ペリーのちょんまげ ペリーのちょんまげ

掲載2020年09月11日

「司馬遼太郎の功名が辻」
戦国のナイスカップル泣き笑いを檀ふみと宅麻伸の顔合わせで描く
気弱夫を平侍から一国一城の主に出世させた山内一豊の妻・千代の知恵と作戦とは

(しばりょうたろうのこうみょうがつじ ) 出演者:檀ふみ/宅麻伸/根津甚八/辺見えみり/中村梅雀/火野正平/樹木希林 ほか  1997年

掲載2020年09月11日

 戦国乱世、わずか五十石の貧乏侍から土佐の大名にまで出世した山内一豊(宅麻伸)と妻・千代(檀ふみ)の涙と笑いの物語。

 一豊は、戦でも活躍できず、世渡りもアピールも下手。そんな一豊に嫁いだ千代だが、夫が結婚後、15日も自分に触れることもできない気弱さとやさしさを知り、一生、この人を支える決心をする。しかし、織田家では、カリスマの信長のもとに前田利家、柴田勝家など個性的な強力武将が集まっており、一豊はますます不利に。千代は、足軽から頭角を現していた木下藤吉郎に目をつけて、一豊を藤吉郎に近づける。そして自分は武将の妻たちとうまくつきあう。やがて正直で努力家の千代は信長の妹・お市らから信頼され、失敗ばかりの一豊を助けることに。虎の子のお金で名馬を買って、出世につなげた逸話は有名だ。

 原作は司馬遼太郎が、女性を軸にユーモアをまじえて戦国を描いた人気作。檀ふみは知的でチャーミング。白無垢の花嫁姿は可愛らしい。二時間ドラマでも恐妻家を演じる宅麻伸は、二枚目なのにどこかおとぼけの一豊がぴったり。女忍びの小りん(辺見えみり)と浮気して、おろおろする姿はなかなかの熱演だ。奈良岡朋子の語りもホームドラマ的雰囲気を盛り上げていい味を出す。親を亡くし、愛するわが子まで失う千代の深い悲しみと夫婦で苦境から立ち上がる勇気に励まされる。

※「遼」の正式な表記は"しんにょう"の点が2つ

掲載2020年06月19日

「次郎長三国志 勢揃い二十八人衆喧嘩旅!」
北大路欣也の颯爽とした親分と、片岡鶴太郎石松ら個性豊かな子分が大暴れ
石立鉄男の黒駒の勝蔵、高橋英樹の大前田英五郎などオールスター作品の楽しさ満載

(じろちょうさんごくし せいぞろいにじゅうはちにんしゅうけんかたび! ) 出演者:北大路欣也/高橋英樹/片岡鶴太郎/池上季実子/勝野洋/船越英一郎/大仁田厚/佐藤B作/竹脇無我 ほか  1998年

掲載2020年06月19日

 甲州・高尾神社の祭礼の日、猿屋の勘助(小沢象)の賭場で、清水一家の法印大五郎(阿南健治)、桶屋の鬼吉(梨本謙次郎)、関東綱五郎(山下規介)らがいかさまを見破った。猿屋一家と喧嘩になる寸前、バキューン!というピストルの音とともに現れたのは、売り出し中の次郎長(北大路欣也)だった。その場は甲州を取り仕切る黒駒の勝蔵(石立鉄男)の「この場は俺に免じて治めてくれ」という仲裁でおさまった。「次郎長さん、噂通りのいい器量だ」「大物になるよ」と語った勝蔵は後年、次郎長の宿敵となって現れる。

 ご存知、村上元三の原作を「緋牡丹博徒」「トラック野郎」シリーズの鈴木則文が脚色。颯爽とした親分と、大政(勝野洋)や小政(櫻木健一)、追分の三五郎(船越英一郎)、三保の豚松(大仁田厚)など、個性豊かな子分が勢ぞろい。中でもいきなり次郎長に斬りかかったかと思ったら、すらすらと仁義をきり、子分となった森の石松(片岡鶴太郎)は、一家の人気者だ。その石松と関わる七五郎(佐藤B作)とお園(とよた真帆)夫婦や、身受山の鎌太郎(竹脇無我)らの人間ドラマもみどころとなる。女優陣では次郎長を支える恋女房のお蝶(池上季実子)、気風のいい投げ節お仲(多岐川裕美)、時代劇好きというPUFFYの大貫亜美が町娘あみ役で登場しているところも面白い。そして、ここ一番で貫禄を見せるのが、大前田英五郎の高橋英樹。オールスター時代劇の楽しさと熱気があふれる長編。

掲載2020年04月24日

「戦国BASARA -真田幸村編-」('13年花組 東急シアターオーブ)
スタイリッシュな武将たちが豪快に戦い、歌い、舞台を駆ける。
大ヒットゲームと宝塚歌劇のコラボによる戦国ストーリー。

(せんごくばさら -さなだゆきむらへん-(’13ねんはなぐみ とうきゅうしあたーおーぶ) ) 出演者:蘭寿とむ/蘭乃はな/明日海りお ほか  2013年

掲載2020年04月24日

 群雄割拠の戦国時代、もっとも過酷な戦いだったとも伝わる「川中島の合戦」。そこで幾たびも激突した甲斐の武田信玄と越後の上杉謙信。その信玄をお館様と慕い、戦いに身を投じたのが、若き闘将・真田幸村だった。

 2005年の発売以来、大ヒットを記録している人気ゲームを題材に13年、宝塚歌劇・花組がミュージカルとして上演した作品。主演は花組トップスター蘭寿とむだ。幸村はじめ、六本の刀を使いこなし、英語も使う伊達政宗(春風弥里)などスタイリッシュな戦国武将が次々登場。衣装も幸村は情熱の赤、ライバルの政宗は青、『私は強いですよ』と冷静に言う上杉謙信(明日海りお)は白とわかりやすく、全員キャラがたっている。幸村の二本槍は長くて重く、アクションは大変だったという。また幸村が馬で跳んだり、天井まで届く炎の映像、衣装と刀、槍のLEDライトにより暗闇で幸村と謙信が光の輪郭になって戦うシーンなどは、宝塚歌劇にはあまりない演出。ダイナミックな表現も見逃せない。さらにゲームにはないオリジナルキャラクターいのり(蘭乃はな)と幸村、謙信と女忍者かすが。宝塚歌劇らしいラブロマンスも見所だ。舞台全体がバラに包まれる美しい場面はもともとゲーム原作者が宝塚をイメージして描いたもの。しかし、いのりには哀しい秘密が...。

 なぜ戦うのか。若く情熱的な幸村が悩みながら成長し、歌い上げる姿に酔いしれたい。

掲載2020年04月17日

「宿命剣 鬼走り」
藤沢周平の"隠し剣"シリーズに萬屋錦之介が堂々と挑んだ長篇。
亡き息子を思い、宿敵と対決する主人公が見せる「鬼走り」に注目!

(しゅくめいけん おにばしり) 出演者:萬屋錦之介/木村理恵/音無美紀子/大木実/佐藤仁哉/真行寺君枝/柳川慶子 1981年

掲載2020年04月17日

宿命剣 鬼走り
「宿命剣 鬼走り」

 元大目付の小関十太夫(萬屋錦之介)は、息子・鶴之丞(荒木しげる)に家督を譲り、悠々自適の日々。しかし、鶴之丞は果し合いで亡くなる。その裏には、かつて十太夫が御用商人「山城屋」との不正を糾弾し、罷免に追い込んだ元勘定奉行・伊部帯刀(大木実)と息子・伝七郎(佐藤仁哉)の罠があった。怒った十太夫は、息子の仇討ちのために立ち上がる。

 原作は藤沢周平の"隠し剣"シリーズの一篇「宿命剣 鬼走り」。脚本は「岡っ引きどぶ」の下飯坂菊馬と「仁義なき戦い」の笠原和夫。この物語のみどころは、十太夫の家族の物語でもあるところ。十太夫には、尼僧となったかつての思い人・香信尼(音無美紀子)がいて、妻とは不仲。また、尼の存在が息子の死にも影響していたのだった。夫を非難する妻に「そなたに何がわかる」「死んだ者のことはあきらめよ」と告げる十太夫。一方で「生まれて五十年、一度も己の心のままに生きたことがなかった」と、振り返る一面もある。帯刀との一騎打ちを決め、香信尼に会った十太夫は、彼女からある告白をされるのだが...。男の心中の複雑さを錦之介は少ない言葉の中に表現してみせる。

 クライマックスの見せ場はなんといっても、十太夫ただひとりが受け継ぐ「鬼走り」の技。独特の構えで走り、跳ぶ!50歳に近い(その年齢でこの貫禄はすごい!)錦之介のただならぬ動きに注目したい。

掲載2020年04月10日

「切腹」
武家社会の虚飾と非情を描き、大きな反響を呼んだ小林正樹監督の名作時代劇。
仲代達矢、三国連太郎、丹波哲郎の鬼気迫る表情とミステリーのような展開に注目!

(せっぷく) 出演者:仲代達矢/三国連太郎/石浜朗/岩下志麻/丹波哲郎/中谷一郎/井川比佐志/青木義朗 ほか 1962年

掲載2020年04月10日

 寛永七年、江戸・外桜田町の井伊家上屋敷の表玄関に、元芸州広島・福島家の家臣・津雲半四郎(仲代達矢)と名乗る浪人が現れ、玄関先を借りて切腹したいと願い出る。それを聞いた井伊家家老・斎藤勘解由(三国連太郎)は、過日、同様の申し出をした同じく元芸州広島・福島家の浪人・千々岩求女(石浜朗)の話を始める。やがて明かされる半四郎の真意。「罪なくして主家を失くし、奈落の底であえぎ、うごめいている浪人者の悲哀」を激しく訴える半四郎を冷たい目で見つめながら、「世迷言はそれだけか」と突き放す勘解由。半四郎は武装した井伊家の武士たちに包囲されていた。

 江戸期には生活に困窮し、庭先で切腹を願い出る武士が実際におり、武家はいくらか金を渡して引き取らせる場合が多かった。強請のようなやり方だが、井伊家では本当に切腹させたとことがあったという。その説をもとに滝口康彦が小説「異聞浪人記」を執筆。脚色・橋本忍、演出・小林正樹監督、音楽・武満徹で映画化された。心優しい求女の悲惨極まる最期、仲代達矢、三国連太郎の鬼気迫る対峙場面、井伊家家臣沢潟彦九郎(丹波哲郎)との壮絶な戦いなど、強烈なシーンとミステリーのような展開で観る者をぐいぐいと引っ張っていく。公開は1962年。武家社会の虚飾、非情を描いた異色作品としてカンヌ国際映画祭審査員特別賞など国内外で高く評価された。

掲載2020年03月20日

「さらい屋五葉」
気弱な剣豪が誘われたのは謎の誘拐団「さらい屋五葉」
独特のトーンとほろりとくる展開で大反響のオノ・ナツメ原作アニメ

(さらいやごよう ) 出演者:浪川大輔/櫻井孝宏/大浦冬華/高塚正也/内田夕夜/木下浩之/高梁碧/宝亀克寿 ほか  2010年

掲載2020年03月20日

 長屋暮らしの浪人・秋津政之助は、どんな貧乏でも力仕事はしないと用心棒の口を探すが、気弱な性格が出てしまい、いつも失業してしまう。ある日、空腹のあまり「うまそうな団子だ...」とつぶやいた政之助に団子を差し出した男がいた。「イチさん」と呼ばれるその男(弥一)は、政之助に用心棒を頼み、取引先に同行させる。弥一は、いきなり二人の浪人に斬りつけられるが、政之助があっという間に敵を撃退。その腕を見込まれた政之助は、弥一や酒屋の主・梅造、美人のおたけ、飾り職人・松吉の「さらい屋五葉」の仲間になる。はじめは誘拐に抵抗のあった政之助だったが、次第に彼らの優しさや、彼らが人助けをしていることに気づき、見方を変えていくが...。

 松山ケンイチ主演でドラマ化された「ふたがしら」でも知られるオノ・ナツメの原作をアニメ化。監督・シリーズ構成は「魔法の天使クリィミーマミ」「忍たま乱太郎」などの演出を担当した望月智充。キャラクターデザインは「うさぎドロップ」「黒子のバスケ」の中澤一登。抑制のきいた独特のトーンと美しい画像、誘拐の裏に潜む人間模様の描写で大きな反響を呼んだ。なぜ彼らが「さらい屋」を始めたのか。元盗賊の梅造、岡場所にいたおたけなど、それぞれに背景があるが、特に終盤、弥一の哀しい過去が明らかになる。そしてまた、団子が。心憎いシーンがいろいろ用意されている。

掲載2020年02月07日

「そろばん侍 風の市兵衛」
向井理が経理チェックと剣の腕でスカッとお悩み解決
心中、敵討ち、不正、裏金...お金から始まる事件の真相を追え!

(そろばんざむらい かぜのいちべえ ) 出演者:向井理/原田泰造/橋本マナミ/渡辺いっけい/筒井道隆/山本千尋 ほか  2018年

掲載2020年02月07日

 文政期。長身の二枚目、唐木市兵衛(向井理)は、口入屋「宰領屋」(渡辺いっけい)に紹介された武家や商家に期間限定で雇われる経営コンサルタント「渡り用人」として働く。実は市兵衛の兄はやり手の筆頭目付・片岡信正(筒井道隆)なのだが、わけあって家を出た過去があるのだった。お金にまつわる相談を受ける市兵衛は、その裏に深い闇がからんでいることを探り出す。時に命まで狙われる雇い主を守るため、市兵衛は「風の剣」と呼ばれる剣の腕で立ち向かう。

 原作は辻堂魁の人気小説。三つのエピソードが三話ずつ三人の脚本家によって描かれる。大河ドラマ「麒麟がくる」の脚本家・池端俊策による第一部では、遊女と心中し、借金を遺した武士の未亡人(村川絵梨)と息子(鈴木福)を助ける市兵衛。その心中の裏には、奇怪な商人や天文方の侍、さらには異国の気配まで...。「父上のご無念を晴らしたい」という鈴木の一途な姿が胸を打つ。また、最終話では幕府上層部まで巻き込む大事件に兄弟で挑むことになる。みどころのひとつは常に冷静沈着な市兵衛が見せる「風の剣」。リーチの長さを活かし、しなやかに伸びる剣が敵を討つ。口の悪い町奉行所同心の鬼渋(原田泰造)とは同じ事件を追うことが多い市兵衛だが、なぜかともに風呂に入る場面も。異国の女殺し屋(アクション女優・山本千尋)との最終決戦もみもの。

掲載2019年10月25日

シネマ歌舞伎「東海道中膝栗毛〈やじきた〉」
幸四郎(当時・染五郎)と猿之助が飛ぶわ、転ぶわ、騙されるわの珍道中
弥次喜多ついにラスベガス進出!? 大笑いで大入り満員の人気歌舞伎をシネマで魅せる

(とうかいどうちゅうひざくりげ〈やじきた〉 ) 出演者:市川染五郎(現・松本幸四郎)/市川猿之助/市川右團次/市川笑也/松本金太郎(現・市川染五郎) ほか  2017年

掲載2019年10月25日

 酒と女が大好きな弥次郎兵衛(松本幸四郎・当時は市川染五郎)は、眉毛も端っこがピョンピョンはねて、いかにも落ち着きがない男。一方、博打好きの喜多八(市川猿之助)の眉毛もでれっと下がって締まりがない。そんな二人がひょんなことから金を手にして「それを手ずるに」とお気楽な伊勢参りの旅に出る。だが、さっそく怪しげな連中と関わることに。茶屋女にして実は女盗賊のお新(坂東新悟)やら、闇金利太郎(片岡亀蔵)、白黒しましま模様の眉毛をした盗賊の頭・白井髭左衛門(市川右團次)。なんと、物の怪関係の十六夜(中村壱太郎)まで現れる。そんな中、親の病気平癒を願う殊勝な少年、梵太郎・政之助のため、彼らを引き連れた侍になりすます弥次喜多。なのにすっかり宴会で酔っ払い、とんでもないことに。さらには、ラスベガスにまで行っちゃうって、どういうこと!? 詳しくは読売屋文春(市川弘太郎)に聞け!

 颯爽とした二枚目や大暴れヒーローもいいけれど、とにかく楽しい作品も歌舞伎にするべし!と意気投合した幸四郎と猿之助が、大暴れ。花火で飛ばされて宙乗りし、くじらの背中で噴射を受け、ついには本水も浴びまくり。連日満員御礼となった人気演目をシネマ用に細かいカット割りをして見やすく編集。アップも多用して、役者の表情がバッチリ見えるのもミソだ。歌舞伎の可能性はどこまで広がるのかとわくわくする珍道中。

掲載2019年10月11日

「ささら笹舟-明智光秀の光と影-('00年雪組 宝塚バウホール)」
明智光秀には影武者がいた!ふたりの間で揺れる妻の恋情と苦悩
本能寺の変の意外な真相にも迫る宝塚歌劇団・雪組による斬新な人物伝

(ささらささぶね-あけちみつひでのひかりとかげ-('00ねんゆきぐみ たからづかばうほーる) ) 出演者:貴城けい/紺野まひる ほか  2000年

掲載2019年10月11日

 戦国乱世、斬新な考えとカリスマ性で快進撃を続ける織田信長(箙かおる)。しかし、信長は明智光秀に本能寺で討たれる。その光秀も悲劇的な最期を遂げたといわれるが...。ある日、旅の雲水に光秀を討ったという農民が事の顛末を語り始める。光秀(貴城けい)は、信長からの理不尽な命令に耐えてきたが、徳川家康饗応での失態を咎められ、額を打たれる仕打ちをされた。それを機に、光秀は自分の影武者の妻木幸四郎(貴城・二役)に後を託し、姿を消してしまった。うりふたつの幸四郎を影と見破るものはいなかったが、唯一、光秀の妻・煕子(紺野まひる)だけは彼が誰か知っていた。いつしか煕子と幸四郎は心を通わせることに。そんな折、幸四郎のもとにある密勅が光秀により届けられた。

 貴城は、光秀自身の苦悩とともに影である幸四郎の心の痛みを表現。紺野もふたりの間で揺れる女心を歌い上げる。また、お調子者の羽柴秀吉(未沙のえる)もいい味。謎の多い本能寺の変の黒幕については、足利義昭とか、イエズス会とか、さまざまな説があるが、本作は正親町天皇が関与したとの説をとり、斬新な光秀像を描き出した。信長は足利義昭らを追いやるために朝廷の権威を利用したとも、財政難から脱した正親町天皇は信長を疎んじていたともいわれる。本作の意外な結末を観ると、本能寺の変の印象も変わりそうだ。

掲載2019年09月20日

「さざん花の女」
つらい過去を持つ芸者と藩の改革を目指す気鋭の若侍の身分違いの恋のゆくえは
人を信じることの大切さとは? 山下耕作監督が秋吉久美子主演で描く山本周五郎の名作

(さざんかのおんな ) 出演者:秋吉久美子/隆大介/鈴木瑞穂/内藤武敏/山本ゆか里 ほか  1987年

掲載2019年09月20日

さざん花の女
「さざん花の女 」
©東映

 芸妓の八重(秋吉久美子)は、少女だったころ、さざんかの花の下である若者と出会った。しかし、彼女は貧しさのため、芸妓となり、酔客の相手をする日々だった。それでも、暇を見つけてさざんかの花を絵に描いていた八重は、ある日、江戸から戻ったばかりの若侍と出会った。後日、酒の席で再会した彼は、城代家老の跡取り息子・結城新一郎(隆大介)だとわかる。その席で、八重が大切にする母の形見の三味線を、新一郎の連れ(平泉成)が踏みつぶすのを見た新一郎は、「すまなかった」と彼女に謝り、ふたりは恋に落ちる。芸妓仲間からは漢学や絵を描くことで陰口を言われ、「私とは違い過ぎる」と悩みながらも、「自分を信じて待っていてくれ」と妻にするという新一郎の言葉を頼りに生きる八重。そんな彼女に新一郎の伯父の桑島(鈴木瑞穂)が身を引いてくれと頼みに来る。一方、藩の改革を目指す新一郎の立場も苦しくなっていくが...

 ここまでなら、身分違いの悲恋だが、この後、八重の運命は意外な方向に動き出す。秋吉久美子は、少女のみずみずしさとおとなの女の色気の両方を感じさせて美しい。また、彼女にからむ悪侍の平泉、姉さん芸妓(佐野アツ子)ら周囲の人々もどこかコミカルで面白い。人間をあたたかく見つめた山本周五郎の名作を映画「花と龍」など花にこだわったといわれる山下耕作監督がしっとりと映像化した。

ペリー荻野プロフィール
ペリー荻野

1962年愛知県生まれ。大学在学中よりラジオのパーソナリティ兼原稿書きを始める。 「週刊ポスト」「月刊サーカス」「中日新聞」「時事通信」などでテレビコラム、「ナンクロ」「時代劇マガジン」では時代劇コラムを連載中。さらに史上初の時代劇主題歌CD「ちょんまげ天国」シリーズ全三作(ソニーミュージックダイレクト)をプロデュース。時代劇ブームの仕掛け人となる。

映像のほか、舞台の時代劇も毎月チェック。時代劇を愛する女子で結成した「チョンマゲ愛好女子部」の活動を展開しつつ、劇評・書評もてがける。中身は"ペリーテイスト"を効かせた、笑える内容。ほかに、著書「チョンマゲ天国」(ベネッセ)、「コモチのキモチ」(ベネッセ)、「みんなのテレビ時代劇」(共著・アスペクト)。「ペリーが来りてほら貝を吹く」(朝日ソノラマ)。ちょんまげ八百八町」(玄光社MOOK)「ナゴヤ帝国の逆襲」(洋泉社)「チョンマゲ江戸むらさ記」(辰己出版)当チャンネルのインタビュアーとしても活躍中。