ペリーのちょんまげ ペリーのちょんまげ

掲載2006年02月16日

「阿波おどり狸合戦」狸の恩返しかラブストーリーか?予想もつかない展開に化かされてみたい。

(あわおどりたぬきがっせん) 1954年

掲載2006年02月16日

舞台は阿波の国。商売がうまくいかず、ついに今夜は夜逃げ…という大和屋茂右衛門は、みんなに追われ、あわや狸汁にされそうになっている一匹の狸・小松島の金長(黒川弥太郎)を助けた。義理堅い金長は、大和屋の丁稚に乗り移り、店の商売を建て直す…とここまでなら、「狸の恩返し物語」かと思うところだが、そうはいかない。
 なんと、この金長、次は狸の世界で修行を開始するのだ。度胸試しのために、首ひょろひょろの妖怪と遭遇したり、ほれられたお姫様を巡って恋の鞘当はあるわ、これって、妖怪映画なの? ひょっとしてラブストーリー!? そうこうするうちに、今度は「魍魎の一巻」というお宝の争奪戦が始まり、なんだかかんだと川原で大出入りになってしまうという、まるで狸に化かされているようなこの展開。「人情」「恋物語」「冒険」「股旅」、映画の要素をすべてごった煮(ひょっとして狸汁?)にしてしまったような、なんでもありのすごい内容なのである。
 しかし、狸映画のいいところは、腹鼓ひとつで槍が出ようが鉄砲が出ようが、文句が言えないゆるい明るさ。そして、最後はみんなで阿波踊りを歌って踊って、めでたし、めでたし。暗いニュースが多い昨今、狸映画の偉大さに改めて気づく方も多いはず。大まじめに狸を熱演する黒川弥太郎にも注目。

掲載2006年01月11日

「荒木又右衛門 決闘鍵屋の辻」高橋英樹の豪快な立ち回りが炸裂。若き竹内力のチョー嫌味意地悪演技も光る。

(あらきまたえもん けっとうかぎやのつじ) 1993年

掲載2006年01月11日

荒木又右衛門といえば、有名な剣豪として数多く映像化されているが、今回はその家庭環境や心情もていねいに描き、苦渋の選択としてあだ討ちに臨む男を描く。
 愛妻家で多くの人から慕われる荒木又右衛門(高橋英樹)のもとに源太夫(武田真治)が、河合又五郎(竹内力)に惨殺されたことを知る。又五郎は、又右衛門の親友・河合甚左衛門(夏八木勲)夫婦の身内の上に、悪人旗本グループにかくまわれてしまう。悩んだ末にあだ討ちに向かう義弟・渡辺数馬(西村和彦)の助太刀を決意する又右衛門。やがて、そのあだ討ちは、「旗本VS大名」という大騒動に発展...。
 ご存知、荒木又右衛門の三十六人斬りといわれる大あだ討ちの物語。豪快な立ち回りで知られる高橋英樹ならではの迫力が活かされている。が、池波正太郎の原作にある、家庭人としての又右衛門、旗本・大名の意地の張り合いなど、背景も描かれていて興味深い。
 製作は88年で、当時の若手、西村、武田、竹内の力演も光っている。特に「俺が出世できないのは、お前が悪口を言ったせいに違いない!!」と、源太夫にいちゃもんをつけ、とうとう相手を殺してしまう竹内力はとても若手とは思えないネチネチ感。大久保彦左衛門(大滝秀治)に、「又五郎、いかにも悪相じゃのう!」と言われてるし。現在の竹内力の貫禄がすでに?この点にも注目。

掲載2005年12月15日

「女ねずみ小僧スペシャル3 狙われたからくり城!史上最悪のダイハード」忍び込んだ城がテロリストに占拠!三谷幸喜脚本。笑いの仕掛けも満載長編。

(おんなねずみこぞうすぺしゃる3 ねらわれたからくりじょう!しじょうさいあくのだいはーど) 1995年

掲載2005年12月15日

少々ドジな男ねずみ留吉(伊武雅刀)が姿を見せないと「留がいないと仕事がやりやすいねえ」などとのんきなことを言っていた女ねずみ小僧お凛(大地真央)。しかし、読めないような文字で書かれた書置きを見つけ、部下ねずみお民(森下瑤子)とともに南国鴨田藩の城に隠し金を探しに行くことに。
 到着してみれば、そこはさすが南国。農民は見たこともない作物を運んでいた。甘い香りのする食べ物を何かと尋ねれば、「バナンナ」。つまり、バナナ! いったいどこまで行っちゃったのか、ねずみ一団だが、侵入した城でビシビシ床など磨かされて働かされ、やっと隠し金を探そうと思ったら、なんと城にテロリスト集団が乱入。占拠してしまった。
 からくりだらけの城はうっかりすると、すぐに床下へ転落の目にあうが、女ねずみはいつもの機転で大活躍。
 テロリストリーダーの中野誠也、中条きよしがとぼけた家老役で好演。また、留吉が世話になる不思議な人物・岸部シローが、脱出できない城の中で奇怪な食べ物を開発するなど、本筋と関係ないところに仕掛けがいっぱいなので要チェック。エッセイでは時代劇執筆にあたり、悩んだという三谷脚本だが、スペシャル第三弾となる本作では大いにふっきれた感がある。

掲載2005年11月03日

「大奥'83」第17話「女の情に蛇が棲む」 いつの時代も「大奥」はドラマチック!可憐な大場久美子に魔性の罠が迫る。

(おおおく) 1983年

掲載2005年11月03日

現在、地上波では、「大奥 華の乱」が放送中。内山理名、藤原紀香、小池栄子らが華麗なバトルを繰り広げられている。
 これまで多くのドラマを生んできた「大奥」だが、カジュアルなドラマがもとはやされた80年代に、ずっしり貫禄を見せたのが、「大奥83」。関西テレビ開局25周年の記念作品らしく、山田五十鈴、草笛光子ら大御所から、紺野美沙子、斉藤慶子ら当時のアイドル女優も多数出演。ちなみに、現在の「大奥 華の乱」で、わがまま将軍綱吉を溺愛するママ桂昌院役で出演している江波杏子は、「83」の31話にも出演。ナレーションの岸田今日子とともに「大奥ダブルキョウコ」として君臨しているのである。さすが。
 一話完結スタイルの「83年版」17話は、大奥に奇怪な面をつけた女が出没。「もののけ?」と大騒ぎになる中、下働き女中お波(大場久美子)にも魔の手が迫る。お波は、同郷のおせん(木の実ナナ)や怖い顔の御局様(野際陽子)に相談する。大奥にはかつての火事で火傷を負い、面をつけた女たちがひっそり暮らしていると聞き、事情を探るが、事件はますます奇怪な展開に…。「妖怪人間ベム」に出てきた女妖怪のようなすごい迫力で、大奥の魔性が登場。エロあり、妖気あり、現在よりもちょっとアダルト?な大奥を楽しめる。

掲載2005年10月27日

「暴れん坊将軍Ⅲスペシャル みちのく血判状!魔性の谷の決戦!!」上様、風雲渦巻く東北出張。魔性ゲストは川島なお美? いえ、清純演技!

(あばれんぼうしょうぐんすりーすぺしゃる みちのくけっぱんじょう!ましょうのたにのけっせん!!) 1989年

掲載2005年10月27日

現在、全国ツアーの真っ只中、プライベートも充実して、早くも年末は紅白連続出場!?などと今年も華やかな話題いっぱいの暴れん坊将軍こと松平健さま。そのスペシャルシリーズも、ついに東北出張編となる。
 人柄が評判の三春藩主(荒木しげる)が、吉宗(松平)の共をして颯爽と狩りをするシーンから物語はスタート。しかし、彼らの狩りの様子に、吉宗のライバル尾張様(中尾彬)は、「わしは殺生は好まぬ」と嫌味たらたらだ。
 その三春藩主が暗殺され、藩では国境問題でモメている隣の白河藩のしわざだと騒ぎになる。藩主の奥方(芦川よしみ)も、「いつか 殿のおうらみを果たさねば」と怖い顔。そして、藩士代表は清水健太郎、その妹は川島なお美。ここまで役者がそろったんでは、タダではすまない。上様は、「謎の横穴」があるという魔性の谷に自ら出張を決意!
 雷雨の中、ぬーっと現れる清水健太郎は、この人にしか出せない迫力。しかし、タイトルに「魔性」とあっても、今回は「魔性の女」とは縁がない。現在は、妖艶ムードいっぱいの川島なお美は、今回は清純派の武家娘で華を添える。ちなみに三春藩主役の荒木しげるは、「仮面ライダーストロンガー」にして、「暴れん坊将軍Ⅱ」では、上様直属の隠密・才蔵を演じていた。今回は、若き殿様に出世して、再び登場する。

掲載2005年10月14日

「おんな牢秘抄」おんなの悲しみ渦巻く牢の中!江波、白川、演技派女優の体当たり演技。

(おんなろうひしょう) 1983年

掲載2005年10月14日

愛した男をかくまったため、自分も牢に入れられたおけい(江波杏子)、ふてぶてしい牢名主(白川和子)ほか、ざまざまな業を背負ったおんなたちの吹き溜まりといえるおんな牢。したたかなおんなたちは牢番のおばばに金を与えて、娑婆の情報や、買い物を頼んでいた。ある日、おけいの恋人が刑場に送られることに。手鏡に映し出されたその横顔を見て、ぐっと悲しみをこらえるおけい。そんな面々が、恋人の罪を背負って拷問に耐える無実の娘(大場久美子)を牢から脱出させようと試みる。決死の作戦は成功したように見えたが…。事件は意外な方向に進んでいく。
 女同士のいじめ、密告、同性愛とディープな展開のなか、きりっとした美しさを見せる江波、堂々とした白川、ちんぴら演技が光る伊佐山ひろ子らの体当たり演技は見もの。
 伊佐山は、今年のヒットドラマ「女系家族」でも、ねっとりした愛人ぶりを見せていたし、江波は「大奥」で、息子綱吉を溺愛する生母・桂昌院を怪演。存在感を見せつけた。
 私は「大奥」の記者発表にでかけたが、藤原紀香、小池栄子、高岡早紀らいならぶ大奥女優の中でも、もっとも貫禄があり、おしゃべりだったのは、なんと江波桂昌院様だった!素顔は意外に気さくなお方なのか…。なお、83年制作の「おんな牢」と少しも変わらない若さにも二度びっくり。

掲載2005年10月06日

「暴れん坊将軍Ⅱスペシャル 燃える江戸城!男たちの一番纏!」 連続放火でついに江戸城も炎上!?上様の華麗な纏さばきをお見逃しなく。

(あばれんぼうしょうぐんつーすぺしゃる もえるえどじょう!おとこたちのいちばんまとい!) 1987年

掲載2005年10月06日

話はいきなり放火集団による付け火の現場からスタート。相次ぐ火災で大名火消しと町火消しのトラブルも起こり、大名の中には「火事場は武士が命をかける現場。町人などにうろうろされては」と、町火消し不要論まで出てしまう。「みんなで力を合わせて消火にあたるのだ!」と、町火消しを後押しする大岡越前(横内正)も、打つ手がない。そんな中、またもや起こった火災で、ついに江戸城にも火の手が…。
 なんといっても見所は、火事場となって江戸城での徳川吉宗(松平健)の大活躍。なんとモノトーンカラーの火事装束に身を包み、城の屋根にのぼったかと思えば、め組の頭辰五郎(北島三郎)に「纏を振らせてくれ!!」上様自ら纏を振りまくるというすごい展開。ただし、側用人のじい(有島一郎)は、「困ったお方で…」と苦い顔なのであった。
 放火事件の黒幕と、早苗(高橋洋子)・政之丞(太川陽介)の敵討ちがからみながら、事件を追う上様。本物のはしご乗りの見事な技も正月スペシャルらしい雰囲気を盛りあげる。
 それにしても、北島御大の歌う主題歌が「炎の男」とは、ぴったりしすぎ! 今年も、「マツケンサンバⅢ」でノリノリの上様。「暴れん坊将軍」復活もぜひお願いしたい!

掲載2005年08月25日

「女盗賊忍び舞い」艶っぽい真野響子の女盗賊。彼女を守り、命をかける男たちが魅せる。

(おんなとうぞくしのびまい) 1983年

掲載2005年08月25日

真野響子の時代劇といえば、平岩弓枝原作の「御宿かわせみ」の美人若女将が知られているが、本作ではイメージを一新。なんと男どもを引き連れる盗賊団の親分である。
 ふだんはきっぷがよくて舞の名手として人気のある芸者おこう(真野)には、「おとっつあん」と呼ぶ寺の住職(内田朝雄)がいる。この「おとっつあん」こそ、かつては大盗賊といわれた人物なのだが、現在はみなしごを寺に引き取り、面倒をみる好々爺だ。おこうとその仲間たちは、寺の維持費を稼ぐため、将軍吉宗のやり方に反発するため、大胆な「人助けの盗み」を実行。謝礼をもらう裏稼業を繰り返していた。あるとき、「将軍の子を盗む」という大仕事が舞い込む。陰謀のにおいがするこの仕事に、仲間は反対するが、将軍に遺恨のあるおこうは、強気で引き受ける…。
 それぞれ表家業を持ちながら、おこうを助ける男盗人たち、参謀格の峰岸徹、動きの素早い三浦浩一、心ねのやさしい下條アトム、女好きの小野ヤスシ。人助けの盗みに誇りを持つ彼らは、どす黒い陰謀に巻き込まれ、それでも必死に女こどもを守ろうと命をかける。女性主役の時代劇としては、かなりハードな展開。ついに単独で江戸城へ乗り込むおこう。響子のきりっとした女盗賊姿も見ものだが、彼女を守ろうとする仲間たちの活躍からも目が離せない。

掲載2005年08月18日

「家光が行く」暴れん坊将軍の原点はここに?好青年竹さんこと仲雅美が町を行く!

(いえみつがいく) 1972年

掲載2005年08月18日

三代将軍家光といえば、名君として知られる。ただし、この番組の家光は、まだ正式に将軍にはなっておらず、「じい」こと大久保彦左衛門の屋敷に遊びに行っては、着流しの「竹さん(本名は竹千代)」に変身。町に飛び出す。
 主演は仲雅美。仲は、由美かおると共演した映画「同棲時代」でも話題になった70年代のイケメンスターである。「家光」であらためて見てみると、さわやかさの中に、地位を偽って町にいる苦しさも同時に表現。
 なぜか錦鯉をバックに殿様姿で登場するオープニングでは、「竹さん」とは違う気品も見せている。また、自ら歌う主題歌(音楽は大野雄二が担当)では「愛して別れてもいいじゃないか。若いときは感じやすいよー」などと若者の心情を明るく歌い上げる。まさに青春スターという感じである。
 共演は大久保彦左衛門にハナ肇、家光の初恋?の相手に青春ドラマのアイドル吉沢京子、影のある友人に目黒祐樹ら。ナレーターは広川太一郎で、いつものぶっちゃけではなく、真面目なトーンで語っている。最終回には「将軍となってはもう町へは出られない」と悩む家光だが、その後、八代将軍吉宗(松平健)は、「将軍になってから町へ飛び出す」という逆パターンを決行。人々から「暴れん坊将軍」と呼ばれるようになることなど、この家光は知る由もなかったのである。

掲載2005年07月20日

「女ねずみ小僧」大地真央率いる女ねずみ小僧軍団!意外な人も意外な役で出てました!?

(おんなねずみこぞう) 1989年

掲載2005年07月20日

「女ねずみ小僧」といえば、70年代に小川真由美主演で一世を風靡したシリーズ。艶っぽい美人が、実は名うての女盗賊で、悪党たちをぎゃふんと言わせる。痛快な展開だった。
 その跡をしっかり受け継いだのが、宝塚トップスターだった大地真央。泥棒装束の隙間からもくっきり見える濃いまつ毛と美白素肌で、伝統の艶っぽさはそのままに、今回は手下の女ねずみ軍団を率いるねずみのトップスターとしての登場だ。
 世間からは忘れられた赤目党の残党であるお凛(大地)は、自分たちを使い捨てにした幕府を嫌悪。一泡吹かせようと、義賊活動を続けているのだった。その女ねずみたちの大お頭は、東野英治郎。初代黄門様も、女ねずみたちの元気のよさには、例の笑顔で見守るしかなかったらしい…。
 お凛に気がある男ねずみに伊武雅刀、正体を知りながらお凛に近づく南町奉行に露口茂と、意外な顔ぶれがそろったが、よく見ると、ねずみをしつこく追い回す同心(橋本功)の下っ引きは、あの笑福亭笑瓶! トレードマークのメガネがないのではじめは誰かと…。
 それにしても、風魔の隠し財宝のありかを記した秘密の地図(魚のうろこにかかれてふだんは目の中に隠してある!)もあっさり返しちゃうし、女ねずみたちは欲がなさすぎ!? 彼女らの将来が気にかかる。

ペリー荻野プロフィール
ペリー荻野

1962年愛知県生まれ。大学在学中よりラジオのパーソナリティ兼原稿書きを始める。 「週刊ポスト」「月刊サーカス」「中日新聞」「時事通信」などでテレビコラム、「ナンクロ」「時代劇マガジン」では時代劇コラムを連載中。さらに史上初の時代劇主題歌CD「ちょんまげ天国」シリーズ全三作(ソニーミュージックダイレクト)をプロデュース。時代劇ブームの仕掛け人となる。

映像のほか、舞台の時代劇も毎月チェック。時代劇を愛する女子で結成した「チョンマゲ愛好女子部」の活動を展開しつつ、劇評・書評もてがける。中身は"ペリーテイスト"を効かせた、笑える内容。ほかに、著書「チョンマゲ天国」(ベネッセ)、「コモチのキモチ」(ベネッセ)、「みんなのテレビ時代劇」(共著・アスペクト)。「ペリーが来りてほら貝を吹く」(朝日ソノラマ)。ちょんまげ八百八町」(玄光社MOOK)「ナゴヤ帝国の逆襲」(洋泉社)「チョンマゲ江戸むらさ記」(辰己出版)当チャンネルのインタビュアーとしても活躍中。