ペリーのちょんまげ ペリーのちょんまげ

掲載2015年03月20日

「ザ・ヤジキタ 菊と葵と猫の目と」
企画原案・川内康範×異色作監督牧口雄二
三千回死んだ男優が主演する笑えるヤジキタ

(ざ・やじきた きくとあおいとねこのめと ) 出演者:川谷拓三/せんだみつお/梅宮辰夫/伊吹剛/蟹江敬三/藤木悠 ほか 1982

掲載2015年03月20日

威勢のいい河内の闘鶏師ヤジベエ(川谷拓三)と江戸の大工のキタハチ(せんだみつお)は、金比羅参りの旅の途中、乗っていた船が難破して、たどりついたのが別府の浜辺。気が付くと、船に乗り合わせていた坂本龍馬(伊吹剛)が、怪しい覆面の武士に襲われていた。ふたりの加勢でなんとか切り抜けた龍馬は、西郷隆盛(梅宮辰夫)にあてた密書を託す。頼まれたことは嫌とは言えない性分のヤジキタは、そのまま薩摩に向かうことに。その秘密を知った幕府側の隠密千造(蟹江敬三)が後を追う。そんな折、女スリのお駒(木村有里)に財布ごと密書をすられて大慌て。しかし、その裏にはとんでもない秘密が!? 

「どんなことがあっても知らないからな!」と怒るキタハチに軍鶏を両手に抱え「ほっとけ!!」と威張るヤジベエ。川谷拓三は、東映の大部屋に所属、17年もの下積みで計3000回は死んだという実績の持ち主。70年代の「仁義なき戦い」などで頭角を現し、主役を務めるまでになった。体当たりの演技が持ち味で、本作ではせんだと笑いの場面でも熱演を見せる。企画原案の川内康範は「月光仮面」の原作者であり「おふくろさん」など数々のヒット曲の作詞者としても著名。また、牧口雄二監督は「五月みどりのかまきり夫人の告白」など異色作や「影の軍団」シリーズ等も手掛けている。ユニークな顔ぶれが揃い、楽しめる長編。

掲載2015年03月13日

「新必殺からくり人」
山田五十鈴、雁之助、志ん朝の東海道五十三次殺し旅
近藤正臣の翳のある高野長英にも注目!

(しんひっさつからくりにん ) 出演者:山田五十鈴/緒形拳/近藤正臣/古今亭志ん朝/ジュディ・オング/芦屋雁之助 ほか 1977

掲載2015年03月13日

泣き節お艶(山田五十鈴)の「天保太夫一座」は、幕府のお咎めで小屋を焼かれ、江戸追放を言い渡された。一座に潜り込んだ翳のある男、蘭兵衛(近藤正臣)は、実は蘭学者の高野長英。彼らの前に現れた浮世絵師・安藤広重(緒形拳)は、代表作「東海道五十三次」の旅で見聞きした悪を抹殺してほしいと百三十両で依頼する。お艶はそれを引き受け、小駒太夫(ジュディ・オング)、火吹きのブラ平(芦屋雁之助)、噺家の塩八(古今亭志ん朝)、蘭兵衛と旅立った。

 ロードムービー的要素で必殺シリーズに新味を加えた第11弾。旅先が三島なら広重の「三島」の絵をあぶり、赤く光りだした灯篭を奉納した女郎を探すなど、悪のヒントが浮き出る仕組みも面白い。お艶は三味線のバチ、小駒太夫は独楽、ブラ平は火吹き芸の火炎放射で敵を倒す。蘭兵衛は細身の仕込みを相手に突き刺すが、黒子姿の陰影はぞくぞくするほど美しい。そして大活躍するのが「そりゃありませんよ!」「あたしが悪かった」と時にふんどし一丁で追い立てられながら、宿場の女たちに探りを入れる塩八。彼が使うのは早口言葉の名調子で相手に催眠術をかけて二階から突き落とすという前代未聞、この人にしかできない必殺技! 「五十三次殺し旅、よろしくお願いします」語りの緒形拳とともに昭和の名優が揃った贅沢なシリーズ。「蛮社の獄」で知られる実在高野長英追跡劇も注目の顛末となる。

掲載2015年02月06日

「蒼天の夢~松陰と晋作・新世紀への挑戦」
素朴松陰を中村橋之助、気鋭晋作を野村萬斎が熱演
司馬遼太郎「世に棲む日日」を豪華キャストで描く

(そうてんのゆめ~しょういんとしんさく・しんせいきへのちょうせん~) 出演者:中村橋之助/野村萬斎/十朱幸代/高橋英樹/高嶋政伸/天海祐希/阿部寛/関口知宏/中村勘太郎 2000

掲載2015年02月06日

幕末の長州。元治二年正月、高杉晋作(野村萬斎)は、身分関係なく加入できる奇兵隊を結成。幕府に追従する方針の藩に対抗を決意する。奇兵隊には農民や力士なども参加、後に初代総理大臣となる若き日の伊藤俊輔(高嶋政伸)も加わっていた。決戦前夜、晋作は亡き恩師吉田松陰(中村橋之助)の形見の三味線を胸に彼の思い出を語り始めた。ふたりの出会いは、松陰が黒船密航の大罪を犯し、野山獄に送られた後、自宅で松下村塾を開いたころ。松陰を訪ねた晋作は、「ご入塾ですか」とにこにこ人懐こく語りかける松陰に対して「二、三、質問したきことが。返答次第では、俺は斬るつもり」と厳しい目を向ける。名家高杉家の晋作は、りっぱな袴姿。それに対して松陰は農民と変わらない様子だったが、晋作はやがて松陰の教えに魅了され、弟子となるのだった。

原作は司馬遼太郎「世に棲む日日」。橋之助は持前の明るさで情熱的で楽しい松陰に。野山獄時代に密かに交流した女囚人高須久子(天海祐希)を前にたじたじする姿も面白い。藩主毛利敬親に高橋英樹、桂小五郎に阿部寛、久坂玄瑞に関口知宏、また大河ドラマ「花燃ゆ」ヒロインとなった松陰の妹杉文はじめ、松陰の母瀧に十朱幸代、父百合之助に浜畑賢吉と家族も登場。松陰と密航失敗した金子重之助(中村勘太郎・現勘九郎)の熱演には泣かされる。豪華キャストの骨太幕末ドラマ。

掲載2014年12月05日

「刺客街道」
加藤剛が藩のため命をかけて旅する若い医師に。
陰謀はあるのか?道連れとなった謎の美女の正体とは?

(しかくかいどう) 出演者:加藤剛/岡まゆみ/植木等/河原崎次郎/片桐夕子/稲葉義男/工藤堅太郎/今井健二 ほか 1982

掲載2014年12月05日

高根藩では、藩主が病で、江戸の跡取り若君・鶴之助も重い病と知らせが届き、暗い空気が漂っていた。元気だった若君に何が起こっているのか。その真偽を調べるため、藩医・門前良知(稲葉義男)の息子東馬(加藤剛)は藩主から密命を受けて、江戸へと旅立つ。しかし、剣の腕はあっても世間知らずの東馬は、有り金をすべてとられてしまう。また道中で、腹痛を訴える美女・喜久(岡まゆみ)を助けて、道連れとなった。そんな東馬の前に「十両でおぬしを斬ることになった」と、凄腕の浪人佐久間(河原崎次郎)が現れる。一度は刺客をかわした東馬だったが、今度は喜久が藩士たちに追われていることを知る。彼女の正体は...。

 能村庸一プロデューサーと映像京都、俳優座が企画したフジテレビの長編時代劇。殺陣には「木枯し紋次郎」の美山晋八、「座頭市」の楠本栄一が参加している。加藤剛は持前の超真面目ぶりととぼけたユーモアを発揮。「(金がなくて)腹が減るから素振りをする」などと言い出して、旅人の鎌七(植木等)を呆れさせる。また、岡まゆみも可憐なかわいらしさを持つ女性として登場。「博打でお金を増やすのですか?私もやってみたい!」とキャビキャビする。そんな面々を助ける女博打打の片桐夕子はいい女! 河原崎次郎も地味目だが、クライマックスの立ち回りはカッコいい。今井健二・工藤堅太郎の悪家老コンビも活躍する。痛快な一本。

掲載2014年09月12日

「秦・始皇帝」
台湾ロケ、大合戦シーン、制作費10億円!
日本映画史上に残る大スペクタクル、勝新皇帝に注目

(しん・しこうてい) 出演者:勝新太郎/市川雷蔵/本郷功次郎/山本富士子/若尾文子/長谷川一夫/叶順子/中村玉緒 ほか 1962

掲載2014年09月12日

長い戦乱の世を経て、紀元前221年、中国統一を成し遂げたのは、秦王政(勝新太郎)だった。政は、母(山田五十鈴)が自分を身ごもったまま前王に捧げられたという複雑な事情を抱えていた。理想の国づくりに燃える政は、始皇帝と名乗り、威陽に都を定め、改革を推し進めた。しかし、政を弟のように思っていた燕の太子丹(宇津井健)は、政と対立。執拗に政の命を狙うようになる。はじめは喝采で皇帝を迎えた人民だったが、「俺を育てたのは朕だ。俺は孤児だ」「世界は俺が統一した」と強引な政策を推し進める政に次第に不満を募らせる。さらに「万里の長城建設を築かねばならん」と巨大工事を進めるが、落雷などで難航。ついに人柱を立てることに...。

大映創立二十周年記念作、製作に一年、台湾ロケに一か月、出演はのべ3万人!という超大作。大平原を大量の馬戦車と兵たちが走り、激突するシーンには驚くばかり。長城に落雷シーンは、特撮技術が活かされ、「釈迦」に続く、日本映画史上に残る大スペクタクル仕様になっている。デラックスな衣服に身を包み、「俺は欲しいものはとらずにおらん」と美女に迫る勝新太郎のぎらぎらした悪人ぶり、刺客役の市川雷蔵のストイックな美しさ、川口浩のまじめ青年ぶり、相手役の若尾文子の清楚な美女ぶりなど、多彩なキャラクター、意外な結末も魅力。

掲載2014年08月22日

「釈迦」
日本にインドが!巨額の製作費を投じた超大作
市川雷蔵の悲劇の美貌王子と奇跡のシーンにも注目

(しゃか ) 出演者:本郷功次郎/勝新太郎/市川雷蔵/山本富士子/中村鴈治郎/川口浩/中村玉緒 ほか 1961

掲載2014年08月22日

2500年前のインド。カピラ王国のシッダ太子(本郷功次郎)は、スッドーダナ王(千田是也)とマーヤー妃(細川ちか子)の子として生まれたとき、「天上天下唯我独尊」と言葉を発し、歩き始めた。長じて白馬に乗り、国を回ったシッダは、奴隷や賤民が苦しみ、罪人が火あぶりになる現実に衝撃を受け、城を出た。一方、華子城の美貌のクナラ王子(市川雷蔵)は、義母に迫られ、拒絶すると、義母の謀で父アショカ王(中村鴈治郎)の怒りに触れて、石切り場に送られ、焼き鏝で両目をつぶされてしまう。クナラ王を深く愛するウシャナ(山本富士子)は、彼を懸命に支え、流浪の旅を続ける。そして六年、菩提樹の下でひとり坐して、苦行を積んだシッダは、雷鳴が響き渡る中、ついに悟りを開き、仏陀となった。そして、クナラに奇跡が…。

 監督・三隅研二、助監督・井上昭など大映気鋭のスタッフが集結。当時で7億円の巨額製作費を投じ、福知山市に二万平方キロものオープンセットでインドを出現させ、日本初70ミリ作品で釈迦の生涯を描いた超大作。釈迦自身の活躍というよりは、サイドストーリーの活劇、人間ドラマが面白い。雷蔵は、見えない目を閉じ、月下、竪琴をつま弾き歌う。傍らには美人女優山本富士子。なんと美しいカップル。また、勝新太郎が赤いマントの腹黒怪人姿で現れるのも見逃せない。高さ数メートルの巨大神殿崩壊シーンは、大迫力!

 

掲載2014年05月09日

「新選組始末記」
市川雷蔵が出演を熱望した「新選組」映画
男として武士として熱く生きようとした群像劇

(しんせんぐみしまつき ) 出演者:市川雷蔵/城健三朗/松本錦四郎/小林勝彦/天知茂/藤村志保 ほか 1963

掲載2014年05月09日

山崎蒸(市川雷蔵)は、医学を志す恋人志満(藤村志保)を押し切って、京都の新選組の一員となる。そのころの新選組は、局長・芹沢鴨(田崎潤)の横暴が罷り通り、町人からの評判も悪かった。そこで土方歳三(天知茂)は、沖田総司(松本錦四郎)らとともに愛人と寝込んだ芹沢を急襲して斬殺。芹沢一派の新見錦(須賀不二夫)らを切腹させる。蒸は「あれが武士のすることですか。私はあなたを信じて新選組に入ったのだ」と近藤勇(城健三朗・若山富三郎)に不満をぶつけるが、勇は「己ひとりが正しいと思うな」と含蓄ある言葉を投げかける。

 子母澤寛の原作を、「眠狂四郎」シリーズで知られる星川清司が脚色。星川にとって初めての京都大映作品であり、この作品の監督である三隅研次とは後に多くの作品で組むことになる。出演予定がなかった雷蔵は、この脚本が気に入り、自ら出演を熱望したという。「新選組」作品というと、大御所の貫録たっぷりの近藤勇、土方歳三の印象が強いが、この作品は、キャッチフレーズに「動乱の幕末を必死に生きる若者の群れ」とあるように、青春期の群像劇としての色合いが強い。殺陣もリアルで、泥臭く、蒸と志満との恋愛シーンも熱烈。

 クライマックス「池田屋騒動」、暗い決意を見せる若山の表情は迫力。また、「俺は怒ったらどんなことでもする」という天知の土方もキレが抜群。雷蔵の熱演とともに印象に残る。

掲載2014年04月11日

「地獄の左門十手無頼帖 女菩薩供養」
天地茂の当たり役、神山左門が見せる地獄の舞!
下っ引の尾藤イサオの敵討ちに大胆な作戦を。

(じごくのさもんじってぶらいちょう にょぼさつくよう) 出演者:天知茂/中谷一郎/尾藤イサオ/仲谷昇/池波志乃/山本みどり/小松方正 ほか 1983

掲載2014年04月11日

江戸で三日間も大雨が続く。土砂降りの中でも、凶悪犯を追い詰める南町奉行所与力の“地獄の左門”こと神山左門(天地茂)は、水かさが増した大川で、永代橋が落ちて二十人もの犠牲者が出たことを知る。その中には、左門を助ける下っ引与吉(尾藤イサオ)の恋女房おこう(一柳みる)もいた。上役の判断で天災とされたものの、その橋は完成してたった二年、しかも、橋大工の刺殺体が犠牲者の中に紛れていたことを突き止めた左門は、手拭き工事を疑い、探索を始める。一方、与吉は、十手を返上して、浪人の藤岡(中谷一郎)、お浪(池波志乃)と、橋の普請奉行堀留丹波(仲谷昇)の娘お園(山本みどり)誘拐を企てる。左門はそのことを察知するが…。

 天知の神山左門は、悪人たちの前では「地獄の左門の地獄の舞」をダイナミックに披露する鬼与力。シリーズ第三弾の本作では、下っ引の一途な思いを察したり、ゲストいくよ・くるよとの会話で笑顔を見せたり、左門を慕うお園に優しくしたりと左門の人間味が出て興味深い。現在は昼ドラマで母親役などが多い山本みどりのはかなげな乙女演技も印象的。製作陣には、「月光仮面」の原作・脚本、多くのヒット曲の作詞家としても知られる川内康範原作、「水戸黄門」第一部の執筆者でもある宮川一郎脚本、神津善行音楽と、昭和を代表する作家たちが参加している点にも注目。

掲載2014年02月21日

「さそり伝奇 風雲将棋谷」
全員が将棋名人の村がある!?
義賊VS凶賊 まさかの展開と悪役、悪女にも注目

(さそりでんき ふううんしょうぎだに ) 出演者:松方弘樹/神崎愛/綿引勝彦/花沢徳衛/赤塚真人/風祭ゆき/今福将雄/竹井みどり ほか 1983

掲載2014年02月21日

白髪に面をつけ、花嫁を襲う凶賊が江戸中の恐怖に包んでいたころ、十手持ちの神田朱雀町の仁吉(花沢徳衛)の娘お絹(神崎愛)は、悪い浪人たちに狙われたところを、雨太郎(松方弘樹)という男に助けられた。船宿きらくの居候という雨太郎は、どこか謎めいたものを持っている。そんな折、仁吉が必死に追う流れ星がまたも、現れた。一方、凶悪なさそり(綿引勝彦)も暗躍。その裏には意外な人物が…。さらには「全員が将棋名人」という信濃山中の不思議な村の伝説が浮上。村には秘宝があという。殺しの濡れ衣を着せられた雨太郎は大盗賊の先代に拾われる前の自分の出自について、意外な事実を知ることになる。

 秘密の財宝、からくり屋敷、地図に載らない谷、義賊と凶賊の対決、出生の秘密などなど、伝奇時代劇には欠かせない要素がたっぷり。もちろん、お色気シーンもバッチリ。ちゃっかり武家の愛妾となり、優雅に暮らすスリのお梶(風祭ゆき)がいい。雨太郎に出会うと、わさわざ肌の弁天の彫り物を見せて「お久しぶりでござんす」などと挨拶。ほれた雨太郎のために、「憎たらしい」「意地悪ね」などと言いながら、まさに一肌脱ぐ活躍をみせる。また、「鬼平犯科帳」では、大滝の五郎蔵として親しまれる綿引が、恐ろし気な男さそりを怪演。颯爽とした松方もいいが、悪女、悪役にも味が出る。ムード満点の音楽は「水戸黄門」の木下忠司。

 

掲載2014年01月24日

「必殺仕掛人 春雪仕掛針」
藤枝梅安と血染めの女との深い因縁を描く映画版
岩下志麻、地井武男、竜崎勝、夏八木勲ら悪が光る

(ひっさつしかけにん しゅんせつしかけばり ) 出演者:緒形拳/林与一/山村聰/夏八木勲/高橋長英/地井武男/花沢徳衛/岩下志麻 ほか 1974

掲載2014年01月24日

正月。漆器問屋小津屋に盗賊が押し入り、一家が惨殺された。悲惨な現場を、血染めになりながらひとり平然と眺める女。この家の後妻で、賊を手引きした一党の頭目・女賊の猿塚のお千代(岩下志麻)だった。お千代の育ての親で、元盗人の花屋の小兵衛(花沢徳衛)は恐ろしい仕事を繰り返すお千代に意見するが、聞き入れられない。小兵衛は考え抜いた末に、お千代を取り巻く子分の定六(地井武男)、浪人の三上(竜崎勝)、勝四郎(夏八木勲)を殺してほしいと、音羽屋半右衛門(山村聡)に依頼する。仕掛けを引き受けた藤枝梅安(緒形拳)は、お千代、さらに三上と自分の過去のいきさつに気がつき、驚くが…。

 林与一が小杉十五郎役で登場。梅安の危機を救うが、そのことで自らも苦悩することになる。また、半右衛門と小兵衛にも関りがあり、それぞれの過去が複雑に絡み合うオリジナルの設定になっている。自分を悪に染めたのは男であると非情な盗みを続けるお千代は、岩下志麻にしかできない存在感。『全部あんたのせいだ!!』の言葉が重い。梅安は、不安を愛人のおもん(ひろみどり)との逢瀬にぶつける。男と女の深淵を描けるのも、映画ならでは。原作やテレビ版とは一味違う仕掛人の世界を存分に楽しめる。ゲストの地井武男、竜崎勝、夏八木勲、高橋長英、村井国夫は花の15期と言われた俳優座の同期。息の合った仕事ぶり。

ペリー荻野プロフィール
ペリー荻野

1962年愛知県生まれ。大学在学中よりラジオのパーソナリティ兼原稿書きを始める。 「週刊ポスト」「月刊サーカス」「中日新聞」「時事通信」などでテレビコラム、「ナンクロ」「時代劇マガジン」では時代劇コラムを連載中。さらに史上初の時代劇主題歌CD「ちょんまげ天国」シリーズ全三作(ソニーミュージックダイレクト)をプロデュース。時代劇ブームの仕掛け人となる。

映像のほか、舞台の時代劇も毎月チェック。時代劇を愛する女子で結成した「チョンマゲ愛好女子部」の活動を展開しつつ、劇評・書評もてがける。中身は"ペリーテイスト"を効かせた、笑える内容。ほかに、著書「チョンマゲ天国」(ベネッセ)、「コモチのキモチ」(ベネッセ)、「みんなのテレビ時代劇」(共著・アスペクト)。「ペリーが来りてほら貝を吹く」(朝日ソノラマ)。ちょんまげ八百八町」(玄光社MOOK)「ナゴヤ帝国の逆襲」(洋泉社)「チョンマゲ江戸むらさ記」(辰己出版)当チャンネルのインタビュアーとしても活躍中。