ペリーのちょんまげ ペリーのちょんまげ

掲載2011年08月26日

『銭形平次(主演:村上弘明)』
村上弘明の186センチ長身平次が、謎を解く。
銭投げのダイナミックな連続技にも注目!

(ぜにがたへいじ) 2004年

掲載2011年08月26日

 神田明神下の名親分といえば、御存知、銭形平次。抜群の推理力と行動力で、江戸の難事件を解決する時代劇の人気者だ。主役は、村上弘明。これまで武士役が多かった村上弘明が、初めて本格的に町人役に挑んだのが、この作品。特に注目したいのは、長身を活かしたダイナミックな銭投げの技だ。帯に根付をつけた銭の束を引っ掛けるのは、平次スタイルの定番だが、村上平次は、投げる仕草が超速い。そこにCGも駆使して、ぐいーんと相手に迫って命中するのは、21世紀の平次ならでは。2004年の撮影当時、ペリーは現場を取材したが、村上平次はさまざまな投げ方や十手の扱いを研究していたのが印象的だった。刀とは長さが違う十手の立ち回りにも注目を。
 その平次を支える愛妻お静は、東ちづる。時代劇が大好きというだけに、お茶を淹れる動きひとつにも心を込めているのがよくわかる。また、「てえへんだ!」でおなじみの平次の子分・八五郎は石井正則。平次のライバル三ノ輪の万七(渡辺哲)の子分が石井の相方・石塚義之で、子分同士の突っつき合いも面白い。渋いところでは、平次を信頼する与力・笹野新三郎の西岡徳馬も堂々とした活躍を見せる。第二シリーズ第二話には、名子役の美山加恋が登場。第七話には、今は亡き鈴木ヒロミツも出演し、平次を陥れる!?
 松山千春の主題歌も庶民派時代劇の味に。

掲載2011年07月15日

『新必殺仕置人』
セリフに当時のCMパロディも。
殺しの元締め「虎」に元阪神藤村富美男登場

(しんひっさつしおきにん) 1977年

掲載2011年07月15日

舞台は文化文政の頃。許せぬ悪を葬る仕置人たちは、元締め虎が主宰する俳諧連歌の会で、殺しの依頼をせりにかけていた。その一回目にせり落とされたのは、なんと中村主水(藤田まこと)。会に出席していた念仏の鉄(山崎努)は、その裏にただならない動きがあることを察知するが…。
 必殺シリーズ第10弾として登場した「新必殺仕置人」は、中村主水、念仏の鉄、シリーズのツートップといってもいい顔合わせに、手製の銃で相手を狙う巳代松(中村嘉津雄)、情報を集める正八(火野正平)、おてい(中尾ミエ)と、おとなのキャスティング。もちろん、主水の義母と嫁、せん(菅井きん)とりつ(白木万理)も元気いっぱいだ。
 第8話の「裏切無用」では、元締めの虎を狙う恐ろしい殺し屋闇の重六(名和宏)が現れ、鋼鉄の玉を投げつけて姿を消す。その落とし前をつけるため、虎が自ら乗り出す。虎役は、元阪神タイガースの名バッター藤村富美男だけに、使う業も野球がらみ。鉄のセリフも「みんな悩んで大きくなった」「スカッと爽やかなんてなあねえ」と当時のCMのパロディだったりする。こんな遊びもシリーズならでは。第一回の「問答無用」以来、タイトルには「無用」がつき、全体にハードタッチになっているのも、シリーズの特徴。特に最終回は今も「忘れられない」とファンが多い。

掲載2011年05月20日

『清水次郎長』
西郷輝彦の次郎長に尾藤石松、中村大政!
おなじみ「葉村彰子」の明朗痛快決定版

(しみずのじろちょう) 1981年〜1983年

掲載2011年05月20日

清水港の名親分・次郎長を、「江戸を斬る」シリーズでノリノリ時代の西郷輝彦がからりと演じた明朗時代劇。原案・脚本が「葉村彰子」と聞けば、時代劇ファンなら、おっと気づくはず。長年ナショナル劇場(現在・パナソニック・ドラマシアター)の「水戸黄門」「大岡越前」「江戸を斬る」を手がけた名物女史・葉村彰子は、実は複数の脚本家の共同ペンネーム。本作も、葉村はじめ、C.A.Lのスタッフ、山岡鉄舟に加藤剛、大親分大前田英五郎に片岡千恵蔵など、おなじみの顔ぶれが結集して作られている。
 次郎長の子分には、大政に中村敦夫、小政に和田浩治、追分三五郎に松山英太郎、桶屋の鬼吉に大和田獏。そしてなんといってもはまり役として話題だったのは、尾藤イサオの森の石松。喧嘩っ早いが愛嬌たっぷり。それだけに、壮絶な石松の最期は衝撃的。
 ペリーは西郷輝彦ご本人にこのシリーズについてインタビュー。
「恋女房お蝶役の増田けい子さんが、涙を流すシーンで緊張してなかなかうまくいかなかったとき、耳元で『自分の大切な人を思いなさい』とアドバイスしたら、即OKが出た」「子分役の尾藤さんは、歌手として先輩。思えば、親分役の僕が教わることが多かった。みんなでわいわいとしながら撮影ができた思い出深い作品」と語っていた。納得の熱血作。

掲載2011年04月15日

『新・平家物語 総集編』
平岩弓枝脚本で平清盛の女性関係にも迫る。
壮麗なセットと衣装で華麗な王朝絵巻が展開

(しん・へいけものがたり そうしゅうへん) 1972年

掲載2011年04月15日

平家の中でも抜きん出た才能と行動力を持った平清盛(仲代達矢)は、政略結婚で朝廷との関係を強め、次々と夢を実現させていく。
それは、まさに平家の栄華の頂点を極めた姿であった。しかし、関東では源氏に動きが。
 吉川英治の原作を「御宿かわせみ」の原作でも知られる平岩弓枝が脚色。もともと「ありがとう」などホームドラマの脚本家として実力を発揮していた作家だけに、この作品では、清盛をめぐる女性関係にも注目。中村玉緒、新珠三千代、佐久間良子ら女優陣の華麗な衣装と、壮麗なセットも話題に。仲代達矢は、清盛の出家に合わせて、実際に剃髪し、迫力満点の清盛像を見せた。
 また、このドラマで源義経を演じた志垣太郎も人気に。当時、ドラマのLPレコードが発売され、その中には志垣が「母上は牛若に剣をとるなとおっしゃる…だが、もう牛若はこどもではない。牛若は武門の子ぞ!!」と熱く母への思いをひとり語りする音声も収録されている。若さあふれる義経と、大河ドラマの常連俳優・高橋幸治の源頼朝は、重みがあった。さらに、このドラマは平経盛役の郷ひろみのデビュー作でもあった。上京間もない郷は、わけもわからずNHKに行き、その場で出演が決まったという。その若武者が「君たち男の子!」と歌いだして、びっくりしたのは、ペリーだけではないはず。

掲載2011年01月07日

『戦国無頼』
三船敏郎・三國連太郎に山口淑子が体当たり
原作井上靖、監督稲垣浩、脚本に黒澤明も

(せんごくぶらい) 1952年

掲載2011年01月07日

織田信長の大軍に包囲された琵琶湖畔の小谷城・浅井長政の軍勢。落城の予感が濃厚になる中、浅井の家臣・佐々疾風之介(三船敏郎)、
立花十郎太(三國連太郎)、鏡弥平次(市川段四郎)は、決断のときを迎えた。その結果、十郎太は脱出を決意。疾風之介は、腰元の加乃(浅茅しのぶ)と再会の約束をし、彼女の安全を十郎太に託す。戦の混乱の中で、バラバラになった三人の男と加乃。疾風之介は、野武士の一群の大将の娘おりょう(山口淑子)に拾われる。
情熱的なおりょうは、「あの人を見ていると、あの心を縛っておきたい」と疾風之介に熱中。
しかし、事故でおりょうの父が死に、周囲は疾風之介のしわざだと思い込む。
命ぎりぎりの戦国を舞台に、恋しい相手を追い求める4人の複雑にして、ドラマチックな展開。原作の井上靖は、この作品について「自分で実に楽しく書いた」と記す。また登場人物が死ぬ場面を書いたとき「可笑しな話だが、どうにかして助ける方法はないものかと考えた」という。それほどに愛着持った原作を、稲垣浩・黒澤明が共同で脚色。監督を務めた稲垣浩は「出世太閤記」「独眼竜政宗」に続く戦国ものは三本目となる。
三船・三國のぎらぎらした無名の兵士は、はまり役だが、この作品で光り輝くのは、野性味たっぷりの山口淑子「逃がすもんか!!」と疾風之介を追うおりょう。艶っぽく美しい。

掲載2010年10月08日

『時代劇法廷 被告人は服部半蔵』
服部半蔵は偽忍者?次々明かされる新事実
ついに「あのお方」も証人として登場!

(じだいげきほうてい ひこくにんははっとりはんぞう) 

掲載2010年10月08日

もしも、時代劇の主人公に重大な疑惑がもたれたら? 敏腕?時代劇検察官・渡辺いっけいが、鋭く追及する「時代劇法廷」第一回の被告人は、あの服部半蔵。
そもそも法廷で氏名を名乗れといわれても「忍びの者ゆえ」と顔も見せず、名乗りもしない徹底した「忍者」ぶりを見せる半蔵。しかし、検察官がつきつけたのは、なんと「あなたは本当の忍者ではない! よって詐欺罪で起訴します!」
検察官が指摘するのは、伝えられる半蔵の肖像画が、甲冑をつけ、まるで戦国武将そのものということ。また、「伊賀忍者」のはずの半蔵の出生地は意外にも!? さらに服部半蔵は何人も存在した??
次々明るみに出る意外な事実。しかし、その裏には、服部半蔵が歩んだ歴史の裏事情がからんでいた。
なんといっても、見どころは、近年、ヒットドラマ「ガリレオ」などで、コミカル&シビアな不思議な魅力を見せている渡辺いっけいのひとり芝居的パワー。彼を前にしては、時代劇のヒーローもたじたじだが、そこに意外な超大物証人が現れ、裏の裏事情が明らかになったりして、法廷は大混乱!
服部半蔵が男泣きした証人とは誰なのか。見ているうちに歴史も理解できるという時代劇法廷。注目の判決はいかに。

掲載2010年07月02日

『素浪人 月影兵庫』
近衛×品川の名コンビ作が、ついに放送開始!
ユニークなゲスト、北島三郎の主題歌も新鮮

(すろうにん つきかげひょうご) 1965年

掲載2010年07月02日

剣の名手の素浪人・月影兵庫(近衛十四郎)と、一本気な渡世人・焼津の半次(品川隆二)が、旅の先々で事件に遭遇。弱い者たちのために戦う痛快時代劇。1965年に放送されるや、ふたりの面白すぎる掛け合いが評判となって、ぐんぐん視聴率が上昇。老若男女の心をつかんだ。ドラマのサブタイトルも、第一話「浅間は怒っていた」、第二話「風は知っていた」とシビアだが、次第にコメディ要素が強くなり、52話「財布の紐がゆるんでた」66話「おヘソが苦労の種だった」、106話「一人残らず臭かった」、114話「生まれた時から酔っていた」などに発展。このタイトルも楽しみにしているファンが増えた。
その記念すべき第一話では、旅行く兵庫が、追われるお姫様(弓恵子)を救出。とっさの判断で、村娘に変装させて山越えをはかるが、兵庫を悪人と勘違いした半次が間に入ってきて、騒動に。半次が「おらあ、曲がったことが大嫌いで、ドスも煙管の雁首も真っ直ぐだ!」と見せた煙管が本当に一直線。芸が細かい。第二話では、山小屋で凶悪犯たちに人質にされ、緊迫ムード満点。ゲストの茶川一郎が役者くずれの悪を演じて、味を出す。このほか、大原麗子、吉行和子、坂口佑三郎(仮面の忍者赤影)、左卜全、島田順司など毎回多彩なゲストが登場。♪まえぶれもなく~と伸びやかな歌声を聞かせる北島三郎の主題歌もいい。

掲載2010年06月25日

『素浪人 花山大吉(主演:松方弘樹)』
松方弘樹が父の当たり役に挑む!
焼津の半次は、田原俊彦がノリノリで。

(すろうにん はなやまだいきち) 1995年

掲載2010年06月25日

「素浪人花山大吉」といえば、昭和40年代に近衛十四郎と品川隆二の名コンビで連続ドラマとして放送され、大人気となった名作時代劇。ここでは、松方弘樹が父の当たり役に挑戦。相方の焼津の半次には、田原俊彦が抜擢され、ノリのいいところを見せる。
舞台は甲州路。瓢々とひとり旅を行く花山大吉(松方)が、ふとしたことで若い渡世人の半次と道連れになる。剣の腕は確かだが、万事アバウトな大吉と、曲がったことが大嫌いの几帳面男半次は、性格が正反対なのになぜかウマがあう。そんな二人は、旅籠で泊り客が殺されるという事件に遭遇。半次は、現場で震えていた少女お花(高倉彩)を助けたが、父を殺されたお花はショックで口がきけない。仕方なく甲府へ連れて行こうとするが、殺し屋集団に襲われた。お花が持っていた竹ざおで応戦すると、なんと、竹の中から金の延べ棒が! 甲府についた一行は、そこに謎めいた親分・甲斐虎の存在を知る。大吉たちに関わってくるお涼(伊藤かずえ)にもなにかいわくがありげ。誰が善で誰が悪か。甲府には不穏な空気が…。
松方は、父とは違う色気があり、独自の大吉になっている。また、半次の田原は、「俊ちゃん」的な明るく軽い存在感を出している。
笑いの中にもシビアな展開と豪快な立ち回りも見物のひとつ。

掲載2010年05月28日

『笹沢左保「峠」シリーズ』
「木枯し紋次郎」ケガで急遽制作された四本
主演俳優・スタッフともに男気あふれる快作

(ささざわさほとうげしりーず) 1972年

掲載2010年05月28日

1972年、当時人気急上昇中の「木枯し紋次郎」の主演俳優・中村敦夫が立ち回りシーンで負傷。ご本人によれば「ビーンと筋肉が切れる音がした」というすさまじさで、緊急入院。全治半年以上と診断され、番組の継続も、本人再登板もできるかと危ぶまれた。が、そこで立ち上がったのが、元大映で名作を数多く手がけてきた映画人たち。その中心となったのが、現在、中村吉右衛門の「鬼平」シリーズなどの美術を手がける映像京都の代表・西岡善信と森一生ら監督陣。「紋次郎」の原作者・笹沢佐保の短編をオムニバスで四本制作し、中村敦夫の回復を待つという作戦に出たのであった。
舞台となるのは、「峠」その第一作は、高橋悦史主演の「中山峠に地獄を見た」、第二作は川津祐介主演の「狂女が唄う信州路」、第三作は天知茂主演の「暮坂峠への疾走」、そして第四作となったのが、松橋登(目がきれい!)主演の「鬼首峠に棄てた鈴」だ。
汚いやり方で恩ある親分を陥れた敵の渡世人文吉(田口計)を追う伊三郎(松橋)。彼の手首には、姉からもらった鈴がついていた。文吉につく凄腕の用心棒と戦うため、伊三郎は決死の策を練る。「生きていて他にすることもありやせん」という伊三郎の言葉に、渡世人の孤独がにじむ。

掲載2010年05月21日

『仕掛人・藤枝梅安 梅安晦日蕎麦』
梅安が変装して、敵地に乗り込む!
相棒彦次郎(田村高廣)の吹き矢もさえる。

(しかけにん・ふじえだばいあん ばいあんみそかそば) 1983年

掲載2010年05月21日

なじみの茶屋井筒で飲んでいた梅安(小林桂樹)のところに、知り合いの剣客・小杉十五郎(柴俊夫)が、深手を負った老婆を運び込む。息子の仇討ちを果たせず、返り討ちにあった老婆は、このことを息子の許婚しま(佳那晃子)に告げてくれと息を引き取る。そのしまは女郎で、金にうるさいと評判だった。一方、梅安の仕掛人仲間の彦次郎(田村高廣)は、義理のある筋から、井坂右京(伊吹剛)の仕掛けを依頼され、見張っていた。そこにしまが現れる。肺を病んだ右京に貯めた金を差し出すしまの姿を見て、彦次郎は、この仕掛けに「裏」があることを悟り、梅安と相談をする。悪行を繰り返す仙石家大目付嶋田大学(田口計)の仕掛けをするため、梅安は、思い切った変装で、彼に近づくが…。
「晦日蕎麦」というタイトルだが、撮影されたのは九月。真夏並みの気温の中、厚着で演技するのは大変だが、それより大変だったのは、二人が食べる「ハゼ」。季節はずれで四匹しか手に入らず、撮影3日目にはさすがにいたみはじめたが、なんとか撮影に使用。おいしそうに箸を伸ばすのは、一苦労だったという。また、昭和3年、京都太秦生まれの田村高廣は、下総生まれの東男彦次郎を演じるにあたり、職人らしい、自由な雰囲気を出すことを心がけたと語っている。時に身軽に、時に鋭く動く彦次郎は、梅安の貴重な相棒だ。

ペリー荻野プロフィール
ペリー荻野

1962年愛知県生まれ。大学在学中よりラジオのパーソナリティ兼原稿書きを始める。 「週刊ポスト」「月刊サーカス」「中日新聞」「時事通信」などでテレビコラム、「ナンクロ」「時代劇マガジン」では時代劇コラムを連載中。さらに史上初の時代劇主題歌CD「ちょんまげ天国」シリーズ全三作(ソニーミュージックダイレクト)をプロデュース。時代劇ブームの仕掛け人となる。

映像のほか、舞台の時代劇も毎月チェック。時代劇を愛する女子で結成した「チョンマゲ愛好女子部」の活動を展開しつつ、劇評・書評もてがける。中身は"ペリーテイスト"を効かせた、笑える内容。ほかに、著書「チョンマゲ天国」(ベネッセ)、「コモチのキモチ」(ベネッセ)、「みんなのテレビ時代劇」(共著・アスペクト)。「ペリーが来りてほら貝を吹く」(朝日ソノラマ)。ちょんまげ八百八町」(玄光社MOOK)「ナゴヤ帝国の逆襲」(洋泉社)「チョンマゲ江戸むらさ記」(辰己出版)当チャンネルのインタビュアーとしても活躍中。