ペリーのちょんまげ ペリーのちょんまげ

掲載2016年10月14日

「山本周五郎 人情時代劇」
山本周五郎の人情あふれる短編を一話完結でドラマ化。
人生、結構いいこともあるとほっとさせてくれる名作集

(やまもとしゅうごろう にんじょうじだいげき) 出演者:高橋一生/大谷直子/秋元才加/忍成修吾/平山あや/水野真紀/赤井英和/山崎樹範ほか(オムニバス) 2015年

掲載2016年10月14日

 山本周五郎の時代小説といえば、大河ドラマ原作となった「樅ノ木は残った」、黒澤映画となった「赤ひげ」「椿三十郎」など大作のイメージもあるが、味わい深い短編も数多く執筆している。その多数の作品の中から、厳選した12編を伸び盛りの若いキャストを中心に一話完結でドラマ化した名作集。

 老婆(大谷直子)の面倒を見ることで、悪い仲間とのつきあいを断ち切ろうとする若者(高橋一生)を描いた「なみだ橋」、我が子に母と名乗れないまま乳母として側にいようと決心した女(趣里)と彼女を厳しく見つめる奥様(水野真紀)の歳月を追う「初蕾」、気のいい泥棒(赤井英和)がなんだかんだと無為に生きる若殿の世話を焼く「泥棒と若殿」など、どれも人の優しさが胸を打つ作品が揃う。中でもサスペンスを織り込んだ一篇が「めおと蝶」。「茶はまだか」「無駄は許さぬ」と口うるさい大目付上村(山崎樹範)の妻信乃(小野ゆり子)は、夫の厳命でひとり息子の養育もさせてもらえない。ある日、信乃は、無実の罪で投獄され、牢抜けした初恋の相手・西原知也(石黒英雄)を密かに屋敷に匿う。見つからないかと緊張する信乃だが、やがて事態は急転。夫婦の危機に直面した信乃は初めて夫の意外な一面を知ることになる。ラストまでどうなるかわからない人の心の機微の描写は見事。この一篇は日本民間放送連盟賞ドラマ部門優秀賞を獲得している。

掲載2016年08月12日

「酔いどれ小籐次」
竹中直人が酔いどれでなぜかモテる剣の達人に!
長屋の人々に助けられて、子育てに奮闘。

(よいどれことうじ) 出演者:竹中直人/比嘉愛未/上地雄輔/津川雅彦/鶴田真由/石丸幹二/本田博太郎/小野寺昭 ほか 2013年

掲載2016年08月12日

 恩ある藩主に恥をかかせた意地悪大名たちに一泡吹かせるため、大名行列の御鑓を奪うという前代未聞の事件を起こした赤目小籐次(竹中直人)。彼はその騒動で知り合った紙問屋久慈屋(津川雅彦)の世話で長屋暮らしを始める。静かに暮らしたい小籐次だが、彼を恨む満島藩の重臣田尻(本田博太郎)は刺客を差し向ける。その刺客とは子連れ浪人の須藤平八郎(上地雄輔)。激しい戦いで須藤を倒した小籐次だが、赤子を見て愕然。長屋の住人に助けられ、慣れない子育てに奮闘を始める。

 人情と剣戟。時代劇の面白さたっぷりの佐伯泰英原作の人気シリーズ。興味深いのは小籐次のモテモテぶりだ。外見はくたびれた着物に破れ笠、髪もヒゲもぼさぼさ。それなのに柳橋料亭の女将おこう(鶴田真由)からは、「いつでもお立ち寄りください」と、にこにこされ、大番頭水野家の奥女中おりょう(比嘉愛未)からは「困ったことがあれば何なりとご相談を」と見つめられる。青物売りの娘(大後寿々花)は、刃物研ぎの仕事を始めた小籐次に商売のコツを教え、時には危険を顧みず、悪人たちの居所を彼に教えようと走る。小籐次、人生初の恋と子育て。最終回の彼の決意には胸打たれる。竹中直人は番組の会見で「毎回立ち回りが三回はあって、もう命がけ。大変なんじゃ」と周囲を笑わせていたが、人生経験がにじみ出た、いいおじさんぶりを見せている。

掲載2016年07月01日

「吉原裏同心」
佐伯泰英原作を小出恵介が熱演。主題歌は小田和正
吉原を守る自警組織とさまざまな事件を描く

(よしわらうらどうしん) 出演者:小出恵介/貫地谷しほり/近藤正臣/野々すみ花/山内圭哉/林隆三/三宅弘城/皆川猿時 ほか 2014年

掲載2016年07月01日

 超人気 時代小説家・佐伯泰英原作の「吉原裏同心」の主人公は若き剣の使い手・神守幹次郎(小出恵介)。彼は豊後岡藩の下級武士だが、幼なじみの汀女(貫地谷しほり)が、夫・藤村壮五郎(皆川猿時)に虐待されていると知り、彼女を連れて出奔。江戸吉原の頭取・四郎兵衛(近藤正臣)に見込まれ、自警組織の裏同心役を頼まれたのだった。藤村に狙われる二人だが、悲壮感はなく、明るい。逃げることを決意した際にも「この際だから言いますが、お慕いしていました」と告白する幹次郎に汀女は「この際は、余分です」と泣き笑い。藤村に追われることも「天下を股にかけて鬼ごっこをしているようなものですね」と笑いあう。しかし、第一話では弟の悲恋と悲劇に見舞われる。

 脚本は朝ドラマ「梅ちゃん先生」の尾崎将也。主題歌は小田和正。時代劇初主演の小出は虚飾の町でトップ花魁の薄墨太夫(朝ドラ『あさが来た』でも人気の野々すみ花)に慕われて戸惑う若侍を無骨に演じる。また、時代劇キャリア豊富な市瀬秀和、山口馬木也ら殺敵方剣士の冴えた殺陣も見物。原田大二郎の悪役もいい味だ。思ったことを積極的に言い合う幹次郎と汀女の夫婦像、ワイヤーアクションを使った殺陣、壮五郎のアニメの悪役的存在感など、現代的な場面も印象的。吉原の女たちを守る会所の四郎兵衛と男衆の心意気、これが遺作時代劇となった林隆三の存在も光る。

掲載2016年05月06日

「柳生十兵衛 世直し旅」
松方、西郷、本田、時代劇を愛する志がここに集結!
お家騒動と忍びの暗躍、豪快な殺陣を満喫できる映画版

(やぎゅうじゅうべえ よなおしたび) 出演者:松方弘樹/杉本彩/西郷輝彦/田中美奈子/本田博太郎/竹内力/福本清三/亀石征一郎 ほか 2014年

掲載2016年05月06日

 柳生石舟斎の教えを受け、二代、三代の将軍を導き、門人一万三千人を育てた男、公儀剣術指南役・柳生十兵衛(松方弘樹)。十兵衛は将軍家光(西郷輝彦)から、奥州・白川藩に放った隠密が誰一人戻ってこず、真相究明を命じられた。密かに白河に潜入した十兵衛は、藩主が毒を盛られ、カギを握る姫も行方不明であることを知る。その陰謀は、藩重役の荒川頼母(亀石征一郎)が主犯かと思われたが、その裏には再び乱世にするべく徳川打倒を狙う、六代目・風魔小太郎という奇怪な存在があった。

 監督は必殺シリーズでも知られる石原興。隠密、お家騒動、怪し気な忍び集団など娯楽時代劇の要素がたっぷり。十兵衛を助けるくノ一役の杉本彩の妖艶な魅力、面と白塗りで奇奇怪怪な本田博太郎の熱演、善悪どっちなのかわからないがド迫力の竹内力、そして何より父・近衛十四郎の当たり役・十兵衛を久々に演じ、豪快な殺陣を見せる松方弘樹はさすが。十兵衛が芋酒好きで利き酒したりするのも面白い。ペリー的には、真田の六文銭を示す坊主頭の刺客を演じた曽根晴美との戦いは印象に残る。強い悪役こそが時代劇を支えているのだと改めて実感。映画館ではなく、公民館などに出前上映し、多くの時代劇ファンに届けようと動いた作品。福本清三、あいはら友子、丹古母鬼馬二、市瀬秀和など、出演者全員の時代劇愛と志が画面にあふれている。

掲載2015年08月28日

「破れ傘刀舟 悪人狩り」
「てめったっちゃ人間じゃあねぇ!」
萬屋錦之介演じる破天荒な名医がズバッと悪を斬る

(やぶれがさとうしゅう あくにんがり ) 出演者:萬屋錦之介/江波杏子/桂小金治/織田あきら/ジャネット八田 1974年

掲載2015年08月28日

 長崎で蘭方医学を修め、剣の腕も超一流という叶刀舟は、出世には興味もなく、江戸の荒れ寺で患者がいないときには、大酒を飲んでるという変わり者。金持ちからはふんだくるが、貧しい者には一切請求せずという太っ腹だ。おかげで、手にした傘も本当に破れている貧乏生活だ。底辺の人間に頼りにされる刀舟は、常に弱い者の味方。命を狙われることもしばしば。たとえば第一話ではいきなり四人の刺客に襲われるが、なんと傘をさしたまま、たちまち腰の胴太貫で斬ってふせ、そのまま荒れ寺に戻って、弟子の伊庭弥九郎(織田あきら)に一言。「四人ともたたっ斬ってきた」動じない男なのだ。とはいえ、人の命を助ける立場だから、悪人を斬るときには、出ました!あの名セリフ「てめったっちゃ人間じゃあねえ!たたっ斬ってやる!」人間じゃないから、斬るという理屈ができているところがナイス。

 刀舟は、江戸時代にして、パンタロンに高下駄という斬新なコスチューム。一度見たら忘れられない。また、涙もろい寺男の仏の半兵衛(桂小金治)、刀舟にいろいろな話を持ち込む仲裁屋の稲妻お蘭(江波杏子)、無口だがお色気たっぷりのむっつりお竜(ジャネット八田)など、脇役も魅力的。「子連れ狼」では、無口な復讐の鬼を演じた萬屋が、ここでは明るく豪快なお医者の先生として、庶民と交わる。萬屋錦之介のテレビの当たり役。

掲載2015年06月26日

「陽気な殿様」
市川雷蔵がイケメンお陽気殿様役で次々事件に遭遇!
宇津井健、天知茂、坪内ミキ子、高田美和共演の娯楽作

(ようきなとのさま) 出演者:市川雷蔵/坪内ミキ子/高田美和/宇津井健/小林勝彦/天知茂/藤原礼子/真城千都世 ほか 1962年

掲載2015年06月26日

榊原隼之介(市川雷蔵)は、イケメンな上に剣の達人。さらには庶民文化にも造詣が深いというナイスな若殿様。父で老中の榊原忠次の家督相続のために姫路に旅立つことになったが、大げさな行列は御免だと、気心の通じたとび職の三次(佐々十郎)と大工の八五郎(小林勝彦)と三人だけの気楽な道中を始めた。ところが浜松に入ると彼らの腕を見込んだ藩の家老・斎藤勘解由(原聖四郎)から思わぬ相談を受けた。埋蔵金のありかを肌に記した腰元八重(高田美和)を守ってほしいという。ところが夜道で襲撃を受け、八重は負傷。隼之介は有馬温泉で養生する八重や八五郎らと分かれて旅を続けるが、今度は旧知の娘ゆき(藤原礼子)の仇討騒動に巻き込まれる。明石藩の弥々姫(坪内ミキ子)を誘拐した隼之介の作戦とは。そして姫と縁談のある松平長七郎(宇津井健)とは三角関係に!?

 原作は五味康祐。監督は森一生。62年の公開当時のポスターのキャッチフレーズに「雷蔵若殿の行くところ、破天荒な事件の連続!底抜けに明るく楽しい大型時代劇!」とある通り、雷蔵が気持ちいい若様になりきっている。剣豪を演じる天知茂はここでも苦み走っているが、全体のいいアクセント的な存在になっている。可憐な弥々姫でデビューした坪内ミキ子は、後年NHKの人気番組「連想ゲーム」などでも活躍している。

掲載2014年10月10日

「雪之丞変化」
丸山明宏(美輪明宏)主演の妖艶で壮絶な復讐劇
五社英雄が惚れ込んだ美輪の劇中芝居にもご注目

(ゆきのじょうへんげ) 出演者:丸山明宏(現・美輪明宏)/細川俊之/市川小太夫/吉行和子/金田龍之介/珠めぐみ/夏八木勲 ほか 1970

掲載2014年10月10日

近年、声優として、NHK朝ドラマ「花子とアン」の語り手としても注目される美輪明宏が、丸山明宏という芸名で活動中の1970年、フジテレビで「三匹の侍」などを成功させていた五社英雄が熱烈希望して作り上げた「雪之丞変化」。長谷川一夫、美空ひばりなど大スターが映画で演じてきたこの役を、舞台「毛皮のマリー」や「黒蜥蜴」で謎めいた美女を妖艶に演じてきた美輪が主演するということで、当時も大変注目されたテレビシリーズだった。

 始まりは文政六年の長崎。豪商松浦屋清左衛門が、抜け荷の罪を問われ、清左衛門は自害。一族は女子供まで死罪という大事件だった。この裏には、当時の長崎奉行土部繁右衛門(金田龍之介)の悪巧みがあったのだ。事件から二十年後、遊女が生んだ松浦屋唯一の生き残り雪太郎(美輪)は、人気女形中村雪之丞となって江戸に上り、隠居してもなお娘波路(珠めぐみ)を大奥に挙げて野望を遂げようとする土部に復讐を始める。雪太郎にうり二つの義賊"闇太郎"(美輪二役)、雪之丞に惚れ込んだ女盗賊(吉行和子)と波路、雪太郎の剣のライバル門倉平馬(細川俊之)など、さまざまな人間を描きながら、雪之丞が敵に迫る! 細い眉毛、妖しい目線、優雅な指先、「楽には死なせますものかっ!」憎しみに満ちた殺陣、どれを見てもまさにこの人にしかできない雪之丞。劇中の鷺娘など華麗な歌舞伎シーンの演出も見事。

掲載2014年10月03日

「闇の狩人」
盗賊、剣客、仕掛人、池波作品の魅力が結集!
中村梅雀主演。オリジナル時代劇前後篇の長編。

(やみのかりうど) 出演者:中村梅雀/風吹ジュン/福士誠治/谷村美月/本田博太郎/小林綾子/山口馬木也/石橋蓮司/津川雅彦 2014

掲載2014年10月03日

湯治場で、行き倒れになった若い侍(福士誠治)を助けた、盗賊・雲津の弥平次(中村梅雀)は、記憶をなくした彼に「弥太郎」という名前をつけた。純粋な弥太郎の姿に心を打たれた弥平次だが、自分の身の上では世話はできないと金を渡して、彼と別れた。江戸にもどった弥平次は、自分が属する釜塚の金右衛門(加藤武)の跡目争いに巻き込まれる。一方、弥太郎は香具師の元締め、五名の清右衛門(津川雅彦)に拾われ、剣の腕を見込まれて仕掛人となっていた。しかし、自分が仕掛けた相手から「笹尾平三郎」と呼ばれた弥太郎は、苦悩する。

 盗賊、仕掛人、香具師の元締め、そして仕掛人を雇う男たち。池波正太郎ワールドの闇の狩人たちが、命がけの抗争を繰り広げる。出演は、弥平次の女房に風吹ジュン、元盗賊仲間で居酒屋の亭主に石橋蓮司、清右衛門の女房に波乃久里子、弥平次のライバルに本田博太郎など豪華な顔ぶれ。梅雀とはLINE友達という風吹は、男言葉を使う気風のいい女房、着物を絶妙に着崩し色気を見せる波乃、怪演をみせる博太郎など、各人見せ場も充実している。脚本は金子成人。監督は「必殺シリーズ」でもおなじみの石原興。五月にスノーマシーン四台を使っての雪のシーン撮影でも、きっちり音を録り、舟のシーンでは胸まで水に浸かって俳優を支える、京都時代劇の手練れスタッフによるフィルムでの美しい映像にも注目。

掲載2013年11月29日

「破れ奉行」
出動は鯨船。衝撃の水陸両用奉行登場!
萬屋錦之介の豪快さと愛嬌を堪能できる異色作

(やぶれぶぎょう ) 出演者:萬屋錦之介/大谷直子/ミヤコ蝶々/若林豪/藤井貢/千昌夫/藤原釜足 ほか 1977

掲載2013年11月29日

萬屋錦之介のテレビ作品を考えるとき、欠かせないのが「破れ」シリーズ。「破れ傘刀舟 悪人狩り」では、悪人たちを「てめったっちゃ人間じゃねえ!」の名セリフとともにたたっ斬る無頼派名医を演じて大人気に。その勢いのままに77年、登場したのが、この「破れ奉行」だった。舞台は町奉行の支配が及ばず、悪の巣窟となった深川。幕府上層部によって、深川奉行として送り込まれた速水右近(錦之介)は、自ら偵察に出かけ、さっそく火事に遭遇。助けようとした商人が殺害されていたことを知り、一帯にはびこる悪の根の深さを痛感。奉行を引き受けるならと、意外なものを幕府に要求する。それは、特注の舟と船頭だった…。

 水運の要所で、水上警察のような役割をする深川奉行所。右近は、昼間は、着流しにちょいと赤い襟巻などする洒落者スタイルだが、深夜、許せぬ悪を成敗する際には、長い半纏と鎖帷子を身にまとい、顔には黒頭巾、手にはロングな銛という勇ましいいでたちに変身。自ら所望した「鯨船」に乗船し、船の先頭で仁王立ちとなって、悪人たちのところに現れる。まさに奉行の常識を打ち破った水陸両用の強烈ヒーロー。こんなキャラクターを堂々と演じられるのは、萬屋錦之介ただひとり。

 右近の乳母役のミヤコ蝶々、十手持ちの関武志・ポール牧も威勢がいい。一度見たら忘れられない異色奉行にご注目。 

掲載2013年08月02日

「夕陽の用心棒」
自由人丹波哲郎×野心家鹿賀丈史のW用心棒!
荒野での激戦と粋な幕切れは名脚本家池田一朗の技

(ゆうひのようじんぼう ) 出演者:丹波哲郎/鹿賀丈史/松尾嘉代/岡本舞 ほか 1983

掲載2013年08月02日

飄飄としながらどこか風格を感じさせる浪人・箱崎竜之介(丹波哲郎)は、ギラギラと野心をむき出しにする・山里英助(鹿賀丈史)と道連れとなる。宮様の隠し子が嫁ぐ行列の用心棒として雇われた二人だが、そこにはどこか不穏な空気が。実はこの行列は、豪商片倉屋門兵衛(田中明夫)が米国から密輸したガトリング砲の移送を偽装したものなのだった。秘密を知った山里は、砲を横取りして大金を得ることを考える。しかし、砲を狙った謎の集団が現れ、さらに公儀隠密も動きだす。三つ巴の争奪戦の果てに、ふたりの用心棒が見た結末は。

 脚本はのちに「吉原御免状」「柳生非情剣」で直木賞候補作家となった池田一朗(隆慶一郎)。荒野でのスリル満点の激戦と粋な幕切れは、ストーリーテラーとして高く評価された名脚本家らしい仕上がり。「一発の勝負に命を賭ける。浪人なんてこんなもんさ」と、味のある素浪人を演じれば天下一品の丹波、派手な陣羽織に金のチェーン、天然パーマ?という目立ちすぎだよといういでたちの鹿賀のコントラストも秀逸。ピンクの女子弓隊を率いる松尾嘉代、はかない存在感を見せる岡本舞と女優陣も印象的。「ありがとさんよ!!」と豪快にガトリング砲を奪いながら、「女はバカだから可愛いんでしょ」とつぶやく松尾には、惚れ直すファンも多いはず。

ペリー荻野プロフィール
ペリー荻野

1962年愛知県生まれ。大学在学中よりラジオのパーソナリティ兼原稿書きを始める。 「週刊ポスト」「月刊サーカス」「中日新聞」「時事通信」などでテレビコラム、「ナンクロ」「時代劇マガジン」では時代劇コラムを連載中。さらに史上初の時代劇主題歌CD「ちょんまげ天国」シリーズ全三作(ソニーミュージックダイレクト)をプロデュース。時代劇ブームの仕掛け人となる。

映像のほか、舞台の時代劇も毎月チェック。時代劇を愛する女子で結成した「チョンマゲ愛好女子部」の活動を展開しつつ、劇評・書評もてがける。中身は"ペリーテイスト"を効かせた、笑える内容。ほかに、著書「チョンマゲ天国」(ベネッセ)、「コモチのキモチ」(ベネッセ)、「みんなのテレビ時代劇」(共著・アスペクト)。「ペリーが来りてほら貝を吹く」(朝日ソノラマ)。ちょんまげ八百八町」(玄光社MOOK)「ナゴヤ帝国の逆襲」(洋泉社)「チョンマゲ江戸むらさ記」(辰己出版)当チャンネルのインタビュアーとしても活躍中。