無宿侍」忍者装束の隙間からのぞく天知の苦悩!五社英雄企画のハードボイルド時代劇。

(むしゅくざむらい) 1973年

掲載2005年07月06日

厳格な掟に縛られた忍者集団「陰」。実は彼らは、「陰公方」と呼ばれる謎の人物に操られる暗殺集団であった。首領(西村晃)に命じられるままに使命を果たしてきた実力派忍者のゲン(天知茂)と弥藤次(山崎努)だったが、庄屋の娘さと(宇都宮雅代)と出会ったことで運命は大きく変わってしまう。さとに恋して起きて破りの「抜け忍」になった弥藤次と、「陰」の娘きらら(松岡きっこ)との結婚を迫られるゲン。苦しみながら、掟どおりに弥藤次を斬ったゲンだが、「自分はいったい何なのだ」と迷った末、ついに自ら抜け忍になり、追われる身に。
 「男の苦悩」を表現させたら、右に出る者はない俳優・天知茂。忍び装束の隙間から、トレードマークの眉間のしわが垣間見える。くーっ、渋い!一方、彼を裏切り者として追撃する側のかなりの渋さ。目をつぶされた露口茂が「死ね!!」とばかりに迫ってくる。茂VS茂。さらには「抱け」と裸で迫ったのにゲンに逃げられた女忍者きららも変装して追ってくる。松岡きっこは、なかなかのくノ一ぶり。
 五社英雄が企画を担当。田中徳三、中川信夫といって名映画監督が参加して、特撮も駆使した独自の映像を展開。夏八木勲、芦屋雁之助ら、豪華な顔ぶれもうれしいハードボイルド時代劇。

掲載2004年08月06日

「燃えて、散る 炎の剣士 沖田総司」人気アイドル田原俊彦の悲劇の天才剣士!柴田恭兵のやんちゃな土方歳三にも注目を。

(もえて、ちる ほのおのけんし おきたそうし) 1984年

掲載2004年08月06日

天然理心流の試衛館道場で、20歳で免許皆伝となった沖田総司(田原俊彦)は、若き天才とウワサされる剣士。早く両親をなくした総司は、道場主の近藤周斎(三船敏郎)、養子の勇(若林豪)、土方歳三(柴田恭兵)を、父とも兄とも慕っていた。が、食客ばかり増える田舎の道場は超ビンボー。資金稼ぎのために、勇・土方・総司は、懸賞金の掛かった強盗退治に乗り出す。そこで、初めて人を斬った総司は、剣客としてのカベにぶつかる。その心の支えとなったのが、謎の女(石原真理子)。遊女となってなげやりに生きる女を助けようと、総司は奔走するが…。
 本作は、新選組以前の若い沖田にスポットが当たっている。いわば、総司青春ストーリー。当時人気絶頂の俊ちゃんのサムライっぷりも初々しい。ただし、殺陣のシーンは、俊ちゃんの明るさは一切なしの本格派。不治の病で血を吐きながら壮絶な最期を迎えるシーンは、当時のファンを泣かせ、話題になったものである。相手役が石原真理子というのも、さすが84年作という感じだ。三船敏郎の貫禄はもとより、義兄の鶴田忍、清河八郎の菅貫太郎、山岡鉄太郎の梅宮辰夫も渋いところを見せる。それにしても、柴田恭兵の土方は、女好きのイタズラ男。こんなに口数が多い土方も珍しい。柴田恭兵の新しい一面(?)を見た思いにもなる。

掲載2004年05月20日

「魔界転生」ご存じ魔界の強者たちが総登場。柳生十兵衛の渡辺裕之、田口トモロヲら出演の異色編!

(まかいてんしょう) 1996年

掲載2004年05月20日

 近年、窪塚洋介主演版も公開され、注目された「魔界転生」。山田風太郎の伝奇小説を最新のSFXを駆使して、96年製作されたのが、本作。マニアにはおなじみの渡辺裕之主演版だ。
 魔界からの使者・由比正雪の手によって蘇った、七人の死者たち。無念の思いで死んだ彼らが企むのは、善と悪との最終戦争ハルマゲドンに勝利すること。そんな戦いを起こされたら、現世は壊滅。人類代表として彼らと死闘を繰り広げるのは、我らが柳生十兵衛(渡辺)!!
 この作品はなんたって、配役がすごい。いつものようにくっきりと日焼けた暴れん坊・渡辺十兵衛。十兵衛とは正反対に蒼白を通り越して顔が半透明にも見える由比正雪に田口トモロヲ、苦悩しているわりにはそう見えない宮本武蔵に仮面ライダーV3の宮内洋、大奥のお局様でありながら、お色気パワー炸裂の春日局に清水ひとみ、十兵衛の父・但島守にベテラン和崎俊哉など、これが化けて出たら怖いだろうという面々が総出演。得意のアクションで大暴れする十兵衛や、脱いで戦う春日局などを見ていると、肝心のハルマゲドンより、彼らのキャラクターそのものに面白さを感じてしまう。28日、31日にはこの続編「魔界転生 魔道変」も放送。曲者たちの怪演をたっぷりどうぞ。

掲載2003年11月21日

「燃えて、散る 炎の剣士沖田総司」人気絶頂アイドル田原俊彦の沖田総司!三船敏郎、若林豪など豪華キャストが揃う。

(もえて、ちる ほのおのけんし おきたそうし) 1984年

掲載2003年11月21日

 沖田総司といえば、美剣士の代表選手。
「新選組」が映像化されるたびに、当時、若手で光る俳優が演じてきた役である。でもって、84年当時、一番飛ばしていた若手といえば?トシちゃん!田原俊彦であった。田原俊彦といえば「ナハハハハハ」ち大口笑いで、モノマネまでされるほどの明るい(明るすぎる?)キャラクター。その存在感の沖田がぴったりと重なったという次第。
 江戸の郊外で、優れた剣客が集まると評判の天然理心流・試衛館道場。その道場主・近藤秀斎(三船敏郎)と、養子・勇(若林豪)を中心に、激しい稽古が続いていた。中でも二十歳の若さで免許皆伝とされた、沖田総司は、天才肌の剣士である。
 が、道場の経営はなかなか大変で、勇と土方歳三(柴田恭兵)は沖田とともに懸賞金のかかった強盗退治に出掛ける・・・。
 やっぱり道場主・三船敏郎は剣は一流でも経営の方はいまいちだった?など、深読みできる展開が面白い。柴田恭兵の土方というのもユニークだが、沖田とからむ女優が、これも当時人気の石原真理子というのも、時代ですな・・・。アイドル街道を駆け抜ける田原と、剣の道を駆け抜けた沖田の姿が、重なって見えるのは、私だけじゃないと思う。

掲載2003年10月24日

「昔三九郎」役者のようにいい男・三九郎。「必殺仕掛人」以前の林与一の主演作。色っぽさが特徴。

(むかしさんくろう) 1968年

掲載2003年10月24日

 柄物の着流しに独特のマゲ姿。ただでさえ目立つのに、それがまた水もしたたるいい男だから、目立って仕方ない。それが、昔三九郎だった。ある事情があって江戸にやってきた三九郎。長屋暮らしで人探しをしなければならないのだが、さすがに女たちが放っておかず、さっそく矢場「一の矢」のいい女のもとに入り浸り。彼の周囲には、スリの半次(牟田梯三)やあやしい女(弓恵子)らが集まってくる。事件が次々舞い込み、三九郎は否応なく剣を抜くが、その腕もまた、凄まじいのであった・・・。
 主演はこの後、「必殺仕掛人」の凄腕浪人で注目を集める林与一。テレビ時代劇では「赤穂浪士」や「鼠小僧次郎吉」など、重厚作品から軽妙なものまでこなし、最近では「コメディお江戸でござる」や喜劇の舞台でもおおいに笑わせてくれる。三九郎当時は、往年の映画スターのごとく、美肌を強調。
(モノクロ作品ながら、白い肌はばっちりわかる)華麗な剣さばきを見せた。NHKの朝ドラマ「オードリー」では、その剣さばきが復活。懐かしかったファンも多いはず。
 ペリーは以前、ご本人インタビューをしたが、とても人当たりのやさしい粋な方であった。ただし、「必殺」が大ヒットしていた当時は、あまりに撮影スケジュールが過酷で、オンエアはほとんど見られなかったという。

掲載2003年08月28日

「また又三匹が斬る!」ご存じ、三匹がお騒がせ!未だに新作を望む声が高い人気シリーズ。意外な正体も?

(またまたさんびきがきる!) 

掲載2003年08月28日

 浪人なのにおおらかでどこか品のいい「殿様」こと矢坂平四郎(高橋英樹)と、女嫌いだが志は高い「千石」こと久慈慎之介(役所広司)、珍商売を考えては善悪いろんな人と仲良くなってしまうお調子者の「タコ」こと燕陣内(春風亭小朝)。不思議な縁で道連れになった三匹が、旅の途中で悪人退治。その彼らにヒラヒラと寄り添うように同行するのが、お蝶(長山洋子)だ。
 小林亜星のズンチャカズンチャカ、いかにも気ままな旅にぴったりのテーマ曲もいい感じ。スカッとさせる展開で、長く人気のあったシリーズ。パパパッと豪快な立ち回りで事件解決後の彼らのアドリブも要チェック。
 さらに、彼らの意外な正体が明かされてびっくりするのもこのシリーズのお楽しみ。それも、今までの展開とは何の関係もなく唐突に出てくる。たとえば、第一シリーズのラスト。なんとタコは甲賀忍者の末裔で、京都町奉行。久慈慎之介も実は公儀隠密!?・・・そんな活動をしていたとはとても思えぬふたりだが、それを許してこそ、この番組のファンというもの。ちなみにお蝶もこの三人との旅日記が元でしっかり作家生活に。一番しっかりしてたのはこの娘なのだ。
 2日からスタートの「新三匹が斬る!」では、13話の山田隆夫、20話のケーシー高峰など、意外な人の泣かせる演技にもご注目!

掲載2003年06月20日

「松平健まつり」伝説の「暴れん坊将軍」第一シリーズ復活!21日の「マツケンサンバⅡ」にもクラクラ!!

(まつだいらけんまつり) 

掲載2003年06月20日

 梅雨のうっとうしい季節をスカッとふっとばす人はこの人しかいない、松平健!
 21日は、単発のスペシャル番組「鞍馬天狗」「清水次郎長物語」「運命峠」「風流太平記 <密命>」など、「暴れん坊将軍」とはひと味違う魅力を見せつける。
 例えば「鞍馬天狗」は、健さんは道を歩きつつ、枠なのどを聞かせるなど、どこか風流な天狗様。かと思えば、徳川家の血筋ながら双子だった男の数奇な運命をたどる「運命峠」も、悲壮感より、気品が勝つという存在感はさすが。また、幻のデビュー作品「座頭市物語」の一編「心中あいや節」も見逃せない。これは健さんを見込んだ勝新太郎が自ら監督。健さんの悲恋相手が浅丘ルリ子、父に加藤嘉、刺客役に石橋漣司という豪華版だ。
 さらに最近、各界で大反響(先日もTBS系の「チューボーですよ!」にゲスト出演し、司会の堺正章に華麗なステップを披露)の名曲「マツケンサンバⅡ」も、ついに登場。健さんが光る着物でオーレ、オーレ!あまりのまぶしさにクラクラすること間違いなし。
 25日には、多くのファンに惜しまれつつ、25年間830話をもって大団円を迎えた「暴れん坊将軍」の第一シリーズがスタート。シリーズ最初の「お庭番」は誰だったのか?中尾彬の心憎い役柄とは?
 みんな、松平健祭りで、オーレ!!

ペリー荻野プロフィール
ペリー荻野

1962年愛知県生まれ。大学在学中よりラジオのパーソナリティ兼原稿書きを始める。 「週刊ポスト」「月刊サーカス」「中日新聞」「時事通信」などでテレビコラム、「ナンクロ」「時代劇マガジン」では時代劇コラムを連載中。さらに史上初の時代劇主題歌CD「ちょんまげ天国」シリーズ全三作(ソニーミュージックダイレクト)をプロデュース。時代劇ブームの仕掛け人となる。

映像のほか、舞台の時代劇も毎月チェック。時代劇を愛する女子で結成した「チョンマゲ愛好女子部」の活動を展開しつつ、劇評・書評もてがける。中身は"ペリーテイスト"を効かせた、笑える内容。ほかに、著書「チョンマゲ天国」(ベネッセ)、「コモチのキモチ」(ベネッセ)、「みんなのテレビ時代劇」(共著・アスペクト)。「ペリーが来りてほら貝を吹く」(朝日ソノラマ)。ちょんまげ八百八町」(玄光社MOOK)「ナゴヤ帝国の逆襲」(洋泉社)「チョンマゲ江戸むらさ記」(辰己出版)当チャンネルのインタビュアーとしても活躍中。