ペリーのちょんまげ ペリーのちょんまげ

掲載2004年04月16日

「家光が行く」名君の若き日の物語。元祖・暴れん坊将軍とも言いたい青春時代劇の主役は懐かしの彼!

(いえみつがいく) 1972年

掲載2004年04月16日

三代将軍・家光といえば、徳川の歴史の中でも名君として名高く、しばしばヒーロー的扱いをされる人。では、その若い頃はどうだったのか?このシリーズは、名君の誕生の秘密が実は「視察」にあったと断定。家光は、「視察に」と称して、城を脱出。浪人姿に変装して、町中の人々と関わり、さまざまに事件解決にも奔走するというお話だ。主演は、仲雅美。当時(72年)、仲雅美というと、沖雅也とカン違いする人も多数いたが、まったくの別人で甘いマスクと魅惑のボイスで人気の若手俳優。「家光」放送翌年には、由美かおるの後ろ姿ヌードで話題騒然となった映画「同棲時代」に主演するなど、大活躍していた。映画では少し陰のある青年だが、この「家光」では、明朗生活。元祖暴れん坊将軍といってもいいほどだが、八代将軍吉宗に比べると、暴れ方もさわやか系だ。共演はハナ肇、目黒祐樹、小柳ルミ子、吉沢京子ら。ルミ子は、「私の城下町」の頃で清純派だったのだ・・・。今は姿を見られない仲雅美と合わせ、時代の移り変わりを実感できる番組ともいえる。ちなみにこの番組が登場した72年は8時台に「家光」のほか「大岡越前」などファミリー路線、10時台には「必殺仕掛人」「眠狂四郎」「地獄の辰捕物控」などアウトロー時代劇が全盛期。このあたりにも時代を感じる。

掲載2004年03月05日

「京極夏彦 怪 赤面ゑびす」えびすの顔が赤く染まると、島が滅びる!恐ろしい島で、又市(田辺誠一)らが活躍

(あかつらえびす) 2000年

掲載2004年03月05日

 その独自の世界で、読者を魅了し、今年度直木賞を受賞した京極夏彦が、自ら脚本を手掛けたテレビシリーズ「怪」。本作も京極ワールドが大爆発している。
 魔除けの札売りの又市(田辺誠一)と算盤の徳次郎(火野正平)が受けた不思議な依頼。行方不明になった商家の跡取り息子とその許嫁。なぜか許嫁の娘だけが戻ったが、正気を失い、廃人同様になっていた。彼女を正気に戻すよう頼まれた又市と徳次郎だが、術が効きそうになった途端、娘は「戎島、赤面ゑびす」という言葉を残して死ぬ。
 戎島。実は徳次郎はその島の出身で、妹がまだいるらしい。不思議話収集家の戯作者・山岡百介(佐野史郎)によれば、戎島にはおびただしい数の恵比寿像が飾られ、島民は笑うことを禁じられているという。その島は流れ着く物資のおかげで豊かだが、なにやら恐ろしい予感が…。なんてったって、その島を支配しているのは、本田博太郎なのだ…。
 火野、本田に西崎みどりも加わり、「必殺シリーズ」ファンにはたまらない配役。また、著書でも不良っぷりが知られた宇梶剛士の悪辣盗賊、若者ドラマにも欠かせない存在の小日向文世の善良な番頭、さらにハードボイルド作家大沢在昌の演技にも注目。又市の御札が宙を舞い、ビシッと仕置きの技が決まる。田辺誠一は偉い!と感動の瞬間だ。

掲載2003年12月31日

「鬼平犯科帳」鬼平も、丹波が演じるひと味違う。どこか超然とした「ボス」と火盗改め方の大活躍。

(おにへいはんかちょう) 1975年

掲載2003年12月31日

 とにかく出だしから、丹波哲郎カラー。「ルパン三世」などの音楽でおなじみの山下毅雄のスタイリッシュな曲に乗せて、イラスト化された丹波鬼平がポーズを決める。タイトルも横書き。スパイ映画のようなのである。思えば、製作されたのが75年。ということは、あの「Gメン75」と同時期ってこと!? Gメンと鬼平をいっしょにやっていた丹波もすごいが、時代劇なのにその「ボス」っぽさがそのままというのもある意味新鮮。本来、江戸の情緒や味を追及していた作品だが、この鬼平は、事件解決のスピード感が光っている。立ち回りもものすごくスピーディである。小難しい動きはなしでタタタッと斬る。これもまた、この主役らしい。
 しかし、なかなか粋な人物でもあり、ドジな部下・木村忠吾(古今亭志ん朝)を可愛がり(ちなみに同心役で丹波義隆も出演)、行き着けの軍鶏鍋屋の女の子にも慕われる。第一話「用心棒」ではヒゲばかり立派で剣はからきしの浪人・高木軍兵衛(ハナ肇)を密かに助け、手柄とさせた上に「昼間ブラブラしてないで修行しろ」と道場まで世話するのである。軍兵衛は後に、鬼平の人柄を讃えるとともに「怖い人だ」と評する。優しさと厳しさの同居したのが鬼平の味なのだ。
 エンディングでは、また山下音楽ならではの口笛も堪能できる。ユニークな鬼平。

掲載2003年11月13日

「大江戸捜査網’91」時代劇の若きホープ橋爪淳を中心に隠密同心大集合。シリーズ最終作のパワーを見よ!

(おおえどそうさもう’91) 1991年

掲載2003年11月13日

「死して屍拾う者なし」名ナレーター黒沢良のキメでもおなじみの「大江戸捜査網」。杉良太郎、里見浩太朗、松方弘樹、並木史郎の後継者として颯爽と登場したのが、当時の時代劇若手のホープ橋爪淳であった。
 橋爪版「捜査網」は、90年に元締めの老中・松平定信に田村高廣、隠密同心に京本政樹、中村あずさ、隆大介を迎えてスタート。その翌年、さらにパワーアップを図ったのが、この91年版であった。
 腐敗した田沼意次時代。ご政道を正すために、松平定信(若林豪)が組織した隠密同心チーム。天竜寺隼人(橋爪)、秋草新十郎(京本)、流れ星お蝶(あずさ)、小笠原甚内(和崎俊哉)が悪と戦う。前シリーズでは尼僧に扮した中村あずさの大暴れや、他の時代劇では悪役もこなす和崎の渋い戦いぶり、ちょっと前まで隠密役がよく似合った若林豪が老中になったか・・・と感概も深い。それに全員前シリーズとは名前が違うのに、なぜか京本だけは、同じ名前で出ているという謎も考えてみたい。
 ふだんは町人・直次郎になりきっている橋爪淳の行き着けの店の女将は山本リンダ。当時、復活人気で再び「ウララー」と頑張っていた頃。そんな時代も感じつつ見ると、また楽しい。人気シリーズの最終作。

掲載2003年10月31日

「エノケンのとび助冒険旅行」日本一高いお山で金の実を食べる!名監督中川信夫のファンタジーセンスがあふれる。

(えのけんのとびすけぼうけんりょこう) 1949年

掲載2003年10月31日

 戦で荒れ果てた京の町。人形芝居を生業とするとび助(榎本健一)は、人さらいにさらわれそうになった少女・お福(ダイゴ幸江)を命がけで助けた。お福は、日本一高い山へ行けば、生き別れの母に会え、そこに生えている黄金の実を食べれば、大きな石でなぐられたとび助の頭もよくなるという。ふたりは富士山目指して、旅を始めるが、その行く手には、毒グモ、人食い鬼婆、お化けキノコなど、妖怪変化が待ちうけている。ふたりの運命は、いかに?
 漫画家・清水崑の原作を、映画化監督でもある山本嘉次郎が脚色(山本は、監督になる以前は、脚本家としても活躍していた)、それを「東海道四谷怪談」などホラーの名手として今も親しまれる中川信夫が監督。ホラーの名手とはいえ、怖さが全面に出る内容ではないため、全編ファンタジームード。手作り感いっぱいの書き割りによる背景を駆使、とび助や得意の特撮を活かした妖怪たちのシルエットが浮き上がるモノクロ映画独特の幻想的な雰囲気を作り出した。
 主演の榎本健一は、ご存じ喜劇王。親しみのない世代でも、一度見たら忘れられないお茶目さ。このエノケンが中川監督と、コンビで七作目となったのが本作品。共演には、神田正輝の母えある旭輝子。日本のファンタジーもなかなか味があると思えるはず。

掲載2003年10月17日

「大江戸捜査網’90」若きホープ橋爪淳主演。京本政樹、中村あずさ、通好みの隆大介の隠密同心が勢ぞろい!

(おおえどそうさもう’90) 1990年

掲載2003年10月17日

 私は、出会った人には「あなたの心の時代劇は何?」と質問することにしているが、その中でも最も人気の高いシリーズのひとつが、この「大江戸捜査網」だ。
 潜入、変装、早変わり、いろいろあるわりにはわかりやすいストーリー。集団捜査の面白さに加えて、全員で横一列に整列して夜の町を歩く決めシーンや「死して屍拾う者なし」の決めセリフ。元気のいい立ち回り。時代劇の面白さが詰まった構成は、シリーズを通して守られた。
 今回放送されるのは、タイトル通り、90年代に作られた最新版。前の老中・田沼意次の影響で、幕閣には賄賂が横行。腐敗ムードいっぱいの江戸の町の治安を守ろうと、身をやつしてがんばる隠密同心たち。メンバーは、葉月裕之介(橋爪淳)、秋草新十郎(京本政樹)、松原蔵人(隆大介)、花小路お光(中村あずさ)。性格はいまいち合わないメンバーであったが、捜査のチームワークはいい。
 主演の橋爪淳は、歴代隠密同心リーダー(杉良太郎、里見浩太朗、松方弘樹ら)に比べると甘さが目立ったが、その分を隆大介の重さでカバー。また、中村あずさの立ち回りは可憐とも、踊りのようともいえる独自のスタイルであった。決めのシーンの「隠密同心○○」の名乗りでは、京本政樹の早口&キラリとした視線に注目したい。

掲載2003年09月05日

「女とむらい師 べに孔雀」裏の“女とむらい師”が事件に挑む。必殺ファンはひかる一平にも注目のセクシー網。

(おんなとむらいし べにくじゃく) 1995年

掲載2003年09月05日

 風音は、女とむらい師(葬儀屋)を営む。ある日、心の臓を患い亡くなったという大店・伊勢屋のひとり娘・お初の弔い仕事がくる。お初の亡骸に手を合わせ、死に化粧を施す風音と相棒・秀次は、不審な点に気がついた。病死のはずのお初の前歯は折れ、乳房にも無残な傷跡。さらに裾をはだけると、乱暴された傷跡が。そもそも大店の娘の弔いを、小さな葬儀屋に頼むこと自体、何かあるとしか思えなかった。
 しかし、秘密に気づいたふたりは、逆に番屋に引き立てられ、仕置きされるはめになる。そこには役人たちも巻き込んだ恐ろしい真実があるはず。風音は、秀次、破戒僧の鞍馬とともに「裏の弔い稼業」に乗り出す。
 世の中との関わりを避け、ひっそり生きる美女には実は、裏のすさまじい「顔」がある。
その設定だけでもなかなかなのに、その白い素肌にはくっきりと「べに孔雀」が・・・。主演は、体当たり演技が評判の横須賀蓉美(昌美)。セクシー時代劇ではもっと活躍してほしい人である。また、必殺当時は初々しい青年のイメージだったひかる一平も、おとなの男として渋い一面を見せる。その他、共演には平沙織、西尾拓美、佐川満男など。悪い男たちを美女がビシッと退治する。日曜深夜にはVシネマ時代劇でお楽しみを。

掲載2003年07月11日

「江戸を斬る 梓右近隠密帳」“元祖”江戸を斬る!若き竹脇無我の活躍と、由比正雪・成田三樹夫の怪演に注目。

(えどをきる あずさうこんおんみつちょう) 1973-74年

掲載2003年07月11日

 浪人梓右近(竹脇無我)は、実は前将軍秀忠の実子。が、双子の弟に生まれたために、大久保彦左衛門(片岡千恵蔵)に養育され、柳生宗矩(志村喬)に剣術を指南される。
 きままに浪人暮らしをする右近は、三年ぶりに彦左衛門と再会。将軍になった兄家光と、大名・保科肥後守となった双子の兄(竹脇無我のふた役)と対面した。家光から、家康が自ら槌をふるったという宝刀(葵のご紋付き)を授かった右近は、天下のために働くことを決意。折も折、江戸では由比正雪(成田三樹夫)一派のあやしい動きが・・・。
 「桃太郎侍」もそうだが、高貴な人の双子の兄弟は、世直しヒーローとして大活躍する例が多い。梓右近も町中で事件を聞き込み、自ら解決する行動派。最近、長期に渡るうつ病を克服して復帰した竹脇無我の若々しい活躍が光る。また、成田三樹夫のこってりした悪役ぶりも、ファンにはたまらない。悪役なのにこれだけ人を引きつける。希有な役者であった。
 ほかにも、丸橋忠弥に加東大介、一心太助に松山省二、十手持ちの仏の長兵衛に大坂志郎、その娘に榊原るみなど、豪華メンバーが江戸の闇に挑む。この作品は、シリーズ化を前提にされていなかったため、視聴者から好評を得たにもかかわらず、「江戸を斬る」の幻の第一弾となった。

掲載2003年05月30日

「江戸を斬るⅢ」遠山の金さん宅に嫁姑問題勃発?松坂慶子の紫頭巾も絶好調。ゲストも見逃せない!

(えどをきるすりー) 1977

掲載2003年05月30日

 パートⅡで初登場した西郷輝彦の遠山金四郎。ふだんは町人の姿だが、悪の前ではキラリと光る町奉行。ご存じの桜吹雪と名裁きも存分に楽しめる。
 前シリーズの好評を受けて製作されているだけに、レギュラー陣のチームワークは抜群。謎の美女にして、実は徳川の姫・おゆき(松坂慶子)、金四郎の元乳母(春川ますみ)、鼠小僧次郎吉(松山英太郎)、おゆきの父・徳川斉昭(森繁久弥)・・・。この13話で、ついに金四郎とおゆきは結婚。美男美女で幸せいっぱいカップル、と思ったところへ、今度は、金四郎のお婆様うめ(千石規子)とお付き女中お咲(大山のぶ代)が同居宣言。なにかとおゆきの良妻チェックをするという、「渡る世間」的な展開になっていく。
 なんたって、おゆきのもうひとつの顔は、正義の剣士・紫頭巾。このシリーズではますます強くなってる?が、事件ともなれば夜な夜な出勤する嫁の動向にいつか、お婆様が気づくのでは?心配ではある。
なお、このシリーズでは、レギュラー陣に、渋めの成田三樹夫、熱血の和田浩二、ゲストに加藤嘉、郷鍈治、西村晃、大友柳太朗など、今はなき名優が揃う。
 事件解決だけでなく、ホームドラマ的な面白さも持つ、ナショナル劇場らしい味の明朗時代劇。

掲載2003年05月23日

「市川雷蔵 七変化!」 将軍様から、お坊様まで! 痛快作あり、問題作あり。七変化で雷蔵の魅力をたっぷり。

(いちかわらいぞう しちへんげ!) 

掲載2003年05月23日

 没後30年の今も、若い女性ファンが多い市川雷蔵。実はペリーの周囲の若い女性編集者の間でも「美しい!」と人気が高いのだ。
 その雷蔵の見事な「七変化」その1は「遊太郎巷談」。将軍家お血筋という浪人・遊太郎が、美女と大金の謎に挑む。必殺剣も飛び出して、眠狂四郎の原点を見るような一作。
 その2「中山七里」は、時代劇の名人・長谷川伸原作。気っぷのいい木場の政吉(雷蔵)が、亡き恋人にうりふたつの女(中村玉緒)のために命をかける。ニヒルな雷蔵しか知らない人には、新鮮な作品。
 その3「新選組始末記」は、まじめ浪人・山崎蒸(雷蔵)が入隊した新選組の非情なやり方に悩む。近藤勇に若山富三郎、土方歳三に天知茂という配役にも注目! 非情な男をやらせたら、天知は天下一品だ。
 その4「手討」は、あの怪談でおなじみの「番町皿屋敷」の新解釈。腰元お菊と言い交わした美形旗本・青山播麿(雷蔵)の悲劇。雷蔵は悩んだり苦悶の表情が色っぽい…。
 そのほか、おそろしい魔力を持った怪僧・道鏡に扮した「妖僧」、将軍自ら、推理して事件を解決してしまう「昨日消えた男」、一秒間に五本の手裏剣を放つという銭形平次もびっくりの浪人の「赤い手裏剣」など、ユニークな作品が登場。雷蔵の多彩な魅力で、またまたファン倍増確実だ。

ペリー荻野プロフィール
ペリー荻野

1962年愛知県生まれ。大学在学中よりラジオのパーソナリティ兼原稿書きを始める。 「週刊ポスト」「月刊サーカス」「中日新聞」「時事通信」などでテレビコラム、「ナンクロ」「時代劇マガジン」では時代劇コラムを連載中。さらに史上初の時代劇主題歌CD「ちょんまげ天国」シリーズ全三作(ソニーミュージックダイレクト)をプロデュース。時代劇ブームの仕掛け人となる。

映像のほか、舞台の時代劇も毎月チェック。時代劇を愛する女子で結成した「チョンマゲ愛好女子部」の活動を展開しつつ、劇評・書評もてがける。中身は"ペリーテイスト"を効かせた、笑える内容。ほかに、著書「チョンマゲ天国」(ベネッセ)、「コモチのキモチ」(ベネッセ)、「みんなのテレビ時代劇」(共著・アスペクト)。「ペリーが来りてほら貝を吹く」(朝日ソノラマ)。ちょんまげ八百八町」(玄光社MOOK)「ナゴヤ帝国の逆襲」(洋泉社)「チョンマゲ江戸むらさ記」(辰己出版)当チャンネルのインタビュアーとしても活躍中。