ペリーのちょんまげ ペリーのちょんまげ

掲載2008年01月04日

『エノケンの鞍馬天狗』
黒頭巾も白頭巾も着こなす鞍馬天狗。
走るわ、歌うわ、拳銃落とすわの大活躍?

(えのけんのくらまてんぐ) 1939年

掲載2008年01月04日

どこからともなく現れて、正義の剣をふる鞍馬天狗…といいたいが、演じるのは、日本映画を代表的コメディ俳優、エノケンこと榎本健一。ただのチャンバラでは終わらない。
 天狗の天敵新撰組に「天狗廻状」なる怪文書が現れた。それは鞍馬天狗の行動を密告する内容で、この主を探るため、天狗はあるアイデアを思いつく。なんと変装して、新撰組の本拠地に乗り込もうという作戦だ。しかし、どこから見ても怪しく、案の定、正体がばれて危機一髪。それであわてるのかと思いきや、大人数相手にとぼけた言葉で煙に巻いて大暴れ! でも、トレードマークのピストルを落っことしたり、おいおい大丈夫なのか!?
「わしは鞍馬天狗。えへへー。おっと動くと撃ちますぞ」
 とにかくこの天狗は身が軽い。戸板、はしご、大八車などひょいひょいかわして走り回る。しかも、頭巾は黒も白もOKというお洒落さん。さっきまで着流しだったのに、いつの間に頭巾を装着?なんて突っ込みは、味気ないってものでしょう。美人にはぼーっとなったり、敵役の女にお世辞を言って油断させたり。気分がよければ♪壬生の侍何してる〜そのくせ手柄はありやしない〜などと歌も聴かせる天狗様。1939年日本が戦争へと突き進む中で制作された映画だと思うと、世に喜劇を送り出した映画人たちの心境も気になる。

掲載2007年12月13日

『映画『茶々−天涯の貴妃−』メイキング〜戦国を生きた女たち〜』
日本の歴史を変えた美女を和央ようかが!
CGと実写を駆使し、壮大な戦国日本を表現。

(えいが ちゃちゃ てんがいのおんな せんごくをいきたおんなたち) 2007年

掲載2007年12月13日

織田信長の姪として生まれ、母と義父の仇である豊臣秀吉の側室となった茶々。憎いはずの秀吉に人間味を見出した茶々は、秀吉の子を生み、やがて徳川との大決戦に身を投じて行く。
 日本の歴史の中でも、もっとも数奇な運命をたどった女性ともいえる浅井三姉妹。その長女・茶々に宝塚退団後、初の映画出演となる和央ようか。「映画も女役も初めて」という彼女は、「不安もあったが、脚本がとにかく面白く感動的だったので、思い切った」と語る。
 私も撮影現場を取材した。
 茶々が生まれた子を抱いて、秀吉と大阪城の天守閣から、栄える町を眺めるシーン。大阪城のロケは、かつて城のテーマパークであったところを前面改装。それと同じセットをスタジオに造り、町の景色は、CGで作られるのだった。CGといえば、ブルーシートだと思っていたが、最近はグリーンシートなんですね。ただし、城の炎上シーンは、本物の炎の中での撮影。実写ならではの迫力が出ている。
秀吉に渡部篤郎、徳川家康に中村獅童、幸せな家庭があったのに徳川家に嫁ぐことになる三姉妹の三女小督に寺島しのぶ、次女に富田靖子。もちろん、和央とは初競演の面々。一億円ともいわれる華麗な衣装も含め、戦国の激しい女の生き方を見届けたい。

掲載2007年11月01日

『赤穂浪士』ついに討ち入り!!視聴率50パーセント突破
長谷川一夫の大河ドラマ伝説の名作。

(あこうろうし) 1964年

掲載2007年11月01日

元禄15年12月14日未明。大石内蔵助(長谷川一夫)以下四十七士は、吉良上野介(滝沢修)の邸宅に討ち入った。迎え撃つ吉良側は、小林平七(芦田伸介)、清水一学(内藤武敏)を中心に上野介を炭小屋に隠す。
「降り積もった雪は有明の月に青く光っていた」洗練されたナレーション、深みのあるセリフ。大仏次郎原作、村上元三脚色の本作は、一年間に渡って放送する大河ドラマの第一号。映画スター・長谷川一夫の初テレビ主演作として話題になり、クライマックスとなる「討ち入り」の回は全国各地で視聴率50パーセントを超え、その記録は大河ドラマ史上最高を記録し、現在も破られていない。
 中には年少メンバー矢頭右衛門七に内蔵助が「焦ってはならぬ」と諭す場面が。右衛門七役は、デビュー二年目のアイドル舟木一夫。ご本人にインタビューした際には、「当時流行歌手が器用される例はなかったので戸惑いましたが、村上先生が強く推薦をしてくださった。現場は長谷川先生はじめ、錚々たる顔ぶれが揃い、緊張しましたが、先生にはとても可愛がっていただきました」と語っていた。
 このドラマで人気を得た大盗賊・蜘蛛の陣十郎(宇野重吉)は、討ち入りを上杉家に知らせようとする浪人(西村晃)、お仙(淡島千景)に「上杉な侍を出すもんか」とお家大事の武家社会を皮肉る。豪華「忠臣蔵」の世界。

掲載2007年09月27日

『俺は用心棒』名前もわからぬ用心棒・栗塚が渋く活躍!第一回は近衛十四郎が洒落た浪人でゲスト。

(おれはようじんぼう) 1967年

掲載2007年09月27日

舞台は幕末。名前もわからぬ浪人(栗塚旭)が、行く先々で事件に巻き込まれる。「新選血風録」で、男たちの生き様を描ききった脚本家・結束信二と監督・河野寿一が全話を担当。悲惨な戦争を経験したふたりが、時代劇の場を借りて独特の世界を作り上げ、視聴率は20パーセントと好評を得た。
 シリーズ第一回のゲストは近衛十四郎。
 どこの城下かは定かではないが、この地も改革派と保守派が対立を繰り返していた。深夜、若党・敬助の実家である居酒屋に、敬助の主人で藩改革派の宮武洋一郎と腰元の萩江が逃げ込んでくる。彼らは藩保守派の目付けに追われていたのだ。有力者である萩江の実家へと脱出を試みるが、そこには裏切り者が…。偶然、萩江を助けたのが、飄々とした浪人・山川大蔵(近衛)。彼は男勝りの馬子(中曽根美樹)と策を練る。
 一方、居酒屋でただ酒を飲んだ浪人(栗塚)は「酒代の代わりに」と敬助の敵と戦うことに。大勢(川谷拓三も)を相手にしても、「お前らの顔が酒の肴に見えてくるぞ」といつもの調子の近衛先生。その立ち回りの冴えはここでも光っている。また、「侍なんぞにならんでも」と息子を案じる敬助の老父(吉田義夫)の存在感は抜群。中曽根美樹が、威勢はいいが、可愛い女を好演している。ラストの栗塚・近衛の出会いシーンもお見逃しなく。

掲載2007年09月20日

『稲妻奉行』薩摩藩の陰謀に嵐寛寿郎の大岡裁き!新東宝映画の天知茂、御木本伸介も登場

(いなづまぶぎょう) 1958年

掲載2007年09月20日

白昼、酔って町人を斬るなど、やりたい放題の薩摩藩士達を、ついに捕らえて、みせしめのために処刑した南町奉行駿河守(中村彰)。それを知った薩摩藩は、老中水野忠邦(高田稔)に猛抗議し、責任をとった駿河守は切腹を申し渡された。薩摩のこのやり方に、いつか、奉行の仇を討とうと決心した男がいた。与力筆頭の大岡忠右衛門(嵐寛寿郎)である。
 その腕を見込まれて、南町奉行大岡越前となった忠右衛門は、薩摩の姫君が将軍家に輿入れする際に持参するはずだった名刀盗難事件探索を始める。この名刀を押さえれば、薩摩の悪行阻止の突端をつかめるはずだった。
 正義のため奉行職を拝命した越前が老中に、「それがしの一命にかえましても」とひれ伏す場面には、男と男のドラマを感じる。また、黒頭巾で屋根を飛び回り、悪人相手に「恐れ入ったか!」と見得を切るなど、思わず「天狗のおじさん」と声をかけたくなるような、奉行とは思えないアクションもいろいろだが、そこはアラカンならではの遊び心ともいえるのかも。予算的にも条件はよくなかった新東宝映画で、顔に傷があり、悪のニオイがぷんぷんする秋月典膳役の天地茂や、後に中村吉右衛門版の「鬼平」でも活躍した御木本伸介も登場。講談として庶民に親しまれる「大岡政談」の中でも、越前初登場編をドラマチックに描いている。

掲載2007年08月09日

『青蛇風呂』伝説の蛇女優・毛利郁子の妖艶演技! 宣伝文句は「美女の乳首に蛇の鎌首」

(あおへびぶろ) 1959年

掲載2007年08月09日

映画全盛期には、数々の怪奇映画が作られたが、この「蛇シリーズ」もなかなかのもの。
主演の毛利郁子は、“蛇女優”といわれ、プライベートでも蛇を飼っていたといわれている。
 物語は、料理茶屋白藤で、主人清吉(伊沢一郎)の弟佐吉(高倉一郎)の婚約披露から始まる。宴会の最中、佐吉は盗みの疑いで捕まり、清吉と内儀おえん(毛利)は狼狽。さらに証拠の品が店で見つかり、困った清吉は証拠隠滅のために証人の使用人源七(市川謹也)に毒酒を飲ませ、井戸に投げ込んでしまう。その夜から、白藤では奇怪なできごとが頻発。事件の裏に何かあるとにらんだ北町奉行所の開小源太(島田竜三)は、調査を開始する。途中、岡っ引きの兵六(中田ダイマル)がうっかり十手を井戸の中に落とし、探しにいくが、井戸から死体は消えていた…。
 全体にポワワ〜ン、ポワワ〜ンと怪談らしい音楽が流れ、ついにおえんの湯殿に大量の蛇が! 全身に蛇を巻きつけ、「お前さん助けて!」と絶叫するおえんの妖艶ぶりはさすがの貫禄だ。蛇と風呂を合体させたアイデアも鋭いが、当時の資料によると、この映画の宣伝文句は「何を狙うか青蛇の眼!何も知らない浴槽の美女!」「美女の乳首に蛇の鎌首!」など、ナイスな言葉とともに、毛利郁子のことを「蛇グラマー」とも呼んでいる。蛇グラマーの熱演と怪奇な世界を堪能したい。

掲載2007年07月05日

『大江戸捜査網』ついにシリーズ最終回!傷つき苦悩する隠密同心たちの明日は。

(おおえどそうさもう) 1970〜92年

掲載2007年07月05日

隠密同心・板前の直次郎こと天竜寺隼人 (橋爪淳)は、浪人・秋月新十郎(京本政樹)、芸者・流れ星お蝶(中村あずさ)、矢車おせん(荒井乃梨子)とともに、江戸の治安を影から支えていた。
 ある日、知り合いの娘お千代が誘拐され、直次郎に身代金を持ってくるよう要求がある。現金調達のため、隠密同心を組織した老中・松平定信(若林豪)配下の小笠原(和崎俊哉)に交渉するが、「大事な隠密同心の命を危険にさらすことはできない」と受け渡しに出向くことを禁じられてしまう。自分のために娘を犠牲にしていいのか。悩む直次郎。一方、忍びがらみのただならぬ連中の動きを察知した新十郎に敵の毒矢が! お蝶の必死の探索にも関わらず、今度は直次郎までが目隠しをされたまま連れ去られる。その裏には松平失脚を狙う恐ろしい影が…。
 「隠密同心心得の状」もいよいよ今回が最終回。直次郎を狙う強敵に、数多くの映画で活躍する山田辰夫が登場。あの個性的な声で「お前とは決着を」などと迫ってくる。そんなギリギリの闘いも知らず、直次郎の働く桔梗屋では、ダメ同心(竜虎)がいつものように美人女将(山本リンダ)を「直次郎のことなんか、どうでもいいんでないの」とおネエ言葉?で口説いている。いつもの面白さに加えて、隠密同心ゆえの哀愁、命の意味など問いかける仕立てになっている。

掲載2007年05月17日

『あずみ』美しき最強の刺客あずみの苦悩 オダギリジョーの殺人鬼美女丸にも注目

(あずみ) 2003年

掲載2007年05月17日

小山ゆうの人気マンガを、思い切ったアクション映像で知られる北村龍平監督が映画化。アイドルとして人気の上戸彩が映画初主演。体当たりで激しい立ち回りに挑戦する。
 徳川幕府が開かれて間もないころ。まだ徳川家に遺恨を持つ者も少なくなかった。小幡月斎(原田芳雄)は、戦乱で孤児となった10人を山深い谷里で特殊訓練し、反徳川派を抹殺する刺客として世に放つことにする。あずみ(上戸)、ひゅうが(小橋賢児)、ながら(石垣拓磨)らに対して、月斎が命じた最後の試練は、「仲間ふたり同士で殺しあえ」というものだった。あずみは反射的に想いを寄せていたながら(小栗旬)を斬る。そして、旧豊臣に近い大名浅野長政(伊武雅刀)と加藤清正(竹中直人)の暗殺に挑む。
 少女からおとなになりかけたあずみは、心の揺れを自覚しつつも、刺客の生き方を選ぶしかない。壮絶な闘いが繰り広げられる中、清正の側近・井上勘兵衛(北村一輝)が恐ろしい殺人者・美女丸(オダギリジョー)をあずみの前に差し向ける。白い着物に赤い薔薇。人殺しを快楽にし、狂気の目をしたオダギリが怖い!クライマックスはなんと200人を相手にあずみが剣をふるう大立ち回り。当時、取材に来た記者たちも遠くのほうで“死体役”になったというほど、本物の大人数が立ちふさがる。竹中・北村の味の濃い演技も絶好調。

掲載2007年04月12日

『父子鷹』松本幸四郎、市川染五郎共演の初時代劇。息子思いの物語は、現実と同時進行!?

(おやこだか) 1994年

掲載2007年04月12日

幕末のヒーローのひとり勝海舟。その若き日々と彼を支えた家族を描いたのが、この「父子鷹」。映画全盛期には、市川右太衛門・北大路欣也父子の共演で話題になったが、テレビでは、松本幸四郎・市川染五郎に共演が実現。染五郎にとっては、初のテレビ時代劇作品になった。
 幕末。御家人の勝小吉(幸四郎)は、豪放磊落、身分の隔てなく弱い者の見方をする小吉は、庶民からは人気があるが、武士としての出世とはまるで縁がない。しかし、その跡取り息子の麟太郎(染五郎)が文武両道なかなか出来がよいと知るや、小吉は息子の出世のために奮闘する決心をする。その暴走ぶりは、はたから見るとまさに「親バカ」に近く面白いほど。第二話「親離れ子離れ」の回では、評判の町道場に麟太郎を預けることに。その道場主・島田虎之助(梨本謙次郎)がどんな男か、さっそくリサーチを始める小吉だが、「あの男の剣は強いがまともすぎる」と判断。虎之助を色町に誘い、無理やり遊ばせようとするのであった。とにかく即断即決、自分が悪侍に狙われているのに、そっちは気にも留めずに暴走する小吉という男の痛快な生き方が、後にべらんめえの勝海舟に影響したこしは間違いない。「土の上での芝居は初めて」という染五郎を幸四郎はしっかり支える。現実的父子鷹ドラマになったのだった。

掲載2007年01月25日

『大江戸捜査網』死して屍拾う者なし!松方弘樹編今、明かされる着こなしの秘密とは?

(おおえどそうさもう) 1970〜1992年

掲載2007年01月25日

隠密同心心得の状。死して屍拾う者なし!の名セリフや、横一列に整列してのクライマックス、悪人相手の名乗りシーンなど、数々の名場面を盛り込みつつ、足掛け22年も高い人気を誇った名物シリーズ。アップテンポのオープニング曲は西部劇を意識しているというのも有名な話。
 現在、放送中のメンバーは、左文字右京(松方弘樹)をリーダーに、ベテラン隠密同心井坂十蔵(瑳川哲郎)、風車のお菊(夏樹陽子)、疾風のおせん、九條新太郎(南条弘二)、大番頭・藤堂対馬(大山勝巳)という顔ぶれ。
 先日、私は松方弘樹ご本人にインタビューしたが、その折に以前から気になっていた「着流しの着こなし」について聞いてみた。「大江戸捜査網」や「遠山の金さん」シリーズで、遊び人姿になる際、かなり着物の前をはだけて着こなしているのはなぜか? 私はてっきり「いかにも遊び人」という着崩し術かと思っていたが、ご本人によると、「自分の体型を考えて、首が短く見えないようにすっきり着こなすため」だったそう。そのバランスは微妙で、かなり研究したとか。遊び人から、隠密同心への“変身”も見もののこのシリーズ。その辺りもぜひ、チェックしてほしい。
 なお、夏樹陽子は「暴れん坊将軍」の初代女お庭番。お庭番当時は時代劇初心者でかなりしごかれたが、ここでは貫禄も見せている。

ペリー荻野プロフィール
ペリー荻野

1962年愛知県生まれ。大学在学中よりラジオのパーソナリティ兼原稿書きを始める。 「週刊ポスト」「月刊サーカス」「中日新聞」「時事通信」などでテレビコラム、「ナンクロ」「時代劇マガジン」では時代劇コラムを連載中。さらに史上初の時代劇主題歌CD「ちょんまげ天国」シリーズ全三作(ソニーミュージックダイレクト)をプロデュース。時代劇ブームの仕掛け人となる。

映像のほか、舞台の時代劇も毎月チェック。時代劇を愛する女子で結成した「チョンマゲ愛好女子部」の活動を展開しつつ、劇評・書評もてがける。中身は"ペリーテイスト"を効かせた、笑える内容。ほかに、著書「チョンマゲ天国」(ベネッセ)、「コモチのキモチ」(ベネッセ)、「みんなのテレビ時代劇」(共著・アスペクト)。「ペリーが来りてほら貝を吹く」(朝日ソノラマ)。ちょんまげ八百八町」(玄光社MOOK)「ナゴヤ帝国の逆襲」(洋泉社)「チョンマゲ江戸むらさ記」(辰己出版)当チャンネルのインタビュアーとしても活躍中。