ペリーのちょんまげ ペリーのちょんまげ

掲載2009年09月18日

『鬼平犯科帳スペシャル 引き込み女』
凄腕の引き込み女を余貴美子が熱演。
市川染五郎もいい味出してます。

(おにへいはんかちょうすぺしゃる ひきこみおんな) 2008年

掲載2009年09月18日

江戸で軽業小僧と呼ばれる盗人が横行。火盗改めの筆頭同心・酒井祐助(勝野洋)は、長官の長谷川平蔵(中村吉右衛門)に、数年前から関東が蛮行を続ける駒留の弥太郎(石倉三郎)の一味に軽業を得意とする手下がいることを報告する。そんな折、密偵の大滝の五郎蔵(綿引勝彦)が、弥太郎の下で引き込みをしている女おもと(余貴美子)が、袋物問屋菱屋で働いていることを突き止める。平蔵は、親交のある医師・井上立泉の息子・玄庵(市川染五郎)に仲介を頼み、密偵のおまさ(梶芽衣子)を菱屋に潜入させる。
見所のひとつは、おもとVSおまさ。現役の引き込み女と元引き込み女の探りあい。「あんたとは同じにおいがする」敵対するはずの女同士が、日陰にしか生きられない苦悩を理解しあい、やがて予想外の展開を見せることに。余貴美子は、表の顔では陽気で可愛く、裏に回ると凄みを見せて、熱演。平蔵を盗賊のお頭だと紹介され、「いいお頭だねえ」と絶賛する姿は、実にいい。
もうひとつの見所は、市川染五郎の活躍。医師ながら、平蔵の仕事に共感し、捕物にも参加。叔父である吉右衛門とは、テレビ初共演で、映画でもテレビでも大好きな作品に出演できると感激。ただし、高いところでの演技(何をするかは画面で確かめてください)はなかなかに難しかったと語っている。

掲載2009年06月19日

『唄祭り 江戸っ子金さん捕物帳』
娘軽業師ひばりの意外な素顔とは!?
若山富三郎の金さんが連続殺人に挑む。

(うたまつり えどっこきんさんとりものちょう) 1955年

掲載2009年06月19日

初春の市村座。多くの観客が注目する『地雷屋』の宙乗りの真っ最中に立役者の市川長十郎が射殺されるという奇怪な事件が発生。十手を預かった巾着切りの銀次(川田晴久)が探索を始めると、今度は娘軽業春駒太夫(美空ひばり)一座でも同様の事件が発生。そして、不敵にも南町奉行遠山金四郎(若山富三郎)のすぐ近くで第三殺人が。どうやら、天保銭の入れ墨が鍵となりそうなのだが、渦中の春駒は行方不明。そこに怪しい一団の存在が浮かび上がってくる。
ひばりは一座の太夫として華麗な歌や踊りを披露。しかし、その裏に悲しい過去を持つ娘の顔を見せる。川田晴久は、早口の十手持ちを熱演。金さん役の富三郎も悠々たる存在感を見せる。面白いのは、探索に銀次の長屋の連中が加わることで、柳家金語楼の大家を先頭に、何かというとみんなで集まって捕物にやってくる。♪蜂の巣長屋に朝が来た〜と歌も響かせたり、マーチで大行進をしたり。歌ってる場合かよ!と突っ込みを入れたくなるほど陽気で、観る者を楽しませる。
後半、与力の笹山左近(山茶花究)が、真相に迫る。名奉行金さんは、この一件をどう裁くのか。冬島泰三監督の演出は、テンポがよく、昭和の娯楽映画の楽しさを詰め込んだ捕物帳に仕上がっている。ひばりがのびのびと演じているのが、印象的。

掲載2009年06月12日

『女の花道』
芸に生きる女を美空ひばりが熱演。
坊ちゃん亭主田村高廣、師匠杉村春子が光る

(おんなのはなみち) 1971年

掲載2009年06月12日

鳥取砂丘で拾われた孤児のおきみ(美空ひばり)は、16歳になると、勧進巫女として出雲を出る。途中、育て親と死に別れたおきみは、京で偶然、志摩流丹後(杉村春子)の地唄舞を見て、その素晴らしさに感動し、押しかけ弟子になる。先輩弟子たちにいじめられながらも、けなげに修行を積んだおきみは、丹後から次期後継者にとまで見込まれるが、歌舞伎の振り付け師篠原流家元文二郎(田村高廣)と恋に落ち、破門覚悟で結婚する。しかし、家柄重視の文二郎の家で、孤児のおきみは孤立していく。時は幕末。京に長州が攻め入り、大混乱となる。
 川口松太郎が美空ひばりのために書き下ろし、京都の町を熟知した沢島忠監督が都の雰囲気たっぷりに描いた文芸作品。幼いころより天才と騒がれ、一度は愛する人のために生きようと思いながらも、結局は芸の道に戻っていく、ひばりの自伝的要素が垣間見られる。「上手に見せようとばかり思うて情けがないなあ」わがままな坊ちゃん亭主を演じる田村高廣、芸一筋ながら「おきみにはおきみの生き方がある」ときりりとした師匠の杉村春子のふたりは格別の味を出す。他にものんだくれ親父の悲哀を見せる辰巳柳太郎、育ての親おいねの北林谷栄など、ひばりの芸能生活25周年にふさわしい豪華な顔ぶれが揃う。燃えた京で再び芸に目覚めるひばりの踊りは圧巻。

掲載2009年05月15日

『出雲の阿国』
歌舞伎の始祖・阿国の激しい踊りと恋
菊川怜と堺雅人の顔合わせで描く

(いずものおくに) 2006年

掲載2009年05月15日

出雲の村でおばばに育てられた阿国(菊川怜)は、よその村から駆け落ちしてきた男女の間に生まれた。両親は殺され、村でも異端と見られがちだったためか、心の中で「いっぺんでええ。おら、出雲を出てみたい」と願っていた。村では娘たちの踊りで出稼ぎをすることになり、阿国も仲間に入る。しかし、許婚の九蔵(津田寛治)は大反対。本気で戻ってくるならと無理やり阿国の体を奪う。大坂で阿国は踊りに目覚め、やがて芸の世界でのし上がろうとする鼓奏者の三九郎(堺雅人)と運命的な出会いをする。
 おばばに「決して傾くな」と言われながらも、踊るうちに官能的な境地に達し、「おばば、すまねえ」と自分の道を見つける阿国と大役に必死に挑む菊川怜の姿が重なる。
 それにしても、この三九郎は困ったやつ。出会いの場面で、阿国に踊りに「思わず鼓を打ちとうなりました」などとキザな登場をし、阿国には「出会う定めであったかもしれんなー」などと甘い言葉をささやく。一方で有力なパトロンを得るために「お前が踊り続ける限り、わしはお前のそばにおる」って、阿国はすっかり都合のいい女扱いですか!
 秀吉時代のきらびやかな文化、中でも群集がたったひとつの黄金の「鷽(うそ)」を奪い合う神事の再現など、美術も堪能できる。芸に恋に生きた阿国の運命を見定めたい。

掲載2009年04月10日

『暴れん坊将軍2003』
意外な黒幕と古田新太&藤原嘉明の最凶敵!
吉宗は陰謀渦巻く佐渡島へ乗り込む

(あばれんぼうしょうぐんすぺしゃる2003) 2003年

掲載2009年04月10日

柏崎の代官所が襲われ、出張中の佐渡奉行堀田采女(津嘉山正種)が殺される事件が起こった。その下手人とされたのは、「しらぬい党」という謎の集団で、彼らは越後の天領ばかりを襲う盗賊であった。今回も強奪が目的化と思われたが、吉宗(松平健)と大岡越前(田村亮)は事件に不自然さを感じる。吉宗はさっそく佐渡へ向う。今回も自ら佐渡出張という上様のフットワークには感心するばかり。側近のじい有馬彦右衛門(名古屋章)が「まさかご自分で?」と監視の目を光らせても、十文字隼人(大森貴人)らお庭番の手を借りて、さっさと出かけてしまう。佐渡では「しらぬい党」から身を守りたいという北国屋に用心棒として潜入。そこにはいかにも怪しい先輩用心棒秋月梅軒(本田博太郎)がいた。しかし、吉宗が見たのは、しらぬい党の意外な正体とさらに恐ろしい陰謀。それを阻止しようとした吉宗の前には、青龍(藤原嘉明)と白虎(古田新太)というシリーズ最強の敵が立ちはだかった。
 以前、古田新太ご本人にインタビューした際、「暴れん坊将軍」は大好きな作品で出演はとてもうれしかったと語っていた。舞台で迫力ある立ち回りを披露しているだけに刀だ上様と対決したかったが、用意された武器は鎌。いつか刀で対決したいとも。悪役にやる気まんまんであった。実現を期待したい。

掲載2009年03月27日

『エノケンの弥次喜多』
武田家五十万両を追って東海道ドタバタ大会
監督・中川信夫、製作・市川崑の豪華版

(えのけんのやじきた) 1939年

掲載2009年03月27日

いきなり山賊の喜多八(エノケン)が人を襲って金を奪う出だしに「これは?」と思ったら、それはやっぱりの夢の中。「オレも夢とはゆめゆめ思わなかった」ととぼけたことをいいつつも、勘違いの勢いで弥次郎兵衛(二村定一)と旅に飛び出す。
 たまたま泊まった宿にはやんごとなき姫君が。どうやら武田家再興の五十万両の話をしているのだが、どういうわけかその地図を弥次さん喜多さんが手に入れて大騒動が始まる。びりびりと破いて手紙にしてしまった絵地図を巡って、盗賊、欲張り浪人、ついには金太郎や鬼にそっくり(?)な面々も入り乱れての争奪戦。巨大な天狗のセットをよじのぼっての追いかけっこや、「わしゃかなわんよ」と異国人風のおかし山賊一味など、出るわ出るわ変人たちが。駕籠を踏み抜き、そのまま自分の足でえっさほいさと走ったり、あっという間に東海道を往復するなど、弥次さんは、スーパー健脚で(そんなに足が速いなら、そもそも悪人につかまるわけがないけど?)ファンを笑わせる。
 監督は中川信夫。怪談映画の名監督だが、1939年の「エノケンの森の石松」で顔を合わせて以来、エノケンとの作品が続いた。随所に出てくる奇想天外なアイデアやビジュアルは、怪談映画と共通しているといえるかも。エノケン映画初心者にもお薦めの一本。

掲載2009年02月13日

『いのち燃ゆ』
原作はビクトル・ユゴー「レ・ミゼラブル」!
微罪で島送りになった男の数奇な運命と救い

(いのちもゆ) 1981年

掲載2009年02月13日

幕末。夜中に流人の泣き声がするという天草の“夜泣き島”に十年もいる丈吉(柴俊夫)。大塩平八郎の一味と誤解され、幼い妹のためにひとつかみの飯を盗んだことで島に流されたのだ。赤毛のために幼いときから義父にいじめられ、すべてをあきらめたような丈吉だが、その働きぶりを見込んだ島の庄屋(加藤嘉)から、娘(神崎愛)の婿になって、跡取の作次郎(石橋正次)の片腕になってほしいと頼まれる。しかし、その裏にはとっくに赦免になるはずが、役人のミスで丈吉が島から一生出られないという事情があったのだ。すべてを知った丈吉は島抜けを決意するが、庄屋殺しの下手人と間違われ、作次郎から執拗につけ狙われることに。
 ユーゴーの名作「レ・ミゼラブル」を大河ドラマ「天と地と」などで知られる杉山義法が脚色。丈吉はやがて、自分の出生の秘密を知り、ひとりの女と出会ったことで運命が大きく変わる。うまくいきかけると作次郎に追われ続ける日々。人間の愛憎と赦しの過程をじっくり描く大作だ。
 共演は、長崎の医師・良庵に高橋幸治、謎の人物市蔵に坂上二郎、後半に新撰組が登場する点にも注目したい。小雨の降る天草ロケで、主演の柴は、猟師に捕らわれたり、海に飛び込むなどなど大熱演。地元の人たちから拍手を受け、意欲を増したという。

掲載2008年12月05日

『大奥 スペシャル・エディション版』
仲間由紀恵の絵島VS高島礼子の天英院!
ダークサイドで杉田かおるが微笑む…。

(おおおく すぺしゃる・えでぃしょんばん) 2006年

掲載2008年12月05日

三度のテレビシリーズを大ヒットさせたスタッフによる映画版。大奥最大のスキャンダル「絵島生島事件」の意外な背景を描く。
 町育ちながら、フェアな精神と聡明さで大奥を率いる絵島(仲間由紀恵)は、将軍の生母月光院(井川遥)からも信頼され、奥女中たちからも慕われていた。しかし、月光院には、側用人間部詮房(及川光博)との密会のウワサが。一方、わがままが通らない天英院(高島礼子)は、絵島の失脚を図る。白羽の矢がたったのは、人気役者の生島新五郎(西島秀俊)。彼のもとに頭巾で顔を隠した奥女中(杉田かおる)が訪れる。怖い怖い。杉田かおるは本作のキーウーマンである。
 知的だが恋にはうぶな絵島、恋に溺れる月光院、彼女たちにめらめらと嫉妬の炎を燃やす女たち。一触即発の女の園で、ついに事件が勃発。しかし、ただの陰謀で終わらないのが、「大奥」シリーズを手がけた脚本家・浅野妙子の新視点。生島と手に手をとる絵島の苦悩と恋には、多くの女性ファンが涙を流した。
また、高島、杉田に加え、松下由樹、浅野ゆう子ら強烈な女優陣が勢ぞろいするのも話題に。絵島が斬る華やかな内掛けはじめ、林徹監督自らが提案した図柄など総額一億円の豪華衣装も含め、華麗な「大奥」の集大成ともいえる映画。今回は劇場公開版に約8分のカットを加えたスペシャルバージョン。

掲載2008年10月31日

『大奥(2003年)』
21世紀に大奥ブームを巻き起こした平成版
浅野ゆう子の瀧山が幕末大奥を仕切る。

(おおおく) 2003年

掲載2008年10月31日

島津斉彬(本田博太郎)の養女となり、将軍家定(北村一輝)の御台所として大奥に入った篤子(菅野美穂)。故郷の幼なじみとの婚約を破られ、落ち込む篤子の前に登場したのは、1000人の女たちを束ねる大奥総取締・瀧山(浅野ゆう子)だった。
 いきなり田舎者扱いはされるは、魚を平らげれば笑われるは、納得のいかない大奥生活に怒る篤子。それを承知で台所に行き、篤子の部屋に薬を仕込むように指示する瀧山…。
怖い怖い。が、実はそれぞれの立場から、大奥を、徳川を守ろうとする女の一途さが描かれ、大きな話題になったシリーズ。
 後半は、家定亡き後、将軍となった家茂(葛山信吾)と公武合体のために都から嫁いできた皇女和宮(安達祐実)の物語。政略結婚のふたりだが、やがて心を通わせ、ナイスカップルに。しかし、幕末の嵐がふたりを引き裂く。大奥でも御所風に優雅に過ごす和宮を気に入らず、「なんじゃ、あの態度は」ウッキー!!と暴れまくる家茂の母(野際陽子)もいい味を出す。
 この作品は、海外でも人気で、記者会見で浅野ゆう子は旅行先で「タキヤマ!」と声をかけられ、リアクションに困ったというエピソードを披露している。
 幕末を舞台に、崩壊する幕府と大奥の引き際をきっちり描いたことでも注目される。

掲載2008年09月05日

『あばれ八州御用旅』
蘭学医にして剣士の「影の八州」登場。
“あばれ”といえば、西郷輝彦で決まり!

(あばれはっしゅうごようたび) 1990年

掲載2008年09月05日

神田で開業する蘭学医・藤堂平八郎(西郷輝彦)は、医師としての腕もいいが、北辰一刀流の遣い手でもある。犯罪の増加に手を焼く老中・水野忠邦(中村梅之助)に「影の八州」となって闇にはびこる悪の退治を命じられた平八郎は、まじめ人間の部下(新田純一)とともに宿場を回り、凶悪犯に対しては、白装束で「斬り捨て御免」の大暴れをみせる。
 第四話では、ねずみ小僧の芝居が人気になっていた粕壁宿で岡っ引きが殺され、早速、平八郎が探索を開始。そのころ、江戸では、義賊と評判のねずみ小僧(堀内正美)が捕縛されて大騒ぎになっていた。粕壁の旅役者が、江戸のねずみ小僧が本物ではないと平八郎に伝えた直後に殺され、江戸の騒動と意外な接点が浮かび上がる。本物の悪はどこにいるのか。賞金稼ぎの山崎哲之介(竜雷太)もからんで、極悪人を追い詰める。「最期の花道にふさわしい化粧を」と思いつめる堀内正美の演技が印象的。
「地獄送り影の八州」と書付をぶつけて戦う、平八郎が江戸では妻(加納みゆき)にべったりされる夫という設定が面白い。「あー、旦那様はどこの宿場やら」と身もだえする妻に、「お嬢様!」とたしなめる使用人(ビートきよし)も面白い。♪たかが男〜と歌い上げる三好鉄生の主題歌もいい感じ。

ペリー荻野プロフィール
ペリー荻野

1962年愛知県生まれ。大学在学中よりラジオのパーソナリティ兼原稿書きを始める。 「週刊ポスト」「月刊サーカス」「中日新聞」「時事通信」などでテレビコラム、「ナンクロ」「時代劇マガジン」では時代劇コラムを連載中。さらに史上初の時代劇主題歌CD「ちょんまげ天国」シリーズ全三作(ソニーミュージックダイレクト)をプロデュース。時代劇ブームの仕掛け人となる。

映像のほか、舞台の時代劇も毎月チェック。時代劇を愛する女子で結成した「チョンマゲ愛好女子部」の活動を展開しつつ、劇評・書評もてがける。中身は"ペリーテイスト"を効かせた、笑える内容。ほかに、著書「チョンマゲ天国」(ベネッセ)、「コモチのキモチ」(ベネッセ)、「みんなのテレビ時代劇」(共著・アスペクト)。「ペリーが来りてほら貝を吹く」(朝日ソノラマ)。ちょんまげ八百八町」(玄光社MOOK)「ナゴヤ帝国の逆襲」(洋泉社)「チョンマゲ江戸むらさ記」(辰己出版)当チャンネルのインタビュアーとしても活躍中。