ペリーのちょんまげ ペリーのちょんまげ

掲載2017年10月13日

映画「水戸黄門」
東野英治郎黄門様と里見助さん、大和田格さんの映画版
世界の三船敏郎、栗原小巻、植木等、谷啓らも出演

掲載2017年10月13日

「水戸黄門」は1969年のスタート以来、半世紀近く親しまれる国民的時代劇。水戸光圀とともに町人姿で旅をする佐々木助三郎と渥美格之進が旅先でさまざまな出会いをする。こじれた師弟関係を修復したり、いがみ合う嫁姑の間にたったり、人間愛にポッと心が温められ、勧善懲悪の解決でスカッとする。この形は21世紀になった今も不変だ。

 本作はドラマで初代黄門様を演じた東野英治郎主演の劇場版。助さん(里見浩太朗)、格さん(大和田伸也)、風車の弥七(中谷一郎)、うっかり八兵エ(高橋元太郎)一行が、加賀百万石を救う旅を描く。冒頭、山中で二人の武士が襲われ、金三郎(東野英治郎の長男、英心)は落命。弥七に救われた一人は男装した加賀藩家老奥村作左衛門(三船敏郎)の娘由美(栗原小巻)だった。由美からお家乗っ取りの陰謀を聞いた光圀(東野)は、旅立ちを決心する。 

 注目は、豪快な殺陣を見せる三船、可憐な美しさを誇る栗原、竹脇無我、和田浩治、かしまし娘など豪華キャスト。そこにニセ黄門(ハナ肇)、ニセ助(植木等)、ニセ格(谷啓)がからんで大いに笑わせる。また、昭和を代表する悪役たちも勢ぞろい。家老の安部徹、武装集団の深江章喜、牧冬吉、悪代官の遠藤太津朗が一行に襲い掛かる。原案・脚本はナショナル劇場の脚本家集団の共通名・葉村彰子。監督は山内鉄也。芥川隆行の名ナレーションも聞きもの。

掲載2016年12月02日

「水戸黄門 助さん格さん大暴れ」
松方弘樹の助さんと北大路欣也の格さん登場!
遊び心満載の展開に月形龍之介のご老公もにこにこ

(みとこうもん すけさんかくさんおおあばれ) 出演者:月形龍之介/松方弘樹/北大路欣也/北条喜久/渡辺マリ/岡田英次/小沢栄太郎/田中春男/夏川静江ほか 1961年

掲載2016年12月02日

 水戸藩新人登用試験で佐々木助三郎(松方弘樹)と渥美格之進(北大路欣也)は、次席家老の息子・根津辰馬(菅貫太郎)らの悪だくみに巻き込まれ、大乱闘になってしまう。落ち込んでいると老農夫が握り飯を出してくれた。思わず、農夫に試験問題の漏えいなど不正の話をしたふたり。謹慎中に水戸光圀から登城の命令が届き、助三郎の母(清川虹子)と格之進の父(田中春男)は、息子たちの切腹を覚悟し、白装束で送り出す。しかし、ふたりの目の前に現れた光圀(月形龍之介)こそ、あの老農夫! 光圀はふたりが試験にきちんと回答していたと認めた。以後、ふたりは西山荘で光圀に仕えるが、やがて水戸藩江戸家老の藤井紋太夫(岡田英次)と柳沢吉保(小沢栄太郎)の陰謀を阻止すべく、助さん、格さん姿になり光圀と江戸を目指す。

 なんたって、松方&北大路が若い! どちらもスターの御曹司にして、新スターとして売り出し始めた勢いがすさまじい。クライマックスの大立ち回りでは、跳ぶわ跳ねるわ、なんと生きた犬をぶん投げての大暴れ。生類憐みの令を出した綱吉に涙ながらの直訴って本気か!?と思うが、そこは遊び心いっぱいの演出をする沢島忠監督。意外過ぎるオチが待っている。月形龍之介の「水戸黄門」第14弾最終作で光圀は「わしは少し年を取りすぎた」なんてことも言うが、助格の活躍を見て「わしも負けんぞ」と頼もしい言葉も飛び出す痛快篇。

掲載2016年09月16日

「三屋清左衛門残日録」
隠居した前藩主用人が藩内の陰謀に関わる藤沢周平の人気作
北大路欣也、中村敦夫、伊東四朗ら円熟の演技が光る

(みつやせいざえもんざんじつろく) 出演者:北大路欣也/優香/渡辺大・中村敦夫・麻生祐未/伊東四朗 ほか 2016年

掲載2016年09月16日

「日残リテ昏ルルニ未ダ遠シ」こうした文言を「残日録」と名付けた日誌につけ始めた主人公の三屋清左衛門(北大路欣也)は、元藩用人で、先代藩主の死去にともない、家督を息子に譲って悠々自適の日々。だが、健康な身でいざ隠居してみると、世間から隔絶されたような寂寞感を味わう。そんな清左衛門におさななじみの親友で町奉行の佐伯熊太(伊東四朗)がさまざまな相談事を持ち込んでくる。やがて藩内の不穏な動きは拡大。派閥争い、狙われる目撃者、乱心した老武士、さまざまな動きがつながり、やがて清左衛門は若き藩士平松(渡辺大)らと藩を二分する陰謀に立ち向かう。

原作は藤沢周平の人気作。主演は、俳優生活60年を経た北大路欣也。本作の撮影現場は東映京都撮影所で、北大路は会見で「父、市川右太衛門との共演作でここでデビューし、またここで仕事ができることは何よりの喜び」と語った。共演は、北大路とは90年代に「銭形平次」で十年共演し、息もぴったりの伊東四朗、ベテランの中村敦夫、「隠密奉行朝比奈」などで北大路と共演した金田明夫ら豪華な顔ぶれ。老いゆく心情、友情や、家族への愛、藩への思いなどを円熟の演技で見せる。北大路、中村の殺陣も見逃せない場面だ。また、清左衛門を慕う料理屋「涌井」の女将みさ(麻生祐未)とのしっとりしたシーン、舅を心配して釣りなど薦める明るい嫁里江(優香)とのやりとりも楽しい。

掲載2016年08月05日

「水戸黄門(1957年)」
月形龍之介の十八番!千代之介の助さん、橋蔵の格さんをはじめ
片岡千恵蔵、中村錦之助、市川右太衛門登場の豪華版

(みとこうもん) 1957

掲載2016年08月05日

 テレビでおなじみの「水戸黄門」だが、先に大人気となったのが月形龍之介の映画版。本作は月形の映画生活三十八年記念大作として公開され、大ヒットした。

 物語は、黄門様(月形)と佐々木助三郎(東千代之介)と渥美格之進(大川橋蔵)が旅の途中、農民が「お犬様」に追いかけられ、田畑が荒れ果てる場面から始まる。お犬様のせいで罪のない人が死んだと聞いた黄門様は怒り、犬の皮を将軍・綱吉(片岡千恵蔵)に送りつける。聡明な綱吉により「生類憐れみの令」が取り下げられ、ホッとしたのもつかの間、今度は江戸で越後高田藩国家老・小栗(薄田研二)の不審な動きを目撃。小栗は何かとウワサのある幕府側用人・柳沢出羽守(進藤英太郎)と通じていた。一方、巾着切りの宇之吉(中村錦之助)は、藩の不正を正そうとする剣客関根弥次郎(市川右太衛門)を助け、ともに戦うことに。高田藩に対して鮮やかな綱吉の裁きの後、黄門様一行は黒覆面の集団に襲撃される。

 千代之介・橋蔵の爽やか助格の活躍に千恵蔵、錦之助、右太衛門に大河内傳次郎、千原しのぶ、入江たか子、横山エンタツなど人気者が勢ぞろいの豪華版。「格さんや犬の皮をはいでやりなさい」「遠慮はいらん。(悪人の)介錯をしてやんなさい」と強烈な命令をする黄門様も魅力的。チャンバラの楽しさ、勧善懲悪の気持ちよさ、スターの輝き満載の「水戸黄門」

掲載2016年06月03日

「紫頭巾 京洛の大粛清」
高橋英樹の紫頭巾が悪徳商人を追い詰める!
英樹の超個性的な変装と公卿役・石橋蓮司の怪演に注目

(むらさきずきん きょうらくのだいしゅくせい) 出演者:高橋英樹/荒木由美子/鮎川いづみ/中条きよし/遠藤太津朗/石橋蓮司 ほか 1982年

掲載2016年06月03日

 「紫頭巾」は、日本映画の父と言われる牧野省三のもとで戦前から活躍した寿々喜多呂九平の原作を基に脚色された痛快時代劇。阪東妻三郎が演じた役だけに、スピード感は抜群。娯楽作としての仕掛けもたくさんある。

 大坂では城代・米倉出雲守(青木義朗)に取り入った豪商・浪花屋(遠藤太津朗)の横暴により、大名から庶民までも苦しめられていた。正義の志士、紫頭巾こと浪人・響竜太郎(高橋英樹)は、大坂へと走る。あやめ花魁(鮎川いづみ)となじんだ竜太郎は次第に悪の根が深い事を知る。一方、島原で豪遊する公卿・姉小路(石橋蓮司)は、商人の番頭が運んでいた百両を奪い取ることを計画。すられた番頭は絶望して許嫁のお民(荒木由美子)と心中をはかる。ひとり生き残ったお民は、路上でさらし物に。そこに颯爽と現れた紫頭巾はお民を救出し、謎めいた老絵師・尾形梅雪のもとへと送り込む。白髪で背中も曲がり醜い姿の梅雪だが、これもまた竜太郎が変装した姿なのだった!さらに偽の紫頭巾も出没。本物の竜太郎もケガをしてしまう。偽物の意外な正体とは。

 監督は工藤栄一。お民を家に送った紫頭巾がすぐさま梅雪に変装するなど、高橋英樹のバタバタした感じも味となっている。また、「百両すり取ってもらいたい。よろしく。ホホホホ」と甲高い声で登場する姉小路の石橋蓮司の怪演も見逃せない。

掲載2016年04月22日

「松本清張ミステリー時代劇」
最後の10秒まで目が離せない一話完結のミステリー
星野真里、ダンカン、国広富之らの腹黒役に注目

(まつもとせいちょうみすてりーじだいげき) 出演者:武田真治/福田沙紀/新井康弘/遊井亮子/山崎画大/大浦龍宇一/渡辺いっけい(オムニバス) 2015年

掲載2016年04月22日

 松本清張といえば「砂の器」、「点と線」など社会派ミステリーの大作家だが、多くの時代小説も手掛けている。封建社会のひずみにいる江戸時代の人々にもその視線はしっかりと向けられていたのだ。「松本清張ミステリー時代劇」は短編集「無宿人別帳」「彩色江戸切絵図」「紅刷り江戸噂」より12編をドラマ化。当時の時代背景や風俗、文化などを水先案内人の佐々木蔵之介が案内する形で時代劇初心者にもわかりやすい一話完結形式になっている。

 第1話「流人騒ぎ」は、とっくに放免になるはずが役人の怠慢で島に取り残された男(武田真治)が仲間と島抜けを図る話。しかし、裏には悪だくみが...。第11話「赤猫」は、牢の火事で放たれた囚人仲間新八(ダンカン)の強盗殺人の共犯にされた平吉(金子昇)が、逃亡の末に愛妻(森田涼花)とつましく暮らすが、因果から逃れられず新たな事件に巻き込まれる。第12話「町の島帰り」は、特赦で遠島から帰った無宿人千助(ユキリョウイチ)が恋人のお時(野村佑香)と暮らそうとするものの、お時に言い寄る岡っ引きの仁蔵(国広富之)に仕事を邪魔される。そもそも遠島の罪も仁蔵が偽の証拠で作った冤罪だったのだ。千助の運命は...トリック、逆転、罠、最後の10秒まで目が離せない展開。国広はじめ、星野真里、ダンカン、大河ドラマ「真田丸」で注目された迫田孝也などが腹黒人間を演じるのもみもの。

掲載2016年04月08日

「瞼の母」
中村錦之助が母を求めて旅する渡世人番場の忠太郎に
長谷川伸の名作を名匠・加藤泰が哀愁漂う名場面を演出

(まぶたのはは ) 出演者:中村錦之助(萬屋錦之介)/松方弘樹/大川恵子/中原ひとみ/木暮実千代/夏川静江/浪花千栄子 ほか 1962年

掲載2016年04月08日

 五歳で別れた母を思い旅をする渡世人番場の忠太郎(中村錦之助)は、武州金町で弟分半次郎(松方弘樹)の妹(中原ひとみ)とお袋(夏川静江)に出会う。半次郎を逃がそうと飯岡一家と対決した忠太郎。半次郎に罪が及ばぬよう、現場に「下手人は忠太郎」と書置きを残すため、無筆の自分の手をとって文字を書いてくれる半次郎の母のぬくもりに触れ、「笑ってやっておくんなはい」と涙を流す。その後、忠太郎は母と思われるおはま(木暮実千代)に会いに行く。江戸の料理茶屋「水熊」の女将・おはまは忠太郎を自分の子と確信するが、娘・おとせ(大川恵子)の婚礼を控えていたため、「確かに番場で子を生んだが、九つのときに死んだ」と追い返す。再会した母に渡そうと百両もの金を貯めたのに、おはまに無心に来たとまで言われる忠太郎の口惜しさ、悲しみが胸を打つ。

 原作は自身も母と分かれ、後に再会経験のある長谷川伸。母探しを「邪魔するやつはたたっ斬る!」と威勢のいい忠太郎が、おはまの前では無邪気なこどもように喜び、やがて失望、絶望へと表情を変える。錦之助の明るさと哀愁を訥々と見せる名匠・加藤泰監督の長回し(おはまとの再会シーンは約4分)は大きな見せ場。「切って切れねえ親子の縁」忠太郎の母恋の名セリフ、木暮のキレのいいセリフと息子を追い返した苦しみを畳に手を這わせる動きで見せる細やかな演技もみもの。

掲載2016年01月08日

「樅の木は残った 総集編」
奸臣か忠臣か!?伊達騒動の真実に迫る山本周五郎の名作
気迫万点 平幹二朗、吉永小百合、栗原小巻の美にも注目

(もみのきはのこった そうしゅうへん) 出演者:平幹二朗/吉永小百合/栗原小巻/田中絹代/森雅之/佐藤慶/北大路欣也/花沢徳衛/香川京子 ほか 1970年

掲載2016年01月08日

 徳川政権も安定したかにみえた第四代将軍徳川家綱の治世に勃発した仙台藩伊達家のお家騒動。一般的には藩を牛耳ろうとした奸臣・原田甲斐が乱心した殺傷事件として知られるが、作家・山本周五郎は実は原田甲斐こそ、藩の乗っ取りや取り潰しを防いだ忠臣だと描いた。

 ことの発端は伊達綱宗が色町での乱行などを幕府の酒井雅樂守(北大路欣也)からとがめられ、隠居したことだった。しかし、世間で言われるほど綱宗は乱行をしていたわけではない。その直後の深夜、綱宗の遊興に同行していた四人の家臣が「上意」として斬殺された。殺された藩士の中には、宇乃(吉永小百合)の父もいた。黒幕は、藩乗っ取りを企む伊達兵部(佐藤慶)の一派だが、兵部は幕府ともつながりがあり、もはや甲斐は頼る相手がなかった。疑心暗鬼で藩が乱れる中、甲斐はついに自らを犠牲にして藩の存続を図る決意を固める。

 前半、原作にはない甲斐の青春時代の場面では、甲斐が心から愛した女・たよ(栗原小巻)と馬で駆け、言葉を交わすシーンがある。彼を若様と呼ぶたよは「私は嫁ではない嫁です」と身分差に泣く。栗原小巻と吉永小百合、ふたりの美の競演もみどころ。また、甲斐が血みどろで畳を這いながら、伊達安芸(森雅之)の小刀に血を塗りつけ、刃傷事件をすべて自分の仕業と宣言するクライマックスは、まさに鬼気迫る熱演。見逃せない名場面となっている。

掲載2015年06月12日

「主水之助七番勝負 徳川風雲録外伝」
松平健がなぜか各地で誤解される無口な剣豪に!
三田村邦彦が非情な悪役になっているのも見物

(もんどのすけななばんしょうぶ とくがわふううんろくがいでん ) 出演者:松平健/三田村邦彦/佐藤藍子/加治将樹/かたせ梨乃 ほか 2008年

掲載2015年06月12日

08年、新春ワイド時代劇として放送された柴田錬三郎原作「徳川風雲録」に登場した剣豪土屋主水之介(松平健)が主役となったシリーズ。かつて八代将軍吉宗の危機を救った主水之介は、天下を陰で支えた武芸者として信頼されていた。武者修行で各地を歩く主水之介は、以前、出会った亀田藩主岩城康隆が暗殺されたと知る。剣の腕は確かだった康隆が誰に暗殺されたのか。主水之介は、十五年前、一刀流の後継者争いで主水之介を破った兄弟子・大峰ノ善鬼(三田村邦彦)を疑う。善鬼は暗殺請負人だが、死んだとされていた。宿敵善鬼を追う主水之介は、敵討ちを志す村井姉弟(佐藤藍子、加治将樹)と道連れとなりながら、各地の剣豪たちと闘うことになる。

 主水之介は人助けもするのに、寡黙ゆえかなぜか各地で誤解されやすいのだ。第五話では、七年前に地元の道場主と人足を殺したと誤解され、道場の弟子たちと人足の妻おみね(筒井真理子)に狙われる。実は主水之介は道場主を襲った真鍋久蔵(永澤俊矢)を追い詰め、偶然人足にけがをさせたのだった。しかし、子まで亡くしたおみねの心情を思い、主水之介は黙って刺されてしまう。一方、善鬼はまたも凶行を繰り返す。珍しくヘビ男のように冷たい悪役を演じる三田村と主水之介を慕う恩師の娘(かたせ梨乃)にも注目。毎回、各地の剣の遣い手との勝負は見もの。

掲載2015年02月27日

「宮本武蔵」
三船敏郎の武蔵、八千草薫のお通の逃避行!
三者の運命に又八の三國連太郎らがからむ名作巨編

(みやもとむさし) 出演者:三船敏郎/三國連太郎/尾上九朗右衛門/八千草薫/岡田茉莉子/水戸光子/平田昭彦/加東大介 ほか  1954

掲載2015年02月27日

慶長五年。宮本村の武蔵(三船敏郎)は又八(三國連太郎)と関ヶ原の戦いに参加。しかし、西軍はあっけなく負けて敗残兵となった。二人はお甲(水戸光子)と朱実(岡田茉莉子)母子に助けられるが、野盗に襲撃を受け、お甲は武蔵だけを残して旅だった。又八の母お杉(三好栄子)に事情を説明しようと関所を破り、ひとり村に戻ろうとした武蔵は、おたずね者となってしまう。沢庵和尚(尾上九郎右衛門)に諭されて山から出てきた武蔵は、大木に吊るされて怒り心頭。又八の許嫁お通(八千草薫)に助けられて逃避行に出るが...。

 ご存知吉川英治の小説を巨匠稲垣浩が監督した東宝作品。三部作の第一作となった本作は、野性味たっぷりの武蔵を三船が持ち味を活かして熱演。しかし、みどころは八千草薫のお通だ。三年も待ち焦がれた武蔵が、自分が働く茶店に姿を現し、喜ぶお通。武者修行に出るので自分のことは「死んだものと思ってくれ」「女連れの武者修行があろうか」と困り顔の武蔵に私も連れて行けと懇願。「今すぐしたくしてくるから待っていて」と走り出す。しかし、武蔵は木橋の手すりに「ゆるしてたもれ」と彫り付けて姿を消す。「たもれ」って。意志の強いお通は、お杉や又八、恋のライバル朱実と不思議なかかわりを持ちながら武蔵を追う。この強さは新鮮だ。アカデミー外国語映画賞を受賞した名作。武蔵・お通像が変わるかも。

ペリー荻野プロフィール
ペリー荻野

1962年愛知県生まれ。大学在学中よりラジオのパーソナリティ兼原稿書きを始める。 「週刊ポスト」「月刊サーカス」「中日新聞」「時事通信」などでテレビコラム、「ナンクロ」「時代劇マガジン」では時代劇コラムを連載中。さらに史上初の時代劇主題歌CD「ちょんまげ天国」シリーズ全三作(ソニーミュージックダイレクト)をプロデュース。時代劇ブームの仕掛け人となる。

映像のほか、舞台の時代劇も毎月チェック。時代劇を愛する女子で結成した「チョンマゲ愛好女子部」の活動を展開しつつ、劇評・書評もてがける。中身は"ペリーテイスト"を効かせた、笑える内容。ほかに、著書「チョンマゲ天国」(ベネッセ)、「コモチのキモチ」(ベネッセ)、「みんなのテレビ時代劇」(共著・アスペクト)。「ペリーが来りてほら貝を吹く」(朝日ソノラマ)。ちょんまげ八百八町」(玄光社MOOK)「ナゴヤ帝国の逆襲」(洋泉社)「チョンマゲ江戸むらさ記」(辰己出版)当チャンネルのインタビュアーとしても活躍中。