ペリーのちょんまげ ペリーのちょんまげ

掲載2019年08月16日

「JIN-仁-」('12年雪組 宝塚大劇場)
村上もとかの人気原作を宝塚で舞台化!幕末の緊迫の中で命を救う現代人の外科医の運命
人間ドラマと華麗な演出、音月桂と舞羽美海の退団公演としても注目された雪組公演

(じん('12ねんゆきぐみ たからづかだいげきじょう) ) 出演者:音月桂/舞羽美海/早霧せいな/北翔海莉 ほか  2012年

掲載2019年08月16日

 大学病院の脳外科医・南方仁(音月桂)は、高度な技術で信頼も厚く、「神の手」とも称されている。しかし、彼は最愛の人を救えなかったことで心に深い痛みを抱えているのだった。ある日、身元不明の急患が運び込まれ、手術を担当した南方だったが、病室を抜け出したその男から「俺はお前だ」と謎の言葉を告げられる。そして、屋上から転落した南方が目を覚ました場所は、幕末の江戸だった! やがて蔓延し始めたコロリ(コレラ)、吉原では女たちを苦しめる梅毒に向き合うことになるが...。南方は、坂本龍馬、勝海舟らと出会い、苦悩しながらも江戸の人々を救うために奔走する。

 原作は、村上もとかの大ヒットマンガ。颯爽とした男役トップの音月は、タイムスリップに戸惑い、やがて自分の生きる道を見つける南方について、繊細に(現代人らしく着物もわざと着慣れていないように着ている!)かつ力強く演じる。南方を慕う武家娘・橘咲の舞羽美海は、一途な武家娘を清潔感あふれる演技で表現。豪快な龍馬を早霧せいな、勝海舟を北翔海莉とキャストも充実している。さらに「水戸黄門」「多十郎殉愛記」等で知られる殺陣師清家三彦によるスピーディーな立ち回り、さすが宝塚と思える吉原の華やかな場面など、多彩なシーンが次々展開する場面転換も見事。雪組の音月と舞羽はともにサヨナラ公演ともなった。思いを込めたセリフ、歌に注目したい。

掲載2019年08月02日

「新解釈・日本史」
歴史上の人物に次々扮するムロツヨシ×監督・福田雄一で笑えぬワケがない!
信長が、龍馬が、芭蕉が、ザビエルが、まさかの姿を見せてます。

(しんかいしゃく・にほんし ) 出演者:ムロツヨシ/吉沢亮/本多力/上地春奈/じろう(シソンヌ)/長谷川忍(シソンヌ)/太田恭輔/若葉竜也/浦井健治 2014年

掲載2019年08月02日

 日本人の心に残る歴史偉人は、本当に伝えられているような人物だったのか? このドラマは「決して史実に基づいておりません」と前置きしつつ、「ひょっとしてこんな人だったりして」という「提案」をしてみるという画期的なドラマである。主演はムロツヨシ。驚くべきことにムロは毎回歴史上の人物になりきってしまうのである。監督は「勇者ヨシヒコシリーズ」「今日から俺は!!」など話題作をガンガン世に送り出している福田雄一。ムロとは長年仕事をしているだけに息はぴったりだ。共演にも、「家売るオンナ」シリーズの本多力はじめ、吉沢亮、シソンヌの面々など、個性派が揃う。

 第3話「芭蕉はおくのほそ道をどのように辿ったのか?」では、芭蕉(ムロ)と弟子の曽良(本田)が実は単なるグルメツアーをしていたのでは?という説を提案。旅先の金持ちの門前で曾良が芭蕉を紹介すると、芭蕉は「もっと雲の上感を出してよ!!」と弟子に怒り、俳諧の会が終わっても食事が出ないとわかると、目がうつろになったりする。おいおい。第5話「一部「ザビエルはどのようにキリスト教を広めたのか?」では、ザビエル(ムロ)を前にした殿(本多)が、「その髪型...マジで?」と噴き出せば、ザビエルは「そちらの髪型だって...」とちょんまげについて指摘するなど、何しにきたのかわからない展開に...。とにかく笑える展開だが、ひょっとしてこれも史実?と思えるツボもあり。クセになる面白さ。

掲載2019年07月19日

「新吾十番勝負 完結篇」
宿敵を追え! 将軍・吉宗の隠し子新吾の剣術修行の旅がついに完結。
大友柳太朗、月形龍之介、丘さとみ、東映スターが揃う大川橋蔵の人気シリーズ

(しんごじゅうばんしょうぶ かんけつへん) 出演者:大川橋蔵/大友柳太朗/月形龍之介/丘さとみ/花園ひろみ/岡田英次 ほか 1960年

掲載2019年07月19日

 テレビでは「銭形平次」で親しまれた大川橋蔵の映画の代表作のひとつが東映スターが顔を揃える「新吾十番勝負」シリーズ。将軍・徳川吉宗の隠し子・葵新吾が、宿敵・武田一眞(月形龍之介)を追って剣術修行の旅を続ける中で、さまざまな事件に遭遇する。

 その完結篇となる本作で、新吾は四国、金比羅山へと向かった。丸亀藩から追われる絵師・尾形乾山(薄田研二)を助け、乾山を城へ届けた新吾は生母・お鯉の方(長谷川裕見子)の使者お縫(大川恵子)と会い、江戸へ向かう。だが江戸への海路、海賊の襲撃にあう。その襲撃にも裏が...。さらに娘・秋江(花園ひろみ)から懇願され、打ち首の危機にある彼女の父を救うも、敵方の策謀で父子は命を落としてしまう。敵方を切り伏せた新吾だが、父子を救えなかった衝撃は大きい。そしてついに江戸城での上覧試合で一眞と対決することに。新吾渾身の戦いの行方と、吉宗・お縫との対面は果たせるのか?

 監督は松田定次、原作は川口松太郎、完結篇には作者自ら脚本に参加している。橋蔵は海に落ちたり、雨に打たれたりとスターにしては珍しいほど、文字どおりの「水も滴るいい男」だが、ここでも邪念を払うために滝に打たれる。そこには虹が。撮影はシリーズ第三部と完結篇が同時進行で、滝シーンは極寒だったという。自らの剣の意味を考え、成長した新吾が父と母に届ける言葉にも注目したい。

掲載2019年05月31日

「新・座頭市Ⅲ」
当たり役を自在に演じる勝新太郎×名監督×名優たちの激突!
時代劇の面白さ、人生の切なさ、冷たさあたたかさ、すべてを描く名シリーズ

(しん・ざとういち3 ) 出演者:勝新太郎 1979年

掲載2019年05月31日

 天保年間、盲目の侠客で居合の達人として関八州で名を知られた男、座頭市。時に揉み療治をし、時に博打場で稼ぎながらのひとり旅を続ける市は、さまざまな人と出会い、事件に巻き込まれていく。映画で人気となったキャラクターのテレビ版として登場した勝新太郎の当たり役シリーズ第四弾。

 演出陣には、勝が大映でデビューしたときからの盟友ともいえる田中徳三をはじめ、森一生、黒木和雄、勅使河原宏など名監督が揃う。脚本も新藤兼人、星川清司などが担当しているが、しばしば出てくるのが勝新太郎の本名「奥村利夫」。勝は現場でさまざまなアイデアを出し、セリフや筋を変えてしまうことでも知られている。また、共演には浅丘ルリ子、にしきのあきら、原田芳雄、倍賞美津子、原田美枝子らが登場。第4話の「あした斬る」のゲストは郷ひろみ。勝自身が監督をした。このシリーズもこどもや少女など弱いものを助ける市のエピソードが多いが、泣けるのは愛妻・中村玉緒出演の第12話「虹のかけ橋」。人買いにさらわれた娘を訪ねる母の悲しい秘密と娘になりすました少女の揺れる心が描かれる。悪役の蟹江敬三、今井健二のこってりしたワルぶりもいい。ユニークなところでは、座頭市に弟子入りしたいという男・庄吉(火野正平)が現れる「あんま志願」も面白い。勝新が歌う「座頭市子守唄」とともにしんみりと味わいたい名シリーズ。

掲載2019年04月19日

「次郎長三国志 甲州路殴り込み」
鶴田浩二の二枚目次郎長に新参・小政の里見浩太郎など味のある子分が大集合
愛妻お蝶の最期のシーンは涙なくしては見られない!

(じろちょうさんごくし こうしゅうじなぐりこみ ) 出演者:鶴田浩二/大木実/山城新伍/長門裕之/品川隆二/里見浩太郎/佐久間良子/南田洋子ほか 1965年

掲載2019年04月19日

 清水港の次郎長(鶴田浩二)一家の痛快な活躍を描くマキノ雅弘監督の人気シリーズ全四部の最終作。次郎長のところに小政(里見浩太郎)と名乗る渡世人が、投げ節お仲が猿屋の勘助一家の人質になっていると知らせに来る。お仲は次郎長のため、勘助を探ろうと一家の賭場で小政に見とがめられ、捕まった。小政は次郎長と勘助との因縁を知らず、勘助のやり方に立腹し、次郎長に知らせたのだ。次郎長は勘助に殴り込みをかけ、お仲を救い出すが、結局、愛妻お蝶(佐久間良子)を連れての兇状旅に出ることに。途中、元関取の久六が一家を親切に迎え入れるが、それは賞金目当ての悪だくみ。お蝶は病となり、石松の幼なじみの七五郎の女房お園(南田洋子)の看病もむなしく世を去る。次郎長はお蝶の敵討ちを誓う!

 しゅっとした二枚目の親分を慕う、大政(大木実)、愛嬌たっぷりの石松(長門裕之)、新たに加わった小政など愛すべき子分たちが活躍するが、ここでいい味を出すのが、名古屋弁の桶屋の鬼吉(山城新伍)と法印大五郎(田中春男)。鬼吉は渡世人になったことを嘆く親と再会。肉親の思いを知る。また、死期を悟ったお蝶に「あたしが死んだらお経を」と言われた大五郎は、「あかんあかん、わてはお経を忘れた坊主だす」と必死に訴える。男たちの哀しみが胸を打つ名シーン。シリアスな対決、コミカルなやりとりなど娯楽要素満載の次郎長映画。

掲載2019年01月18日

「曽我兄弟 富士の夜襲」
日本三大仇討のヒーローを中村錦之助と東千代之介が颯爽と演じた快作
北大路欣也、大川橋蔵らも出演の東映若手オールスター時代劇

(そがきょうだい ふじのやしゅう ) 出演者:東千代之介/中村錦之助/高千穂ひづる/大川橋蔵/北大路欣也/大友柳太朗/月形龍之介/片岡千恵蔵 1956年

掲載2019年01月18日

 曽我兄弟の仇討は荒木又右衛門の「鍵屋の辻」と「忠臣蔵」と合わせて史実に残る「三大仇討」。1193年の曽我兄弟の事件が一番時代的には古く「元祖仇討物語」ともいえる。1193年といえば、「いいくにつくろう鎌倉幕府」ともいう鎌倉幕府成立(現在は1185年が定説とされる)1192年の翌年。源頼朝は権力を握ったとはいえ、まだ不穏な時代であった。

 物語は頼朝(片岡千恵蔵)の寵臣・工藤祐経(月形龍之介)により、河津三郎祐泰(中野市女蔵)が逆臣の汚名を着せられて殺されたことから始まる。祐泰の幼い息子・一万と箱王の兄弟は、母(花柳小菊)とともに鎌倉を追われ、曽我太郎祐信(中村時蔵)の家族となったが、工藤祐経の讒言により処刑されそうになる。幕府重臣の畠山重忠(大友柳太朗)により救われた兄弟は、十郎祐成(東千代之介)・五郎時政(中村錦之助)と名を変えて、父の仇討に挑む。史実では富士に狩猟にきていた祐経が遊女と寝ているところを襲撃されたともいわれるが、映画では弟を助ける化粧坂少将(三笠博子)、兄を慕う美しい遊女・大磯の虎(高千穂ひずる)が出てきたり、仇討の現場が富士山麓の狩場だったり、何より12年の時を経て二枚目兄弟が再会するといったドラマチックな場面満載。源頼家に北大路欣也、梶原景時に大川橋蔵など、当時の新星が顔を揃える若手オールスター活劇に仕上がっている。

掲載2018年12月28日

「小河ドラマ 龍馬がくる」
細川徹脚本・監督の"非"本格時代劇!
龍馬ファン武田鉄矢と本物龍馬三宅弘城、確かにどっちも海援隊?

(しょうがどらま りょうまがくる) 出演者:三宅弘城/武田鉄矢/箭内夢菜 ほか  2018年

掲載2018年12月28日

 大河じゃないよ、小河だよ!を合言葉にユニークにして笑える作風で知られる細川徹が脚本と監督を担当。パロディと芸能界あるあるシーン満載の、"非"本格オリジナル時代劇の第二弾。

 主人公はドラマで久々に坂本龍馬を演じることになって張り切る武田鉄矢。しかし、恋人おりょう役の箭内夢菜に「タカダさん」と呼ばれ、彼女が「龍馬」を「リュウマ」と読んだりしてイライラの連続だ。そんなとき突然、タイムスリップしてきた本物の坂本龍馬(三宅弘城)と遭遇。自他ともに認める龍馬ファンの武田は本物龍馬に「ダクションどこ?」と聞いて「海援隊ぜよ」と言われると「海援隊はオレがやってんだよ!!」と怒り出す。剣豪のはずがたいしたことなかったり、新選組におびえてただの蕎麦屋のおじさんを張り倒したり、本物が語る実像はカッコ悪くてがっかり。逸話が史実に則っているところもミソ。一方で、本物龍馬はスタジオの隅で立ちションし、武田のピンクのジャケットに袴という珍妙な恰好で、コンビニでバイトを開始。スマホを使いこなし、バイト仲間と合コン。ふんどし姿でナイトプールに飛び込み、ビキニ美女に囲まれて、「男は海よりナイトプールぜよ!!」と現代の文化にご満悦。やるねー龍馬。地上波の約2割という超低予算で大いに笑わせる新感覚ドラマ。本当に龍馬に見せたいぜよ!

掲載2018年10月26日

「関ヶ原」
岡田准一の武闘派石田三成VS役所広司の老練徳川家康の激突!
原田眞人監督・脚本により壮大なスケールで描かれた天下分け目の大戦。

(せきがはら) 出演者:岡田准一 有村架純 平岳大 東出昌大 / 役所広司 ほか 2017

掲載2018年10月26日

 戦国史上最大の決戦「関ヶ原の戦い」。意外にも戦そのものを映画化したのは、この作品が初。司馬遼太郎(※正式な表記は「遼」の「 辶 」(しんにょう)の点が二つ)の大ベストセラーを原作に、原田眞人監督が壮大なスケールで描き切る。
石田三成(岡田准一)は、豊臣秀吉(滝藤賢一)亡き後、豊臣家をないがしろにする家康(役所広司)に対抗すべく、すべてを捨てて立ち上がる。勇将・島左近(平岳大)は、「正義を信じ、愛を貫くが純粋すぎる」三成の人柄を信じ、息子と決死の働きをする。三成、左近、重い病を押して西軍に加わった三成のよき理解者大谷刑部(大場泰正)との信頼関係には胸打たれる。また、刑場で三成に命を救われ、淡い恋の相手となる女忍び初芽(有村架純)も「人とも女とも思ってくださいますな」と三成の犬となり働くが、その運命は過酷だ。一方、家康らは、福島正則(音尾琢真)、小早川秀秋(東出昌大)を味方につけるなど着々と裏工作を進めていた...。
 岡田三成は戦場を馬で駆け、矢を放ち、敵と戦う武闘派。初時代劇の有村も忍びの激闘に体当たりで挑戦。彼らを翻弄する家康の役所は、特殊メイクででっぷりとした体格に。「はらわたが煮えくり返る!」と野心家のギラギラ老人になっているのも面白い。龍潭寺、彦根城など国宝級の建築物での撮影、エキストラ総数3000人、延べ400頭の騎馬を繰り出した合戦シーンは圧巻。わずか6時間で決着した大戦の「誰も知らない真実」を見届けたい。

掲載2018年10月19日

「残月の決闘」
加藤剛が権力争いに巻き込まれる下級武士の悲哀と秘剣の決闘を熱演。
藤沢周平原作「孤立剣残月」を丁寧な描写で描く長編。

(ざんげつのけっとう) 出演者:加藤剛/音無美紀子/永島敏行/目黒祐樹/財津一郎/二宮さよ子/加藤武/中谷一郎 ほか 1991年

掲載2018年10月19日

 足軽の小鹿七兵衛(加藤剛)は、家老の三田(加藤武)の画策により、仲間と上意討ちを果たし、士分に取り立てられた。慣れない侍暮らしに戸惑いつつも、平穏に暮らしていたが、十年後、三田と殿様の側用人奥沢(中谷一郎)の権力争いが再び顕著になった。結局、三田派が破れ、七兵衛はますます居心地が悪くなる。そんな中、七兵衛が斬った鵜飼の弟・半十郎(永島敏行)が果し合いを求めてくる。逃げる道はないと覚悟した七兵衛だが、かつての仲間も十年のうちに暮らしも変化し、ともに闘うことは不可能だった。侍暮らしで剣の腕も鈍り、不安にかられた七兵衛は、道場の師匠から授かった秘剣「残月」で勝負しようと心に決める。妻・高江(音無美紀子)を実家に帰し、決闘の場に向かった七兵衛は、半十郎の助太刀三人をなんとか倒すが、孤立の戦いには限界が近づいていた...。
  原作は藤沢周平の「孤立剣残月」。加藤剛はそのまっすぐな演技により、パワハラに耐える下級武士の悲哀をていねいに表現する。スタッフは監督の小野田嘉幹、脚本の吉田剛、殺陣の宇仁貫三など、フジテレビの「鬼平犯科帳」「剣客商売」「神谷玄次郎捕物控」の面々。当初は映像化を渋っていた藤沢も、脚本を読んで納得し、快諾したという逸話が遺る。コミカルな演技も多い加藤武や中谷一郎が、ここではエゴむき出しの権力者に。陰影が深い映像の中できらめく「残月」のキレ味にも注目したい。

掲載2018年09月28日

「新座頭市物語 笠間の血祭り」
市は故郷笠間で幼なじみと再会するが...けなげな十朱幸代と悪役陣が光る
フーテンの若者など70年代の空気を漂わせるシリーズ第25作

(しんざとういちものがたり かさまのちまつり) 出演者:勝新太郎/十朱幸代/岡田英次/佐藤慶/志村喬/遠藤辰雄 ほか 1973年

掲載2018年09月28日

 市(勝新太郎)は久しぶりに故郷笠間を目指し、旅をしていた。途中、江戸で米問屋になり大出世した幼なじみの常陸屋新兵衛(岡田英次)と再会。新兵衛は凶作で荒れた故郷を救うため、千両箱を持ち帰り、名主総代の庄兵衛(土屋嘉男)ら村人から大歓迎を受ける。一方、市は母親代わりに乳をくれたおしげが亡くなっていることを知る。やがて新兵衛が実は悪代官林田権右衛門(佐藤慶)と組んで不正に米売買で巨利を得たうえ、笠間の親分・岩五郎(遠藤辰雄)に働きかけて御影石の採掘権を狙っていることが発覚する。石切り場を爆破するなど、とんでもない行動を止めようとする庄兵衛らを死に追いやった新兵衛に怒った市は、戦いを始めようとするが、市に親切にしてくれた娘おみよ(十朱幸代)が人質にされてしまう。
 けなげな娘を演じる十朱幸代、闇を感じさせる悪役の岡田英次、佐藤慶の存在感は抜群。また、市にまとわりつくフーテン役で岸部シロー、横山リエらが出演。空き家になったおしげの家に入り込んで騒ぐなど、公開当時、70年代の若者の気質を取り入れた描写もある。監督は「座頭市喧嘩旅」などシリーズで活躍した安田公義。脚本は「木枯し紋次郎」でも知られる服部佳子。座頭市シリーズは第25弾の本作でいったん幕を引くことになるが、笠間での現地ロケを敢行。のちに北野武版「座頭市」でもロケがされ、現地には「座頭市」石碑が建立された。

ペリー荻野プロフィール
ペリー荻野

1962年愛知県生まれ。大学在学中よりラジオのパーソナリティ兼原稿書きを始める。 「週刊ポスト」「月刊サーカス」「中日新聞」「時事通信」などでテレビコラム、「ナンクロ」「時代劇マガジン」では時代劇コラムを連載中。さらに史上初の時代劇主題歌CD「ちょんまげ天国」シリーズ全三作(ソニーミュージックダイレクト)をプロデュース。時代劇ブームの仕掛け人となる。

映像のほか、舞台の時代劇も毎月チェック。時代劇を愛する女子で結成した「チョンマゲ愛好女子部」の活動を展開しつつ、劇評・書評もてがける。中身は"ペリーテイスト"を効かせた、笑える内容。ほかに、著書「チョンマゲ天国」(ベネッセ)、「コモチのキモチ」(ベネッセ)、「みんなのテレビ時代劇」(共著・アスペクト)。「ペリーが来りてほら貝を吹く」(朝日ソノラマ)。ちょんまげ八百八町」(玄光社MOOK)「ナゴヤ帝国の逆襲」(洋泉社)「チョンマゲ江戸むらさ記」(辰己出版)当チャンネルのインタビュアーとしても活躍中。