ペリーのちょんまげ ペリーのちょんまげ

掲載2005年06月09日

「鬼平犯科帳スペシャル 山吹屋お勝」4年ぶりに復活した鬼平最新作。盗賊の男と女の悲しい再会の物語

(おにへいはんかちょうすぺしゃる やまぶきやおかつ) 2005年

掲載2005年06月09日

2005年2月にフジテレビ系で放送された、鬼平ファン待望の最新作。
 長谷川平蔵(中村吉右衛門)の従兄弟にあたる三沢仙右衛門(橋爪功)は、このところ茶屋・山吹屋の女中お勝(床嶋佳子)にほれ込んで、ついには嫁に迎えると言い出す。心配した仙右衛門の息子・初造(金田明夫)に相談された平蔵は、山吹屋でお勝という女を見定めることに。念のためにその素性を調べさせたところ、その役を仰せつかった関宿の利八(吉田栄作)とお勝にはひとにいえない因縁があったのだった。
 鬼平ファンなら、この話は平成二年放送された吉右衛門版鬼平第一シリーズで放送されたことをご存知のはず。ちなみにその際のお勝は風祭ゆき、利八は森次晃嗣で、設定も若干異なっていた。
 今回、男の情と義理の間で揺れ動く利八を演じたのは、吉田栄作。かつてはトレンディドラマ系で活躍、米国修行後には「日本のよさに目覚めた」と時代劇に積極的に出演している。私は帰国直後、時代劇初出演に本人にインタビューしたことがあるが、その際の印象的な言葉は「(自分は)思ったよりずっとちょんまげが似合ってた」だった。まさに栄作語録とも呼びたい自信と意欲が、本作でも爆発。二時間があっという間のスペシャル版。

掲載2005年05月18日

「鬼平犯科帳'75」スタイリッシュな鬼平の活躍。火盗改めのメンバーもユニークな顔ぶれ。

(おにへいはんかちょう) 1975年

掲載2005年05月18日

今年も大河ドラマ「義経」で、巨大な平家の勢力に歯向かう男を熱演した丹波哲郎。80代でなお、そのパワーには驚くが、この「鬼平」では、丹波のもっとも得意とする「ボス」をのびのびと演じている。
 凶悪犯罪を専門に扱う江戸の盗賊改め方の長官・長谷川平蔵(丹波)と、悪人たちとの戦い。ご存知、池波正太郎原作の大人気シリーズで、本作は、二度目のテレビ化である。
 激務の夫を支える鬼平の妻には、小畠絹子。しっとりと着物を着こなす姿が美しい。また、抜群の機動力を見せる火盗改め方のメンバーも、怪獣映画でもおなじみの小泉博、ファンが多い古今亭志ん朝、丹波の息子・丹波義隆、仮面ライダーV3こと、宮内洋も若手同心のひとり。(ちなみにナレーターも仮面ライダーシリーズの中江真司)。ここに密偵おまさ役で野際陽子が加わると、どうしても「キイハンター」のイメージとダブってしまうが、丹波はいつもどおりのマイペース。「誰か、誰かおらぬか!!」その声、姿、にらみ方は、現代劇でも時代劇でも変わらないボスっぷりだ。
 丹波のムードの意識してか、音楽も「ルパン三世」「大岡越前」でも知られる山下毅雄が担当。♪ルルルー、フー!などというスキャット曲が、このシリーズをさらにスタイリッシュなイメージにしている。洋画のようなオープニングタイトルにこの音楽がよく合う。

掲載2005年04月01日

「一絃の琴」 「冬ソナ」ヒロインの声でも注目!田中美里の凛とした魅力と幕末の激動物語

(いちげんのこと) 2000年

掲載2005年04月01日

土佐藩士の娘・苗(田中美里)は、幼いころ、絵師(田中邦衛)が奏でる一絃琴の音色に感動。いつか自ら演奏してみたいと願っていた。しかし、当時、一絃琴は、男しか習わないもの。どこか影のある名手・大友流月(三田村邦彦)に弟子入りしようとするものの、相手にされない。見た目より強い意志の持ち主であった苗は、粘りに粘ってついに師の教えを受けることに。やがて土佐も時代の激動に巻き込まれる。大きな変化や愛する人々との別れを乗り越えて、ひたすら一絃琴への情熱を持ち続ける苗。その実力は周囲も認めるところとなるが…。
 原作は、土佐を舞台にした強い女を描かせたら右に出るものはいない宮尾登美子の直木賞受賞作。封建的な土地柄の中で、自分の意思を貫く強さと、女として妻として生きる運命と向き合うまじめさが、苗からひしひしと伝わってくる。まさに時代劇ロマン。武家の女が自立するなど考えられない時代に、苗をあたたかく見守った祖母(香川京子)の美しさ、自由でのびのびとしたおじ(伊原剛志)夫婦の存在も光っている。師匠役の三田村邦彦は、新人時代に出演した「壬生の恋歌」のプロデューサーが本作の担当で、直接出演を依頼されたという。ふだんのお茶目さや「必殺」とはまったく違う厳しい師匠の演技にも注目。

掲載2005年03月09日

「暴れん坊将軍Ⅲ」 東京ドームに白馬で登場!熱狂ファンに囲まれて上様復活しました。

(あばれんぼうしょうぐんすりー) 1988年

掲載2005年03月09日

昨年来、キンキラ衣装で踊る「マツケンサンバ」が大人気の松平健。ついに三月八日の「サンバの日」に東京ドームで公演が実現。私も会場に出かけたが、一万人のファンが待ち望む中、流れ出したのは、やっぱり「暴れん坊将軍」のテーマ曲だった。東京ドーム始まって以来という、「白馬」に乗って登場した健さんは、まさしく「暴れん坊将軍」の姿!久しぶりの上様登場で、ドームは大騒ぎ。この番組の底力を見た思いだった。おなじみの光り輝く衣装に着替えた健さん。「僕にとって、なんといっても大事な『暴れん坊将軍』の挿入歌を」と二曲も熱唱。サンバとは一味違う雰囲気で、会場を魅了した。
 現在、当チャンネルで放送中の第Ⅲシリーズは、通算500本目も含む、まさに充実のシリーズ。お側用人の船越英二と、健さんは公私ともにとても気が合ったという。ときにはご隠居姿で町に出て、上様を心配する“じい”は、頑固できまじめ。なかなか嫁をもらわない上様に気をもみつつ、あたたかく見守るじいの存在は、このシリーズの隠れた見所といえる。また、このシリーズには、「大岡越前」でおなじみの遠藤真理子、三林京子、三浦リカ、五十嵐めぐみら、演技派の女優陣もゲスト出演。女心には少々疎い上様と、女優たちのストーリーにも注目したい。

掲載2005年02月24日

「鬼平犯科帳4」 「OK牧場」ガッツ石松の辞世の句!?今は亡き名優も登場する第4シリーズ。

(おにへいはんかちょう) 1992年

掲載2005年02月24日

先般、四年ぶりに地上波で復活。存在感をアピールした中村吉右衛門版「鬼平」。江戸家猫八師匠の相模の彦十がいなかったのはしみじみ寂しかったけど…。当チャンネルでは、三月もユニークな配役の第4シリーズが放送中だ。
 「鬼坊主の女」は、大盗・鬼坊主清吉(ガッツ石松)が登場。捕らえられ、処刑が近づいた清吉は、自分の名を残すには、「辞世の句」が必要だと、自分の女にこっそりと連絡をとり、家の床下の金を出させて、誰かに句を作らせろと命ずるが…。昨年、そのスーパー語録で話題になったガッツ石松と「辞世の句」という取り合わせが、今にしてみると、面白い。果たしてガッツの願いはかなうのか?
 ほかに三月には、惜しくも亡くなった三ツ矢歌子が、色仕掛けで大店の後妻におさまっては盗みの手引きをする「おけい」の役。そのおけいのヒモ同然になりつつ、その生活から抜けようともがく若い盗賊・鶴吉で、沖田浩之が出ている。「よろめき演技」の女王といわれた三ツ矢歌子の濃厚なお色気攻撃にからめとられる鶴吉。まるでくもの糸に巻き取られてしまう小虫のようだ…。今は亡き名優たちの味のある演技も時代劇の楽しみのひとつ。じっくり味わいたい。

掲載2005年02月10日

由美かおる祭り「女忍かげろう組<弐>」 あまりの人気に放送繰上げ。伝説の人気くノ一たちが大活躍。

(おんなしのびかげろうぐみに) 1990年

掲載2005年02月10日

「女忍かげろう組」は、長編第一作が大反響。急遽シリーズ化が決定し、放送時期も早められたという“伝説”を持つ人気シリーズだ。
 その第二弾となる本作では、女忍軍団に由美かおるが参加。全身銀色のタイツでセクシーなダンスを披露するなど、「水戸黄門」とは一味違うキャラクターになっている。
 大奥の春日局(藤間紫)の配下である「かげろう組」は、ある藩に潜入。そこで不穏な動きをキャッチする。得意のお色気攻撃で、敵をまんまとだましたつもりが、思わぬことでピンチを招くが…。「かげろう組」はリーダーの陽炎(多岐川裕美)、サブリーダー格の清水美砂、お色気担当の鮎川いずみ、アクションの由美かおるなど、すべて女性たちの役割分担ができているのが斬新。製作当時は、「女性だけのプロジェクト」など、女性を前面に出す企業も多かった。かげろう組は、時代劇界の女性プロジェクトチームの成功例なのである。
 注目したいのは、彼女らとつかず離れず、微妙な存在の柳生十市兵衛の伊吹吾朗。「水戸黄門」の格さんでは超堅物だったが、ここではかなり軟派?な一面も見せる。素顔は「洗濯物の干す順番にもこだわる」几帳面な人柄だという伊吹十市兵衛の軟派演技はいかに?

掲載2005年01月31日

由美かおる祭り「大奥悪霊の館」可憐な由美かおるが悪霊に!!大河ドラマでも話題のあの人も熱演。

(おおおくあくりょうのやかた) 1981年

掲載2005年01月31日

二月はお待ちかね「由美かおる祭り」。その中でも、なかなか再放送される機会がなかったのが、この「大奥悪霊の館」。
 継母にいじめられる町娘・おとし(由美かおる)は、偶然、大奥へ上がることに。当時の大奥には、九代将軍・家重(和田浩治)の寵愛をめぐって、世継ぎを生んだお逸(山本みどり)と、彼女にギラギラと嫉妬するお幸(岩井友見)の対立が顕著になっていた。
 そんなところへ、大奥の「開かずの間」に悪霊が棲んでいるとうわさになる。体調をくずすお逸の方。死者も出て、いよいよ悪霊が本物かと思われたとき、おとしの運命は思わぬ方向に。なんと、将軍様から側女として寝所のお呼びがかかってしまったのだ!
 町娘からご側室へと数奇な運命をたどるおとしだが、彼女が出世するたび、開かずの間の龍の絵の目からは、血の涙が…。そして恐ろしげな語り口調とカッと見開いたすごい目つきのお局様(白石加代子)の存在も気になる。今年の大河ドラマでも独特のホラームード漂わす白石加代子のお局様は、将軍とおとしがいよいよベッドインという瞬間にも「ご無礼します」と入ってくる。ご無礼しすぎだよ!可憐な由美かおるの豪華打掛姿はくノ一とは一味違う美しさ。こちらにも注目を。

掲載2005年01月04日

「暴れん坊将軍Ⅲスペシャル 初富士の花嫁、吉宗の禁じられた恋!」 思わず吉宗の目が潤む悲恋。あの美女の入浴シーンにも注目!

(あばれんぼうしょうぐんすりーすぺしゃる はつふじのはなよめ、よしむねのきんじられたこい!) 1989年

掲載2005年01月04日

「後光がさすどころか、自分が光ってる!」「世の中を明るくした!」と大評判の「マツケンサンバⅡ」。松平健は、いまや時代劇俳優とシンガー・マツケンのふたつの顔を持つスターになった。その代表作といえば「暴れん坊将軍」。そのスペシャル版の中でも、特に刺激的なタイトルなのが本作だ。
 新年、忍者集団に襲われた娘を危機一髪のところで救った吉宗(松平健)。どことなく高貴なムード漂うその娘こそ、京都からはるばる江戸にやってきた、公家・一条兼房(穂積隆信)の姫・松子(賀来千賀子)だった。
 松子を自分の母上(中村玉緒)に預けた吉宗は、さっそく探索を開始。すると、そこには松子と水戸家の婚礼を阻止しようとする陰謀が浮かび上がる…。
 ふたりで町を歩き、ふれあううちに惹かれあう吉宗と松子。でも、松子には水戸家に許婚(金田賢一)がいる身。微妙な三角関係…。
 時代劇出演の多くない賀来千賀子が初々しい姫君を熱演。華麗な姫、町娘風、さらには入浴シーンまで! ほかのゲストでは悪女ながら気のいい旅の女を演じる森マリア、姿勢正しい若殿の金田賢一、時代劇では欠かせない悪役となった鹿内孝もいい味を出す。新春にふさわしい大仕掛けの長編。

掲載2004年12月24日

「円空」めざすは12万体の仏像作り。なぜ、円空は全国を行脚したのか?丹波円空が答えます。

(えんくう) 1988年

掲載2004年12月24日

「円空」といえば、全国で仏像を作っていた人、というくらいの知識しかない人も多いと思うが、その生涯はなかなかすさまじい。寛文8年(1668年)に苦しい旅路の末、母と慕う陀羅尼(樹木希林)の住む美濃の尼寺に帰ってきた円空だったが、現地は悲惨。日照りで田畑は枯れ、飢える人々がさまよい歩く。円空は、雨乞い仏善女竜王を彫り、川に投げ込む。すると、激しい稲妻とともに大粒の雨が。大喜びする村人と対照的に深く憂いの表情の円空。彼の母は、洪水に巻き込まれて命を落とした。12万もの造仏を決心したのは、その供養のためなのだった。
 脚本は、早坂暁。人生の過酷さを鋭く描く脚本家の作らしい人間ドラマだ。
 一方、どんなに悩んでいようとも堂々とした丹波哲郎円空は、ボロボロの山伏のようなスタイルに、坊主頭とヒゲで、一見、暴れん坊の僧といったイメージ。なた一丁のみ一丁で全国を歩いたといわれる円空だが、どこか神掛かってさえ見える。(ちなみにこの作品の翌年に映画「丹波哲郎の大霊界 死んだらどうなる」が公開。ますます霊界の宣伝マンとして脚光をあびることに)
 蝦夷地から女(倍賞美津子)が追いかけてきても、腰を落ちつけず長い旅に出てしまった円空。その浮世離れした雰囲気は、やはり丹波哲郎だからこそ、できた役に違いない。

掲載2004年12月17日

明治座 里見浩太朗特別公演「大石内蔵助」今まで見たことない「忠臣蔵」あの有名シーンとは違う角度で大石の人間像に迫る力作。

(おおいしくらのすけ) 2004年

掲載2004年12月17日

「忠臣蔵」といえば、吉良上野介の浅野内匠頭への執拗な嫌がらせ、殿中刃傷事件、庭先での切腹シーンなどなど、定番場面が続くのが普通だが、本作は、ひと味違う角度から、突然の大事件に巻き込まれた大石内蔵助の行動、生き方、家族とのふれあいを描いていく。04年10月明治座公演が早くも登場。
 主演は、里見浩太朗。ご本人は、「大石内蔵助は、俳優の年齢、キャリア、作品製作のタイミングがぴったりあって、初めてやらせていただける大役。時代劇俳優にとって、あこがれの役」と言い切る。その里見作品としては、テレビ・舞台を含めて、六回目の内蔵助。最近は、水戸黄門でシルバー世代の代表も務めるベテランではあるが、内蔵助は最も大切にしている役のひとつといえる。
 私もこの公演は見たが、こんな忠臣蔵もあるのかと正直びっくりした。有名シーンの連続というよりは、おとなの心情をじっくり描かれた構成にぐっとくる。特に愛妻りく(酒井和歌子)との心のふれあい、別れのシーンではハンカチを持ち出す観客も多数。時代らしさを大事にしたセリフも美しい。この舞台を見ることなく急逝した脚本家・杉山義法の力が凝縮された感じがする。
 山下規介、中村繁之の元気のよさ、丹阿弥谷津子、新橋耐子らベテラン女優の味もさすが。舞台ならではの贅沢な忠臣蔵だ。

ペリー荻野プロフィール
ペリー荻野

1962年愛知県生まれ。大学在学中よりラジオのパーソナリティ兼原稿書きを始める。 「週刊ポスト」「月刊サーカス」「中日新聞」「時事通信」などでテレビコラム、「ナンクロ」「時代劇マガジン」では時代劇コラムを連載中。さらに史上初の時代劇主題歌CD「ちょんまげ天国」シリーズ全三作(ソニーミュージックダイレクト)をプロデュース。時代劇ブームの仕掛け人となる。

映像のほか、舞台の時代劇も毎月チェック。時代劇を愛する女子で結成した「チョンマゲ愛好女子部」の活動を展開しつつ、劇評・書評もてがける。中身は"ペリーテイスト"を効かせた、笑える内容。ほかに、著書「チョンマゲ天国」(ベネッセ)、「コモチのキモチ」(ベネッセ)、「みんなのテレビ時代劇」(共著・アスペクト)。「ペリーが来りてほら貝を吹く」(朝日ソノラマ)。ちょんまげ八百八町」(玄光社MOOK)「ナゴヤ帝国の逆襲」(洋泉社)「チョンマゲ江戸むらさ記」(辰己出版)当チャンネルのインタビュアーとしても活躍中。