ペリーのちょんまげ ペリーのちょんまげ

掲載2008年07月04日

『紫頭巾』
田沼意次の陰謀をぶっつぶせ!
浜畑賢吉の表の裏の顔の変化にご注目

(むらさきずきん) 1972年

掲載2008年07月04日

紫頭巾こと扇喬之介(浜畑賢吉)は、元勘定吟味役・扇紋太夫の嫡男。田沼意次(渥美国泰)の不正を摘発しようとして殺された父の復讐を果たすため、田沼一派と戦っていた。そんな喬之介の表の顔は、深川だるま横丁に住む売れない浮世絵師狩田秀麿なのだ。
「こんなまねはしたくはないが、許せ」と颯爽とした紫頭巾が、秀麿になった途端、「そりゃあたしだって、絵描きのはしくれだよ」と、なよなよしてしまうのが面白い。浜畑賢吉は、劇団四季でも活躍したこともあり、ダイナミックな演技と、コメディセンスはさすが。
 第七話「暗殺の赤い矢」では、江戸に出てきた弓道の名人(戸浦六宏)に田沼の魔の手が。汚い手を使って、名人を悪の道に引き込もうとする田沼のやり方に怒った紫頭巾は、大胆な勝負に出る。紫頭巾は、白昼、屋根の上から飛び降りつつ、悪人たちを斬ったり、「心配ご無用!」とポーズを決めたり、動きやセリフが芝居かがっているのも大きな特徴。そしていざとなれば、出た!「秘剣修羅八双」。
彼を追う若き岡っ引き早縄の左平和次(和田浩治)が、秀麿とは将棋仲間という設定も面白い。彼の手下のとんがり松(東八郎)のすっとぼけぶりも毎回のお楽しみ。「大岡越前」「ルパン三世」でもおなじみの音楽山下毅雄も、得意の口笛を響かせている。「大岡越前」の紫頭巾(松坂慶子)のルーツはここかも?

掲載2008年02月29日

『水戸黄門海を渡る』
長谷川一夫が白髭の黄門様に!
助さん(市川雷蔵)格さん(勝新太郎)大活躍。

(みとこうもんうみをわたる) 1961年

掲載2008年02月29日

諸国漫遊の旅を楽しむ黄門様(長谷川一夫)と助さん(市川雷蔵)、格さん(勝新太郎)は、仙台で謎の幽霊船の事件に遭遇。船が蝦夷松前藩の御用船と知り、さっそく乗り込む。すると船底には瀕死の若い武士が。なんとそれは格さんの友人で松前藩士の砂田重助だった。重助の話で、ご公儀に献上するはずの蝦夷の測量図が奪われたことを知った黄門様は、事件のカギは蝦夷にあると直感。現地ら乗り込むが、助さんとははぐれてしまう。
 面白いのは、初の白髭ご隠居役という長谷川一夫のキャラクター。助さんが行方不明だというのに、「海のもくずと消えたかも」と意外に冷静。天下の副将軍という身分が発覚(ちなみに印籠シーンはありません)すれば、「とうとうバレたな」とここでも冷静。さらにクライマックスでは、助さん、格さんたちに悪人たちを「かまわん、斬りなさい」とあっさり指令。かなりクールですよ、ご老公!
しかし、そこはさすがに天下の二枚目長谷川一夫。ご老公ともうひとつ大事な役を二役で演じているのだ!
 蝦夷の地には、エキゾチック美人のノサップ(野添ひとみ)がいて、重症に陥った彼女に格さんは決死の救出術を編み出す。「座頭市」でアウトロー役が定着する以前の勝新太郎の二枚目の魅力にも注目したい。それにしても助さんは大丈夫なのか?結末は放送で!

掲載2007年11月22日

『森の石松』中村勘三郎が、時代劇の人気者を熱演
おっちょこちょいの石松に思わずほろり。

(もりのいしまつ) 1992年

掲載2007年11月22日

清水一家にいわれのない罪をかぶせた上に、恩人を拷問で殺させた憎い相手・保下田の久六をたたっ斬った清水次郎長(古谷一行)は、森の石松(中村勘九郎/現・中村勘三郎)と松五郎(火野正平)だけを連れて、長いたびに出る。親分思いのふたりだが、旅は困窮を極め、つらいものに。それでも歯を食いしばって耐えて、やっとの思いで清水に帰り着くことができた。親分に四国の金比羅様に刀を奉納するよう頼まれた石松は、大張り切り。あぶなっかしい石松を皆は心配するが、なんとか無事に役は果たした。ところが、その帰路に旧知の吉兵衛(石橋蓮司)に騙され、亡き次郎長のあねさんの香典をとられた上に、なぶり殺しの運命に…。
 ご存知、次郎長一家の中でも、人気者の石松。勘三郎は、威勢のいいふんどし姿もいとわず(大河ドラマ『元禄繚乱』でもふんどしを締めるシーンがあった。これも役作りのポイントなのかも?)、街道を走り、清水の町を走り、最後は土砂降りの中、敵に囲まれ、泥だらけで鬼気迫る大熱演を見せる。
 石松の遺品には、たどたどしい手で「おやぶんへ」と書かれた土産の扇子や、でべそに悩む親友松五郎への「でべそにきく」薬が。ぐっとこらえる親分。号泣する松五郎。根っからのお人よしで愛嬌のある石松に泣かされる長編。

掲載2007年03月15日

『南町奉行事件帖 怒れ!求馬Ⅱ』ホームドラマの楽しさと事件探索のスリル、若き原田龍二が走る!走る!青春時代劇。

(みなみまちぶぎょうじけんちょう いかれきゅうま2) 1999年

掲載2007年03月15日

名奉行と評判の根岸肥前守(田村高廣)の孫である根岸求馬(原田龍二)は、一本気で気のいい若者だが、次男ゆえに出世とは無縁で自由な立場。家を出て、そば屋「千鳥」に居候しながら、江戸の町に起こる事件の探索にあたっている。
 岩崎ひろみ、原田の実弟の本宮泰風をゲストに迎えた「妹は可愛い小悪魔」の回では、卑劣な辻斬りを追いつつも、求馬の亡き父隠し子?騒動で大騒ぎに。
 凄腕の辻斬りに六人も犠牲になり、町奉行所の姉崎(田中健)、女岡っ引きのお京(持田真樹)らも必死に捜査をするが手がかりがつかめない。そんなとき、求馬は長吉(本宮)と組んで、美人局をする若い娘およし(岩崎ひろみ)と知り合う。反抗的で強気なおよしは「あたしの親父は侍なんだ」、なんとその“父親”が求馬の亡き父だと言い出す。「それなら父親の名前を全部漢字で書いてみろ」と迫る求馬。およしの話には真実味があり、すべてを知るはずの肥前守もはっきりと断定できない。そんなとき、長吉が辻斬り事件に巻き込まれ、怒ったおよしは、危険な男の後を追うが逆にさらわれた!?
 亡き夫の“疑惑”も知らずとぼけた味を出す求馬の母(野川由美子)、芸者姿ながら銀かんざしを飛ばして戦う豆千代姐さん(野村真美)もかっこいい!

掲載2007年01月22日

『武蔵坊弁慶』チャールズ皇太子・ダイアナ妃もご観覧!中村吉右衛門の“でっかい弁慶”に注目

(むさしぼうべんけい) 1986年

掲載2007年01月22日

平安末期。寺を炎上させた疑いでお尋ね者になるほどの暴れ修行僧・武蔵坊弁慶(中村吉右衛門)は、京の都で夜な夜な人々から刀を強奪していた。しかし、五条大橋で源義経(川野太郎)と運命的な出会いをし、義経の従者として生きる決意をする。やがて伊勢三郎(ジョニー大倉)ら、義経を慕う者たちと協力して、義経を源氏の武将として盛りたて、平家との戦いに命がけのはたらきをするが、鎌倉の源頼朝(菅原文太)からは、義経追討の命が出てしまう…。
 テレビでの活躍が少なかった吉右衛門が、堂々の演技を見せ、実際の身長の何倍にも見えるのが印象的。歌舞伎「勧進帳」でも知られる安宅の関での脱出譚、平泉での壮絶な立ち往生の大熱演も、吉右衛門らしい様式美で泣かせる。さらに義経と静御前(麻生祐未)、弁慶と玉虫(荻野目慶子)の悲しい恋もからめて、女性ファンからも人気になった。
 また、放送当時、世界中から注目を集めていたチャールズ皇太子・ダイアナ妃が来日。揃って、渋谷NHKのスタジオ収録を見学されたのも大きな話題に。白いスーツに帽子姿のダイアナ妃が、白い頭巾の僧服の弁慶と歓談する写真も残っている。その背景には、当時の大河ドラマが現代劇だったため、やはり日本的ドラマとしてこの作品が選ばれた?との説も。いろいろな意味で時代を感じる名作。

掲載2006年08月31日

『毛利元就』弱腰にもなれば、愚痴も言う!家族を愛し、戦国を生き抜いた元就の生涯。

(もうりもとなり) 1997年

掲載2006年08月31日

戦国時代初期の明応8年(1499)。安芸の毛利氏は、出雲の尼子経久(緒形拳)と山口の大内義興(細川俊之)の二大勢力に囲まれて、生き残りを模索していた。領主・毛利弘元(西郷輝彦)は、息子・興元(渡部篤郎)に家督を譲るが、興元もその嫡男も早世してしまう。続いて家督を継いだのは、幼少時・松寿丸と呼ばれていたころから、気性が強かった元就(中村 橋之助)であった。
 戦国乱世をいかに生き抜くか。隣国の動きに絶えず注意しつつ、家庭でも息子たちの成長に気を配る元就。有名な「三本の矢」の教訓も含め、時代劇初挑戦の内館牧子の脚本は、武将の人間性にスポットを当てている。
ユニークなのは、元就の周辺にいる女性たち。
つい弱腰になって愚痴を言う夫を支える美伊の方(富田靖子)、夫を亡くしながらも凛として生き抜く兄の正室雪の方(一路真輝)、情熱的な加芽(葉月里緒菜)、中でも、一応、母親代わりと言いながら、自分の美貌ばかりが気になる亡父の側室・杉の方(松坂慶子)は、成長した元就を見て、「りっぱになって、私はただいじめてただけになのに…ほほほ」などと、本音ポロポロ。さすがに女の世界を描くと強い内館ワールド。三本の矢もこんな女性たちにかかれば、ひとたまりもない? なお、松寿丸の少年期を近年、俳優としても活躍する森田剛が派手に熱演したのも話題だった。

掲載2006年08月03日

『魔境 殺生谷の秘密』腹ペコ浪人・三船敏郎の大活躍。ハイテンション財津一郎と金山の運命は?

(まきょう せっしょうだにのひみつ) 1983年

掲載2006年08月03日

旅を続ける浪人(三船敏郎)は、ふとしたことで老武士と孫の二人連れと知り合う。老武士・島田閑兵衛の話によれば、彼の息子・弥一郎は、幕府検察使をしていたが、無実の罪で切腹させられたという。弥一郎の死には、金山にまつわる不正がからんでいるらしい。巨悪がうごめく金山に向かう島田たちを思ううち、浪人は、妙な男・守助(財津一郎)と出会う。どうやら、守助は金山の秘密を知っていて、追われている様子。「だんな、てえした腕前だー」と、浪人の腕を見込んだ守助は、勝手に道連れになろうとする。
 浪人・三船敏郎が、島田老人と出会う場面。腹ペコで動くこともままならない浪人が、老武士の孫に握り飯を分けられて、ぐーぐー腹を鳴らしながら、「飯は、食った」とやせ我慢したりする。また、名前を尋ねられた浪人が、山に飛ぶカラスを見て名乗った名前は? 豪快ながら、人を食ったような浪人は、三船敏郎の十八番。ここでも、大いにその魅力を発揮する。
 また、金山に取り付かれ、破滅の道を突き進むふたりの男が登場。そのひとり守助は、やさしい娘(佳那晃子)がいながら、まっとうな道に戻ることはかなわない。あとひとりは、弥一郎の死の鍵となる男(峰岸徹)。黄金と妖艶な人妻(赤座美代子)に魅入られた男の正体とは。赤座美代子がすれっからした女を熱演する。上手い。

掲載2006年07月27日

『まぼろし城』巨大どくろに襲われる幕府隠密・月之介!美少女ジュディ・オングも大活躍。

(まぼろしじょう) 1968年

掲載2006年07月27日

第一話。物語は深夜、いきなり城に潜入する不気味なドクロ集団の動きから始まる。難なく城に潜入した彼らは、何かを探している様子。それは日本の山という山を調べ上げ、金銀銅鉱脈など、山の資源をすべて手に入れたも同然と言われる秘伝の二巻の山絵図だった。あわや悪人たちの手に絵図が…というところに立ちはだかったのが、幕府隠密・木暮月之介(林真一郎)。どくろ集団の頭領は、徳川幕府に恨みを抱く、小西寿安(ジェリー伊藤)だった。妖術を操る寿安は、月之介の前にき巨大などくろを出現させ、江戸城を壊滅させると宣言する。
 戦前、雑誌「少年倶楽部」に連載されて人気を博した少年活劇小説の実写版。スタッフは、「隠密剣士」でヒットを飛ばした面々だけに見せ所はよーく心得ている。
 驚いたのは、第一話、68年当時、ロケもかなり自由だったのか、本物の城(?)の敷地内で、延々どくろ団との戦いシーンが続くこと。現在ではなかなかできないぜいたくな撮影環境だった。独特の逆手斬りの立ち回りと、緊迫した場面でも「江戸土産に拙者の名前をお聞かせいたそうか」などととっても丁寧言葉が特徴の月之介の活躍と、彼に味方する飛騨の山棲族の娘・ジュディ・オングと中村晃子の愛らしさにも注目。
♪どこへ行くのと尋ねたら〜と、問答形式が印象的な主題歌も覚えて口ずさみたい。

掲載2006年07月20日

『またも辞めたか亭主殿〜幕末の名奉行・小栗上野介〜』勝海舟のライバルは短期・損気の男、命がけで日本を守った“一人プロジェクトX”

(またもやめたかていしゅどの) 2003年

掲載2006年07月20日

名門に生まれた幕臣・小栗上野介(岸谷五朗)は、遣米使節として渡ったアメリカから帰国。江戸では、開国か攘夷で大騒動が続いていた。アメリカで見聞したことをふまえ、これからは、日本に本格的な造船所が必要だと考えた小栗は、勘定奉行に就任するや、計画を実行に移そうとする。しかし、幕末、疲弊した幕府にそんな余裕はない。小栗は、巧みに上司を操り、奇跡的に費用を捻出。しかし、やり方はかなり強引で、周囲とは始終もめていた。もめてうまく立ち回るどころか、「うーっ!!」と感情を爆発させ、ついには「辞める!!」と言ってしまう小栗。妻の道子(稲森いずみ)は、ため息をつきつつ、「またですか…」。ちなみに小栗は勘定奉行だけで、四回も就任したり、辞めたりしている。才能はあるが、世渡り下手。現代にも通じるなーと感心する。
「船酔いだったが、やらねばならないことがメニーメニーよ」と小栗が言えば、従者(石橋蓮司)が「ハワイはワンダホーでございました」などと応えるやりとりの場面、ちょんまげに洋装など幕末のエリートらしい小栗の日常、ライバル勝海舟(西村雅彦)との友情。短期&損気ながら、どこか人をひきつけた小栗だが、やがて意外な結末に。最期まで造船所を守るために奔走した小栗の生き方と、「広い世界でそちとわしは出会った。それで十分じゃ」という道子への深い愛情にも胸打たれる。

掲載2006年05月18日

『壬生の恋歌』最終回「旅立ち」朝敵となった幕府軍と新選組の運命は。平隊士が見た幕末、最終回へ。

(みぶのこいうた) 1983年

掲載2006年05月18日

飯を食うため、武士になりたい一心で新選組に入った入江伊之助(三田村邦彦)。だが、そこに待っていたのは、法度に違反すれば即刻切腹という厳しい世界だった。会津藩とのつながりで羽振りのよかった新選組も、倒幕勢力の拡大で、次第に追い詰められていく。近藤勇(高橋幸治)、土方歳三(夏八木勲)が作り上げた鉄壁の結束も崩れ、戦場で傷つき、ばらばらになっていく隊士たち。砲撃の最中、伊之助が思うのは、時雨綱太郎(赤塚真人)、千石静馬(笑福亭鶴瓶)、山田峯太(内藤剛志)、畑中三郎(渡辺謙)、鶴橋多喜人(金田賢一)ら、若き平隊士仲間の顔だったのか…。
 物語はいよいよクライマックスへ。
 当チャンネルで、三田村邦彦さんインタビューをした際、スタジオ撮影が基本だったため、戦場シーンもすべてNHK大阪のスタジオにセットを作ってしまったことに俳優陣も驚いたという。しかも、下草のひとつひとつにまで心を配ったていねいなセット作りに感動する出演者も多く、鳥羽伏見の戦いなど、おおいに気合が入ったシーンになったとか。
 ちなみに当時「必殺仕事人」と掛け持ちで出演していた三田村さんは、「とにかく寝る時間がなかった。若かったたらできたということもあるけど、まったくタイプの違う作品で、しかもどちらも素晴らしい人たちに支えられたことが励ましだった」とのこと。納得。

ペリー荻野プロフィール
ペリー荻野

1962年愛知県生まれ。大学在学中よりラジオのパーソナリティ兼原稿書きを始める。 「週刊ポスト」「月刊サーカス」「中日新聞」「時事通信」などでテレビコラム、「ナンクロ」「時代劇マガジン」では時代劇コラムを連載中。さらに史上初の時代劇主題歌CD「ちょんまげ天国」シリーズ全三作(ソニーミュージックダイレクト)をプロデュース。時代劇ブームの仕掛け人となる。

映像のほか、舞台の時代劇も毎月チェック。時代劇を愛する女子で結成した「チョンマゲ愛好女子部」の活動を展開しつつ、劇評・書評もてがける。中身は"ペリーテイスト"を効かせた、笑える内容。ほかに、著書「チョンマゲ天国」(ベネッセ)、「コモチのキモチ」(ベネッセ)、「みんなのテレビ時代劇」(共著・アスペクト)。「ペリーが来りてほら貝を吹く」(朝日ソノラマ)。ちょんまげ八百八町」(玄光社MOOK)「ナゴヤ帝国の逆襲」(洋泉社)「チョンマゲ江戸むらさ記」(辰己出版)当チャンネルのインタビュアーとしても活躍中。