ペリーのちょんまげ ペリーのちょんまげ

掲載2006年11月27日

『おーい!竜馬』原作・武田鉄矢、小山ゆう 主題歌も鉄矢、アニメながらリアルできびしー竜馬の日々

(おーい りょうま) 1992年

掲載2006年11月27日

幕末の志士・坂本竜馬の幼少期から青春時代、さらに日本の未来を思い走り回る日々を描いた大河アニメ。原作は、「竜馬を語らせたら止まらない」、自ら竜馬を演じたこともある武田鉄矢、画は、「あずみ」「がんばれ元気」などでも知られる小山ゆう。
 土佐郷士の家柄に生まれた坂本竜馬(目がぱっぢりして可愛い!)は、名前の元気がよいが、泣き虫でいじめられっこ。タフな姉にしごかれ、母に甘えつつも、性格のよさで近所のこどもたちとも仲良くなっていった。
ある日、偶然、土佐のお殿様の行列に加えてもらった竜馬。そこに知り合いのこどもが「魚を獲った」と竜馬に見せようと行列の前に駆け出してしまう。「無礼者!!」と一喝された子をかばおうと、年長の子も飛び出すが、竜馬たちの必死のとりなしもむなしく、彼らはお手打ちになってしまう。猛然と怒った竜馬は、手にかけた殿様近習に反抗。仕置きとして家の二階の柱に縛り付けられる。水も食べ物も与えられなくても、決して謝罪しない竜馬。幼い竜馬の中に、身分があるからと人の命を軽んずる制度、「慣習」「不公平」に対する怒りが植えつけられた…。
アニメとはいえ、中身はリアル。武田鉄矢の歌う主題歌「くそったれの涙」も耳に残る。

掲載2006年11月09日

『葵 徳川三代』この秋、紫綬褒章受賞の津川雅彦の家康!岩下・小川・波野、史上最強三姉妹にも注目

(あおい とくがわさんだい) 2000年

掲載2006年11月09日

秀吉逝去から二年。石田三成(江守徹)の豊臣軍と、徳川家康(津川雅彦)の軍が、ついに天下分け目の関が原で激突!! 戦況は五分と思われたが、小早川秀秋(鈴木一真)の寝返りもあって、徳川軍が勝利をおさめる。
 いよいよ徳川安泰とみた家康は、秀忠(西田敏行)を後継者と宣言。やがて秀忠とお江(岩下志麻)の間に、嫡男・竹千代(後の家光・尾上辰之助、現在の尾上松緑)が誕生する。
 ひとりの武将ではなく、徳川三代の家族を通して戦国を描くという大河ドラマ。津川雅彦は、同じジェームス三木脚本の「独眼竜政宗」でも家康を演じた。「葵徳川三代」では、以前にも増してハイテンションな家康を熱演。ちなみに津川は07年の正月長時間時代劇では、五代将軍綱吉役。時代劇界の隠れた「上様俳優」なのである。また、時代のリーダーである父に劣等感を抱き、いつもしょんぼり気味の秀忠。「しっかりなされませ」と強い嫁に尻をたたかれる西田敏行に、多くの共感が集まったという。
 その強い嫁はご存知、織田信長の妹お市が残した浅井三姉妹のひとり。岩下はじめ、秀吉の愛妾となり、秀頼の母として「おのれ憎き徳川あ!!」と目を吊り上げる淀殿・小川真由美、尼となり、徳川・豊臣の間にたつ波野久里子と、まさに「史上最強三姉妹」の迫力はすさまじい。ある意味、武将たちより鼻息は荒いのである。

掲載2006年11月02日

『陰陽師』平安の恋する鬼はやっぱり美女でないと!最新映像技術を駆使した安倍晴明の世界

(おんみょうじ) 2001年

掲載2006年11月02日

平安の御世。帝に親王・敦平が誕生し、都は祝いのムードに包まれる。しかし、陰陽師安倍晴明(野村萬斎)は、親友の源博雅(伊藤英明)から、親王に呪いがかけられていると聞く。調べていくうちに、右大臣の娘(夏川結衣)と怪しげな陰陽師・頭尊(真田広之)の存在が浮かびあがるが、その呪いの力は、すさまじく、ついに博雅の生命にまで危機が及ぶ…。
 みどころは、浮世離れしたムード満点で、まさに「晴明にぴったり」と原作者・夢枕獏先生も激賞の野村萬斎の操る「呪(しゅ)」の技vs体育会系能力に陰陽師の魔力まで身につけた真田広之のスーパーパワーの対決シーン。ここでは博雅に対する晴明の心があふれる場面も。どんな魑魅魍魎と出会っても冷静な晴明の「人間味」が出るのは珍しく、貴重なシーンといえる。
さらに男を慕うあまり、鬼になってしまった女の哀しみ。「陰陽師シリーズ」では、何もあんなに美人なら、他の男が放って置かないだろうに、と思うような美女がひとりの男(それもなぜかさえない中年貴族)に固執する様が描かれるが、夢枕先生によれば、「やっぱり鬼になるのは、美人のほうがいいでしょ」とのことだった。ここに出てくる「鬼」も、鬼と化してからもなお美しさが漂う。
東映の戦隊シリーズなどを手がけるスタッフも参加。その最新技術を駆使した「陰陽師世界」の迫力にも注目を。

掲載2006年10月12日

『暴れん坊将軍Ⅳスペシャル ご生母、謎の失踪!吉宗、江戸城決戦春一番!!』吉宗に弟が!?母の秘密に苦悩の上様 葵のご紋のモノグラム柄羽織の弟は本物?

(あばれんぼうしょうぐん) 1991

掲載2006年10月12日

10月は寝てもさめても「暴れん坊将軍」三昧。今回は、吉宗の「弟」が登場し、吉宗と母の間に微妙な空気が流れる。
 ある日、南町奉行所に吉宗の弟と名乗る菊千代(円谷浩)とその一党がやってきた。驚く大岡忠相(横内正)に、菊千代は、自分は紀州徳川光貞と吉宗の母・お由利の方(中村玉緒)との間の子で、証拠の品も持っているという。吉宗との対面を求められ、無碍にもできない忠助は、さっそく上様と相談。側用人の孫兵衛(船越英二)が、お由利の方を訪ねるが、あいにく湯治に出かけて留守だった。重大事だけに、孫兵衛は草津にまでお由利を追いかけるが、なぜかお由利は姿を消してしまう。これはひょっとして!? 深いわけがありそうだが、母が自ら姿を隠し、苦悩する上様。しかも、菊千代の後ろには胡散臭い連中が…。将軍家の家庭問題に、謎の忍者集団も参入して、油断ならない展開に。
 「葵のご紋のモノグラム柄」というすごいファッションで登場した菊千代。あまりに派手すぎて、かえって偽者臭く見えてしまうが、お由利の方と縁があるのは事実らしいというのが、今回の見所。物語の鍵を握る娘・お俊(大沢逸美)も男勝りの元気のよいところを見せる。また、め組の小頭として、建物探訪でおなじみの渡辺篤史が登場。

掲載2006年09月28日

『暴れん坊将軍500回記念スペシャル 将軍琉球へ渡る 天下分け目の決闘』懐かしい旧レギュラーも登場。琉球に渡った吉宗が見つけた秘密とは?

(あばれんぼうしょうぐん500かいきねんすぺしゃる) 1990年

掲載2006年09月28日

何かとウワサの耐えない薩摩藩の内情を探るため、吉宗は三人の隠密を差し向けるが、一人も戻ってこなかった。そんな折、吉原で琉球の娘・留美(柏原芳恵)が姉を訪ね歩いていた。その姉・奈美(栗田陽子)は、決死の覚悟で目安箱に向かう途中、追っ手に襲われ、吉宗と旧知の浪人・結城一真(勝野洋)に救われるが、思い労咳の奈美は息を引き取ってしまう。奈美から託された書状で、彼女が三年前に将軍家に献上品を届ける琉球国の一団にいたことを知る。踊りの名手であった奈美がなぜ、吉原にいたのか。留美と知りあった吉宗は、薩摩藩で襲われたという琉球国の三年前の事件の捜査を決意する。さっそく、お庭番のふたり才三(五代高之)と梢(高島礼子)を薩摩に派遣する。事件には意外な裏側が!
 500回を記念して、冒頭では松平健、北島三郎、横内正がご挨拶。「健ちゃんは…」と若い主役見守ってきため組の頭サブちゃんの言葉があたたかい。また、三ツ木清隆、荒木しげる、夏樹陽子ら旧お庭番がちらりと姿を見せ、初代おさいの春川ますみとめ組メンバー竜虎が居酒屋スタッフに扮して、上様にサービス。上様は、「あたしゃ、め組と聞くと血が騒ぐ」という春川にたじたじし、「お前は竜…」と思わず名前を口走りそうになるなど、サービスシーンもいろいろなのでお楽しみに。

掲載2006年08月17日

『上杉鷹山 二百年前の行政改革』大胆なアイデアで目指せ、改革!自ら痛みを率先して受けた藩主の物語

(うえすぎようざん にひゃくねんまえのぎょうせいかいかく) 1998年

掲載2006年08月17日

上杉家九代目の藩主になった鷹山(筒井道隆)は養子で、家の実情をよく知らなかった。フタを空けてみれば、藩の財政はパンク寸前。それもこれも戦国の覇者・上杉謙信を始祖とした誇りから、会津、米沢と移るたびに収入が減っているのに、藩士も減らさず、節約もしなかったためだった。
 早速、改革を志した鷹山は、側近の佐藤(宍戸開)に命じて、藩で冷遇されている有能メンバーを招集。思い切った改革案を作らせる。しかし、藩士の家の庭にも桑の木を植えたり鯉を飼う、藩士の妻女も機織を、などという案に、幕府古老の重役たちは「武士の恥」と激怒。ついに鷹山を力づくで追い詰め、幕府に直訴してでも追放しようと圧力をかける。
 鷹山は自らの経費を1500両から200両に減らし、粗食生活を実践。城の庭にも桑を自ら植え始める。筒井道隆は、「私が藩主に適しているかどうか決めるのは領民だ」と、いつもの飄々としたテンションで、若い藩士たちを納得させてしまう。一方、いちいち文句をつけて血圧を上げている重役たちの顔ぶれは神山繁、北村総一朗、すまけい、森山周一郎。この四人の共通点は、低音の声がいいこと。四人揃って迫られると、なかなかの迫力。浮世離れした先代藩主・宇津井健が「わしが浪費したのがいけなかったか…」と反省するシーンもいい。気持ちいい歴史劇。

掲載2006年07月13日

『おらが春』西田敏行が、小林一茶になって名句を連発。五十すぎてモテモテの秘密とは!?

(おらがはる) 2002年

掲載2006年07月13日

生涯に一万句を詠んだという俳人・小林一茶。意外に知られていないその生涯を、田辺聖子が小説「ひねくれ一茶」で描き、吉川英治文学賞を受賞。そのユニークな原作を基に、これまたユニークな俳優・西田敏行が、生き生きした一茶を見せる。
 北信濃の豪農の家に生まれた小林弥太郎は、三歳で生母(市原悦子)を失い、継母のさつ(三林京子)からはいじめられる。15歳で江戸に奉公に出た弥太郎は、20年後、俳人・小林一茶(西田敏行)として、故郷に帰る。しかし、そこでは、さつと弟が「兄さんには財産はやれん」とがんばっていた。
 どんな人物にもなりきれる、“なりきり名人”西田敏行と、“平成の意地悪ばあさん名人”三林京子の対決は見もの。嫌味には嫌味で対決する一茶の「ひねくれ」ぶりはなかなか。
「一茶さんの小さいものを詠む句が好き」と、芳香漂う粋人・今様紫式部といわれた花嬌(かたせ梨乃)、「五七五に命をかけた」と、まともに生きられない男たちなど、俳句を巡る人間関係も興味深い。
五十すぎて、なぜかモテモテになる一茶。
しかし、やっと美人妻をもらいながら、子を次々亡くす悲劇。その深い悲しみが俳句にも染み出て、胸を打たれる。
「めでたさも 中くらいなり おらが春」
この句の深い意味がわかってくる。

掲載2006年06月15日

『お庭番忍びの構図』非情の掟に生きる「草」の生き様。田中邦衛の息子忍びは、遠藤憲一。

(おにわばんしのびのこうず) 1983年

掲載2006年06月15日

お庭番とは、徳川幕府の公儀隠密。伊賀組、甲賀組の忍者集団から構成されており、その中でも、各藩の中に住み、住民として溶け込みながら隠密活動を続ける者は、“草”と呼ばれていた。
 将軍家継の世、岡崎城下に不穏の動きありとして、隠密たちが動き出す。どうも、城の拡張工事に秘密がある様子。岡崎でのんきな居酒屋のおやじとして暮らす男(田中邦衛)は、本名を不破数馬、ベテランの「草」だった。その居酒屋に深夜、老隠密(花沢徳衛)が瀕死の状態で駆け込む。事態は予想以上に根が深い様子。江戸で修行を積んだ数馬の息子も加わり、探索を始めるが…。
 田中邦衛が、居酒屋のとぼけ親父と非情な隠密のふたつの顔、隠密の煙草入れの仕込み刀を操るなど、「岡っ引きどぶ」を思わせるアクションを見せる。怪我を心配し、引き止める数馬に「てめえの死に場所は自分で見つける」という老練な忍びの最期を見せ付ける花沢徳衛もさすが。「おやじどの」と登場する数馬の息子が若き遠藤憲一なのも、ファンにはうれしい!
 多くの犠牲を出し、無二の親友とも対立しながら、結局、公儀の命令に従うしかない忍びの過酷な運命。むなしさを感じた数馬が選んだ道とは。名手・木下忠司の音楽、ナレーションの隆大介の低音ボイスも楽しめる。

掲載2006年05月11日

「女ねずみ小僧スペシャル1 いけないことだぞ!大江戸マラソン博奕地獄」三谷版女ねずみシリーズ。西村雅彦、梶原善、ちらり出演者にも注目。

(おんなねずみこぞうすぺしゃる いけないことだぞ おおえどまらそんばくちじごく) 1990年

掲載2006年05月11日

世のため人のためになればと、悪徳商人から巻き上げた金を庶民にばらまいてきた女ねずみ小僧ことお凛(大地真央)。しかし、その金を元手に博打を始めた男が借金地獄に陥った事実を知ってしまう。その博打を仕切っているのが、大黒屋(北村総一郎)だった。なんと大黒屋の地下は、ルーレットなど南蛮の博打も揃ったラスベガス状態!さらに「大江戸早駆け競争」の賭けで大もうけをしようという大黒屋の企みを知ったねずみ一味は、早速作戦を開始する。
 ねずみ一味に笑福亭笑瓶、白竜、彼らを助ける人の好青年で背中に桜吹雪の彫物がある金さんに野々村真(ということは、あの“真くん”が将来の名奉行!?)、マラソンランナーにヨネスケ、瀬古選手にそっくりの三遊亭楽太郎、さらに大黒屋の悪番頭に西村雅彦、殺し屋に梶原善など、ちらり出演者も要チェック。大地真央は得意のコスプレで奉行の妹に変装。が、マラソンに興奮、大黒屋の前で「いけーっ!!」とつい地が出てしまい、ピンチに…。
 脚本は、大河ドラマ「功名が辻」(脚本・大石静)で足利義満役で熱演(?)を続ける三谷幸喜。かつて時代劇の脚本について大石先輩に相談したとも言われる。ひょっとして、その「相談した時代劇」とは、この「女ねずみ」だったかも?そう思うと、ますます興味深い。

掲載2006年02月23日

「音なし源 さの字殺し」中村梅之助が笹沢佐保アクション作品に。裏の裏の顔とダブル匕首の技も披露。

(おとなしげん さのじごろし) 1983年

掲載2006年02月23日

中村梅之助といえば、テレビの「遠山の金さん」や「伝七捕物帳」の伝七親分として親しまれたベテランだが、今回は、笹沢佐保作のアクション時代劇に挑戦。暗い過去をひきずり、闇の中に生きる男を演じている。
 料理屋春駒の板さん源太(梅之助)は、ふだんは気のいい男のようだが、どこかにかげりがあった。実は、岡っ引き文次郎(織本順吉)の隠れ下っ引きで、事件の裏にうごめく悪人を密かに探っていたのだ。しかし、源太には、その裏にもうひとつの顔を持っていた。二十年前、両親と妹を殺した通称「さの字」という男に復讐を誓っていたのだ。そこに「左文字小僧」と名乗る盗賊が十五年ぶりに現れたと知らせが。「さの字」の盗賊と聞いて、源太の目はきらりと光る!
 注目したいのは、源太を思う春駒の女将お小夜を演じる松尾嘉代。源太のしようとしていることを察し、「さの字だね。さの字のことになると、人が変わっちまうよ」と悲しみながら、でかけていく源太のひげを剃ってやる。おとなの女心をこってりと見せる。多くの時代劇に出演、二時間ドラマでも犯人から探偵まで幅広く演じてきた松尾嘉代だが、こうした“こってり”はマネのできないうまさだ。
 また、伝七では見事な十手さばきを見せた梅之助が、ここでは「ダブル匕首」の技を披露。板前と復讐の鬼の顔の使い分けも新鮮。

ペリー荻野プロフィール
ペリー荻野

1962年愛知県生まれ。大学在学中よりラジオのパーソナリティ兼原稿書きを始める。 「週刊ポスト」「月刊サーカス」「中日新聞」「時事通信」などでテレビコラム、「ナンクロ」「時代劇マガジン」では時代劇コラムを連載中。さらに史上初の時代劇主題歌CD「ちょんまげ天国」シリーズ全三作(ソニーミュージックダイレクト)をプロデュース。時代劇ブームの仕掛け人となる。

映像のほか、舞台の時代劇も毎月チェック。時代劇を愛する女子で結成した「チョンマゲ愛好女子部」の活動を展開しつつ、劇評・書評もてがける。中身は"ペリーテイスト"を効かせた、笑える内容。ほかに、著書「チョンマゲ天国」(ベネッセ)、「コモチのキモチ」(ベネッセ)、「みんなのテレビ時代劇」(共著・アスペクト)。「ペリーが来りてほら貝を吹く」(朝日ソノラマ)。ちょんまげ八百八町」(玄光社MOOK)「ナゴヤ帝国の逆襲」(洋泉社)「チョンマゲ江戸むらさ記」(辰己出版)当チャンネルのインタビュアーとしても活躍中。