ペリーのちょんまげ ペリーのちょんまげ

掲載2019年07月26日

「水戸黄門」(主演:武田鉄矢)
武田鉄矢のご老公がおなじみメンバーと東北に世直し旅!
篠田麻里子のくノ一も途中参加であのシーンもアリです!

(みとこうもん(しゅえん:たけだてつや) ) 出演者:武田鉄矢/財木琢磨/荒井敦史/津田寛治/袴田吉彦/長谷川純/中村嘉葎雄/篠田麻里子 ほか  2017年

掲載2019年07月26日

 国民的時代劇「水戸黄門」が、国民的学園ドラマ「3年B組金八先生」の武田鉄矢主演で登場。17年のスタート時には大いに話題になったシリーズは、伝統的な印籠シーンと毎回、黄門様が「鶏鳴狗盗」などと四文字熟語を使って説教したりと武田版らしい場面が出てくるのが大きな特長だ。

 水戸黄門こと水戸光圀(武田鉄矢)と助さん(財木琢磨)、格さん(荒井敦史)、風車の弥七(津田寛治)一行は、ある事件をきっかけに八戸を目指して東北に世直し旅へ。初回には「金八先生」シリーズで息子役だった佐野泰臣が無念の死を遂げる若侍で登場する。また金八先生を泣かせた不良中学生役だった直江喜一が一行の旅立ちを見送ったりと、ファンを喜ばせた。また、詩乃(篠田)はその途中で会ったくノ一。正体を夫(山口馬木也)に知られ、海に身を投げたのだが、記憶喪失に。光圀暗殺を請け負った悪い忍びの頭(中村嘉葏雄)に洗脳され、ご老公の命を狙う。詩乃は商家の女将を拉致し、その顔をすっかり盗み取って、ご老公に接近。正体を見破られると、ベリベリと忍者の特殊変装をはがして素顔をさらす。こういう技もまた、「水戸黄門」の忍びらしい。そして、過去がわからず苦悩する詩乃は入浴も...。

 八戸には怖い顔の強敵(石橋蓮司)も待っている。中村嘉葏雄らベテランと若々しい助さん格さんの対決にも注目したいシリーズ。

掲載2019年07月12日

「燃ゆる風―軍師・竹中半兵衛」('17年星組 宝塚バウホール・千秋楽)
「生きるのだ」「信じよ」宝塚歌劇が描く、熱き戦国ロマン。
未来を見据えた竹中半兵衛の誠実な生き方を七海ひろきが魅せる

(もゆるかぜ-ぐんし・たけなかはんべえ-('17ねんほしぐみ たからづかばうほーる・せんしゅうらく) ) 出演者:七海ひろき/真彩希帆 ほか  2017年

掲載2019年07月12日

 戦国乱世、武将・竹中半兵衛(七海ひろき)は、正室のいね(真彩希帆)とひっそり暮らしていたが、敵方の織田信長から勧誘される。しかし、知恵と度胸と愛嬌の三拍子そろった秀吉を「この人こそ、天下人」と見込んで、出仕を決意。急襲された城の味方を救ったり、敵の武将の調略に成功したりと大活躍する。天正六年(1578)、播磨の荒木村重の謀反が起き、信長は激怒。織田を裏切ったと誤解された黒田官兵衛の子松寿丸を、「殺せ」と命じる。半兵衛は「自分が首をはねる」と名乗り出たが、その胸には、命がけで松寿丸を匿おうという固い決意があった。そして、重い病を抱えながら官兵衛を助けるための戦いに挑む。「命の使いみち」を考え続けた半兵衛が「生きるのだ」「信じよ」と松寿丸に託したものとは...。

 「太陽が見えるのだ」と太平の世を夢見た知的な半兵衛の七海(単独初主演)、「大名になったぞ~」とはしゃぐ人間味たっぷりの秀吉(悠真倫)、半兵衛に諭され軍師として目覚める官兵衛(天寿光希)、魅力的なキャラクターが乱世を疾走する。男たちを支えるいねと信長の正室で齋藤道三の娘濃姫(音波みのり)との意外な事実など、ドラマチックな設定も目が離せない。謀反で真っ赤になる舞台、互いの思いを歌い上げる半兵衛といね、宝塚歌劇らしい演出で胸が熱くなる戦国ロマン。出演者の舞台上でのあいさつもお見逃しなく!

掲載2018年11月30日

「名奉行!大岡越前」
北大路欣也が愛娘に弱い人間味たっぷりの名奉行に。
推理あり名裁きあり、橋爪功の語りと加藤登紀子の主題歌も心に残る人気作

(めいぶぎょう!おおおかえちぜん) 出演者:北大路欣也/涼風真世/水橋貴己/冨田翔/金田明夫 ほか 2005年

掲載2018年11月30日

 南町奉行大岡越前守忠相(北大路欣也)は、どこか飄々として与力の笹倉采女(金田明夫)らをハラハラさせるが、実は推理力と行動力も兼ね備えた男。唯一の弱みは娘の香織(水橋貴己)だ。忠相は、物知りの門番与平(奥村公延)、密偵のおりん(涼風真世)、熱血の若い同心・池田大助(冨田翔)らとともに江戸を騒がす事件に立ち向かう。

 多くの名優が演じてきた越前だが、北大路の特長は、お白州のカッコよさとともに結構な酒好きで夜の町に気軽に出ては一杯やったりする気さくさがあること。健康を心配する香織に「父上!」と叱られてはてへへと逃げ回る姿は、北大路の持ち味である人間味や「面白がり」が出ている。ペリーはしばしば現場を取材したが、水橋、冨田ら若い俳優たちとの共演、自らが育った京都撮影所での仕事が実に楽しいと語る北大路欣也の明るさが印象に残っている。「雲切仁左衛門」や「ご落胤」の一件など、史実や大岡政談で昔から伝わる逸話を素材にした話もあり、かつて北大路の「子連れ狼」で息子大五郎役だった小林翼や北大路との共演作が多い長門裕之がゲスト出演しているのも見どころのひとつだ。娯楽時代劇の王道を堂々と演じる北大路、時代の空気を感じさせる橋爪功の語り、心温まる主題歌「今があしたと出逢う時」を歌う加藤登紀子と、おとなムードの仕上がりが楽しめる人気作。

掲載2018年10月05日

「みをつくし料理帖」
黒木華が江戸で料理人になるワケアリ上方娘を演じて評判に。
嫌がらせも悲しみも乗り越える一途な姿と美味い料理に癒される。

(みをつくしりょうりちょう) 出演者:黒木華/森山未來/永山絢斗/木村祐一/成海璃子/萩原聖人/麻生祐未/小日向文世/安田成美 ほか 2017年

掲載2018年10月05日

 わけあって江戸に出てきた大坂生まれの女料理人・澪(黒木華)は、娘を亡くした蕎麦屋「つる屋」の主人・種市(小日向文世)に板場を任され、美味い料理を作ろうと奮闘する。しかし、上方では好まれた戻り鰹が初鰹好きの江戸っ子には敬遠されたり、人気が出た献立を老舗料亭「登龍楼」にマネされたり苦難が続く。登龍楼から、つる家にアイデアを盗むための密偵少女が派遣されていたことが発覚。澪が登龍楼に乗り込んで怒りをぶつけた直後、つる家は放火で全焼してしまう。

 黒木は、鰹を丸ごと一本包丁で自らさばくなど、料理もすべてこなす熱演。澪が作る「はてなの飯(甘辛く煮た鰹の握り飯)」、「とろとろ茶碗蒸し」「三つ葉のかき揚げ」「ふきご飯」などは、どれも美味しそうだ。面白いのは、彼女が澪の気持ちを「眉毛」で表現してしまうところ。グルメな武士小松原(森山未來)から、「見事な下がり眉だな」と笑われ、登龍楼の意地悪な主人(松尾スズキ)の前では眉毛を怒らせ、燃えた店の前では眉毛を震わせる。澪を思っているらしい小松原とまじめな医師永田源斉(永山絢斗)、澪の料理に辛口コメントを言い放つおじさん戯作者の清右衛門(木村祐一)、男気のある吉原・翁屋の料理番・又次(萩原聖人)、謎めいた花魁あさひ大夫(成海璃子)など気になる人物も次々登場。澪の一途さと料理に癒される、ほのぼの美味い時代劇。

掲載2018年09月21日

「魔人ハンター ミツルギ」
徳川幕府転覆を狙う宇宙忍者サソリ軍団が襲来!!
智!仁!愛!のミツルギ三兄弟が合体した巨大神ミツルギが迎え撃つ。

(まじんはんたー みつるぎ) 出演者:水木襄/佐久間亮/林由里/緒方燐作/村地弘美/奥野匡/大木正司 ほか 1973年

掲載2018年09月21日

 徳川家康の治世。ある夜、サソリの形の星座から異様な流れ星が落ちた。だが、そのことに気づいたのは、ミツルギ一族の長老・道半(緒方燐作)のみ。この流れ星こそ、幕府転覆と天下獲りを狙う恐ろしい魔人が率いる宇宙忍者サソリ軍団だった。長老は、銀河(水木襄)、彗星(佐久間亮)、月光(林由里)のミツルギ三兄弟を呼び出し、「智・仁・愛」の秘刀を授ける。兄弟がこの刀を打ち合わせ、合体することで、巨大神ミツルギに変身、「ミツルギ参上!」の気合とともにサソリ魔人が操る宇宙怪獣と戦えるのである。第一話で魔人の人質になる家康の孫娘・濃姫は、のちに「水もれ甲介」などでアイドル的人気を得る村地弘美。巨大凧を使い、濃姫を助けた三兄弟は、礼を言いたいという家康にも会うこともなく、「俺たちの任務に終わりはない」と新たな戦いの道を進むのだ。

 73年に12話のみ放送され、そのダイナミックな発想と、ヘルメットに金属ベルトというレーサーのいでたちのミツルギ三兄弟のスタイルも話題となった伝説的な特撮時代劇。特に怪獣の動きが、珍しいストップモーションアニメで撮影されたシーンと造形スーツの実写両方が駆使されるなど、ほかの作品にはない味が出ている点にも注目。メイン監督・土屋啓之助は、新東宝出身で「マグマ大使」「怪獣王子」「忍者部隊月光」などこども向け番組や時代劇「木枯し紋次郎」などを手がけた。

掲載2018年08月10日

「まんまこと~麻之助裁定帳~」
モラトリアム若旦那が町内のもめごとを見事解決
福士誠治のお坊ちゃんとベテラン陣の味ある演技をお楽しみ

(まんまこと あさのすけさいていちょう) 出演者:福士誠治/南沢奈央/桐山漣/趙珉和/市川由衣/えなりかずき/石橋蓮司/竹下景子/高橋英樹 ほか 2015年

掲載2018年08月10日

 江戸・神田に暮らす麻之助(福士誠治)は町名主高橋家の跡取り息子。ふだんは白猫と日向ぼっこをしたり、粋な身なりで通りをぶらぶら、とぼけた入浴(銭湯)シーンも定番になっているが、実は推理力と行動力もあり、町内の様々な相談に乗る気のいいお坊ちゃんだ。高価な鉢植えの持ち主探し、誘拐された子どもの救出と麻之助は忙しい。中でも大変だったのが、落とし物のお守りにふたりの「落とし主」が現れた一件。ひとりは許嫁の武士から贈られたという若い娘、ひとりは雇い主からもらったという番頭だった。麻之助は、娘は嫌な縁談を、番頭は遠方修行を断りたくて、大事なお守りを失くしたと言いだしたと突き止める。やるね、麻之助。

 原作はベストセラー『しゃばけ』の畠中恵。演出は黛りんたろう。このドラマの面白さは、謎解きに加え、色事好きの八木清十郎(桐山漣)、生真面目役人の相馬吉五郎(趙珉和)親友ふたりの友情、初恋の相手やお寿ず(南沢奈央)との恋物語など青春ストーリーになっているところ。貧しい家の出の高橋家の使用人(えなりかずき)との身分差や考え方の違いなどじーんとくる場面も多い。十六歳まではまじめ一本だったのが、突如お気楽青年に変貌した、現代にも通じるモラトリアム青年麻之助をを支えるのが、親世代のベテラン俳優たちだ。のんき者の息子に呆れ果てる父宗右衛門(高橋英樹)、「あらま、おほほほ」と困ったときは笑ってごまかすおおらかな母おさん(竹下景子)、年の離れた後添えを迎えた清十郎の父・源兵衛(石橋蓮司)、若者に鋭いアドバイスをする火消の頭取(伊吹吾郎)、「夫婦というのは不思議なものです」などと人生の機微を教える俳諧の宗匠(市川左團次)。彼らは、出番は少ないが存在感はとても大きい。語りは長屋に住む落語家の柳家小さん。人情味たっぷりの進行を見せる。

掲載2018年02月02日

「三屋清左衛門残日録 三十年ぶりの再会」
久々に友と再会した清左衛門のほろ苦い経験をつづる。
北大路欣也とベテラン出演陣の味わい深い演技を堪能できる長篇

(みつやせいざえもんざんじつろく さんじゅうねんぶりのさいかい) 出演者:北大路欣也/優香/渡辺大/伊武雅刀/原田大二郎/高橋長英/麻生祐未/伊東四朗 2018

掲載2018年02月02日

 東北の小藩の用人を務めた武士が隠居後に出会うさまざまな出来事を綴る「三屋清左衛門残日録」シリーズの第三弾。清左衛門は、川釣りをはじめ、さらにかつての修業した中根道場の仲間たちと三十年ぶりに再会を果たす。「友と飲む酒ほどうまいものはない」と実感したのもつかの間、辛すぎる別れを経験する。友はなぜ何も語らず別れを選んだのか。友の過去をたどるのは、謎解きにも似た経験だったが、やがて悲しい彼の思いを知り、ほろ苦い結末を迎えるのだった。そんな中、清左衛門は旧知の女性松江(戸田菜穂)から縁談について相談を受ける。嫁ぎ先に悪い噂があるという。清左衛門は噂の真偽を確かめるべく動き出す。さらに道場の恩師中根弥三郎(栗塚旭)に頼まれ、因縁の果し合いに立ち会うことになる。ささいなことで人生を大きく変えられてしまう男たち。藤沢周平原作らしいおとなの人間ドラマだ。主演の北大路欣也にとって、清左衛門は憧れの存在だという。「現役時代は全身全霊をかけて懸命に働き、引き際も見事。隠居後も向学心があり、道場で鍛錬もする。すごいエネルギーです」「さまざまな生き方があるのは現代も同じ。誰もが共感できる話だと思います」「僕らのためにたくさんのスタッフが動き、監督は台本にたった一行ある場面のため自らロケハンしてくれる。僕はこの作品を通して、若いころには当たり前だと思っていた人とのつながりに改めて感謝したくなった」とも語る。役にかける思いはとても強い。

 ゲストには戸田菜穂、伊武雅刀、栗塚旭、原田大二郎、高橋長英ら演技派が揃った。ベテラン同士ならではの味わい深い演技、絶妙な間もみどころのひとつ。食にこだわる親友の町奉行(伊東四朗)や若手藩士(渡辺大)、清左衛門を慕う小料理屋女将みさ(麻生祐未)、息子の嫁(優香)などおなじみの面々とのうちとけたやり取りも人気の場面。監督は北大路欣也版「剣客商売」の山下智彦、音楽は「子連れ信兵衛」の栗山和樹。

掲載2018年01月26日

「三屋清左衛門残日録 完結篇」
隠居の武士が事件解決。北大路欣也が藤沢周平の名作に主演した第二弾。
藩内の陰謀がいよいよ急展開。伊東四朗らおなじみの面々も出演

(みつやせいざえもんざんじつろく かんけつへん) 出演者:北大路欣也/優香/渡辺大/鶴見辰吾/金田明夫/小林綾子/寺田農/笹野高史/麻生祐未/伊東四朗 ほか 2017年

掲載2018年01月26日

 藩用人を務め、有能さを主君からも認められた三屋清左衛門(北大路欣也)は、家督を息子に譲った。仕事やしがらみから離れた彼は、妻も亡くしたやもめで悠悠自適のはずだが、いざ隠居してみると、世間から隔絶されたような寂寞感が募る。そんな清左衛門に親友で町奉行の佐伯熊太(伊東四朗)が、表ざたにできないさまざまな相談事を持ち込んでくる。零落した旧友金井奥之助(寺田農)との再会、藩の二分する派閥争い、暗殺の陰謀がいよいよ急展開!? 危機に直面した清左衛門が心のよりどころにするのは、遠慮なく酒を酌み交わせる熊太と自分を慕ったくれる小料理屋「涌井」の美人女将みさ(麻生祐未)だった。しかし、みさにもおとなの女の過去があり...。

 この作品の魅力は、老齢の主人公に、恋あり、友情あり、事件ありと、青年期のような出来事が次々起きること。それに対して人生経験豊富な今だからこそできる解決法を示し、みんなに頼りにされるところだ。特に北大路の清左衛門は殺陣も鋭く、「銭形平次」で十年共演した伊東四朗、道をふみはずしたと嘆く金井の寺田、藩の秘密におびえる大塚平八の笹野高史らベテランとの共演でのびのびと演技をしている。また、明るく賢い息子の嫁里江(優香)と清左衛門のどこかとぼけたやりとりもみもの。ほろ苦かったり、清々しかったり。人生の教えに満ちた名シリーズ。

掲載2017年11月10日

「松本清張の異変街道」
親友の死と武田一族の黄金を追う旗本がつかんだ真相
古谷一行、近藤正臣、丹波哲郎ら名優によるサスペンス

掲載2017年11月10日

 ぼんやりして見えるが実は剣の腕はいい三浦銀之助(古谷一行)は、親友の旗本・鈴木栄吾(近藤正臣)が死んだと聞かされる。栄吾は不名誉な甲府勤番に役替えされ、病死したという。そんな折、甲州身延の七面山で栄吾に会ったという茶屋の主人・利助(沼田爆)が殺され、銀之助と栄吾を慕う芸者お蔦(藤真利子)は身延に向かう。七面山の奥地には武田一族の隠し里があり、黄金伝説が残っていた。

 原作は松本清張が週刊誌に連載した長編小説。武田の隠し財宝の話はしばしば時代劇のネタになるが、ここでは銀之助やお蔦だけでなく、表ざたにはならない幕府、武田一族、さらには金を追う強欲な連中など、三つ巴、四つ巴の争いが展開。謎の絵馬の暗号も出てきて、目が離せない仕掛けになっている。

 いい味を出すのが、終盤、銀之助と山を歩く河村(火野正平)。敵か味方かわからない河村は「山にはイノシシもヘビもおるぞ」と刃物を持ち出す。こんな男と暗い山道を歩くサスペンスはドキドキものだ。そしてクライマックス、武田一族の長として「天罰を下す!!」と怒る丹波哲郎。こんなセリフが一番似合う俳優だ。やがて明らかになる意外な真相。銀之助は黄金について、彼らしい判断をする。ラストで彼を助けた岡っ引きの常吉(蟹江敬三)は、雪をいただく富士山を眺める。実際に身延山でのロケを敢行。景色の美しさも印象に残る。

掲載2017年11月03日

「モノノ怪」
化猫、のっぺらぼう、海坊主、モノノ怪誕生の秘密
独特の映像美で一度見たらクセになるホラーアニメ

(もののけ) 出演者:(声の出演)櫻井孝宏 ほか 2007年

掲載2017年11月03日

 灰色の髪、紫色の唇、とがった耳、鋭く青色の眼。そして顔には隈取のような柄。出てきただけでタダモノではない雰囲気の薬売りの男。彼が背負う薬篭の下段には、モノノ怪を斬る「退魔の剣」が仕込まれているのだ。

 謎の男を主人公に彼が出会う奇怪なモノノ怪との対決を描くオムニバスアニメ。ただ戦うのではなく戦いそのものより、モノノ怪がなぜ生まれたか、そのエピソードに重点が置かれるのが大きな特長。なぜなら、退魔の剣を抜くためには、モノノ怪のカタチ形、マコト真、コトワリ理を知る必要があるからだった。たとえば、「のっぺらぼう」の回では、一家惨殺の罪でとらわれている女お蝶の前に薬売りが現れる。惨劇の背景にモノノ怪がいると感じた薬売りだが、真実を語るはずのお蝶を能面の男が連れ出そうとする。能面の男は誰なのか。また、「化猫」では、近代を舞台に地下鉄の開通式に現れた化猫を追うが...。薬売りの男の変化にも注目。

 驚くのはその美術感覚。伊藤若冲の絵画のように極彩色を多用した細密な背景。クリムトの絵画を思わせる平面的な構成。水墨画のごとくモノトーンの暗鬱な世界。不気味で残酷で、なのに美しいという日本のホラー独特の味わいを見事に表現している。人物の描き方もしわや眼球の動き、爪のとがり具合までモノノ怪の恐ろしさに密接につながって怖い。

ペリー荻野プロフィール
ペリー荻野

1962年愛知県生まれ。大学在学中よりラジオのパーソナリティ兼原稿書きを始める。 「週刊ポスト」「月刊サーカス」「中日新聞」「時事通信」などでテレビコラム、「ナンクロ」「時代劇マガジン」では時代劇コラムを連載中。さらに史上初の時代劇主題歌CD「ちょんまげ天国」シリーズ全三作(ソニーミュージックダイレクト)をプロデュース。時代劇ブームの仕掛け人となる。

映像のほか、舞台の時代劇も毎月チェック。時代劇を愛する女子で結成した「チョンマゲ愛好女子部」の活動を展開しつつ、劇評・書評もてがける。中身は"ペリーテイスト"を効かせた、笑える内容。ほかに、著書「チョンマゲ天国」(ベネッセ)、「コモチのキモチ」(ベネッセ)、「みんなのテレビ時代劇」(共著・アスペクト)。「ペリーが来りてほら貝を吹く」(朝日ソノラマ)。ちょんまげ八百八町」(玄光社MOOK)「ナゴヤ帝国の逆襲」(洋泉社)「チョンマゲ江戸むらさ記」(辰己出版)当チャンネルのインタビュアーとしても活躍中。