ペリーのちょんまげ ペリーのちょんまげ

掲載2010年09月10日

『大江戸桜吹雪 八千両の舞』
堅物?遊び人?正義の裁判官?
目明し新五と金さんと遠山金四郎の杉流三役

(おおえどさくらふぶき はっせんりょうのまい) 1981年

掲載2010年09月10日

杉良太郎のすごさは、不可能と思われることをどんどんテレビでやり遂げてしまったこと。週に東京と京都で時代劇に二本主演し、その間に舞台、スペシャルの撮影を17年間続けた体力とパワーは並ではない。
「大江戸桜吹雪 八千両の舞」では、十八番のひとつ、目明しの新五と、遊び人の金さん、さらには町奉行の遠山金四郎の三役に挑戦。それぞれに、超堅物(新五)、「すまい?あっちこっち」などとふざけたことを言う金さん、悪人たちを鋭く追及する町奉行と、キャラクターを使い分けているのである。
物語は、上野の門跡を務める法親王(岩井半四郎)の駕籠が襲われる。この事件の裏には、法親王への幕府からの寄進八千両を着服した悪人たちがいたのだった。事件後、法親王の見舞いにと、妹宮(淡島千景)と付き人初波(江利チエミ)が京から江戸へとやってきた。しかし、今度は妹宮の宿で火事が起き、事態は深刻に。だが、これは、法親王の命を狙う面々を陥れるためのワナだった。これほど大胆な行動に出る妹宮と初波の正体は。新五、金さんらは、それぞれのやり方で真相に迫る。
とにかく笑えるのは、金さんのいい加減ぶり。事件現場に芸者をはべらせて現れ、へらへら。火事の跡地を必死に調べる新五と顔が同じなのが、可笑しい。江利チエミの熱演、淡島の貫禄に泣かされる場面も。

掲載2010年09月03日

『一心太助』
杉良良太郎が威勢のいい江戸の人気者に。
志村喬の大久保彦左衛門も渋さと優しさ◎

(いっしんたすけ) 1971年

掲載2010年09月03日

徳川三代家光のころ。
少々おっちよこちょいだが一本気の魚屋太助(杉良太郎)は、天下のご意見番こと、旗本大久保彦左衛門(志村喬)と知り合う。神田三河町の喧嘩長屋で、恋女房お仲(音無美紀子)と暮らす太助は、二の腕に「一心如鏡」と刺青を入れ、彦左衛門とともに、世の中をまっすぐにしようと奮闘する。
杉良太郎が、江戸の人気者に扮して大暴れ。先日のインタビューでは、太助は真冬でも、半纏と木股(木綿の短い股引)一枚で裸同然なので、とにかく寒くて大変だった!と語っていたが、その大変さをまったく感じさせないパワフルな太助に。天秤棒の立ち回りも、バランスが難しいなか、スピード感いっぱいに仕上がっている。また、志村喬は、独特の渋さとユーモア、優しさを見せて、貫禄。うっかり者の用人笹尾喜内(伊東四朗)とのコンビも楽しい。
全25話の最終回では、拾った大金を巡り、偽の落とし主が現れたり、恐喝事件が起きたりの大騒動。ついには喜内が切腹!? 金をめぐる喜劇の中、本当の幸せとは何かを問いかける人情編。丹下キヨ子のきっぷのいい女将など、毎回ゲストも豪華。テレビ時代劇で大活躍した中村竹弥の魚屋の元締めもいい味を出す。
主題歌「一心太助」はもちろん杉の熱唱。

掲載2010年06月11日

『御宿かわせみ 第二章』
江戸の風情がしみじみ伝わる名シリーズ
東吾と源三郎の友情に泣ける一編も。

(おんやどかわせみ だいにしょう) 2004年

掲載2010年06月11日

大川端の小さな宿屋かわせみの女主人るい(高島礼子)と、町奉行所与力の弟・神林東吾(中村橋之助)。身分違いのふたりは忍ぶ恋の間柄だが、周囲の人々にあたたかく見守られている。客商売の宿に持ち込まれるさまざまに事件と人間模様。平岩弓枝の原作の人気シリーズは、ドラマ第二章に入って、ますます江戸の風情と、おとなの恋のムードが高まっている。
一話完結のエピソードとしては、東吾の親友で町奉行所同心・畝源三郎(宍戸開)と美人に尼僧秀香尼の関わりを描く「源三郎の恋」がなかなか切ない。幼い頃世話になった老女およね(菅井きん)の面倒をみてくれた秀香尼にお礼をしたいが、何にしたらいいかと源三郎はるいに相談にくる。周囲が気をもむうち、尼僧の庵のすぐそばで、殺人事件が起こる。雨の中のアリバイ工作と、恋のために鬼と化す人。まじめ人間の源三郎と、東吾の友情も心に残る。なお、この第二章で源三郎は、見事花嫁を射止めることに。そのあたりも見所のひとつ。
そのほか、商家の主人がやっと探しだした息子が遊び人で騒動が起こる「藍染川」、夜の本所でるいと女中のおさとがもののけ道中の「狐の嫁入り」を目撃するストーリーなど、ユニークな話も登場。東吾を諭す兄・神林通之進の草刈正雄にも隠れファン多数。

掲載2010年06月04日

『江戸プロフェッショナル 必殺商売人』
中村主水の藤田まことに、草笛、梅宮登場。
正八(火野正平)も元気に江戸の裏を走る!

(えどぷろふぇっしょなる ひっさつしょうばいにん) 1978年

掲載2010年06月04日

踊りの師匠おせい(草笛光子)と、芸者置屋の髪結い新次(梅宮辰夫)は、元夫婦の仕置人。足力屋の正八(火野正平)は、偶然、二人がある男を始末する現場を目撃。彼らの正体を中村主水(藤田まこと)に知らせる。しかし、中村家では、それどころではない大騒動が。長年、“種なしかぼちゃ”と言われ続けた主水の妻りつが待望の懐妊!「婿殿」の株が上がるかと思ったら、「子のためにもっと働け」と尻をたたかれる主水だが…。
必殺シリーズ第12弾。藤田・草笛・梅宮というおとなの顔合わせ。草笛光子の「おせい」は、「必殺必中仕事屋稼業」のときと同じ名前であり、同一人物ともとれる。
「必殺」の名物、時代を風刺する精神は、このシリーズでも健在。第六話「空桶で唄う女の怨みうた」の回では、昭和53年の放送当時、大ブームとなっていた「カラオケ」を早速取り入れ、いきなり現代のスナックからスタート。演歌のパロディで人気を博した「演歌チャンチャカチャン」が流れて盛り上がる。江戸の奉行所でも、左遷された同心が、家のかかり(ローン)、子の学問代(教育費)などを心配して愚痴を言う。その送別会では、「はい、お駕籠代」と、タクシーチケットも出るといった具合。廻船問屋「三州屋」(織本順吉)が、奉行にだまされ、大事な株を奪われる。奉行を密かに始末する主水らの手腕はさすが。

掲載2010年03月12日

『女たちの名古屋城』
女の戦いは、名古屋城でも繰り広げられた!
岡田奈々・大沢逸美・宮崎美子の愛と苦悩

(おんなたちのなごやじょう) 1994年

掲載2010年03月12日

紀州・浅野家の春姫(岡田奈々)は、乳母松江(萩尾みどり)を連れて、尾張徳川家当主・徳川義直(川野太郎)の元に輿入れする。二人は仲睦まじく暮らしていたが、10年たっても子宝に恵まれず、お家断絶の危機と、家老の成瀬(寺田農)らは、義直に側室を持つように進言。きまじめに義直は、春姫を思いながら、しぶしぶ受け入れた。その側室に選ばれたのは、京の東福門院の侍女おさい(大沢逸美)。実はおさいは、織田の血を引くものであった。そんなある日、遠乗りに出た義直は、たまたま休憩をとった農家の健康的な娘お尉(宮崎美子)に心惹かれる。やがて、お尉は、男子を産み、同じころ、おさいも女児を出産。織田家の血を尾張徳川家にと望む家臣の高島(五代高之)は、恐ろしい計画をたてる。側室の存在に気をもみ、知らぬ間に男子誕生の知らせを受けた春姫は、苦悩の日々を送っていた。
女の戦いといえば、大奥が知られるが、尾張徳川家にも静かな戦いがあった。「権力を手にしたその先に、いったい何があるというのでしょう」という春姫の言葉に、幸せの本質に目覚め、成長した女性の姿がある。川野太郎が、まじめゆえに抜けたところもある愛すべき殿を好演。現在、クイズ女王としても活躍中の宮崎美子が、極太眉毛の素朴な娘をのびのびと演じている。元アイドル辻沢杏子の影のある女っぷりも光る。テレビ愛知制作。

掲載2010年03月05日

『陰陽師☆安倍晴明~王朝妖奇譚』
三上博史が不思議にしてパワフルな晴明に。
特殊メイク、CG、SFX駆使のスーパー時代劇

(おんみょうじ あべのせいめい〜おうとようきたん〜) 2002年

掲載2010年03月05日

王都平安京は、華麗な王朝文化に彩られ、栄えていたが、その裏側には深い闇があった。魑魅魍魎、鬼、疫病など恐ろしい出来事やうわさも絶えず、帝(花田浩之)は、都の吉凶を占う「陰陽祭」を開く。多くの貴族たちが注視する中、宮廷陰陽師・保憲(段田安則)は答えが出せない。彼の師である忠行(筒井康隆)も「われらの呪力及ばぬものが…」と苦しい返答をするしかない。そんなとき、燃え盛る炎に鬼の影が。閃光とともに現れたのは、すべての呪術にたけ、鬼神をも操るといわれる陰陽師・安倍晴明(三上博史)だった。
晴明は、帝の寵愛を受ける彩子(羽田美智子)の弟で、左大臣家の藤原将之(保阪尚輝)とともに、都に巣くう悪鬼の正体を探る。彼らの前に立ちはだかったのは、やはり強大な力を持つ橘影連(陣内孝則)だった!
壮大なスケールゆえに映像化不可能といわれた岩崎陽子の伝奇ロマンコミック「王都妖奇譚」を、最先端のCG、SFXを駆使してドラマ化。特撮は、東映戦隊シリーズや映画「西遊記」などの尾上克郎、特殊メイクは、映画「陰陽師」はじめ、海外でも注目される原口智生が担当している。クライマックスの激突シーンは迫力。80年代以降、多くのトレンディドラマで活躍した三上博史は、独特のミステリアスな表情で、晴明にぴったり。後半は将之の兄役の木下ほうかも、いい味を出す。

掲載2010年01月15日

『維新の曲』
「大映」の第一回作品は阪妻の坂本龍馬!
右太衛門、千恵蔵、嵐寛も登場の豪華版。

(いしんのきょく) 1942年

掲載2010年01月15日

数々の名画を世に出した「大映」は、もともと日活、新興キネマ、大都映画の三社合併によって生まれた。その合併の理由は、戦時中、物資の欠乏による生フィルムの不足だったという。苦しい事情の中で誕生した記念の第一作には、豪華キャストが顔を揃えた。
明治維新直前。土佐の坂本龍馬(阪東妻三郎)は、討幕のために薩長連合の必要性を説いていた。しかし、薩摩の西郷隆盛(片岡千恵蔵)は、長州のやり方に納得できず、なかなか同意が得られない。その最中、新撰組による池田屋事件が起き、さらに長州軍が京都に攻め入るものの敗走。混乱は続く。桂小五郎(市川右太衛門)は、単身薩摩藩邸に乗り込み、西郷との話し合いを望むが、西郷は動かない。
阪妻は得意のべらんめいで威勢のいい龍馬を見せて気持ちがいい。意地の張り合いのような薩長の動きにイライラし、宿屋で「長州ったのは、チューチューさえずって眠れやせんよ!」人懐こい笑顔は、龍馬にぴったり。浮浪者スタイルの桂が新撰組と戦うなど、スターのためにしっかり見せ場も用意されているのは、さすが。
終盤、存在感を見せるのが、徳川慶喜訳の嵐寛寿郎。監督の牛原虚彦は帝大から映画入りし、アメリカ留学してチャップリンの門下生になった経歴の持ち主。大物スターをイキイキと動かしている。

掲載2009年12月25日

『オールスター忠臣蔵まつり』
タッキーの内匠頭に仲間由紀恵の大石主悦!?
どうなっちゃうのの展開に森繁翁が乱入!

(おーるすたーちゅうしんぐらまつり) 1997年

掲載2009年12月25日

瓦版屋の読売屋は、とぼけた主人の徳兵衛(伊東四朗)と、商売熱心のお由美(野川由美子)、息子の和吉(えなりかずき)らが、聞き込み屋の三次(魁三太郎)、お重(重田千穂子)、金太(桜金造)らと仕事をしている。年末、赤穂浪士が吉良邸に討ち入ったという一報が入り、瓦版にすると大うけ。さらには、中村座の勧進元の重兵衛(坂上二郎)は、この話を芝居に仕立てたいと言い出す。さらにネタを仕入れようと、和吉たちは、大石内蔵助(高橋英樹)が預けられている細川家に変装して潜入を試みるが…。坊主、地蔵、医者、読売屋メンバーの誰が何に変装するかはお楽しみ!
人気シリーズ「コメディお江戸でござる」に豪華ゲストを招いた公開番組。劇中劇「いろは忠臣蔵」では、浅野内匠頭役の滝沢秀明が、吉良役の坂上二郎を見て、思わず「二郎さん…」とつぶやいたり、大石主悦役の仲間由紀が大まじめに少年役をやったり。坂本冬実。五木ひろしの珍妙なお軽・勘平、団しん也のものまねなど、今ではなかなか観られないユニークな場面も多数。なんといっても、圧巻は、瓦版の書き屋役の三波春夫の「俵星玄蕃」の熱演。あの「さ~くさくさくさく」という名調子は見物。
ラストでは、09年に亡くなった森繁久弥翁も登場して、会場を沸かす。まさに「オールスター」の雰囲気たっぷりの楽しい忠臣蔵。

掲載2009年11月20日

『大奥 第一章』
愛のためなら敵の抹殺も厭わない!
松下由樹の春日局が、「大奥」を創りだす

(おおおく だいいっしょう) 2004年

掲載2009年11月20日

おふくは嵐の夜、狼藉者を自ら手にかける。正しいことをしたはずが、夫の稲葉正成(神保悟志)から離縁され、生んだばかりの子とも引き離される。京都に出たおふくは、将軍家乳母募集の高札を見て、応募を決意。二代将軍秀忠と正室お江与(高島礼子)の長男竹千代の乳母となったが、おふくが仕事に励むほど、お江与との空気が冷たくなっていく。二男ばかりを可愛がり、母に愛されないまま成長した竹千代が、将軍職につけるよう、おふくは命がけで動く。その後も将軍となった家光(西島秀俊)の跡継ぎ誕生を願うおふくは、ついに「大奥」という仕組みを創りだす。
大奥誕生秘話、まさに「第一章」。そもそも誕生から、おふくとお江与、壮絶なにらみあいの中で出来上がった組織なのであった。高島礼子は、任侠映画にも主演しているだけに、そのにらみ具合はさすが。対する松下も初回から、血しぶきを浴びて戦うなど、女の底力を見せ付ける。尼の身を無理やり家光の側室にされたお万の方(瀬戸朝香)が、ふと心を休める笛の音。その笛吹き(金子昇)を呪わしい顔つきで見つめるおふくこと大奥総取締春日局。しかし、病に倒れた家光本人し意外なことを言い出す。菅野美穂主演の「大奥」でブームを作った浅野妙子の脚本は、過酷な中にも、女たちの愛を織り込む。終盤、春日局の真からの願いが明かされる。松下熱演。

掲載2009年09月25日

『大奥(2003年)』
女たちの愛憎をすべて飲み込んで大奥崩壊!
瀧山、天璋院、和宮、まるらの運命は

(おおおく) 2003年

掲載2009年09月25日

いよいよ幕府崩壊のときが近づいていたが、江戸の大奥では、徳川の世が終わるとは誰も思っていなかった。しかし、遠征していたはずの十五代将軍徳川慶喜(山崎銀之丞)は、大坂に全軍を置き去りにしたまま江戸に戻り、薩摩出身の天璋院(菅野美穂)に薩長軍との和解仲介を頼む。このことで大奥は騒然となり、逃げ出す者が続出すると、大奥総取締の瀧山(浅野ゆう子)は、「最後のひとりまで戦う覚悟で」と眉毛を釣り上げた。しかし、天璋院は、「城を去りたい者は去ってよろしい」と告げる。
自分の故郷の者たちが敵軍となって攻めてくるという最悪の状況にありながら、大奥の女たちには「この私が指一本触れさせませぬ」と宣言する天璋院がカッコいい!そして、すべての者が去り、大奥にただふたり残った瀧山と天璋院。ここにしか生きる場所がないと絶望する瀧山は思わぬ行動に出るが…。
商家の娘ながら、天璋院に目をかけられたまる(池脇千鶴)の恋の行方も含め、時代のうねりの中で生き抜く女たちの姿は感動的。
ちなみに史実では、瀧山は、大奥を辞したあと、養子をもらって家族を作り、大奥の仲間数人と交流しながら生きた。孤立しがちだった和宮も天璋院と明治の町歩きをしたという話が伝わっており、それぞれの人生を歩んだことがわかる。

ペリー荻野プロフィール
ペリー荻野

1962年愛知県生まれ。大学在学中よりラジオのパーソナリティ兼原稿書きを始める。 「週刊ポスト」「月刊サーカス」「中日新聞」「時事通信」などでテレビコラム、「ナンクロ」「時代劇マガジン」では時代劇コラムを連載中。さらに史上初の時代劇主題歌CD「ちょんまげ天国」シリーズ全三作(ソニーミュージックダイレクト)をプロデュース。時代劇ブームの仕掛け人となる。

映像のほか、舞台の時代劇も毎月チェック。時代劇を愛する女子で結成した「チョンマゲ愛好女子部」の活動を展開しつつ、劇評・書評もてがける。中身は"ペリーテイスト"を効かせた、笑える内容。ほかに、著書「チョンマゲ天国」(ベネッセ)、「コモチのキモチ」(ベネッセ)、「みんなのテレビ時代劇」(共著・アスペクト)。「ペリーが来りてほら貝を吹く」(朝日ソノラマ)。ちょんまげ八百八町」(玄光社MOOK)「ナゴヤ帝国の逆襲」(洋泉社)「チョンマゲ江戸むらさ記」(辰己出版)当チャンネルのインタビュアーとしても活躍中。