ペリーのちょんまげ ペリーのちょんまげ

掲載2004年09月03日

「妖怪大戦争」異国の吸血悪妖怪VS日本の妖怪軍団。CGなしでここまで出来る!日本妖怪映画の名作。

(ようかいだいせんそう) 1968年

掲載2004年09月03日

ある日、バビロニアの古都ウルの遺跡で異変が起きる。人間の侵入で、四千年もの眠りから、凶悪な吸血妖怪ダイモンが蘇ってしまったのだ。江戸時代の日本にたどりついたダイモンは、伊豆代官(神田隆)の血を吸って本人に変身。次々恐ろしい事件を起こし、日本征服を企む。その異変に真先に気づいたのが、代官宅の池に住む河童だった。河童は、仲間の油すましや唐傘お化け、二面女、ろくろ首などを集めて、ダイモンと戦う…。
 「大魔神」の大映らしく、時代劇としての展開や妖怪の造作は、とにかく本格的。なのに、出てくる妖怪たちがみんなとても愛嬌があるのである。威勢のいい河童をはじめ、「あいつら一丁ヘコましたろか」などとなぜか関西弁をぶちかます油すまし、「あたしはここよ」と首だけ近くに寄ってくるろくろ首などなど。いざ戦いだと、みんなねじり鉢巻きしてるし。愛嬌ありすぎ!佳境に入って、ダイモンは巨大化。そこに全国から応援にかけつける天狗やタヌキの妖怪、ぬらりひょんらのチームワークにも泣かされる。
 若侍・新八郎の青山良彦、川崎あかね、内田朝雄ら人間も出てくるが、あくまで主役は妖怪たち。命がけで戦って、「夜明けだ」と引き上げる彼らの姿の美しさよ。CGなしでこれほど迫力の美を作り上げた日本の特撮と妖怪文化に脱帽ですな。

掲載2004年02月06日

「妖僧」見つめただけで即白骨!すごい術を持った修行僧市川雷蔵も美人の「ウッフン」に…。

(ようそう) 1963年

掲載2004年02月06日

 ただひとり、山の洞窟にこもってすさまじい修行に耐え抜いた僧行道(市川雷蔵)。その成果で、数々の秘術を身につけた。洞窟にさまよい出たねずみやヘビをじっと見つめただけで、みるみる白骨化。考えてみれば、ひどい術だが、すごい目力の行道は、藤原一族が牛耳る都の人々を救おうと、山を出る。
 瀕死の病人も、たちまち治療してしまう行道の評判は高く、ある日、お忍びで宮中に招かれる。なんと秘密の病人は、女帝(藤由紀子)その人だった。秘術を尽くして、見事、歩けなかった女帝の治癒に成功する行道。女帝の信頼は厚く、道鏡と名をかえた行道は、やがて政治にも口を出す。美男な上に理屈も通った道鏡が邪魔な藤原氏は、暗殺をもくろむが、さすが道鏡。矢がささろうが、刀で斬られようがびくともしない。しかし、超美人の女帝に、「ここは誰も入って来ませぬ」なんて秘密の場所に誘われて、とうとう…。
 見どころはいろいろある。「眠狂四郎」でおなじみの市川雷蔵が、ボロボロな僧衣にボーボーヒゲで登場し、だんだん美男になっていく過程。それに秘術の特撮。さらには「ウッフーン」と迫り来る美女と修行のはざまで揺れる男の弱さ、などなど。どんなに修行しても男はお色気に負けるものなのか。名監督・衣笠貞之助の異色作。藤原の悪役を演ずる若山富三郎も要チェック!

掲載2003年09月19日

「吉宗評判記 暴れん坊将軍」「マツケンサンバ」がニュース番組でも話題に!その原点は伝説の第一シリーズに!?

(よしむねひょうばんき あばれんぼうしょうぐん) 1978年

掲載2003年09月19日

 現在、名古屋は御園座で「暴れん坊将軍」が公演中。私も早速見てきた。
 将軍を狙う一団と戦う新さんこと吉宗(松平健)は、元気いっぱいだが、元気いっぱいといえば、公演最後のショータイムを忘れてはいけない。ここで、松平健は、舞台狭しと歌い踊るのである。それも、渋い役者イメージをがらりと変えて、ショーでは「すべて光る衣装」を採用。オープニングからいきなり、キラキラ光る黒いマント。そしてフィナーレは、時代劇専門チャンネルではすでにおなじみの名曲「マツケンサンバ�U」で、全身青い発光体だ!!
 ちょんまげとサンバの合体だけでもすごいのに、それを自ら光ながら歌い踊る上様。もうクラクラだ。この歌は口コミで評判となり、ついにテレビ朝日系のニュースでも取り上げられた。阪神優勝もすごいが、健さんもすごい!(今後は博多座でも公演予定アリ)
 そのマツケン大活躍の原点といえるのが、現在放送中の「暴れん坊将軍」第一シリーズ。有島一郎のじいやめ組の初代おさい(春川ますみ)らに、やりこめられる吉宗の姿も初々しい。なお、ここで名奉行として吉宗をサポートする大岡越前は横内正。番組スタートにあたっては、「大岡越前かもうひとつ重要な浪人役があるが、どちらが?」と聞かれ、選択したのがこの役だったとか。北島三郎の歌う「炎の男」で、また盛り上がろう!

掲載2002年03月08日

「破れ新九郎」時代劇界の「破れスター」萬屋錦之介!正義のために大暴れする獣医。痛快度抜群。

(やぶれしんくろう) 

掲載2002年03月08日

「破れ傘刀舟」で破天荒な医者に、「破れ奉行」で正義の闇奉行に。すっかり「テレビ時代劇界の破れスター」として定着した萬屋錦之介。シリーズ第三弾は、何?と思えば、なんと獣医であった。
 父親はれっきとした藩お抱えの「馬医者」だったが、堅苦しいのは嫌だと長屋に住みついた新九郎。キャッチフレーズは、「よろず医者。但し人間はお断り」である。アヒルやら子豚やら、当時の撮影にはさまざまな動物が出入りし、管理が大変だったらしい。
 江戸時代に獣医がいたかどうかは定かじゃないが、破れシリーズに理屈は不用。破れ傘で確立した独自の「パンタロンルック侍」を継承し、今回もビシバシ悪をたたっ斬っている。
 ユニークなのは共演者。とぼけた味の大工に田中邦衛、長屋の大家・岸田今日子、出前持ちの池上季実子、(四月の「雲霧仁左衛門祭り」で独占インタビュー決定!)問屋場の頭に嵐寛寿郎の姿まで!そしてなんといっても注目なのは、若林豪である。職業はもともとは公儀天文方でちゃんとしていたのに、現在は気象予報士。それも使うのは「下駄」なのだ。子どもの遊びじゃないんだから、豪さん...。いつも謎の剣士みたいな役ばかりの若林豪にしては、異例のお茶目っぷり。個人的に「若林豪保存会」を主催する私としても、見逃せないシリーズなのだ。

掲載2002年02月01日

「破れ奉行」隠れファンの多い錦之介の「破れシリーズ」第二弾。江戸の水上警察が悪を斬る!

(やぶれぶぎょう) 

掲載2002年02月01日

 萬屋錦之介のテレビの代表作というと、「子連れ狼」や「破れ傘刀舟・悪人狩り」をあげる人が多いが、実はその「破れシリーズ」第二弾である本作も一種カルト作として人気がある。
 南北町奉行所の管轄外で悪の吹き溜まりと化した深川地域の治安のため、深川奉行を仰せつかった速水右近(錦之介)。大変なお役目の割には、しょっちゅうライバルの奉行(若林豪)と将棋を打ったり、美人女将(大谷直子)の店に入り浸っているのであるが、実は右近には、もうひとつ裏の顔があるのであった。その名も“破れ奉行”。
 まず、そのいでたちがすごい。鎖帷子の頭巾に長い半纏&パンタロン。手には巨大な銛(もり)である。そりゃ、深川といえば水路が入り組み、水に緑がある場所とはいえ、お奉行がMY銛を持ってるなんて・・・と驚いていてはいけない。
「許せん!」と破れ奉行が深夜の出陣をする際には、ギギギギと水門が開いて、巨大高速船“鯨船”が出てくる。その先頭で仁王立ちになっている人こそ、紛れもなく破れ奉行!
 マネのできない装束も巨大な船も、絶対特注品のはず。てことは、奉行所のスタッフはみんな誰が「破れ奉行」かってことにうすうす気がついていたのでは・・・そんな心配をものともせず、見事な立ち回りで悪を成敗する錦之介。やっぱり破れシリーズ面白い。

掲載2001年11月16日

「吉宗評判記 暴れん坊将軍」「うつけ者め、余の顔を見忘れたか!」上様パワーの原点がここに。

(よしむねひょうばんきあばれんぼうしょうぐん」) 1978年〜1982年

掲載2001年11月16日

身分の高い人が悪を懲らしめる。いわゆる「お血筋もの」系時代劇の中でも、最も身分の高い将軍自らが活躍する「暴れん坊将軍」。その原点がこの第一シリーズ。
二十年以上も人気の理由はいろいろあるが、まず、第一に「松平健」という主役を抜擢したこと。勝新太郎に見いだされ、「座頭市物語」でデビューしたころは、まだ暗い影のある青年のイメージだったが、いざ将軍様役におさまると、風格があり、サムライキングに相応しい存在感。さらに明るさと少々女心には弱い雰囲気も、若き将軍にはぴったり。
(ペリーの友人の目撃談によると、東京青山の高級ブティック周辺で、自らクルマを運転、大地真央夫人をエスコートする様子は、「まさに上様って感じ・・・」とのことであった)
「暴れん坊将軍」の歴史の中では、親友の大岡越前が横内正から、現在は田村亮に、め組の頭が初代北島三郎から、山本譲二、現在の松村雄基に、守り役のじいが、有島一郎、船越英二、高島忠夫、現在の名古屋章に変遷。さらに「成敗!」で働く男女のお庭番役やめ組の小頭など、キャラクターも変化しており、現在のシリーズと比べてみるのも楽しい。第一シリーズでは、今よりさらに「ウブ」な新さんこと吉宗が湯船で女性に強引に口説かれて逃げだすなど、ナイスなシーンも多数。ますます上様のファンになれるはず。

掲載2001年05月02日

破れ奉行

(やぶれぶぎょう) 1977年

掲載2001年05月02日

 時代劇で“暴れ”といえば『暴れ八州御用旅』の西郷輝彦(まあ、一部には『暴れ九庵』の風間杜夫を推す人もいるとは思うが、悪しからず)、“怒れ”といえば『怒れ!求馬』の原田龍二、そして“破れ”といえば、ご存知、萬屋錦之介である。
 名作『破れ傘刀舟・悪人狩り』で
“てめったっちゃ、人間じゃねえ。たたっ斬ってやる!!”
と暴れまくった錦之介。
 その勢いで登場した『破れ』シリーズ第二弾が、本作だ。
 第一弾の『破れ傘刀舟・悪人狩り』が、剣の達人の名医。ただし金には縁がない。雨の日には本当に破れ傘をさしていたのだが、このシリーズ第二弾では、お奉行自らが破れてしまった。
 医者からお奉行へと脈絡のないシリーズ展開と思いきや、そんなことはないし、しかも、ただ破れた奉行じゃないあたりも深いんだな、これが。
 深川奉行という、今で言えば“水上警察”のような特殊任務で、高速舟を駆使して、密輸などを取り締まる。なかなか斬新な設定なのである。しかも斬新なのは設定だけではなく、錦之介のいでたちもまた斬新。これは是非画面で確認していただきたい。『破れ傘刀舟』がパンタロンルックの医者だったのも斬新だったが、錦之介クラスになると、どんなすごいファッションでも、見る者を納得させてしまう(というか、話が面白いから文句が言えない)ところがすごい。
 シリーズはその後、『破れ新九郎』へと受け継がれ、こちらはまたまたパンタロンで、仕事は獣医。主人公が全員“型破り”ってところで、『破れ』シリーズには、ちゃんと一貫性があるのであった。

掲載2001年04月14日

吉宗評判記 暴れん坊将軍

(よしむねひょうばんき あばれんぼうしょうぐん) 1978年

掲載2001年04月14日

 パッパカ、パッパカ、パッパカ…、白馬を駆って疾走する吉宗。ご存じ『暴れん坊将軍』!!
 現在放送中の第一シリーズは、主演の松平健が二十代前半。まさしく“暴れん坊”な感じだ。以来シリーズが続くこと23年。一貫しているのは、独身ということだろう。
 もちろん、大奥には美女がずらりと控えて、吉宗がやってくるのをてぐすね引いて待っているのだが、なかなか足が向かないらしい。大奥のお局さま(長内美那子)らに、
“上様、たまにはお出ましを”
と、しつこく誘われるのに、吉宗は大奥よりも“徳田新之助”として城下に出たくて上の空。
“上様!ウッキ−!!”
という、お局さまのヒステリーから逃げるように「め組」に転がり込むというのが、毎度のパターンだ。
 守り役のじい(有島一郎)たちも、今度こそと、やんごとなき姫との縁談を進めるものの、なかなか首を縦に振らない上様。城下に出たら出たで、町娘たちに
“新さぁ〜ん”
と、ラブラブ光線を送られるが、見て見ぬふり。罪な上様だ。
 過去には
“私は徳田新之助が好きだ!”
と絶叫する積極的な女(石野真子)や、
“お慕い申しております”
と熱い視線を投げかけた男勝りの姫(中村あずさ)もいたのに、いま一歩のところで成就せず。よっぽど女運がないのか、それと、これには何かワケが?
 思うに、自分の生みの母(中村玉緒)が身分が低く苦労したのを見て、ほら、そこは親思いの上様のこと“まずは母上が気に入らないと”と思っているのかもしれない。ということは、吉宗の縁談をまとめるには、
“グハハハ、わての出番だすか?”
やっぱ、玉緒ママに出てもらわなくちゃ。

掲載2001年04月04日

吉宗評判記 暴れん坊将軍

(よしむねひょうばんき あばれんぼうしょうぐん) 1978年

掲載2001年04月04日

 “吉宗評判記 暴れん坊将軍!”名ナレーター、若山弦蔵の声も高らかに、番組がスタートしたのが1978年。その年は、とにかく
“おおっ!すごい上様が誕生したぞ”
と、驚いた。
 当時松平健は、勝新太郎に見出され『座頭市物語』でデビューした新人俳優。ババーンと世に出たのは、まさしくこの番組からであった。
 身分の高い人が世直しをするという設定の時代劇は数々あるが、大岡越前は町奉行だし、水戸黄門だって副将軍である。そこへいくと吉宗はなんてったって将軍様。めったやたらにお目にかかれるもんじゃあないよ。御三家のお偉方や親藩、譜代の大名だって謁見するときは御簾ごしで、直にお顔を見ることさえできないもんね。それがあんた、第1シリーズの初回で将軍自らが千代田のお城を抜け出して、しかも自分で
“新さんです”
と名乗ったフレンドリーさには正直たまげた。御三家には御簾ごしだけど、町火消しのおかみさんには、自分からご挨拶しちゃうんだから。  そんなエピソードも含めて初期のシリーズでは、いかに吉宗が“新さん”になったかもよくわかるし、北島三郎扮する町火消し、め組の辰五郎との出会いのシーンも出てきて、ファンならずとも見逃せない。
 また、松平健、北島三郎以外のレギュラー陣は、大岡越前も辰五郎の女房も、ふたりのお庭番も、すべて代替わりしているので、第1シリーズでは、すべての役の「元祖」が誰だったのかがわかるのも楽しい。
 とくに上様の守役のじいはどんどん変わっている。初代・有島一郎、二代目・船越英二、三代目・高島忠夫、四代目・名古屋章。それもこれも嫁ももらわず、たびたび城を抜け出す上様を心配しすぎて、心労がたまるせいではないか。上様もそろそろ身を固めて、歴代のじいを安心させてやらねばのう(って、私は誰だよ!?とひとり突っ込み)。
 そんなこんなも含めて、『銭形平次』に迫る長寿時代劇の登場を祝いつつ、北島三郎の歌う第1シリーズの主題歌「炎の男」でめらめら熱く盛り上がろう!

掲載2000年11月30日

柳生武芸帳 双龍秘剣

(やぎゅうぶげいちょう そうりゅうひけん) 1958年

掲載2000年11月30日

 徳川のとてつもない陰謀を記した柳生武芸帳。それを巡って柳生一族、忍者、虚無僧一味、三つ巴の死闘が始まる。野心家の弟(鶴田浩二)と女を柳生に殺された兄(三船敏郎)も巻き込まれ、武芸帳は誰の手に? 
 稲垣浩監督のスピーディーな演出が冴える。乙羽信子の姫と弟の悲恋、岡田茉莉子の妖艶な踊り子、柳生頭の松本白鸚などキャストも豪華。
 孤児として育っても、女(演じるは久我美子。三船とのいちゃいちゃシーンはなかなかなのだ)に
“人間としての生きかたを教わった”
兄は、武芸帳を我がものにして世に出たいと願う弟とは、違う人生を目指していた。一方、野心を抱く弟は仲間を裏切り、武芸帳を狙う虚無僧一味の姫と運命的な恋に。でも、敵同士のロミオとジュリエットなのだった…。
 このほか、長い髪をなびかせて野性的な色気を見せる岡田茉莉子、忍者の頭、東野英治郎、ちょい役の左ト全の大久保彦左衛門もいい味。 

ペリー荻野プロフィール
ペリー荻野

1962年愛知県生まれ。大学在学中よりラジオのパーソナリティ兼原稿書きを始める。 「週刊ポスト」「月刊サーカス」「中日新聞」「時事通信」などでテレビコラム、「ナンクロ」「時代劇マガジン」では時代劇コラムを連載中。さらに史上初の時代劇主題歌CD「ちょんまげ天国」シリーズ全三作(ソニーミュージックダイレクト)をプロデュース。時代劇ブームの仕掛け人となる。

映像のほか、舞台の時代劇も毎月チェック。時代劇を愛する女子で結成した「チョンマゲ愛好女子部」の活動を展開しつつ、劇評・書評もてがける。中身は"ペリーテイスト"を効かせた、笑える内容。ほかに、著書「チョンマゲ天国」(ベネッセ)、「コモチのキモチ」(ベネッセ)、「みんなのテレビ時代劇」(共著・アスペクト)。「ペリーが来りてほら貝を吹く」(朝日ソノラマ)。ちょんまげ八百八町」(玄光社MOOK)「ナゴヤ帝国の逆襲」(洋泉社)「チョンマゲ江戸むらさ記」(辰己出版)当チャンネルのインタビュアーとしても活躍中。